■ 空の色 ■


春の陽射しが優しい3月下旬のある日曜日。

ほんの僅かに開いた窓から流れ込む、
まだ少し冷たい風を頬に受けながら、
真宵は長閑な倉院の山里の風景を眺めていた。

「あたし、とうとう…」

ポツリ、呟く。

いつも見慣れているはずの風景が、少し違って見える気がする。

自分だけの秘密を持った甘酸っぱさ。
大人の女になったという誇らしさ。
いけないことをしちゃったという背徳感。
…もう子供には戻れないという少しの寂しさ。
そして、大好きな人と結ばれたという嬉しさ。

なんとも形容しがたい感情を真宵は感じていた。


夢か現かすら分からない昨日の出来事を、ぼんやり思い出す。

真宵は少女時代と決別したのであった。

****************************************

「なるほど君!」

突然耳元で炸裂した元気の良い声に、思わず成歩堂は飛び起きた。

「わぁ…ッ!! なんだ…ま…真宵ちゃんか…」

「"なんだ…"じゃないよッ!」

「ううッ。ごめん。ポカポカ暖かくて、つい眠くなっちゃって」
そう言い終わるが早いか、再び机に突っ伏す成歩堂。

「まったく、しょうがないなぁ」

溜め息を吐きつつ、クスッと笑う。
どれどれ。ちょいと悪戯してやろうか。

ペン立てから筆ペンを取ると、寝息を立てている成歩堂の顔を覗き込む。
成歩堂はちょうど良い具合に顔を横に向け、スヤスヤと寝息を立てている。
── その寝顔は、思いのほかあどけなかった。

まぁまぁ、呑気な寝顔しちゃって。
27歳の男の人とは思えないねぇ。

起こさないように、そっと髪を撫でる。
法廷に立つと別人のようなのにね。

考えてみると、この2週間ほど、
年度末特有の忙しさで、成歩堂はろくに寝ていないのだった。
筆ペンをそっと元に戻すと、休憩室から持って来た膝掛けを肩に掛ける。

「表の掃除、してくるね。」

そう呟くと、真宵は掃除道具を持って階段を降りて行くのであった。

日が当たる場所は暖かいけれど、それでも外はまだまだ肌寒かった。
春風に運ばれた桃や沈丁花の花びらが
成歩堂法律事務所の入り口に絨毯を作っている。

春は街中が淡いピンクっぽくなるなぁ。
それに…なんだかふんわり良い香り。
寒い冬を終え、生命の息吹の季節の始まり。
真宵はこの季節が大好きだった。

一面に散らばった花びらを箒で集め、
プランターに植えたチューリップに水をあげる。

「もうすぐ咲きそうだね。」
不意に頭上から声が降りかかった。
逆光で見えないが、その声と独特のシルエットから、主は明確だった。

「─ なるほど君」
思わず笑みがこぼれる真宵。

その笑顔が、成歩堂には眩しかった。

大人に、なったな。

3年前、出会った頃はまだ幼さすら残る17歳だった彼女。
だが、少女はいつの間にか女性へと成長し、
最近はふとした仕草に27歳で逝ったお姉さんの面影を見るようになった。

