コインパーキングに停めた車のエンジンをかけたまま、御剣怜侍はややイライラしながら待っていた。

その人を。

そのモノを。

予想したより長い時間のあとで、向こう側の信号を渡る人ごみの中に、御剣は確実にその人を見つけ出す。
思わず両手を握り締め、御剣はエアコンの設定温度を2度下げた。
人ごみを抜けて、その二人はまっすぐ御剣の車に向けて歩いてくる。
キャミソールにホットパンツの狩魔冥は両手に一つずつ、その隣を、真夏もいつもの装束で一つだけの紙袋を提げて、跳ねるように歩いているのが綾里真宵。

二人が車に乗り込んでくると、御剣は眉間にしわを寄せてなるべく気難しい顔を作った。
「暑かっただろう。すまない」
助手席に座った冥は、大きな電器屋の紙袋を二つ、運転席の御剣に押し付けた。
「それに重かったわよ」
よく転ばないものだと思えるような踵の高い華奢なミュールを引っ掛けた素足を組んで、サングラスを外した冥が、さらにエアコンの設定を下げる。
「でも早めに並んでよかったですね、冥さん。整理券もらえなかった人もいっぱいいますよ」
「…バカバカしい。日焼け止めを塗ったのに赤くなったわ」
すらっと伸びた白い腕を撫でて、冥が不機嫌そうに言う。
御剣は今朝早くから、冥に隅々まで日焼け止めクリームを塗るのを手伝わされたが、そんなに焼けたくないなら少し露出を減らせばいいではないか、と言うのは我慢した。

「なにか冷たいものでも飲みたいわ。ね、真宵」
後部座席を振り向いて、冥が真宵に言った。
「そうですね、早く帰って遊びたいけど、でも喉も渇きました。だって4時間近く並びましたもんね」
「ほんっと、バカバカしい」
「…すまん」

今日は、トノサマン限定フィギュア付き新作ゲームの発売日だったのである。

どうしても手に入れたいが、自分で並ぶことに激しい抵抗を感じて悩んでいた御剣は、真宵に相談する。
しかし、あいにくゲームは一人一本しか購入できず、真宵は当然自分のために開店前から並ぶ気満々だった。
がっくりと肩を落とした御剣に、冥が言ったのである。
「じゃあ、真宵と一緒に並んできてあげるわよ」
「君がか?!」
「どうせ休日だし、構わないわよ。限定品なんでしょう、その、おもちゃのついたゲームは」
「そうだが、しかし、いいのか?トノサマンだぞ、ちょっと特殊な客がたくさん並んで買うのだぞ」
自分もその特殊な客の一人であることに気づいていない御剣の鼻先で、冥は人差し指を振った。
「かまわなくてよ。だって、そのゲームで遊びたいのは私ではないのだもの」
外野から見ればそんなことはわからないのだが、狩魔のプライドはそこが大事なのだろう。

ただでさえ学生が夏休みで、トノサマンゲームを求めて朝早くから行列を作る、と言う真宵のアドバイスで、冥は早起きして御剣に車を出させ、真宵を迎えに行って大型電気店前に並び、見事ゲーム本体と限定版のソフトを購入してきたのである。
車から降りると、真夏のむっとした空気が三人を包む。
冷房のきいたカフェに駆け込んで、御剣が車に残してきたトノサマンを気にしながらアイスコーヒーと、アイスティーとフルーツパフェを二つずつ注文した。
「…でね、整理券があたしたちのちょっと後ろでなくなって。電車で来て駅から走ってきたっていう人が汗だくで、整理券もなくて、かわいそうでしたねー」
パクパクとパフェをほおばりながら、真宵が嬉しそうに報告した。
「君たちは、よく整理券がもらえたのだな」
「まあね、トノサマンにかける情熱の勝利だよ!」
「狩魔は完璧なのよ。買いに行って買えないなんてありえないわ」
パフェのフルーツだけを選んで食べていた冥がふんと鼻で笑った。
「うむ、その、アレだ、真宵くんも早く帰ってプレイしたいのではないか?」
「そうですねー、あ、それ御剣検事の本音ですね?」
真宵が笑って、御剣は咳払いをした。
「私たちはまだこれから予定があるのよ。そうだったわね、怜侍?」
「…う、うむ」


