「メリークリスマース!」
真宵ちゃんがクラッカーをならした。

ここは僕の事務所。
今日はクリスマスなので、春美ちゃん、イトノコさん、御剣、狩魔冥、神乃木さんと
クリスマスパーティーを開くことになった。

「いやあ、自分達まで誘ってくれるなんて、うれしいッス!」
「まあ、今日はクリスマスですから。パーっと盛り上がりましょうよ。
ほらほら、みんな飲んで飲んで!」

真宵ちゃんはもうすでに20歳になっているので、遠慮せずにお酒を飲んでいる。
…もう真宵ちゃんが事務所にきて4年か。早いなあ。

「ほら!なるほどくんも飲みなよ!」
「う、うん。」
僕もグラスにそそがれたお酒を飲んだ。

「神乃木さん、飲まないんですか?」
僕は神乃木さんに問い掛けた。
神乃木さんはコーヒーしか飲んでない。

「俺は酒は飲まない。
生まれてからコーヒー以外のものは飲んだことないからな。」
うそつけ!と心の中でつっこんだ。


「おまえだってペースが遅いぞ。飲むときはガッと飲め。……こんなふうにな!」
ごぶごぶと喉をならしてカップのものを一気に飲み干した。
「ぐぼぉぉぉぉ!」
しかし、なぜかそれを吹き出した。
「誰だ!俺のコーヒーを酒に変えたのはッ!」

…どうやらなかのコーヒーを酒にすり替えられたようだ。
「あ、あたしでーす!」
「……」
真宵ちゃんが答えると、神乃木さんは投げ付けようと構えたカップを戻した。
僕だったら投げてやろうと思ったのだろう。
「今日はパーティーなんだから!神乃木さんもコーヒーばっかり飲んでないで
お酒飲みましょうよ!」
「クッ……」
いつもの『クッ…』を言い、回転する椅子について机に足を乗せた。
僕がいつもクルクル回して楽しんでる椅子も、座る人が変わったら格好よく見える
のか……。


「あ…あの!みつるぎけんじさん!かるまけんじさん!」
「なんだい?お嬢ちゃん。」
春美ちゃんは御剣と狩魔冥に話し掛けた。
「あの…お二人って付き合っているのでしょうか!?」

春美ちゃんの言葉に二人は飲んでいた酒を吹き出した。


「な、なにを言いだすのかしらおじょうちゃん。私はこんな男とは……」
「狩魔検事と御剣検事は検事局でも有名なカップルッスよ!」
イトノコさんが答えた。
…顔が赤く、酔っ払っているようだ。
「こらヒゲ!何を言うの!」
「うほぉ!」
どこからともなく現われたムチでイトノコさんを叩いた。

「へえ!御剣検事と冥さんって、付き合ってたんだね!」
真宵ちゃんが僕に話し掛けてきた。この子も酔っ払っている。
「まあ、御剣も狩魔の家にいたから、付き合いは長いのかな。」
「へぇー。なんか運命の出会いって感じだねえ。」
「ま、そんなところかな。」

 

それから数時間がたった。
もう時計の針は10時をまわった。

 

「あ…はみちゃん、寝ちゃったよ。」
「本当だね。所長室に寝かせてきなよ。」
「はーい。……あれ?御剣検事達だ。」
僕も真宵ちゃんの横で所長室を見る。
確かに二人が居た。


「乾杯。」
二人はワインを持っていた。…僕は買った覚えはないけど。持参品だろうか。

「ふう…。にぎやかなパーティーはいつやっても苦手だわ。」
「きみはパーティーは嫌いだったのか?」
「いえ。でもあの子供みたいな騒ぎが苦手なのよ。」
「……あの春美君、私たちが付き合ってると思っているらしがな。
きみはどう思う?」
「……まあ、あなたがそう思うならそうでいいんじゃない?」
「そうだな。
…お互い、忙しくてもう今年中は会えないだろう。だからいま言っておく。
来年もよろしくな。」
「こちらこそ。」

二人は唇を重ねた。


「……いやあ、お熱いねえ!二人とも。」
「うう…。見ちゃいけないところ見ちゃったかな。」
「あ!何やってるッスか!」

イトノコさんがこちらに向かってきた。
「所長室に、御剣検事と冥さんがいるんですよ。」
「こら!のぞき見なんてダメッス!
というか…自分も見たかったッス!」

言ってることが真逆じゃないか!


それからさらに数時間。今日はみんなを事務所に停めることにした。
時間はもう夜中の二時だ。みんな寝ている。

「さてと…」
僕はある袋を取り出した。

春美ちゃん…
イトノコ刑事…
御剣…
狩魔冥…
神乃木さん…

そして、真宵ちゃん。
みんな、僕の仲間達だ。

お世話になっているお礼として、みんなに内緒でクリスマスプレゼントを買って
あげていた。

「みんな、いつもありがとう…。」


そして、夜が明けた。

「うおおおおお!
朝起きたら素麺が置いてあったッス!
サンタさんからの贈り物ッス!」

イトノコ刑事、この年でサンタさんかよ!と心でつっこむ。

「ふ…サンタさん、か。」
「御剣…いつもありがとうな。」
「…礼を言われるすじあいはない。成歩堂。」

ビシ!
「あいてぇ!」
後ろからムチが飛んできた。
「成歩堂龍一…なぜあなたにプレゼントを貰わなければならないの?」
「べ、べつにいいだろ!たまにはありがたく貰ってくれよ。」
「ふん……。まあいいわ。」


「成歩堂…」
「あ、神乃木さん。」
「ギザギザ頭のサンタは俺にもプレゼントをくれたようだな。…コーヒーの。」
「ははは…」
「じゃあな。成歩堂。」
みんなは帰っていった。


「なるほどくん!」
「あ、真宵ちゃん。」
真宵ちゃんが起きてきた。
「ねえ!起きたらトノサマンの冬セットが頭もとに置いてあったんだ!」
「へえ、サンタさんに感謝しなきゃね。」
「うん!ギザギザ頭のサンタさんにね!」
「えぇ!気付いてたの?」
「まあね。」

さすがの真宵ちゃんももう二十歳だからなあ。

「あ、そういえばなるほどくんにプレゼント買ってなかったんだ。」
「いや、別に僕はいいよ。」
「じゃあ、このトノサマンの冬セットの手袋あげるね。
貰ったものをあげるっていうのもなんだけど、手が冷えて人に指を指せなくなったら
困るしね!」
「真宵ちゃん…ありがとう。」
「お礼を言うのはこっちだよ。ありがとう、なるほどくん!」

真宵ちゃんは時計を見た。ちょうど9時だ。

「あ、そろそろはみちゃんを家に送らないと。」
「ああ、年末は家で過ごすんだっけ。」

「そう。…じゃあ、来年もよろしくね。」
「こちらこそ。」

 

終わり

 

最終更新:2020年06月09日 17:52