だが、そうは言ってもまだ10代。
色気より食い気なのは相変わらず。

「なるほど君、お昼はみそラーメン食べに行こうよッ!」

「良いよ。…あ」

「どうしたの?」

「…今日、午後から留置所に行くよ。」

「─ あやめさん?」

「ん。」
そう短く返事をする。
一瞬、真宵の表情が曇った事に、成歩堂が気付いたかどうか。

「そっか。それなら来週で良いやッ」
努めて明るく言ったつもりが、少し涙が出そうになった。
油断すると溢れそうになる涙を、グっと飲み込んだ。

─── 午後。

成歩堂は30分ほど前に留置所へ向かい、
真宵は電話番をすると言い訳して誰もいない事務所へ残った。

冷蔵庫のモーター音と、外の通りの喧騒。
それがどこか別の世界に思える静寂。

さっきまで成歩堂が突っ伏していた机に、同じように突っ伏す。
残された温もりを探すように。

あの葉桜院での事件から一ヶ月。
なるほど君が学生時代の恋人と再会して…一ヶ月。

今頃、どんな会話をしているんだろう。
きっと、ヨリを戻すんだろうな。
あやめさんは綺麗で優しい大人の女性だもん。

「早く大人になりたいな…」

飲み込んだ涙が、今度こそ溢れ出た。

こんな時、お姉ちゃんだったらどうするんだろう。
お姉ちゃんも一人でこっそり泣いた事があったのかな。
…お姉ちゃんに恋愛相談するの…ちょっと憧れだったんだけどな。

「お姉ちゃ…ん」

あたし、失恋しちゃうのかな。
なるほど君の顔、見るのが怖いよ…。
嬉しそうに「もう一度、付き合う事になったんだ」って言われたら…
あたし、笑って「おめでとう」を言える自信がないよ。
あたし、こんなに臆病でうじうじしてたっけ。
強くなろうって決めたのはつい先日のことなのに。

「情けないなぁ…あたし。」

── 気が付くと、既に日はだいぶ傾き、
事務所は窓から差し込む夕焼け色に染まっていた。

どうやらあのまま泣き疲れて眠ってしまったらしかった。

机に肘を付き、両手で顔を覆う。
ふっと短く息を吐くと、窓辺に立って夕焼けを眺める。

と、不意に背後に人の気配を感じ、慌てて振り向く。

ちょうど机の影に隠れた死角で、成歩堂がソファに寝転んでいた。
スーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩め、スースーと寝息を立てている。

音を立てぬよう、そっと忍び寄り、そして跪いた

なるほど君。
あたし、自分で思ってたよりもずっと意気地なしだったみたい。
なるほど君が他の人と結ばれるなんて、考えたくないよ。
好きな人の幸せを願えないなんて、恥ずかしいね。