カフェを出て、御剣は真宵を送るために車を出した。
そわそわしだした真宵が、後部座席で膝の上の紙袋を何度も覗き込む。
すでにゲーム機を持っている真宵はゲームソフトだけを買ったので荷物は少ない。
助手席では、冥が完璧な美脚を組んで座席を倒している。
そわそわと袋を覗き込みたい気持ちは、御剣も同じである。
御剣としてはまず、ゲームでトノサマンとアクダイカーンを戦わせる前にゲーム機の設置もしなければならない。

真宵を事務所に送り届けた後で、そんな御剣にはお構いなしで冥が脚を組み替えた。
「さ、約束を守ってちょうだい」
後部座席の紙袋に未練ありげな視線を送って、御剣は予定どおりブランドの路面店に車をつけた。
パーキングに回してくる間に、冥はすでにバッグと靴を数点ずつ並べさせて、手に持ったり鏡に映してみたりしている。
面積の少ない服地から惜しみなく伸びた手足に、編みカゴのバッグを持ち、お揃いのサンダルを履いている。
トノサマンゲームを買いに並ぶ変わりに、冥の好きなショップでなにか買ってやるという約束なのだった。
以前も何かねだられて店に連れて行かれたことがあるが、こんな布地の少ない洋服がなせこんな値段がするのかと驚いたものだ。

「でも、あなたは電器屋の前に並ぶことはできないけど、カードを出してサインすることはできるでしょう?」
…狩魔のロジックは、完璧だった。

夏らしいバッグも気になるようだったが、細いベルトの間から幅の狭い甲やピンク色の小さな爪がのぞくサンダルも似合う。
年頃の女の子らしく、あれこれと迷っている様子は、とても検事局の天才検事には見えない。
ついつい、御剣は冥に言ってしまった。
「両方、いいのではないか」
ぱっと冥が振り向いた。
「いいの?」
今日一番の笑顔で言われて、御剣は催眠術にかかったかのように店員にカードを渡し、サインをしていた。

マンションに帰るなりゲーム機の設置を始めた御剣のまわりを、新しいサンダルを履いて冥が歩いている。
「その赤いコードが逆ではないの?あなた、本当に機械オンチなのね」
説明書を見ながら四苦八苦している御剣の背中越しに、ひょいと冥がコードを引き抜いた。
「こんなもの、苦労してつなぐようなものなの?」
「…それなら、君がやればいいではないかっ」
思わずそう言うと、冥は御剣の背中に腰掛け、フローリングに座り込んでいた御剣は前のめりに潰れる。
「バカはバカなくせにバカな逆ギレをするものよ。本体の電源を入れなきゃ動くわけないじゃない」
「……む」
背中に冥の尻を乗せたまま手を伸ばして、本体のACアダプターをコンセントに差し込む。
「冥、そのままそこにいるつもりだろうか…」
「あら、私が重いと言うつもり?」
「いや、重いというか、軽くはないが」
「失礼ねっ」
どんなに軽くても、人間一人分の重みはそれなりにある。
ぺしっと御剣の頭を叩いて冥が立ち上がる。
よほど嬉しいのか、部屋の中でも新しいサンダルを脱ごうとしない。
一応、床を傷つけないようにと気を使っているのか、ラグの上を選ぶように歩いて御剣の隣にぺたんと脚を開いて座り込んだ。
特典のフィギュアを押しのけて、ソフトのパッケージを開けた御剣の手元を覗き込み、説明書の表紙に描かれているトノサマンのイラストを見る。
「面白いの、それ」
「うむ。前評判は高い」
「どんなゲーム?」
聞いておいて、御剣の説明には耳を傾けようとはせずに、冥はコントローラーを適当に操作してゲームをスタートさせてしまった。
「う、いや、冥、すまんが私にやらせてくれないだろうか」
慌てる御剣にコントローラーを渡して、冥はくすくすと笑った。


