御剣(20歳)×冥(13歳)投下します。

・逆転検事4話後の話
・生理話アリ注意



夏休みを利用して、アメリカから戻ってきた冥。
初めて捜査に加わった事件から数日経ち、あの日の興奮も徐々に落ち着いてきたのか、狩魔邸でのんびりするだけでは飽きてきたようだった。
「買い物に付き合って!」
ある日、冥は有無を言わさぬ口調で御剣を街へ連れ出した。彼女の機嫌を損ねるリスクをよく知っている御剣は、大人しくそれに従う。
成人男性が休日に特に予定もなく、小娘に連れ回されるというのも、情けない話だとは思ったが。

買い物とは言っても、財布の紐を握っているのは彼女ではなく御剣である。そのため、アレが欲しいコレが欲しいと言われても、何でもかんでも買ってやるわけではなく、「無駄遣いだ」と一蹴しては、ムチで叩かれそうになることもしばしばだった。
三軒お店を回り、ようやく一つ買ってもらった大きなクマのぬいぐるみを抱きしめながら、冥は御剣と共にストリートを歩いていた。
「なによ、レイジのくせに、私に意見するなんて、生意気なんだから………」
御剣の少し斜め前を歩き、顔の下半分を埋めるようにクマを腕いっぱいに抱え、ぶつくさ文句を言う冥。その様子は生意気ながらも可愛らしいものでもあって、つい何でも買ってやりたくなる。
まあ、結局御剣が荷物持ちになるのは目に見えているため、あえて厳しくすることにした。
だが、途中から、御剣は気がついた。
冥の様子が何だかおかしい。
なんだか歩きにくそうにしている。
(……なんだ?)
靴擦れでも起こしたのかと思ったが、履き慣れているブーツを選んでいたから大丈夫だろう。それに足と言うよりも、どちらかというと、臀部を気にしているように見える。
冥も眉をひそめながら時折首を傾げたりして、本人ですら訳がわかっていないようだ。
しかし、その理由はすぐ明らかになる。
「きゃっ」
少し強い風が吹いて、冥のロングベストがたなびいた。
その時、御剣には見えてしまった。
冥の白いズボンのお尻の所に、ごく僅かな赤い染みが滲んでいるのを。
御剣は、とっさに口を開いた。
「………メイ、トイレに行ってきてもいいだろうか」
冥は風で乱れた髪を指で梳きながら振り返る。
「あら、女の子のエスコート中にお手洗いに行きたがるなんて、感心しないわね」
「ム……すまない。すぐ戻るから、ダメか?」
「いいわ。待っててあげる」
冥はヤレヤレ、と仕方なさそうな仕草をしたが、どこかほっとしたように溜め息をついているように見えた。