だから、ごめん。
最初で最後だから──。

そっと、唇を重ねた。

机に書置きを残し、真宵は倉院の里に帰って行った。


駅までの途中、公園で真宵は一人、ベンチに腰掛け物思いに耽っていた。
頭上の桜は蕾が綻び始めている。
夕焼けを見ながら花見というのもなかなか良いかもね。

── もうこの風景を見る事もないけどさ。

自嘲気味に呟いた、その時。

「真宵ちゃん…!」
突然名前を叫ばれ、驚いて振り向いた。
目を真ん丸くしている真宵の視線の先で、成歩堂が大きく肩で息を切らせていた。

「何?これ…」
腰を折り曲げて肩を上下させながら、右手に握り締めた紙を突き付ける。

「あ…」
それは事務所を出る時に真宵が残した書置きだった。

「えっと…あ、そうだ!ほら、修行!!修行しなきゃ!!」
考えられる限り、一番真宵らしい言い訳。

「お母さん…死んじゃったし。家元の修行しなきゃだから!」
しかし、そう言う真宵の目は明らかに泳いでいる。

おいおい。
目がクロールしてるぞ…。

もちろんそれを嘘吐きのプロ…もとい、嘘を暴くプロの成歩堂が見逃す訳がなかった。
「なんで急に?そんな事、今まで一言も言ってなかったじゃないか。」

「う…ん。そうなんだけど。そろそろ修行、本腰入れなきゃ。」


漸く息を整えた成歩堂が真宵の隣に腰掛ける。

「あ、そういえばあやめさん、どうだった?」

「…」

一瞬の間。

「元気だったよ。」

その一呼吸が全てを物語っている気が、真宵にはしていた。

「そっか、良かった。」

自分を納得させるかのように二度頷く。
鼻の奥がツンとした。
涙を悟られないように、慌てて真宵は立ち上がった。

「もう行かなきゃ!終電が無くなっちゃう!」

── 終電って、まだ17時だろ。
成歩堂、心の突っ込み。

「真宵ちゃん…!」
既に歩き出していた背中に呼び掛ける。

夕焼けの中で、その小さな背中がビクッと震え、立ち止まった。
そのまま少し俯いた真宵の両手は、装束を強く握り締めていた。

そして、意を決したように振り返った真宵の頬には、
涙が一筋軌跡を描いていた。

「な…なるほど君。最後に一つ、お願いがあるの…ッ」
その手は強く握り締め過ぎて白くなっている。
そして小刻みに震えているのが成歩堂にも見て取れた。

「お願い?」

「あのッこんな事お願いするの、凄く図々しいって分かってるんだけどッ」
「あたしッ、前から決めてた事があってッ!!」

一気に捲くし立てる真宵。
だが、その後の肝心な『お願い』を言いあぐねているようだった。

「僕に出来る事なら何でも言ってよ。」
そう優しく促す。

ギュッと目を瞑ったまま、真宵が歩み寄って来た。

真宵ちゃん、目を瞑って歩くのはなかなか危険だよ…って、「わぁッ!!」

成歩堂が手を差し伸べるより一瞬早く、真宵は躓いてコケた。

「大丈夫かッ!?」

慌てて駆け寄り手を差し出す。
そして成歩堂は、その手を握り返した真宵の口から耳を疑う言葉を聞いたのだった。

「── 抱いて。」

「…え?」

「なるほど君、あたしを抱いて欲しいの。」

「え?抱くって?えーっと、その。あれ?え?」

「お願い、何も聞かないで。」

懇願する真宵の瞳は濡れていた。
夕焼けに照らされた真宵の顔は、今まで見た事がない位大人の女を感じさせた。

握った手をクイッと引き寄せ、成歩堂の耳元まで顔を近づけた真宵は
吐息混じりの掠れた声で囁く。

── オトナに、して。






ワンルームのアパートの一室に成歩堂と真宵はいた。

公園でしがみついたまま、声もなく泣く真宵の扱いに困り果て、
自宅に連れ帰ったのだった。

重い沈黙。

耐えかねて口火を切ったのは成歩堂だった。
「あ…あの、真宵ちゃんやっぱりこういう事は」

と、ほぼ同時にすくっと真宵が立ち上がった。


「── シャワー、借りるね。」

以前、皆で食事をして夜遅くなった時に何度かここに泊めた事があった。
もっとも、その時は春美も一緒だったが。

二人きり、は初めてである。

微かに聞こえるシャワーの水音が、
これが夢でなく現実である事を教えてくれる。

── 今日の彼女は一体どうしてしまったのだろう。
いつもの天真爛漫な彼女とは全くの別人のようだ。
高鳴る鼓動が貧乏揺すりになって表れる。

カチャッ

バスルームの扉が開く音。
成歩堂は音源を正視出来ずにいた。

「─なるほど君…」

「あ、真宵ちゃ…」

思わず腰を浮かせかけた成歩堂は、心臓が大きく跳ね上がるのを感じた。

濃いブルーのバスタオルに包まれた真宵の肌は恐ろしいほど白く、
カーテンの隙間から入り込む僅かな明かりに照らされて、暗闇に浮かび上がっている。

目を見張る成歩堂の前で、真宵は自身を包んでいたバスタオルをはらりと落とした。

生まれたままの姿になった真宵は、目を逸らすように顔を背けると、
ほとんど干される事のない万年床に潜り込んだ。

成歩堂は困惑していた。
出会ってから3年が過ぎようとしているが、こんなに頑なな真宵は初めてだった。
今の真宵にどう接すれば良いのか、自分の少ない女性遍歴では見当が付かない。