「ほんっとに好きなのね。検事局の人間が見たら、評価が下がるわよ」
「…うむ」
「あ、トノサマンが出てきたわ。向こうにいるのは誰?」
「…うむ」
「なんか言われてるわよ。どうするの?」
「…う、む」
「危ない!もっと早く逃げなきゃ。あっ、ほらっ」
「…む」
「もう、ヘタクソね。ほんとにトノサマン好きなの?」
「……」
「私とどっちが好きなの」
「……」
「……」
「……」
冥が、コードを引き抜いた。
「うおぉぉっ?!なにをするのだ、冥!!」
真っ暗になったテレビ画面から、ようやく冥に顔を向けて、御剣が叫んだ。
「だって」
冥が不機嫌そうに膝を抱えた。
「つまらないんだもの。あなたは返事もしないし、私を見もしないし」
御剣は深くため息をついて、コントローラーを置いた。
ゲームにもトノサマンにも興味のない人間の前で、新作ゲームに何時間も熱中できるわけがないのだ。
ようやく手に入れたソフトならなおのこと、帰宅するなり夜通しプレイしたいなどと言ったら、鞭が空を切るだろう。

御剣はつま先にサンダルを引っ掛けてブラブラさせながら拗ねた冥に身体を向けた。
「悪かった、すまない。つい、夢中になった」
「…別に。楽しみにしていたんだから、いいけど」
「でも、君は退屈なのだろう?」
冥が手のひらで御剣の顔を叩いた。
「違うわよ。あなたがあんまりオタクなのを見て、びっくりしてるのよ」
「…ゲームをやるくらいでオタクはないだろう。私も普段はやらない」
「普段はやらないくせに、トノサマンだというだけで本体ごと並んで買ってくるのがオタクだっていうのよ」
冥が今度はつま先から落ちたサンダルを拾って、御剣の頭を叩く。
「む、蹴ることはないだろう」
「蹴ったんじゃないわ、叩いたのよ」
「靴を手に持って叩くのは、蹴ったようなものだろう」
「靴で蹴られたい趣味でもあるわけ?昨日の被告人がそういう趣味だったわよ、駅のホームを全裸で走ったの」
「……このところ暑かったからな」
「そういう問題じゃないわよ。その前にも女子高の寮に忍び込もうとしたらしくて、自宅からは大量に女性の靴が見つかって」
話題がそれてきている。
「夏は性犯罪が増える。君もあまりそんな格好でうろうろしてたら危ないぞ」
冥の気がそれたところで、そろそろとコントローラーに手を伸ばす。
「あら、どうしてかしら」
「腕も脚も出しすぎだろう。胸元も開きすぎだ」
冥がきょとんとして自分の服装を見下ろしている隙に、引き抜かれたコードを差し込む。
「そうかしら。たいしたことはないと思うわ」
完璧なラインの脚がすっと御剣の視界を横切った。
今度こそ、冥はサンダルのヒールで御剣が手に持ったコントローラーを蹴った。
ホットパンツの隙間から、ちらっと下着のレースが見える。
「む、なにをする」
「ほら、腕や脚ぐらいいくら出したって、あなたにはトノサマンの方がずっと大事なんだもの」
仕方なく、御剣はトノサマンをあきらめて、膝の上にある冥の足首をつかんでサンダルを脱がせた。


