ヴァルキリープロファイル 咎を背負う者

【う゛ぁるきりーぷろふぁいる とがをせおうもの】

ジャンル シミュレーションRPG
対応機種 ニンテンドーDS
発売元 スクウェア・エニックス
開発元 トライエース
発売日 2008年11月1日
定価 5,040円
ヴァルキリープロファイルシリーズリンク

ストーリー

主人公「ウィルフレド」は過去に父親を戦争で亡くした。
父の死体のそばには白い女神の羽が落ちていた。彼の父は神界の戦争に参加する「エインフェリア」として戦乙女「ヴァルキリー」に選定されたのである。
「エインフェリアに選定されることは誉れである」と教えられていたが、その誉れとされる行為はウィルフレドにとっては父を奪うことと同義であった。
妹は衰弱死し、母は2人の死により心を病んだことで家庭は崩壊、ウィルフレドは「こうなったのは戦乙女のせいだ」と全てをヴァルキリーに転嫁するようになり、復讐心を募らせ、力を欲した。
そして彼がいたった結論は「自らがエインフェリアとなって戦乙女に近づき、復讐を果たす」というものであった。
こうして彼は傭兵となり、戦場を転々とする日々を送ることとなる。父の元に残っていた女神の羽を携えながら・・・

概要

プレイステーションにて第1作が発売された「ヴァルキリープロファイルシリーズ」の3作目。
今作は従来の「神の視点」ではなく「神への復讐を目的とした人間」の視点からの物語が展開されており、サブタイトルである「咎を背負う」というキーワードもシステムに大きく絡んでくる作品となっている。
また、世界観は前作、前々作と共通しており、今作は1の数十年前の物語である。

特徴

システム

ゲームの流れ

  • プレイヤーは主人公を操り、舞台であり世情が荒れている「アルトリア王国」の領内の戦地を選択、各地で戦闘を重ねキャラクターを育て戦乙女への復讐を果たすことを目標とする。物語は全6つのチャプターに分かれており、そのチャプターで渡り歩いていく戦地も前のチャプターの行動で3つに分岐していく。
    • 今までの作品では、プレイヤーは「ワールドマップ」を自由に移動し、そのマップ内でダンジョン等をある程度自由に選択して戦闘をこなして行くことが可能であった。しかし今作では基本的にプレイヤーに移動の自由は無く、チャプター内でシナリオを進めるために必要な「戦地」と装備やアイテムを整える「街」程度しかいける場所は無い。
    • 一応フリーバトルと呼ばれる、一度だけシナリオとは関係無い場所に入って戦闘をすることが可能な場所も存在するが、それも多くは無い。
      • これに関しては後述する「女神の羽」システムがあるためである。

戦闘システム

  • 前作『ヴァルキリープロファイル2 シルメリア』では、フィールド内を移動する移動モードと□△×○ボタンの組み合わせで敵に攻撃する戦闘パートに分かれているという、簡易的にシミュレーションの要素も含んだ戦闘システムであった。今作はこれを更に発展させた完全なシミュレーションRPGとなっている。
    • まず『ファイナルファンタジータクティクス』のような3次元マップをターン制で動く「シミュレーションパート」と、1作目のようなボタン(DSのためX,Y,B,Aの四つ)の組み合わせで敵を攻撃する「戦闘パート」との二部構成で戦闘が行われる。戦闘開始前に装備やスキルの選択、キャラクターのボタン配置を行い、シミュレーションパートで敵に接近、攻撃を選択してターン制戦闘に移行するという形となっている。
    • シミュレーションパートでは攻撃範囲内の敵への攻撃、AP(アクションポイント、MPのようなもの)を使用した魔法・スキルの発動、アイテムの使用、武器変更、待機を移動の前後に関わらず選択可能。また主人公ウィルフレドのみ、今作を代表する重要なシステムである「女神の羽」を使用することもできる。
    • 戦闘パートではキャラクターの行動終了の有無に関わらず、攻撃範囲内にはいっている敵を同時に捉えていれば攻撃をすることができるミューチュアルアシストと呼ばれるシステムが存在しており、どのような順番でユニットを移動させ攻撃するかも重要な要素となっている。
    • また敵を挟み撃ちにする、三方向から囲む、四方を囲むと有利な特殊効果(決め技ゲージが増加しやすくなったり、攻撃力が上昇する等)が得られる「アクティブフォーメーション」と呼ばれるシステムもあり、敵との位置取りも考える必要がある。
    • 攻撃方法はA・B・X・Yのボタンを押すと、それぞれのキー配置に対応したキャラクターが攻撃を行うという従来と同様の形。戦士系のキャラクターには攻撃技が3種類用意されており、装備武器によって最大3回まで攻撃可能。2のように発動する通常攻撃技は任意に順序を入れ替えることが出来る。魔術師系のキャラクターはあらかじめ設定した魔法で攻撃する。
    • 攻撃を空中ヒットさせると個数に比例して戦闘後の経験値が増える「魔晶石」、ダウン中や気絶中に敵を攻撃すると、攻撃回数が回復する「紫炎石」が得られる。アクティブフォーメーション中なら、紫炎石は「輝炎石」となり、紫炎石より多くの攻撃回数を回復することが可能。コンボを工夫し、空中コンボ、ダウンコンボ、気絶を多く狙うことで、戦闘を有利に進めることができる。
    • 画面左下には、青色のゲージ(決め技ゲージ)が表示されている。このゲージは攻撃を当てる事によってたまっていき、100になると各キャラクターが決め技を発動できるようになる。

