御剣×冥×糸鋸




ある夜中のこと
“はい、御剣だが”
「どうも、糸鋸ッス。例の件の報告書、あがったんで今から持って来てもいいッスか?」
“例の・・ああそうだな、頼む”
「了解ッス!ていうか、もう検事の執務室の前まで来てるッス」
“な、何だとッ?!刑事キサマ、それでは事前に連絡する意味がないではないか!!”
「むぐ、すみませんッス。でもせっかく持ってきたんで、コレは今置いていくッス」
“ム、ま、待て、今だと?!”
「そッス」
“いや、そのアレだ。あと十分程遅”
「ありゃ、電池ぎれッス」


「失礼しまーす」
脳天気な挨拶と共に、執務室の扉を開ける糸鋸。
「な、もう来たのか?!」
正面のデスクに座っている御剣が、何故かうろたえた様子で、彼を凝視した。
「?どうしたッスか、御剣検事。はい報告書」
「ウム、確かに。・・しかし私は後十分は遅れてこいと言ったはずだが」
「え?なんでッスか?」
「・・・」
「御剣検事?」
「馬鹿が馬鹿らしく馬鹿な事聞いてるわね。ヒゲ」
「え?」
この声は、まさか・・。
糸鋸が恐る恐る振り替えるとそこには・・


「うおぉぉぉ!で、出たッスぅぅ!」
「人を化け物みたいに言うな!」
早速鞭が飛んでくる。
「ぎゃあ!・・うう、狩魔検事、何でここに・・?」
「・・私が何処に居ようと貴様には関係ない」
答えになってないッス。心の中で呟きながら、糸鋸は、来客用にあつらえられたソファーの方へ向き直った。
そこには、彼がこの世でもっとも恐れる少女―狩魔冥が、腕と脚を組ませたまま、居丈高に座っていた。・・のだが。
あれ?狩魔検事・・
糸鋸のいぶかしむ様な視線を感じた冥は、それを避けるかの様にふいと横を向いた。
確かに、今日の彼女の姿はあきらかに異様だった。
真っ先に目に飛び込んできたのは、脚だ。
普段は黒いストッキングで覆われている形の良い脚が、何故か今日は剥きだしのまま組まれている。
その、白磁の陶器を思わせる滑らかな太股の内側には、何やら白いものがこびりついていた。
次に、胸元。普段はリボンやブローチで彩られたそこは、大きくはだけられ、組んだ腕の間からのぞく肌には、赤い鬱血の跡が点々と存在している。
更に、頬はうっすら夕映え色に染まり、こころなしか目もとろりと潤んでいる。
傍らには脱ぎ捨てられた革手袋と、パンティストッキング。
そして・・僅かに残る男女の体液の混じり合った匂い。
ここまで証拠がそろっていれば、いくら糸鋸が鈍い男であったとしても、ここでナニが行われていたのかは一目瞭然、である。
(も、もしかしてコレはいわゆる・・)
気まずい。
とんでもなく気まずい。
御剣も冥も黙ったまま言葉を発しようとしない。
沈黙がかえって耳に痛い。
「じ、じゃあ自分はこの辺で失礼するッス。お疲れ様ッス」
ついに絶え切れなくなり、わざとらしく明るい声でそう言うや否や、そそくさと踵を返してこの場からの逃亡を試みる糸鋸刑事。
であったが、足下を襲った鞭の音に、思わず動きが止まる。
「ひいいっ」
「どこへ行くつもりなのかしら?ヒゲ」
「あ、いえ、もう仕事も終わったことだし、家に帰ってソーメンでも食おうかと」
「帰る?貴方、この私の・・は、恥ずかしい姿を散々見ておいて、ただで帰れると本気で思っているんじゃないでしょうね?」
「べ、別に散々なんて見てないッス!ちらっと一通り・・わああ」
いつの間にか背後に立っていた冥に、むんずと襟首を掴まれ、そのままソファーの上に引き倒される。
「受けた屈辱は必ず返す。それが狩魔の掟」
屈辱も何も元々はこんなトコであんなコトしてる方がいけないんじゃないか。
と、思ってはみたものの、糸鋸がそれを口に出来るはずもなく。
なすがままにソファーの上に倒れた彼の肩を、冥が両手で押さえ付ける。
そして、法廷で勝利を確信した時に見せる様な笑顔を浮かべ、言った。
「痛い方と、恥ずかしい方、どっちがイイかしら?」
「はい?」
「・・答えなさい!」
冥の左手の鞭がぐいっと喉元に押しつけられる。
「ぃ、痛くない方でお願いしまッスぅぅ」
このままでは強制的に「痛い」方にされてしまう。と思った糸鋸は、咄嗟にこう答えた。
「そう・・了解したわ、ヒゲ」
そう言って、肩から手を退けた冥
。その手はそのまま下に降り、彼の股間を捕らえた。
「かかか狩魔検事!ななな何をしてるッスかぁぁ?!」
「何って、貴方が望んだ事じゃない?恥ずかしいのが好きだって」
「そっそんな言い方してないッス!・・うう、御剣検事ぃ」
たまりかねた糸鋸は、先程からこのあり得ない状況を、何故か静観し続けている男に助けを求める。が、
「すまんな、刑事。メイは一度言い出したら聞かないものでな」
と肩をすくめて見せる。
いやだからそういう問題じゃないだろう。と心の中でツッこむ糸鋸。・・どことなく楽し気に見えるのは気のせいだろうか?
などと思っている間に冥の手は、既にジッパーを降ろし、下着の奥から彼のモノを掴み出していた。
「わ、わ・・ちょっと・・」
慌てて身を起こす糸鋸だったが、大事な所を握られたままで、まともな抵抗などできるはずがない。
「ふふ」
彼女は、十代の少女らしからぬ妖艶さで微笑むと、その白く繊細な手を、ゆっくり上下に動かし始めた。
「っく・・」
擦られた部分から、痺れるような快感が伝わって来る。あっと言う間に彼のそれは、熱く立ち上がる。
「もうこんなに固くなっちゃって。フフ、よっぽど溜まっていたのね」
からかう様に冥が笑う。
確かに、こうやって女性に触れてもらうのは久しぶりだし、自分でするより遥かに気持ちいい。
だが、いくら上司とはいえ、十歳以上も年下の娘にいいように弄ばれるのは、男としてあまりにも情けない。
しかし彼のそんな思いとは裏腹に体の方は、中心から絶え間なく与えられる甘い刺激に、ますます熱くなっていく。
「あら、まだイっちゃ駄目。もう少し遊びたいんだから」
先走りの液をまとい付かせた指が、限界まで膨れ上がったモノの先をそっと押さえた。
糸鋸が思わず声を漏らした時―。
視界の隅で御剣が立ち上がるのが見えた。
「なかなか楽しそうだな。さて、私も参加させてもらおうか」
「え・・レイジ?きゃあっ!」
御剣は、中腰のまま糸鋸を愛撫している冥の後ろに立つと、そのミニのタイトスカートをたくし上げ、下着を太股の辺りまで一気に降ろした。
そして、そのまま指を彼女の中心に差し入れ、動かす。
「悪い子だな、メイ。もうこんなに濡れている」
「はぁ、ん・・、違う・・ソコは、さっきレイジが・・ああっ」
くちゅくちゅと淫猥な水音が辺りに響き渡る。
冥が堪らず腰を揺らし始めると、御剣は既に起立している己自身を冥の蜜壷にあてがい―一気に貫いた。
「あはあっ!いぁ・・あん」
「っ・・メイ、手元がお留守になっているぞ。
君が、仕掛けたゲームだ。最後まで、責任を持ち、たまえ」
そんな事を言われても、御剣の責めに、自らの快感を貪るのに精一杯の冥は、糸鋸のそれを握ったまま、どうする事も出来ずにいた。
一方、ギリギリまで追い詰められたまま、放置された糸鋸の精神もまた、限界の極みにあった。
(うう、もう駄目ッス!)
考えるより先に体が動いていた。
なんと、彼は目の前で喘いでいる狩魔冥の頭を押さえ付けると、自らの股間へと押し当てたのだ。
「ふぐっ?!んんっ!」
一瞬、抗議する様な声を挙げた冥だったが、この異常な状況下において、すっかり理性が飛んでいるのか、目の前のそれに舌を這わせ始めた。
愛撫というより、闇雲に舌を動かしているだけであったが、既に限界まで昂っている糸鋸にとっては、充分な刺激となった。
しかも、相手はあの冥で、しかも御剣の前で、である。
考えただけでどうにかなってしまいそうだった。
    • 後のことはともかく。
「んんっ、ふぅっ!・・んっんっ!!」
冥の声がひときわ高くなる。
後ろの御剣の動きも早さを増す。
そして、糸鋸も、
(もう限界ッス!出るッス!!)
「あっ、っあああー!!」
冥がついに糸鋸のぺニスから口を離し、絶頂に声をあげ、その身をのけ反らせると同時に、白く濁った液体が、彼女の美しい顔や髪を汚していた。
「クッ・・」
そして最後に御剣が、冥の中に今晩2回目の欲望を注ぎ込んだ。