本当に歩けるのだろうかと思うほど華奢な足首だった。
サンダルを置いて、片手でふくらはぎを撫でる。
ほどよく筋肉と脂肪のついた、非の打ち所のない脚。
膝から太もも。
脚の付け根に近いところまで、まったく布に覆われず邪魔のない脚を、何度も撫でる。
冥がくすぐったそうに身をよじった。
「ちょっと、やめ、きゃっ」
なめらかな肌に触れているうちに、その気になってきた。
御剣は自分を蹴り上げようとしていた自由な方の脚をつかむと、そこに唇を押し付けた。
バランスを崩して倒れそうになった冥が、御剣にしがみつく。
「…なにやってるのよ、このオタク」
「なるほど、脚フェチといわれる人間の気持ちがわからないでもない」
ぱっと顔を赤くした冥が片手で御剣にしがみついたまま、片手で背中を叩いた。
「バカ、本物のオタクになるわよっ」
「いろいろあるのだそうだ。足首フェチ、ふくらはぎフェチ、太ももフェチ」
「バカバカバカ!!」
「だから気をつけろと言っただろう?夏は性犯罪が増える」
脚を引っ張られてラグの上に倒され、冥はそれでもまだ抵抗した。
「オタクは犯罪じゃないけど、強姦は犯罪よ。逮捕して起訴するからっ」
太ももを撫で上げて、キャミソールの裾から手を入れる。
「これはまだ強姦ではない、わいせつだ」
脇腹と背中に手を滑り込ませる。
「わいせつだって起訴するわよ!ちょ、んっ」
一度倒された冥が身体を起こしたところを、迎えるようにキスをした。
冥が驚いて反射的に身体をそらして、御剣が背中に回した手に支えられる。
「危ないではないか」
「…バカっ」
両脚を膝に乗せたまま、御剣は冥を二つにたたむようにして背中を引き寄せた。
「しかもノーブラだな」
「こ、この、性犯罪者っ!」
「心配するな。弁護士なら当てがある」
むき出しの鎖骨に口付けると、冥が御剣を押し返した。
「ね、ほんとに、ほんとにいや…」
御剣は手を止めて冥の顔を覗き込んだ。
「どうした?」
冥が脚を折って床に座り込み、乱れたキャミソールの裾を引っ張った。
テレビではメニュー画面でトノサマンが歩き回っている。
「だって、今日は暑かったし。外でずっと並んでたし」
両手で自分の二の腕を抱くようにして目をそらす冥を、御剣はもう一度ラグの上に押し倒した。
「そのままがいいというフェチもある」
「…バ、バカ!」
キャミソールをたくし上げて二つのふくらみの間に顔を押し付けると、いつもよりかすかに濃く薫る。
女心としては、汗をかいた後のまま、というのは抵抗があるのだろう。
しかし、いつもは神経質にシャワーを使った後でしか触れさせてもらえないだけに、御剣は余計に征服欲にかられた。
「こんな薄い服一枚で、何時間も列に並んだのか。回りは男ばかりだっただろう」
頭から引き抜くと、キャミソールは驚くほど小さなかたまりになった。
柔らかさと弾力に富んだ盛り上がりを手の中に収めて、その先端に舌先を当てる。
「いやだって言ってるでしょうっ」」
外から帰ったままリビングのラグの上に押し倒されて服を脱がされる、という状況に、冥があきらめの悪い抵抗を見せた。
「だが、それもまたいい」
「この、変態っ!」
「君がそんな格好をしているから悪いのだ」
言いながら、ホットパンツを下着ごと引き下げる。
「変態だのオタクだのフェチだのと、うるさいことを言うのはこの口か?」
「んっ」
着ているものが少ないだけに簡単に裸にされて、冥は御剣の口づけを受けた。
唇を固く引き結んでも、唇をゆっくり舐め回される。
空気を求めて開いたとたんに、進入を許してしまった。
「んふ、んっ」


舌を絡め取られ、その間も休みなく胸を揉みしだかれ、乳首が転がされる。
片手は脇腹を滑り降りて腰を撫でている。
「あ、ん…」
御剣が唇を離すと、冥が吐息を漏らした。
なかなか肝心なところへ届かない愛撫に、もどかしげに脚をすり合わせている。
「オタクでフェチの変態にキスされて、そんなに嬉しいのか?」
冥が下から御剣を睨む。
「フェチはあなたが言っただけで、私は言ってないわよ」
御剣はちょっと笑った。
わざと論点をそらして言い返している。
冥も本気で抵抗し続ける気はないようだ。
「うむ。起訴状にはそう書いてくれていい」
「んっ!」
お尻側から回した手がそこに達し、指が秘所を開く。
ベッドでもないところでこんな風にされることで、冥もどうしていいかわからず両手で顔を隠した。
指で優しくなぞると、かすかに湿っている。
御剣は足元に回りこんで、片手で両脚をまとめて上げさせた。
「丸見えだな」
「や、この…」
「変態、か?」
ベッドサイドのぼんやりとしたランプではなく、昼間の明るさの中でその場所をじっくりと眺め、舌を這わせる。
「あん!」
洗っていないことや明るい場所で見られていることが心理状態にどういう違いをもたらすのか、冥の反応がいつもより敏感だった。
御剣はわざとじゅぶじゅぶと音を立てながら、舐めたり吸い上げたりする。
「んあ、っ!」
小さな突起に吸い付くと、冥が腰を跳ね上げた。
周囲から回すように舐めたり、先端に向かって尖らせるように舌を使ったりしながら時々吸うと、どんどん愛液が溢れてきた。
「やあっ、あ、だめっ」
泉に指を入れて壁をなぞると、ヒダの部分が熱い。
顔を上げて見ると、乳首がつんと立っていた。
指で中をなぞりながら、その乳首を唇ではさむ。
「ん、あ、うん…っ、ああん」
ラグの上で冥が身をよじった。
御剣は手早く自分も服を脱ぎ、冥の足首をつかんで大きく広げた。
「やあん、あっ!」
すでに固くそそりたったものを押し当てて、何度かすべらせる。
「いつもより濡れてないか?」
煽るように御剣が言うと、冥が首を振った。
「バカ、もうっ…あっ」
ぐっと押し付けると声が上がる。
御剣としても、もう焦らす余裕はなくなってきた。
ラグの上とはいえ、フローリングの固さが伝わってくるのか、冥が両手を伸ばしてくる。
その手をつかんで身体を起こさせ、腰を支えて胡坐をかいた自分の上にゆっくりおろした。
「あんっ…」
苦しそうな声を漏らして、冥は御剣にしがみつく。
「や、こんなの、無理…」
言いながら、自分の中に御剣を飲み込んでいく。
「入ったではないか」
冥の背中を撫でてやると、しがみついたまま軽く御剣の肩を甘噛みした。
「…信じられない」
「入ったことがか?…痛いではないか」
強く歯を立てられて、御剣が顔をしかめた。
「こんなふうに、…することがよ」
肩に痕がつく前に、冥を引き離す。
「そうか。私は、新鮮でいいと思うが」
「なにがよ、バ…」
全部言う前に、御剣が下から突き上げた。