だが、19歳の女の子がここまでするには、余程の決意と覚悟が必要な事は理解出来た。
「真宵ちゃん…。そっち、行っても良いかな…。」

布団の中から僅かに覗く頭が小さく頷いた。
成歩堂は布団の傍に座り、胡坐を組んだ。

「…何が真宵ちゃんにこんな事をさせてるのか分からないけど」
「もし19歳でそのような経験が無いのを気にしてるのなら、それは気にする必要ないんだよ。」

背中を向けたまま、真宵は大きく頭を横に振る。

「こういうのは、本当に好きな人と──」

鈍感にも程がある。
真宵は思った。

「──ッ!!」

次の瞬間、布団から上半身を伸ばした真宵は、
分からず屋の成歩堂の唇を塞いで言葉を止めた。

「なるほど君。私、魅力ないかな…?」
長い黒髪に白い乳房を隠した真宵の姿に、成歩堂は軽い眩暈を感じていた。

── これが、あの真宵ちゃんなのか…?
のどがカラカラになり、思わず生唾を飲み込む。

「キス、して。」

師匠の妹だから。助手だから。7歳も年下だから。
これまで無意識のうちにそのような対象から外していたのかもしれない。
でも、本心は…。

真宵の黒目がちの大きな瞳を見つめるうちに、胸がいっぱいになる。

「なるほど君…!」

その泣きそうな声を聞いた瞬間、真宵の唇を奪っていた。

そこは瑞々しく潤い、そして柔らかかった。
息継ぎの為に一度離れるが、ほんの僅かなその数秒が惜しい。

再び唇を合わせ、小さな隙間から舌を忍ばせる。
白く可愛らしい歯をなぞり、舌を吸い、絡める。

詰めていた息をほぅ…っと吐き出す。
長い黒髪が、真宵の肌の白さを際立たせていた。
濡れた瞳、僅かに開かれた赤い唇、上気した頬。
そのどれもが酷く艶めかしい。

この少女は、、自分のその姿が男を誘っている事を自覚しているのだろうか。

ネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外し、そして彼女を押し倒した。
そっと、まだ芯に硬さの残る乳房を優しく揉み解す。

そして、耳から首筋、鎖骨へとキスの雨を降らせていく。

雨はやがて、二つの山へ ──。

「……んっ!」
不意に山の頂に甘い痺れが走り、思わず身悶えする真宵。
成歩堂が小さな乳首を口に含み、甘噛みしたのだった。
突起の起立を促すように吸い、舌で転がす。
淡いピンクのその突起が可愛らしく自己主張を始めた。

滑らかラインに沿って、手を下ろしていく。
細い腰からヒップ、そして太腿。
熱を帯びているであろう中心部を避けるように内腿を撫でる。
その度に腰をくねらす真宵の呼吸が次第に荒くなっていく。

「な…なるほど君…」
顔を上げると、切なそうな瞳で真宵が見つめていた。
その瞳から目を逸らさず、膝を抱えて大きく開かせると、秘所へ指を滑らせた。

真宵は一瞬驚いたように目を丸くし、一際高い声を響かせた。
「あっ」
初めての感覚に戸惑い、背を反らせる。

真宵のそこは既に潤んで来ていた。
蜜を掬い取り、そこより少し上の真珠に飾りつけ、
包皮の上から擦ったり捏ねたりと刺激を与える。

「あ…あっ、あ…はぁ…んっ」

自らが発する淫らな声が恥ずかしいのか、
真宵は目を硬く瞑り、必死に口を押さえている。
押さえたところで今の彼女には何の意味も無いのだが、本人は眉根を寄せて必死である。
そっとその手を取り、白く細い指を舐めしゃぶる。

「声、我慢しないで…。」
耳元で囁く。

「やぁっ…恥ずかし…っんっ」
ゆっくりと大きく嫌々をする真宵。

人差し指と中指で小さな包皮を挟み、優しく扱く。
すると中からぷっくり膨らんだ真珠が顔を覗かせた。
もう一度蜜を指に取ると、円を描くように真珠を愛でる。

「はぁ…はっ!…んッあっああっ」
爪先を丸めて下腹部を襲う快感に耐えている。

真宵の真珠は小さい物だったが、それでも刺激により変化を来していた。

「── 真宵ちゃん──」
硬く閉じている瞼にキスをしながら、普段より低い声音で囁いた。

「真宵ちゃんのクリトリス…凄く硬くなってる。…感じてるんだ?」

「ああ…っ…言わないで…っ」
白い肌が一気にピンクに染まる。

尖りきった両の乳首、そして形の良い臍にそれぞれキスをしてから
成歩堂は真宵の秘所に顔を埋めた。

舌全体で真珠を舐めたかと思えば、舌先で突き、転がす。
その度に真宵の身体は踊り、息も絶え絶えになっている。
より多くの酸素を得ようと大きく挙がる白い顎がエロティックだ。
真珠への愛撫を指にバトンタッチし、舌で蜜壷へと侵入を試みる。
さすがに酷く狭いけれど、そこは確実に綻んで来ていた。

