成歩堂×冥③

(……ここは……どこ……?)
暗闇から徐々に意識を取り戻すと、冥は見慣れない室内のソファに居た。
何処からか、タバコの煙が流れてくる。
誰だろうと思いながら、彼女はまだ重たい瞼をしっかり保ち、タバコの煙の源流へ目を向けた。
すると、幾度となく見慣れたあの独特なギザギザのシルエットが浮かび上がる。
「なっ……!」
思わず起きあがった冥は言葉を詰まらせた。
自分の身体が衣一つ着けていないのである。
あのオトコが掛けてくれたのか、青いジャケットだけが
冥の身体に触れていた。
そして、何よりも身体が酷く重く感じた。
一体何があったというのだろう。
「……起きた?」
呆然としている彼女に、煙草をふかしていた成歩堂が声をかけてきた。
「あぁ、コレで起こしてしまったかな。ゴメンね、考え事をしていたものだから」
そう言って彼は机上にあった灰皿で煙草の火を消す。
煙が一際大きく立ち上り、スゥッと消えていく。
冥はジャケットを胸までたくし上げ、成歩堂を睨み付けた。
「……ここは何処よ?」
「僕の事務所」
ゆっくりとした歩調で冥の所へ近づいてくる。
反射的に彼女は身構え、少し後ずさった。
「……どうして、私がこんな姿になっているの?」
ジャケットを握り締めている指先が震えている。
それを見止めた成歩堂は冥の耳元に唇を寄せた。
「覚えてないの?あんなに激しく求めてくれたのに」
成歩堂の口元が意地悪そうにつり上がる。
「いや……嘘よ!そんなハズ……」
言いかけて冥は言葉を飲み込む。
太腿を生温かい液体が伝い流れる感触にぞくりと肩を震わせた。
赤くなって俯いてしまった彼女に追い討ちを掛けるように成歩堂は囁く。
「さっきの名残でも流れてきたのかな……?」
「……!」
羞恥のあまりに言葉すら出せなくなってしまった冥の髪に触れようとすると、
彼女の瞳は怯えと恐怖の色に染まった。
「…………触ら……ないで……」
震えた声が小さく聞こえる。
成歩堂は軽く溜め息をついて、冥から離れた。


最終更新:2006年12月13日 08:04