【宇宙開発グループの創設】よりの派生

  更なる採掘地の捜索(イベント):FVB
   L:更なる採掘地の捜索 = {
   t:名称 = 更なる採掘地の捜索(イベント)
   t:要点 = 解かれる封印,巨大迷宮,地下
   t:周辺環境 = 最悪の地獄

 

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   最悪の地獄だ。今さらそう思っても仕方がないが、罵らずにはいられなかった。
  自分1人だけなら単なる「地獄」だ。何かあったら死ぬ覚悟はできているが、今回はまずいことに子供を連れてきていた。
  俺は5人の子供と共に、冥府の王が支配するという星(正確には小惑星らしいが)の採掘現場跡地でなかば生き埋めになっていたのだ。

  FVBは新たな燃料採掘地を捜していた。
  以前発見した採掘地の貯蔵量は莫大で驚くべきものだったが、決して無尽蔵ではない。まして燃料グループを立ち上げ、帝國規模で流通させ始めたら枯渇はすぐそこに見えている。
  新たな採掘地の発見は、燃料グループを存続させるための最重要課題であり、宇宙開発センターによって無人探査機を使った捜索が早くからおこなわれていたが、成果の上がらないまま宇宙戦闘の勃発によって中断されたままだった。その時点で判明していたのは、アステロイドベルト(小惑星帯)も含めた宇宙空間は鉱物資源についてはまったく期待できないということだけで、燃料の採掘地としてはまったくの未知数だった。
  そして、新たな探査計画が練られていたわけだが、俺の仕事はそんなものとは関係なかった。
  ただ、藩立学校の生徒の実技指導を兼ねて、現在の燃料採掘地の計測機器を交換しに降りるというものだった。

 


 「まだ新たなメタン層は発見されていない。他の星で見つかるかも知れないが、設備の関係から、やはり冥王星の上で見つかるのが好ましい。とはいえ、目につくところはあらかた掘り尽くしてしまい、さらに探そうと思ったら宇宙艦隊総出で大型の試掘用機械を運んでこないといけないだろうが……」
  まだ10歳やそこらの少年少女を引き連れて遠足を楽しむというには、冥王星はあまりに過酷な世界だ。平均気温がマイナス229度という極寒地獄であり、窒素や一酸化炭素のほとんどが個体の状態でしか存在していない。残りは大気というにはあまりに希薄な気体の膜でしかない。そもそも冥王星そのものが窒素やメタンの氷でできているといってもいいくらいなのだ。
  そんなところに子供を連れて行くのは、命令とはいえ気が進まないことだったが、最近の子供は俺たちの時代とは違っているらしい。自分で靴下をはけるようになる前に宇宙服が着用できるようになり、ランドセルを背負うくらいの感覚でエアボンベを装着してOG活動をしているらしい。今回のこれも、社会見学の一環だというのだから、なんて時代になったのだろうか。

  なにか小さなミスでもあったら、それを理由に中止として送り返してやろうと考えていたが、彼らはまったく戸惑うことなく作業を進めていた。悔しい話だが非の打ち所がない、完璧な手順だった。すべての安全手続きをそつなくこなし、連結されたミアキスを改装した燃料精製施設の横を通り抜けていく。
  低重力だからカンガルー飛びのように軽く跳躍することはできるが、足もとはすべて氷のようなものだから、精製施設の低い駆動音を足もとに感じながらしっかりと踏みしめつつ前進する。そしてケーブルと垂直梯子を頼りに立坑の底へと降り、簡易ソリを組み立てると観測資材その他を積み込んで、第三者からは思いつくままに掘り進んだだけとしか思えない、白銀の巨大迷宮と化した固形メタンの採掘跡を奥へ奥へと辿っていく。
 「単純に手当たり次第にを掘り進んだんじゃない。効率よく、しかも掘り進むことで山が崩れたんじゃあ大事故だ。第一次の探査隊では……」
  ときおり足をとめてはあれこれと解説をしていくが、素人にはどれも同じ白銀の壁が続いているようにしか見えないだろう。しかし、子供たちは熱心に聞くだけでなく、誘電体バリア放電によるプラズマを利用した場合の圧縮効果がどうのとか、固形メタンの圧縮技術などの細かい部分に数字を交えて質問してくる。あまりに熱心すぎて、教えるこちらの方がたいへんだ。こいつら何モンだと怯えさえした。教えた数字をいちいち算盤で検算するのはやめてくれ!宇宙服の指でどうやって算盤なんかはじけるんだ?