真宵のそこはしとどに濡れ、溢れた蜜はシーツに染みを作っている。
その蜜をジュルジュルとイヤらしい音を立てて成歩堂が啜り立てる。
その間も鼻でクリトリスを刺激するのを忘れない。

何もかもが初めての真宵には強烈過ぎる感覚。
気付けば真宵は成歩堂の頭を自らの股間に押し付け、
無意識のうちに腰を動かしていた。

「あんっあ…んっあっあっあっ」

真宵の身体は明らかな変調を来していた。
下腹部…もっと言えば子宮がずんと重く、
熱くむず痒い甘さでその存在を主張しているのである。

そんな真宵の変化を見透かすかのように成歩堂の中指が
桃色の渓谷に潜む未踏の洞窟に踏み入る。

予想以上に狭いそこは、まだ何者も侵入した事がないのを証明していた。
十分過ぎる潤滑油のお陰で侵入は容易だ。

ゆっくりゆっくり奥へ突き進み、ゆっくりゆっくり後退する。
少しずつリズムを速めて行く。
クチュクチュという水音が、次第にピチャピチャと変化する。

顔を上げて真宵の反応を窺う。
「どう?痛くない?」

「う…ん、大丈夫。」

まだ開発されていない身体には、
成歩堂の指は違和感としか認識されていないようだった。

そのうちに内部の天井にザラザラした一ヶ所を探り当てた。
指を曲げてそこを掻く。

── と、途端に真宵の声と腰が跳ね上がった。

「やんっ…!!ちょ、やっ、そこ、なにっ!?いや…っ、やめ…っやめて…!!」

必死の懇願を聞き入れず、成歩堂は尚も続ける。
左の親指と中指でクリトリスの皮を剥き人差し指で真珠を擦り、舌で転がす。

「ああ…っ!なるほど君、お願い、ダメなの…!あっあっああっ」

大きく開かれた下肢はガクガクと痙攣し、
爪先は何かを掴むようにクルリと丸まっている。

「ダメ…っ出ちゃう!出ちゃうからやめてぇ…っ!」

上に逃げようとする腰を左腕で脚ごと抱え込んで固定し、尚も愛撫を続ける。
真宵の肌は全身淡いピンク色に染まっていた。

「変にな…っちゃうから…っ!やめ…っ…あっ!」

顔を覆うように手を強く握り締め、強烈な快感に耐えている。
水音が激しい。

「……ッ!!」

キュゥッと膣が締まると同時に全身が突っ張った。
初めての絶頂を極めた真宵は大きく肩で呼吸してグッタリしていた。

「大丈夫…?」

覗き込んだ成歩堂を、潤んだ瞳が見つめ返して小さく呟いた。
「なるほど君の…バカぁ…」

「真宵ちゃん…そろそろ…良いかな…?」

一瞬目を逸らした真宵が首を横に振り、ゆっくりと起き上がった。

「なるほど君…。大人の人って…こうするんでしょ…?」

そうしておずおずと成歩堂の股間に手を伸ばし、ズボンの上から指先でなぞった。

「ま…真宵ちゃん…!?」

ぎこちない手つきでベルトを外し、チャックを下げる。
そして強張ったトランクスの張りの天辺を手のひらで包み込んだ。

「…?」
トランクスの湿り気に気付き怪訝な顔をしている。

「あ、それは…」
何と説明したものか。

いつもの真宵の好奇心が顔を覗かせる。
チラリと成歩堂の顔に目をやると、そのまま下半身に視線を移し、トランクスを、下げた。

露出した成歩堂自身に、思わず目を剥く。

「きゃわわああっ!」

「こ…、こんなに大きいの?」

屹立したソレに釘付けになっている姿に
普段の好奇心旺盛な真宵を見た気がして成歩堂は安堵した。

そっと男を握る真宵。
充血していつもより赤みが増し少しだけ黒ずんだ男に絡みつく、真宵の白い指。
まだ幼さの残るその指が、成歩堂に思わぬ倒錯した欲望を呼び起こしそうになる。