すまない、と片手を上げ、御剣はすぐそこのファッションビルに入る。そして姿を隠し様子を伺うと、しばらくそわそわしていた冥が、同じビルに入ってきた。クマのぬいぐるみを抱えたまま、足早に歩いてゆく。
御剣はそれを見届けた後、エスカレーターで上の階へ行き、買い物に走った。
手近なものではあるが、冥に似合いそうな長めの黒いスカートを購入する。下着コーナーやファーマシーで必要なものを買うときには、流石に恥ずかしかったが、なんとか冷静に用事を済ませる。
行動は驚くほど迅速で、すべて用意するまで、ものの10分とかからなかっただろう。
紙袋を抱え階下に降りようとしたとき、御剣の携帯に、電話がかかってきた。
発信元は、冥。
「どうした」
電話に出ても、冥は何も話さない。ただ、しばらく鼻をすすった後、
『……レイジ……』
と、か細い声で御剣を呼んだ。
それだけ聞いて、御剣は、「すぐ行く」と返事をして、電話を切った。
普段の彼にはあるまじきことだが、エレベーターを駆け下り、トイレに向かう。
前まで行くと、トイレ横のベンチに、年配の女性と、冥が持っていたクマのぬいぐるみが並んで座っていた。
「その、スミマセンが……」
御剣が声をかけると、女性は目を細めて微笑み、「『しばらく見ていてほしい』って、可愛らしいお嬢さんに頼まれたんですよ」と、クマの頭を撫でた。
御剣は頭を下げ、迷惑ついでに頼まれてくれないか、と、女性に持っていた紙袋を渡す。
彼女は快諾して受け取り、それを持って、トイレの中に入って行った。
少し離れたところで、御剣はクマを抱えて待つ。すると、数分たった後、冥が歩いてくるのが見えた。
目の回りを真っ赤に腫らして、強く唇を結び、御剣が買ってきたスカートを身につけ、布地をギュッと握りしめている。
もう片方の手には、おそらく汚れた衣類の入った紙袋を持っていた。
先ほどの女性にちゃんとお礼を言ってきたか訊くと、冥は小さくコクンと頷いた。そして何も言わずに、そのまま歩き出す。
御剣は黙ってついていく。お互い言葉を発せぬまま、そのまま帰路についた。
二人で狩魔邸に帰ると、冥はそのまま自分の部屋に飛び込んだ。
御剣も、女性の使用人に「冥を頼む」とだけ告げて、自分の部屋に戻った。
自室の椅子に腰掛け、天井を見上げる。
……やはり、初めてだったか。
泣きはらした冥の顔を思い出し、大きく長い溜め息をついた。いつもより疲れた気がした。

確かに冥は、若くしてこれから司法試験に挑むような、肝の据わった天才少女である。
だが13歳というのは、やはりまだ子供。自分の体に起こった変化に、やはりショックを受けたようだった。
突然のことで、気持ちがついていけなかったのだろう。
たまたま買い物に付き添ったことで、助けてやることができて、本当に良かった。
……いや、女の子としては、男にああいう手助けをされるのは、逆にイヤなものだろうなと思う。
そのうち立ち直った冥に「あの時は、よくも恥をかかせてくれたわね!」と、理不尽なことで鞭打たれるかもしれない。
しかし、それでも良かった。
冥が早く元気になってくれるなら、何百遍叩かれても構わない。
そんな考えが浮かんでしまい、自分は危ない人間なのだろうかと、御剣は一人苦笑した。



しかしその日から冥は、御剣と口をきかなくなってしまった。
食事の時などで顔は合わせるも、会話もないままさっさと食べ終わり、彼女は席を立ってしまう。
勉強の為に共同で使っていた御剣の書斎にも、寄りつかなくなってしまった。
何度か殴られる覚悟でこちらから話しかけても「……あとで」と言われるだけで、結局そのあとでもない。
彼女の父親、狩魔豪にそれとなく相談するも「放っておけ」の一言で終わってしまうのだった。
確かに、そっとしておくのが一番いいかもしれない。しかしアメリカ暮らしの為こっちの友人などいるはずもない冥は、一人で出かけることを嫌がるため、必然的に家にこもるしかなくなる。
御剣としても、司法試験に合格し、検事になったとはいえ、正式に仕事が始まるのは当分先だ。同じように、家にいる時間の方が長くなる。
本来なら、今頃バカンスを目一杯満喫するために、毎日色々な場所に連れ回されているはずなのに。
冥は今度の司法試験で、確実に合格するだろう。
彼女が子供でいられる夏は、今年が最後なのだ。
それなのに、あのような沈んだ気持ちで最後の夏休みを過ごさせてしまうことが、気の毒でならなかった。



冥がアメリカに帰ってしまう前日の夜。
デスクで過去の判例をパラパラ捲って眺めていた御剣は、ふと時計を見る。
もうすぐ日付が変わる時刻。冥はもう眠ってしまっているだろう。
とうとう冥は、最後まで御剣と話をしないまま、部屋に入ってしまった。
明日には見送りに行く予定だが、その時も話はできないのだろうか。