それからの記憶ははっきりしない。
ただ、糸鋸は、気がつくと自分のアパートの自分の布団の上で朝を迎えていた。



翌日、
糸鋸刑事は、別件の書類を携えて検事局の廊下を歩いていた。
(はぁ、それにしても、エラい夢見ちまったッス)
思わず溜め息がもれる。
(御剣検事の前で、狩魔検事にあんなことやこんなこと・・。
もし現実だったら今頃、イノチがないッス)
ふと気がつくと、前方から見慣れた赤いスーツ姿が近付いてくる。
(う、よりによって今・・)
「お、おはようございます。御剣検事」
いくら夢の事とはいえ、昨日の今日ではどうもこの人とは顔を合わせづらい。
「・・ウム、おはよう。」
いつも通りの御剣。
当たり前だが、なんとなくホッとした糸鋸に、彼はふいに声をかけた。
「ああ、そうだ。昨晩の事でメイから伝言だ」
昨晩?何の事ッスか?
「“昨日はよくもやってくれたわね。給料査定、覚悟しておきなさい”」
別に、口調まで真似しなくても・・。
でも自分、昨日狩魔検事に会ってないッス。夢以外では。
「“それから、私から特別ボーナスをくれてやるわ。今度は痛い方を、たっぷりとね”」
まるで昨日見た夢みたいな話ッスね、はは・・は・・はい?
「・・御剣検事、あの、なんで自分の昨日見た夢の話しってるッスか?」
「夢?何の話だ?しかし、私もついノってしまったが、昨日のアレは正直どうかと思うぞ
ム、噂をすれば影だな」
御剣が糸鋸の後ろに視線を移す。
「まさか・・」
検事局の廊下に聞き覚えのある靴音が響き渡る。
それは確実に、近付いてくる。自分の背中に向かって、真っ直ぐに。
そして、
なじみのある悪寒を感じ、糸鋸が恐る恐る振り替えるとそこには・・


―END―
最終更新:2006年12月12日 22:33