「…あの、なるほど君」
不意に呼ばれて我に返ると、ペニスを握ったまま戸惑っている真宵がいた。

「これ…、どうしたら良いのかな?」
握ってはみたものの、扱いに困ってしまったらしい。

「なるほど君、教えて…?」

「うっ…」
鼓動が脈打つのが分かる。
真宵にまで心臓の音が聞こえているのではないだろうか。

── そんな瞳で見つめないでくれ。
身を乗り出してじっと見つめられて、思わず成歩堂は目を逸らした。

「なるほど君を気持ち良くしたいの。…お願い。」

濡れた唇でそんな事を言う真宵を正視できず、
そっと真宵の手の上から自身を握り、ゆっくり上下に扱いてみせた。

「こうかな…?」
教えられた通りに拙いながらも一生懸命扱く真宵を見つめていると
抱きしめたい衝動に駆られる。

「なるほど君、このお水って何?」
真宵が尿道口から溢れるカウパー腺液を不思議そうに眺めていた。

「それは…その…カウパー腺液といって、興奮して気持ちが良い時に出るんだよ。」
医学的な事はよく分からないので経験則で成歩堂は答えた。

その途端、真宵の表情がぱぁぁっと明るくなった。
「なるほど君、気持ち良いの!?」

「…うん。」
そんなに素直に喜ばれると照れてしまう。
経験がないなりに、扱きながら亀頭を撫でたりカウパーを広げたりして
頻りに成歩堂の様子を窺っている。

いつの間にか投げ出した脚の間に裸の真宵がちょこんと座り込んでいる。
改めて眺める。
スレンダーで、抱き締めたら折れてしまいそうな肩や腰。
それでも身体のラインは柔らかく、女らしさを感じさせる。
小ぶりな胸に、桃色の綺麗な乳首。
無駄な肉が一切なく、肌の張りが瑞々しい。
白く、きめ細かい肌が美しかった。
普段は頭の天辺で結っている髪も、今は全て下ろしている。
腰まである長い黒髪が、肩から鎖骨、乳房を隠すカーテンになっていて
隙間から覗く肢体が淫靡な雰囲気を醸し出している。

「はぁ…っ」
真宵の指先が紡ぐ刺激が成歩堂を昂ぶらせる。
荒くなる呼吸を整えようと目を閉じた刹那、肉棒が温かい何かに包まれた。
成歩堂は思いがけない感覚に思わず呻く。
股間に顔を埋めた真宵が成歩堂自身を口にしていた。

「こう、するんだよね?」

咥えたまま喋るので聞き取りにくい。
小さな口で怒張を頬張る真宵に、罪悪感に近い感情を抱いた成歩堂は
その行為を止めさせようと半身を起こす。

「そんな事、しなくて良いから」
伏し目がちに咥えていた真宵は、小さくかぶりを振った。

雑誌か何かで知識を得たのだろうか
「歯を当てないようにするんだよね?」
と小さく尋ねる。

「うん…」
赤い舌が、亀頭や鈴口をチロチロと這いずり回り、カリ首は柔らかい粘膜に包まれている。
真宵は不器用ながら賢明に頭を動かして亀頭溝を唇に引っ掛け裏筋に舌を這わせ
成歩堂をどんどん高めていく。

大切なものを慈しむかのように両手で怒張を支える真宵の頬には
長い睫毛が影を落としていた。

「なるほど君の"カウパー"美味しいよ」

怒張から口を離し、ふぅっと息を吐くと、トロンとした目つきで真宵は言った。
ソフトクリームを舐めるように先走りの汁を舐めとる。

天真爛漫な彼女が成歩堂自身を口に含み愛撫に励む姿。
そのぎこちない手つき。
妹のように思っていた女の子の「オンナ」を目の当たりにした興奮が成歩堂を襲う。

 

最終更新:2020年06月09日 17:28