次に日本に来たときには、元気で生意気な彼女に戻っているだろうか。
そんなことばかり考えていた。
その時。
コンコン、と御剣の部屋のドアをノックする音がした。
「?」
こんな夜更けの訪問者に、御剣は不審に思った。資料を机の上に置き、しばらく様子を伺うと。
「……レイジ……?」
少し控えめな冥の声がした。
御剣はすぐさま立ち上がり、扉を開ける。
そこには、パジャマ姿の冥がそこに立っていた。
御剣をジッと見上げている。
「……まだ起きていたのか?」
咎めたわけでもないのに、冥がビクッと肩をすくませる。そして、御剣の顔から視線を外してしまった。
久しぶりに、冥と向かい合っている。カタカタ震える彼女のその顔色は、普段より少し白かった。
「どうした………具合でも悪いのか?」
先ほどのこともあり、少し声を落として話しかけると、彼女はぷるぷると首を振って言った。
「……へいき……もう終わったから……」
その言葉の意味を一瞬遅れて理解し、御剣は赤くなった。冥の苦悩を考えると、つい逆算して日数を数えてしまう自分が、ものすごく嫌な人間に思える。
口元を押さえ、何も言えない御剣の様子に、冥は再び不安そうに顔を上げた。
「……私のこと……嫌いになった?」
「……?」
冥の呟きに、御剣は目を見開く。
「なぜだ?」
静かに問うと、彼女は目を伏せポツリポツリと続ける。
「……だって、嫌なことさせちゃったし……わたし、汚かったでしょ……?」
御剣は驚いた。思ってもみないことを、冥はずっと考えていた。

あの日、御剣がいなくなった間に、トイレに行って違和感の正体に気がついた時、冥はパニックに陥った。知識としては知っていても、いざ自分の身にふりかかると、どうすればいいかわからなかった。
激しく脈打つ胸を押さえながら、個室の中で座り込む。
とにかく、誰かに事情を話して、助けてもらわなければ。
でも、日本の知り合いが少ない冥にとって、今頼れるのは御剣しかいなかった。
しばらく迷った挙げ句、震える指で携帯のボタンを押し、御剣に電話をかける。
『どうした』
彼の声が聞こえたとき、とうとうこらえきれず、冥の瞳から涙が溢れ出した。しばらくしゃくりあげたあと、御剣の名前を呼ぶと、それだけで彼はすぐ来てくれると言ってくれた。
彼は言葉通りに、すぐに冥を助けてくれた。老婦人から着替えやサニタリー用品を受け取ったとき、冥は安心する反面、不安に駆られた。

御剣は、知っていたのだ。
服の汚れにいち早く気づき、自然にトイレに行けるよう促してくれたのだ。
汚れた自分を、見られた。
……軽蔑、されたかもしれない。
冥は恥ずかしくて悲しくて、着替えながら個室の中で泣いた。
それから、ずっと不安だったのだ。
御剣が、自分を嫌いになったのではないかと。

「……バカな」
御剣は冥の肩を抱き寄せて、さすった。
「そんなはずないだろう。決して汚くなんかない……むしろ喜ばしいことではないか」
いくらデリケートな問題とはいえ、冥を一人で悩ませてたことを、御剣は悔やんだ。
「キミを嫌いになど、なるものか」
「………ほんと?」
涙を湛え、今にもこぼれそうな瞳で見上げる冥。御剣は、彼女の目尻を拭ってやり、優しく笑いかける。
「……ああ」
御剣の表情を見て、ようやく冥の頬にも朱が戻ってきた。みるみるうちに笑顔になり、御剣に抱きつく。
「レイジ!」
「むおっ!」
御剣は二、三歩後ずさり、部屋の中で冥を受け止めることになった。
「よかった……よかった、レイジ……」
御剣の胸板に顔を埋める冥。そんな彼女の髪を、御剣はそっと撫でてやる。
すると冥は、一週間分の笑顔を向けてきた。
御剣も、そんな冥を見てようやく安心できた。涙で顔に貼りついた髪の毛をすくって頬を撫でると、冥がそれに自分の手を重ね、御剣の手のひらに頬を擦り寄せる。
まるで、昔に戻ったみたいだった。
御剣を慕って、どこへ行くにもついてきた幼い彼女の面影が重なる。
たとえ、少女から女性に変わっても、彼女自身が変わるわけではない。
生意気で、いじらしく、可愛い冥と、何ら変わらないのだ。
御剣は、改めてそう実感していた。
しかし。
「………ム?」
不意に、ふと異変に気づいた。手のひらがなんだかくすぐったい。
見ると冥が御剣の手のひらに唇を押し付けていた。
唇ではむようにして、時々吸うような音を立てて。
「……メイ?」
訝しげに声をかけると、冥は目だけで御剣を見上げたあと、彼の親指を口に含んだ。
「っ!?」
御剣は手を引こうとした。しかし冥は離してくれない。そのまま口の中で、御剣の親指に舌を絡めた。
「っ!」
背筋に、軽い痺れが走る。この異様な状況に混乱しながらも、御剣は冥を見つめた。
彼女の様子がおかしいのは明らかだった。だが彼女は今立ち直ったばかり。
傷つけては、いけない………!