「きゃ、あんっ!」
近くのクッションを引き寄せてその上に冥を倒し、脚を抱えるようにして御剣は腰を打ち込んだ。
クッションのおかげで床の固さは解消されたが、厚みでのけぞるような形になり、腰を持ち上げられたまま揺さぶられて冥は声を抑えることもできなくなった。
「あん、やっ、あっ、ちょっ、そんな、あっ」
御剣のものが出入りするたびにぐちょぐちょと音が立ち、それが聞こえる恥ずかしさに耳をふさぐ。
「う、いい…、締まるぞ」
白濁したような汁が流れ出てくる。
いつもと違うシチュエーションに、御剣も背筋を上がってくるような快感が早く訪れる。
しかし、先にイクわけにはいかない。
御剣は冥の弱い場所を狙うように突いた。
「あっ、あ、ああん!」
冥の背中がいっそう反り返り、脚が突っ張る。
奥まで激しく突き上げると、そのままびくびくっと痙攣した。
かまわず御剣は自分のフィニッシュのために動く。
「…んあっ、や、もうっ」
イった後で激しくされて、冥が泣きそうになる。
「すまん、もう少し…く、うっ」
場所がリビングのせいで避妊具の用意がなく、駆け上がってくる限界で引き抜く。
冥の腹と胸に飛んだ。
「…すまん」
ティッシュを引き寄せてぬぐう。
クッションからずり落ちた冥が、息をついた。
「もう、ほんっとに、信じられない…。なにやってるのよ、もう」
「上の口はそう言っても、下の口はひくひくしてるが」
ぱっと首筋まで赤面した冥が脚を閉じ、身体に引き寄せるように丸くなった。
「バ、バカバカバカ!!なにほんとに変態なこと言ってるのよ!」
着ていたものが少なすぎてどこに行ったのか見当たらず、冥は敷いていたクッションを抱き寄せて身体を隠した。
「うむ。今のは、確かに変態だった」
「へ、変態と暴行で起訴だからっ」
「変態は罪ではないし、今のは合意だろう?」
「知らないわよっ」
ぷいっと顔を背けた冥の横顔に、思わず笑みがこみ上げる。
御剣は手早く服をかき集め、冥の腕を取って立ち上がらせた。
「脚が立つか?シャワーを浴びてこよう。それから」
よろめいて抱きとめられた冥が、スリープ画面になったテレビを見た。
「ゲームでしょ。…もう邪魔しないから、やりなさいよ」
御剣は背をかがめて、冥にそっとキスした。
「うむ。満足したら寛容ではないか」
「…バカっ」
真っ赤になった冥に脇をつねりあげられて、御剣が笑って逃げた。

フェチと変態を満喫した後は、オタクを楽しむことができそうだ。
冥のためのコントローラーをもう一つ買うには、並ばなくてもいいだろうか。

最終更新:2020年06月09日 17:21