ナル(やさぐれ)×マヨ(未亡人)


倉院の里。

二度と来る事がないと思ったこの場所。

 

 

「いいの?私、本当に結婚しちゃうよ!!もう、ここには好きに来れなくなっちゃうよ。」

「なるほど君!!何か言ってよ!!」

ボルハチで表面上、ピアノを弾くようになって3年。
真宵ちゃんはあの事件からずっと。ボクの事を信じてくれていた。
たまに『成歩堂芸能事務所』に顔を出し、みぬきの世話もしてくれた。
真宵ちゃんはボクが法曹界を追われたあの事件については一言も触れなかった。
交わされるのは、いつもどおりの日常のくだらない会話。

みぬきのことで、ボクの心が和んだのは否定できない。でも、真宵ちゃんと一緒にいるときは特別だった。
ひょんなことから出会い、2年間一緒に行動するようになってから、ボクは、真宵ちゃんが特別な存在だと気

がつくのにはそう時間がかからなかった。

でも、今のボクには真宵ちゃんを、幸せにする事ができない。

「真宵ちゃんはその男が好きなのか?」

それすら聞く事もできずに、ただ静かに笑って真宵ちゃんに祝福の言葉をかけた。
真宵ちゃんのいつもの元気な笑顔は消えていたけど・・・。


3年後、春美ちゃんからの手紙で、真宵ちゃんの旦那さんが急死したことを知った。
今更ボクが倉院に行っても何の慰めにもならないと思い、その手紙も無視していた。
しかし、次の晴美ちゃんから来た手紙でボクは倉院に行こうと決意をさせる一文があった。
「真宵様の悲しみを和らげるのはなるほど君しかいません。」

 

 

 


晩秋の夕暮れ。
随分と早くなった夕日が綺麗に倉院の里を染め上げている。
正門をくぐり、かさっ、かさっと落ち葉を踏み分け、本堂に向かう。
本堂入り口そばには・・・間違いない。真宵ちゃんが空を眺めていた。

「なるほど・・・君・・・?何でここに・・・?」

ボクより先に人の気配を察して真宵ちゃんが声をあげる。
3年ぶりの再会。喪服に身を包んだ真宵ちゃんはすっかり大人の色気をおびていた。

「焼香しに来たよ。遅れてごめん。」

「とにかく、上がって。」

促されるままに本堂に入る。
修行が終わり、宿場にみんな行ってしまったせいか、他に人のいない本堂はことさらに広く感じる。


「夫に、なるほど君の話も沢山していたから、来てくれて喜んでいると思うよ。」

初めて見る真宵ちゃんのだんなさん。とても優しそうな人だった。
ボクは遺影の前に花を置き、黙って手を合わせる。
君は真宵ちゃんを幸せにできていたのか。真宵ちゃんの無邪気な笑顔を知っていたのか。

名も知らぬ『彼』の顔を見ているとボクの中に何ともいえない黒い感情がわきあがってくる。

「ねぇ、なるほど君、人間ってこうも簡単に死んじゃうもんなんだね。心不全だったの・・・。やっとなるほ

ど君のこと忘れられると思っていたのに・・・。この人と倉院を作っていこうと思っていたのに・・・。」

沈黙の闇を先に破ったのは真宵ちゃんだった。
目から涙があふれているのが分かる。

ボクはこの男の事を許せなかった。真宵ちゃんにこんな悲しい目に遭わせるなんて。真宵ちゃんを幸せにでき

なかったボク、そしてこの男。
どちらにも腹が立った。

夕日もすっかり暮れ、倉院の綺麗な空気で星がいっそう綺麗に見える。
すっかり暗くなった部屋で見る真宵ちゃんはとても綺麗だった。
薄くさした紅が喪服に映え、わずかに露れる胸元の肌が月に照らされ白磁のように見える。
ボクは不謹慎ながらも大人になった喪服姿の真宵ちゃんを自分のものにしてしまいたくなった。
真宵ちゃんを悲しませた張本人の目の前で性質の悪い意地悪をしたくなった。