そう思った御剣は、奥歯を噛み締め、冥の好きなようにさせた。
やがて、水音を立て親指から冥の唇が離れる。細い銀色の糸が切れると、冥は改めて御剣を見上げた。
その瞳には、何か決意のような光が宿っている。
「……冥……っ、キミは、何を……」
言葉を選んで問おうとするが、うまい言葉が思いつかず、御剣は声を詰まらせた。
「………」
すると冥は、きびすを返し、部屋のドアを閉める。
二人きりになった部屋は、痛いくらいの静寂に包まれた。そして彼女は振り返ると、先ほどまで舐めていた御剣の手を取って、自分の胸に押し付けた。
「!!……メ、イ……」
柔らかい感触に、今度こそ御剣は動揺を隠せなかった。
「……抱いて」
小さな声で紡がれた冥の言葉は、まるで夢の中で聞いたように非現実的なものに聞こえた。
「……ほんとは、そのつもりでレイジの部屋に来たの。もし嫌われてたら、それは仕方ないけど……それならせめて、最後にわがまま言って、抱いてもらおうって思って……」
冥は抱きしめるように、御剣の手を左胸に押し当てている。心臓がドクドクと音を立てているのを感じた。
「でも、レイジは……私の事、嫌いにならないって言ってくれた……嬉しかった……」
冥は、御剣をまっすぐ見つめていた。
御剣も、冥から視線が外せなかった。
「だから迷ったの。このまま、今までと変わらないほうがいいのかなって。でもね……やっぱり、やっぱりダメなの……」
そこまで言って、一瞬冥は言葉を切った。唇をしばらくパクパクと動かし、続きを言うのを躊躇ってるようだった。
しかし、やがて決意が固まったのか、一気に言い切った。
「だって、レイジが好きなんだもん……!」
「っ……メイ……」
突然の告白に、今度は御剣の思考がついていけなかった。
「……しかしっ……キミはまだ、子供……」
「もう子供じゃないわっ!アナタだってよく知ってるでしょう?」
「いや、だが……私はキミよりずいぶん年上で……キミは若い。そんなこと、できるはずが……」
何とか冥を思いとどまらせようと、思いつく限りの言い訳を口にする。自分の保身もそうだが、何より彼女の為に。
「……だからよ」
だがそれでも、冥は引き下がらなかった。
「私はまだ13歳よ。法を侵すことになるのもわかってる……だから、せめてアナタが法廷に立つ前に……私が検事になる前に……」
抱いて、という代わりに、冥は御剣にもたれかかった。

「私は、あした日本を発つから……もう今夜しかないの……お願い……」
御剣は動けなかった。
突き放せば良いだけの話だ。そうすればさすがに冥もあきらめるだろうに。
「…………」
頑なに自分を受け入れて貰えず、冥は悲しそうに笑った。
「……やっぱり……ダメ?やっぱり私は……いもうと、なの……?」
「!!」
その言葉が、御剣の心の中を抉った。
御剣は普段、冥のことを妹弟子だと言っていた。妹のように可愛がりもした。
本当は、そんな風に思ったことなど無いのに。
成人男性のくせに、せっかくの休みにデートする恋人の一人もいないのは、当たり前のことだった。
冥以上に愛しい存在など、いるはずがないのだから。