女神の羽

  • 今作最大の特徴で物語の鍵となるシステム。
    • シミュレーションパートにてウィルフレドが所有する「女神の羽」を味方キャラクターを指定して使用することで、そのキャラクターの潜在能力を引き出すことが出来る。指定されたキャラは能力値が10倍となり、バランスが崩壊するほどの強力なスキルが発動するなど、戦闘は大幅に有利になる。
      • たとえば「シェリファ」というキャラクターならば、スキルの効果は「敵のリーダー以外を全員マヒ状態にして行動不能にする」というもの。
    • ただし、潜在能力を引き出されたキャラクターは、その戦闘が終了した後必ず死亡し、以降二度と使用することが出来なくなる。
    • なお、「羽」の使用により発動した強力なスキルは、弱体化しウィルフレドに継承される。
    • つまり、仲間を殺害してスキルを継承し主人公を強化する「仲間を生贄に捧げる」システムである。これを繰り返して咎を積み能力を高め、ヴァルキリーへの復讐を果たすことなる。
      • これによって「どのキャラクターを殺害するのか」「どのスキルを継承するか」ということを、プレイヤーは常に意識する必要がある。
    • 上記で解説した「自由な移動」が無いのも、このシステムの特長によるもの。
      • と、いうのも、今作は最初のプレイでは一度は「女神の羽を使用すること」が前提としてバランスが組まれており、各チャプターのボスが異常な強さを誇る。一度の必殺技で確実に味方一人は死亡するほど。そのため自由に戦闘をこなしてレベルをあげて強化できてしまっては、上記のような「仲間の殺害」を悩む必要がなくなってしまうからである。

シナリオ

  • 前作では「パラレルワールド展開」や「前作否定」とも捉えられかねないかなり賛否分かれるシナリオとなっていた。また、仲間である「エインフェリア」達に物語性がまったく無く、「ただいるだけで感情移入できない」という批判があった。
    • 今作の仲間はエインフェリアではなく生きた人間であるが、キャラクター達のドラマが丁寧に描かれており、感情移入ができるようになっている。
    • またエンディングも、上記の女神の羽を使用した回数で3つに分岐する。一度も使用しなければ真のエンディングともいえるAエンディングにたどり着く。

評価点

  • 女神の羽
    • この背徳的ともいえるシステムとシナリオはうまくリンクしている。
    • 今作のゲームの登場人物は上記のようなきちんとしたドラマが描かれ、しっかり肉付けされているキャラクター達ばかりである。そのためプレイヤーとしても羽を使うことへのためらいや罪悪感を感じることとなり、「咎を背負う者」というサブタイトル通りの気持ちをリアルに体感することができる。
      • キャラクターが死ぬ際にはボイスつきのイベントが挿入される演出によって更に胸が痛むようになっている。挙げ句の果てに、女神の羽を使用しすぎるととんでもない事が・・・
  • 戦闘
    • 上記のようにボスなどはかなり強いが、決して理不尽ではなく、戦略さえ練ればきっちりとクリアできる。
    • ミューチュアルアシストシステムで移動の順番や距離がとても重要になっており頭を使う。また一歩の移動ミスが全滅に繋がるため緊張感もある。
    • また今作は戦闘中のアクションも60fpsで表現されており、ドット絵ながらも滑らかに動く。処理落ちもまったくない。
  • シナリオ
    • ここまで読んでくれば分かると思うが、決して明るい話ではなくかなり重い。
    • 国家の理念や陰謀、宗教、神達に翻弄されていく人間達の群像劇が描かれ、仲間になるキャラクターは皆個性的に光っている。
      • 重要なストーリーイベントでは声優によるボイスが入る。このボイスイベントの量はDSながらかなり多く、声優達の熱演によって感情移入度も高まる。ちなみに戦闘もフルボイスである。
    • エンディングもグットエンディングといえるものはほとんど無い。真のエンディングであるAも決して救いのある展開とはいえないが、音楽や演出によって美しいものとなっている。
    • ちなみにシナリオは前作『2』を手がけた人物、エッジワークスも関わっているが、今作の出来の良さから一定の信頼を取り戻したといえるだろう。
    • ただし、基本的に主人公ウィルフレドのヴァルキリーへの逆恨み(たまたま戦で死亡した父の魂を、エインフェリアとして選定しただけ)が復讐動機であるため、この点だけは賛否がある。
      • ただ主人公の生い立ちもそのように思い込む環境であるように演出されており、Aエンディングはその逆恨みという理由ゆえに活きてくるエンディングでももあるため、一概に否定はできない。
  • 音楽
    • シリーズ音楽を担当している桜庭統氏の音楽は、『1』のようなエネルギッシュな曲に戻り評価は高い。
    • 特に通常戦闘「非常線抜刀ストリーム」が人気。
      • 他にも新曲である「暴力権力強制力」「気高き領域」「紫黒の殲弾」など、隠れた名曲は非常に多い。
  • ムービー
    • 数は多くは無いものの、DSでありながら、PS2に匹敵するほどの美麗なムービーが挿入される。OPなどはトライエースの実力の高さを感じることができるものとなっている。
  • ボリューム
    • 1周するだけなら10時間程度だが、すべてのエンディングを見るなら最低3周は必要、エンディングをすべてみると隠しダンジョン「セラフィックゲート」にも挑むことが出来、DSのゲームながらボリュームはかなりのもの。
      • 「セラフィックゲート」は本編の暗さ重さなどお構いなしなネタ満載。進めていくと本編のボスや前作『2』からのゲストなどが登場し、倒すことでパーティに加えることができる。さらに一周クリアするごとに敵の強さだけではなく、敵キャラの名前、さらにはネタイベントなども変化していくなど、周回プレイも苦にならないよう工夫されている。
      • ハムの脅威も健在で、過去作を知る人からはニヤリとする要素も盛りだくさん。
      • ウィルフレドをパーティから外すことができるので、自由にメンバーを組むことができる。
      • ちなみに従来の作品とは違い、今作ではこの隠しダンジョンへの本編のデータ引き継ぎ等はなく完全に一つのモードとして独立している。