「真宵ちゃん・・・。」

ボクは真宵ちゃんを抱きしめた。これから何をされようという想像もできていないのか、真宵ちゃんは全く抵

抗してこないどころか逆にボクを抱き返し、心地よく僕の胸に体重を預けている。何の警戒心も持たない、昔

のままの真宵ちゃんの表情。

真宵ちゃんの胸のふくらみが喪服の上からも分かる。

その喪服に包まれ、艶やかさを放っている外見とはうらはらに、全く無警戒の頼りきったその顔を見ると、ボ

クの中の悪魔がその短い間にどんどん大きくなっていき、抑えられないものになってきていた。

「真宵ちゃん、綺麗になったね。」

額に軽く口づけそのままの姿勢で一気に押し倒す。

「なるほど・・・君・・・?」

先ほどの表情から一転して、不安そうな宙を見上げる目。

「みんな、宿場にいるんだよね。大声出しても無駄だよ。」

「いやだよ!なるほど君!!こんな所で!!遺影の前でなんて!!!」

「ボクは許せない。真宵ちゃんを悲しませたこの男を!だから!!」

「冗談でしょ!?お願い。冗談だって笑ってよ。」

「ふーん。冗談でボクに抱いて欲しいの。流石大人になった真宵ちゃんだね。」

「違う!!」

ボクは口の端を歪めて笑う。
抵抗する両手首を片手で押さえつけ、空いた手で、喪服の胸をはだけさす。


「なるほど君!!こんなの・・・酷いよ!!やめてよ!!」

日焼けのしていない白い胸の中心のピンク色の突起に夢中になって吸い付く。
千尋さんほどではないけど、その胸にはしっかり重みがあり、大人の真宵ちゃんを感じ、ボクの中心は更に固

くなる。

「いや・・・だ・・・!!やめて・・・なるほど・・・君・・・」

抵抗の力は徐々に小さくなり、声は少しずつ吐息混じりになってきている。
その抵抗の声も口で塞ぎ、ボクは真宵ちゃんの口内を犯しだす。
一筋の涙がボクの良心にとって最大の抵抗だったけど、それと同時に手に入れられなかった真宵ちゃんをこう

やって強引にでもモノにできると思うと喜びの感情のほうが先走る。

両手を開放し、喪服の帯を器用に紐解く。
襦袢の下は予想通り、なにも着けていない。

「いい着物なんでしょ?汚しちゃうから・・・。」

「・・・。」

ボクの喪服のジャケットを敷き、裸になった真宵ちゃんを横たえる。

「やっと諦めたんだ。」

「だって・・・。なるほど君に目をつけられたらもう・・・終わりだって知ってるから。」

「終わりだとは酷い言いざまだ。」

真宵ちゃんを組み敷き、わざと遺影の前で、その白い肌に無数の所有の証をつける。

「跡・・・、つけないで。」

「もう暫くは喪服でしょ?見えるところにはつけないから。それとも他にもこういうことする人がいるの?」

わざと意地悪く聞いてみる。

無言で首を横に振る真宵ちゃんを横目に体勢を変え、彼女の両の脚を大きく開かせる。


「いや・・・。恥ずかしい。」

黒い茂みを掻き分け隠された小さなピンク色の突起を軽く吸う。

「ひゃ・・ぁあん・・。」

成熟した真宵ちゃんの躰が小さく跳ねる。
更に指を滑らせ、蜜壷に一本、指を侵入させる。
湿りを帯びたそこはボクを受け入れ、きゅうきゅうと締め付けてくる。
内壁を引っかくように掻き混ぜる。蜜の最奥部からじんわりと温かいものが溢れ出してくる。

「ん・・・ぁあ・・あああああ!!」

真宵ちゃんは声を上げ、びくっと反応する。
「まだ、一本しか挿れていないよ。」
「だって・・・。なるほど君、上手いから・・・。」

顔を上気させながら答える真宵ちゃんが愛おしい。
ボクもジッパーを下ろし、熱を帯びた欲望を握らせる。

「すご・・い。大きい・・・。」

大きな目を更に大きくさせ、真宵ちゃんは恐る恐る握ってきた。

「真宵ちゃん、擦って。」

手馴れた手つきで、カリの部分と裏筋を執拗に攻めてくる。ボクも声を出してしまう。
流石未亡人といったところか。遺影の男が真宵ちゃんにこんなことを教え込んで。こうやって真宵ちゃんを毎

晩乱して。真宵ちゃんの体を蹂躙して。最後に思い出だけを残して先に逝く。

ボクは真宵ちゃんのテクニックを目にして、ふつふつと怒りがこみ上げてくるのを感じた。


充分に潤ったところに、ボクの中心をあてがう。


「挿れるよ。いいね。」

瞳を潤わせながら、こくりと頷いた彼女にボクはゆっくりと腰を押し進めた。
真宵ちゃんの中は熱く、ボクの欲望に吸い付いてくるように絡んでくる。

「・・・ん・・なるほど・・君・・・ぁあ!!」

たまらず真宵ちゃんが嬌声を上げる。
僕の知らなかった真宵ちゃんの大人の声。

「声をもっと聞かせて。」

「はずか・・し・・ぁっ・・ぁああ!!」

はじめは浅く、徐々に深く彼女に入っていく。奥を突く度、がらりとした本堂に真宵ちゃんの可愛い声が響き

渡る。
真宵ちゃんははきゅうきゅうとボクを締め付け、その襞がボクの中心に絡み付いてくる。

「ん・・・」

熱い彼女の中。そして俺は腰をグラインドさせる。

「ん・・はぁ・・ぁあ・・ぁあ・・。」

ボクの腰の動きに合わせ、彼女もいつしかボクの体にしがみ付いていた。
くねくねと彼女も腰を動かし、ボクの動きに合わせる。
ぽたり、ぽたりとボクの汗が真宵ちゃんの顔に落ちる。