 


  子供たちが完全に宇宙に適応していることは、すぐに俺も認めざるを得なくなっていた。そして、異変を察知したのも、センサーが異常を伝えるより彼らの方が一瞬早かった。
  滅多に発生しない星震(Plutoquake)だ。しかも、観測史上最大規模だったそうだ。

  子供たちがいきなり走り出した。おいバカヤロ走るな!と怒る間もなく、俺は待避壕に押し込められた。正確に言うなら、ゴロウRX78が俺を突き飛ばし、清香221Bが待避壕に蹴り込んだのだ。
  危機一髪だった。アラームが鳴り始め、携帯端末が退避指示を出したのは、落下した巨大な氷塊がソリを押しつぶした瞬間だった。
  星震そのものは1分にも満たなかったろう。だが、氷壁の崩落や落石がしばらく続き、待避壕もぎしぎしと裂けるような音を何度もさせ、非常灯の赤い灯りの下で幾度も小さな火花が散った。
  余震がやっと治まっても、外に出ることはできなかった。直撃はなかったものの落石によってシェルターの入り口がなかば埋もれてしまったからだ。わずかなすき間しか開かない。備えつけの有線電話の回線は切れていたし、無線もノイズだらけで使い物にならないが、どうせすぐに回復するはずだ。自分たちが社会見学に出ていることも、コースも分かっていることだから捜索隊もすぐに来るだろう。
  しかし、子供が大半とはいえ6人も押し込められると待避壕はかなりきつい。
 「エア残量を確認しつつ、このまま待機……って、おい、ルカっ!ルカ1701D!どこへ行く!?」
  小さな赤い宇宙服がよたよたと待避壕から這い出ていくのに気がついて、俺は声を上げた。またいつ余震が来るかも知れない。のこのこ出ていってたら、何が起きるか分かったもんじゃない。
 「勝手な行動は慎めっ!」
  だから子供はイヤなんだ。
  半開きの扉は狭い。落石で通路の大半はふさがれている。子供の宇宙服はなんとか通り抜けたが、俺は宇宙服を傷つけないよう通り抜けるのに時間を取られた。こんなところでエアボンベに穴を空けて死にたくはない。

  なんとか外に出る。頭上ではちょうど衛星カロンが大きな影を落としながら通り過ぎるところだった。巨大な月が頭のすぐ上をかすめていく感じだ。

 


  そしてルカはいた。何十メートルか先の、今し方できたばかりの大きな亀裂の前に、小さな赤い姿があった。

 「ルカ1701Dっ!」
  少女がこちらを向いた。偏光バイザーで顔は見えないが、こちらを手招きしている。
  俺は禁則を破り、3歩で少女のもとに辿り着いた。
 「見てください……」
  少女は亀裂からキラキラと光りながら天に昇っていく霧のようなものを指さした。
  亀裂の底を覗き込んでも何も見えないが、そのガスはすぐに広がり、薄い大気と混じって消えていく。
 「メタンか?」
  俺の言葉に赤いルカはこくりと頷いた。
  あの星震がまるで隠された貯蔵庫の封印を解いたかのようだった。大地の奥底に眠っていたメタンが星震のエネルギーで気体化して吹き出したのだ。時間が経てばガスは消えるし、亀裂もすぐに凍結してふさがってしまう。10分としないうちに、その地下に新たなメタン層が眠っていることなど分からなくなってしまったことだろう。
  振り向けば残りの子供たちが待避壕から這い出てきていた。破壊を免れた計測器を再設定し始めている。プロも顔負けの行動力と判断力。まったく食えない連中だ。これが本当に子供かね……。

  ……だが、15分としないうちに、彼らもまた、ただの子供であることを思い知らされた。
  測定器で新たなメタン層の存在を確認し、ビーコンを設置して救援を呼んだ彼らは、そのまま退屈しのぎに雪合戦を始めてしまったのだ。なんてこったい。

  そして俺は3勝16負でぼこぼこにされていた……。

 

 

文:曲直瀬りま

設定:光儀,支倉玲

イラスト:曲直瀬りま

ここまで10/04/07提出


 

 L:更なる採掘地の捜索 = {
   t:名称 = 更なる採掘地の捜索(イベント)
   t:要点 = 解かれる封印,巨大迷宮,地下
   t:周辺環境 = 最悪の地獄
   t:評価 = なし
   t:特殊 = {
    *更なる採掘地の捜索のイベントカテゴリ = 自動、藩国イベント。
    *更なる採掘地の捜索の内容 = このイベントを取得した国は、宇宙に燃料採掘地(埋蔵量4000万t)を取得できる。
   }
   t:→次のアイドレス = なし
  }