「……本当に……いいのか」
頭上から聞こえる掠れた声に、冥はぱっと顔を上げた。
御剣が、冥を見下ろしている。部屋の明かりで逆光になり、表情はよく見えなかったが、冥は黙って頷いた。
それを合図に、御剣は、彼女の胸に置かれた手を、初めて動かしてみた。パジャマの布越しに感じる感触からして、ブラジャーはつけていないらしい。
興奮を誤魔化すように、一旦手を離して、代わりに冥の頬に触れた。
「……メイ……」
顔を近づけると、冥が瞳を閉じる。御剣は始めに瞼、頬へとキスを落とし、それから唇を奪った。
柔らかく、薄い唇を自分のそれで挟み、舌で割り開くと、冥もおずおずと舌を押し出してきた。突っついてみると、しばらくしたあと突っつき返された。
なんだか真似をしているようで、可愛かった。思わず深く口づけると、これは真似ができなかったようで、されるがままになっている。
「んむ………ふ、はぁ」
苦しそうに声を漏らす冥から一度唇を離し、抱きかかえてベッドに降ろす。見下ろすと、目尻を染めた彼女が気まずそうに視線を逸らした。御剣は笑って再び口づけると、そのままパジャマの裾から手を入れた。
すべすべのお腹を撫で、上へ上がってゆく。
パジャマを捲りあげると、白い肌が露わになる。仰向けに寝ているため、ふくらみは少し潰れているが、彼女の歳にしてみれば、充分な大きさがあった。それぞれのふくらみのてっぺんにあるピンク色の突起は、まだ柔らかい。
「……ちゃんと脱がせてよ」
つい見とれていると、冥が抗議の声を上げた。
「う、うム……」
言われたとおりにしようと、御剣は彼女のパジャマのボタンに手をかける。

しかし御剣の太い指では、冥のパジャマの小さなボタンを外すことは困難だった。
「なにやってるのよ、もう」
ボタンと必死で格闘する御剣の様子に吹き出すと、冥はその手を押しのけて、自分で外し始めた。
「ム……すまない」
「いいのよ、アナタが不器用なのは知ってるから」
「………」
どうやら、いつもの調子が戻ってきたようだ。
冥が服を脱ぐ間に、御剣も部屋着を脱ぎ去り、ボクサーパンツのみになる。準備を整え改めて冥の方を見ると、彼女も身につけているものは、ショーツ一枚だけになっていた。
さすがに恥ずかしいのか、横に体を丸くさせている。
綺麗だった。肌は透き通るように白く、腕や脚もつるつるで。
御剣はクラクラする頭を小さく振り、冥に覆い被さった。
体を開かせ、首筋に顔を埋める。息を吸い込むと、仄かな桃の香りがした。
ボディソープの香りだろうか。この時のために、念入りに体を洗ったりしたのだろうか。そう考えるだけで気分が高ぶっていくのを感じ、冥の体に舌を這わせる。
「あは、んふふ、くすぐったい」
彼女は、一人でクスクス笑っていた。性的な感覚よりも、くすぐったさのほうが勝っているようだ。
「ねえ、なんでこんなこと、するの?」
くつくつと笑いをこらえながら、冥が訊ねる。
どうやら、今されていることの必要性がわからないらしい。御剣が一旦顔を上げて彼女の顔をみると、きょとんとしていた。
「………そのうちわかる」
それだけこたえて、鎖骨を唇で撫でると、ケラケラと冥が笑った。
怒ってないのを良いことに、御剣は冥の体を堪能し尽くすことにした。
この季節、陽の下に晒されている腕や腋の下も、今はただもう艶めかしい。冥を味わってゆくうちに、御剣の理性も少しずつ剥がされてゆくようだった。
「あんっ」
膨らみの頂上にキスを落とした時は、さすがに彼女のあげる声に色香が含まれた。それを皮切りに、冥の弱いところが次々と露わになってゆく。
脚を抱え、つま先をしゃぶってやるころには、彼女はすっかりとろけきっていた。
「あっ……はぁっ……」
両手で真っ赤になった顔を覆い、荒く息を吐く冥。
その仕草は、彼女がまだ13歳の少女だということを、忘れてしまいそうになるほど、色っぽかった。
「………そろそろ、次に移ろう」
御剣は冥の足から唇を離し、彼女のショーツに手をかける。
「え……?きゃっ……」
中央が湿ったそれを脚から引き抜くとき、冥は流石に少し体を固くした。