問題点

  • 戦闘面
    • 自分の操作できるキャラクターは4人とNPC+αに対して、敵は7体~10体と大量に出現する。しかもどれも強い。
      • このため、普通のシミュレーションでは可能な「キャラクターを配置して壁を作る」「特定のキャラクターを囮にする」などの戦法が通用しない。もちろんその代わりに別の攻略方法があり、ターン式シミュレーションRPGのマンネリを打破していると評価することもできる。
    • キャラクター間の格差
      • 敵の火力は総じて高いため、遠距離から攻撃可能な弓や攻撃範囲が広い槍などを使用できるキャラクターは有利だが、逆に短剣や大剣、片手剣、拳などの範囲の狭いキャラクターはやや使いづらい。
      • ただ、片手剣•短剣•拳キャラは移動範囲が広いため、アクティブフォーメーションを発動させやすいという利点がある。問題は大剣キャラで、攻撃力こそ高いものの移動範囲が狭く連携がとりづらい。
  • マルチシナリオであることを考えれば仕方のない面もあるのだが、章ごとにストーリーに登場するキャラクターは完全に決まっていて前章以前のキャラクターはストーリー上にほとんど出現しない。魅力的なキャラクターが多いだけにちょっともったいない。
  • 連戦の際にセーブが不可能、敵の移動範囲が確認できない、敵ターン時の高速化が出来ないなど地味に不親切な部分がある。
    • 連戦セーブ不可は前半ステージに羽を使ってしまったことによる後半ステージの詰み防止のためと思われる。
  • 本作では高難易度のボスキャラに対して女神の羽がある種の救済措置として働いていると言えるが、この救済措置が(シナリオの都合上)Aエンディングのラストに限り使用不可能。そのため、苦労して一周目で最も難易度の高いAルートに入っても詰んでしまう可能性が高い。
    • 一応クリアできないわけではないが、かなり計算したプレイを要求されるため、やり込みに近い。
    • 女神の羽は1チャプターで2枚以上使うとバットエンディングに直行してしまうという意外と少ない数で許容数となっている。
  • 本編は2周目開始時にレベル以外の要素(習得スキル、装備品、ウィルフレドの咎スキル、お金、アイテムなど)はほとんど引き継がれる。このため序盤~中盤は敵が簡単に死んでいくためやや作業的になりやすい。
    • ただそういった装備品の装備やスキルの使用はプレイヤーの自主性に任されているので、あえて装備を弱くしたり、咎スキルを封印するなど自分で難易度調整ができるとも言えるので賛否両論ともいえる。
  • 音楽
    • 新曲もあるにはあるのだが、基本的に1作目の音楽の使い回しが多い。またDSであるため、どうしてもPS版と比べればチープに聞こえてしまう。
    • ただかなりがんばってアレンジされている。とくに『1』の通常戦闘はDS音源ながらかなりがんばって再現されている。

総評

高い難易度や、初代と違いシミュレーションRPGのようなシステムをとったために人を選ぶ側面は確かにある。しかしそれ補って余りある優れたシナリオやシステムが評価されている。
また音楽やグラフィックもおおむね評価が高い。したがって『2』の出来にがっかりしたファンも多かったが、今作はファンからも一定の評価を得られている。