「なるほど・・君・・・・・いい・・。」

喘ぎながらも言葉を発せようとする彼女が妙に可愛らしい。
ボクは真宵ちゃんの白く伸びた脚を両の肩に乗せ、更に挿入を深くする。

「ひゃ・・ぁああん・・」

互いに狂ったように腰を打ちつける。

「ぁあ・・あ・・あ・・・」

ひくひくと真宵ちゃんのそこが痙攣する。ボクももう、これ以上持ちそうもない。

「ごめ・・・ん・・・いっちゃう・・・」

「ゃぁ、ぁああああ・・ああああああ!!」

 

ボクは、真宵ちゃんの中に欲望を全て開放させた。


「ごめん・・・。真宵ちゃん。ボク・・・。」

全てが終わった後、ボクは後悔の念に囚われた。
半ば強引に旦那さんを亡くしたばかりの真宵ちゃんを犯してしまったのだから。
もう、今までの関係ではいられない。二度と会うことはない。
今はもういない男に対し、醜い感情を抱き、本能の赴くままに犯ってしまったのだから。

「いいんだ・・・。なるほど君。」

意外な彼女の言葉を信じる事ができずにもう一度聞き返す。

「本当はこうなる事を望んでいたのかもしれない。私、結婚してもずっと心の底になるほど君がいたんだ。」

「いいよ。真宵ちゃん。ボクを慰めなくたって。やっぱり真宵ちゃんって優しいところ、変わっていないね。

「なるほど君だって変わっていないよ。」

「えっ?」

「そりゃ、オッサンになっちゃったけど、よく昔言ったでしょ?本質を見ようねって。」

「あ、はしごと脚立の話。」

「そ。抱かれているときに感じたの。ああ、この人、ずっと私のこと思っていてくれたんだなって。」

にっこりと笑うその顔は美しく成長した今でも一緒にいたときと変わっていない。

「こんなひどいことをした俺だけど許してくれるの?」

「んー。それには罪が重すぎるな。私は今未亡人なのよ!み・ぼ・う・じ・ん!!そんな私を犯した代償は!

!」

「だって・・・。ずっと好きだったから・・・。真宵ちゃんを悲しませた旦那が、そして幸せにできなかった

自分が許せなかったから・・・。

ふわりとボクの唇にまよいちゃんのそれが重なった。


「やっと言ってくれたね。」

「え?」

「3年前に言って欲しかった・・・。あの時止めて欲しかった・・・。」

「ごめん。ボクに真宵ちゃんを幸せにすると言う自信がなかったから・・・。」

「確かに、旦那はいい人だった。幸せだった。結婚した事は後悔していない。」

「・・・。」

「でも・・・後ろを向いていたらいけない。時間は待ってくれないから。」

相変わらず、真宵ちゃんは強い子だ。
お姉さん、お母さんを亡くし、今度は旦那さんを亡くしてもこうやって笑っていられるのだから。

「そう考えるきっかけを与えてくれたのはなるほど君だよ。ありがとう。」

「ありがとうって、犯したボクが言われるのも・・・。」

「ううん。私もずっと好きだったから。なるほど君のこと。」

なんか改まって言われると照れてしまう。

「で、代償はね、たまに倉院に来る事!!」

「え?また来たらボク、また真宵ちゃんのこと犯しちゃうよ・・・。」

「うふふ。鈍いのは変わらないんだから。」

後ろ手に組んで意味ありげに笑う。

「それって・・・。あ、また抱い・・」

「これ以上言わない!!」

頬を思いっきりつねられた。


「今追いかけている事があって、その解決の糸口が掴めたんだ。」

「それって・・・?」

「うん。あの事件だよ。」

「それが解決するまでなかなか来れないと思うけど、終わったらすぐに真宵ちゃんのところに行くから。真宵

ちゃんを迎えにいくから・・・。コブつきだけど。」

「ありがと。私ももう、逃げないから。」

「なるほど君を好きだと言う気持ちから逃げないから。だから・・・待ってるね。」

ボクは小指を差し出す。真宵ちゃんも小指を絡ませる。
子供じみたポーズだけど、ボクは本気だった。

真宵ちゃん、全てが解決した後、真っ先に迎えに行くよ。

照れくさくて言えなかったけど、ボクはこれから真宵ちゃんを支えに6年前の真実を見つけていこうと思う。

最終更新:2020年06月09日 17:50