ぴったり閉じたそこを指で割り開き、窪みを探り当てた。入り口を解すように、動かす。
「う、あ、あっ」
まだ固い蕾に指先を埋めると、冥は眉を寄せ、引きつった声を上げた。
「……痛いか?」
「……っ、だい、じょ、ぶ……」
明らかに怖がっている返事が聞こえた。
濡れているとはいえ、異物を受け入れたことのない箇所への侵入は、まだ無理なようだ。一旦指を引き抜き、代わりに顔を埋める。
「ゃっ……レイジっ……!?」
尖らせた舌を挿し入れた途端、冥の体がひくりと跳ねた。逃げようとする腰を押さえて、舌を動かすと、水音が増して唾液とは違う汁が湧き出てくる。
「あっ、あっ、あっ、あっ」
がっちりと押さえ込まれ身動きがとれず、冥はもがきながら頭を左右に振った。勝手に漏れる声をなんとか最小限に押さえようと、喉をひくつかせると、鼻にかかった甘い声になり、それが余計に御剣を興奮させた。
「まって、レイジ、あ、ああああっ」
ひときわ高い声を上げた直後、どっぷりと愛液が溢れ、中で蠢く舌を漬け込む。御剣が顔を上げると、初めて迎えた絶頂に、冥が体を震わせていた。
目尻が、涙で濡れていた。
「……待ってって、言ったのに……」
「良くなかったか?」
「そんなこと……ないけど……」
御剣が横たわる冥の顔を覗き込むと、バツの悪そうに、ぷいっと視線をそらす。
かわいい。
思わずフッと笑みをこぼし、御剣は冥の額に口づけた。
ボクサーパンツの中は、はちきれんばかりに大きくなっている。冥も口づけを受けながらそれに気がつき、膝で軽く押してみた。
「……ム」
「……まだ、終わりじゃないんでしょ?」
本来なら、ここで終わりにするのが一番いいのかもしれない。ここまでは、冥に気持ちよさを教えることができただろうが、これより先は、痛い思いをさせることになる。
しかし冥は、ここで終わりにされる方が辛かった。
「……してよ」
寄り添われ、小さな声でねだられ、御剣は下半身に血が集まっていくのを感じた。
気がつくと下着を取り払って、冥を組敷いていた。まっすぐと見上げてくる彼女と目が合う。
「……レイジ……」
不安げに、けれど嬉しそうに冥は微笑んでいだ。
だがその表情も、秘所を押し開くたびに歪んでいく。
「あ……ああ……っ!」
ただでさえ狭い冥の中が、まるで御剣の侵入を防ごうとするように、さらにキツく締まる。圧迫感と裂けるような痛みに、冥は引きつった声を上げた。

辛そうな彼女を目の当たりにし、思わず腰を引きかけるが、それに気がついた冥は、腕を掴んで引き留めた。
「だいじょうぶだから……私が頼んだんだもん……だから、ちゃんと最後まで、するから……っ!」
確かに、初めに言い出したのは彼女のほうだ。
しかし今となっては、自分だって今更止められそうになかった。
すがりついてくる彼女に、すまない、と呟いて、御剣は強引に腰を押し込む。
「!!」
悲鳴のような声を上げる冥をなだめながら、少しずつ先へと押し進め、とうとう最奥までたどり着いた。結合部からは赤い筋が伝い、小さくシーツを染めた。
痛みに泣きじゃくる冥の髪を撫でる。
「……すっごく痛い……」
しゃっくりと共に、冥が言う。
一方、御剣の方はというと、冥の中はかなり具合がよかった。少しきつすぎるが、締め付けや、自分を包み込む熱さに、つい腰が動いてしまいそうだった。
しかし今は、じっとして馴染ませなければ、ますます冥が辛くなってしまう。
「メイ……」
御剣はただ彼女を抱きしめ、何度もキスを落とした。
「レイジって…やっぱり初めてじゃなかったのね」
痛みが和らいできたのか、小さく呟く冥に、御剣の動きが止まった。
確かに、長続きはしなかったが、今まで女性と付き合った事はあった。女を抱いた経験も、多少ないことは無い。
スムーズに事を運ぶ御剣の様子で、冥は悟ったらしい。
難しい顔をしてしまった御剣を見て、冥は笑った。
「いいの。私は、レイジが初めてで嬉しいから」
そう言って、本当に幸せそうに微笑む彼女は、この世の誰よりも美しく見えた。
愛しさがこみ上げ、御剣は冥を強く抱き寄せた。
「私が……自ら抱きたいと思ったのは、キミだけだ」
耳元でそう言うと、冥はクスクス笑った。
「ホントかしら」
「……生意気な。信じてくれないのか?」
「証言だけじゃ、ね」
「……ム……」
物証なら、未だかつてないほど高ぶった御剣自身があるが、それを引き抜いて見せたところで、破廉恥だと叩かれるだけだろう。
「まあいいわ、そういうことにしておいてあげる」
指で御剣の額を弾いて冥は不適に微笑んでいる。
……ずいぶんと余裕そうだ。
「……もう大丈夫そうだな」
「え……きゃっ!?」
御剣に突然腰を動かされ、冥が驚く。

「レイジ……っ?」
冥が非難の声を上げるが、一度動いてしまうと、もう止められなかった。
冥の内壁で自身を絞り上げられるようで、つい自分も声が漏れそうになる。それを誤魔化すように、彼女の唇を無理矢理塞いだ。
冥は冥で、圧迫感や擦られる痛みはあったが、体の奥から湧き出てくる別の感覚に気がついた。その正体が知りたくて、もっと先を求めてしまう。唇を重ねながら、そっと御剣の背に腕を回した。
「め、いっ、メイっ……」
「ああ、ああっ、レイジぃいっ……!」
最奥を突かれ、高みへと登りつめた冥の頭の中が真っ白になる。それと同時に御剣は自分自身を引き抜いた。
パタ、パタッ、と冥のお腹に白濁液が降りかかった。
冥は朦朧とする中、御剣の声で「愛している」と聞こえた気がした。



二人してシーツにくるまり、御剣の腕の中に収まった冥が、大きなあくびをした。
「……眠かったら、もう寝たまえ」
御剣が言うと、冥はふるふる首を横に振って、
「イヤ……なんだかもったいないもの」
と、むくれた。
その表情が可愛くて、御剣は冥の背中をトントンと叩いて睡眠を促す。
「……あのクマ、置いていってあげる」
ムニャムニャと眠そうにまばたきをしていた冥が、ふとそう呟いた。
「クマ?」
「ぬいぐるみよ。このあいだ買ってもらったやつ。私がいない間、あの子を抱いて眠ってもいいわよ」
「……結構だ」
今腕の中にいる冥以上に抱き心地のいいものなど、ありえない。
「でも、次に私を抱くまでの間、ガマンできて?」
上目遣いで冥に見つめられ、御剣は少し考える。
来年も、冥は日本にバカンスにくるだろう。
だがその頃はお互い検事になっているだろうから、いくら愛し合っているとはいえ、未成年者を抱くなど、法を侵すようなことはできない(本当は今もしてはいけないが)。
冥は、暗に自分が適齢期になるまで、自分以外の女を抱くなと言っている。
クマはいわゆる監視役らしい。
「……たやすいことだ」
本当に愛しいひとの存在を、今は知っている。
そんな御剣には、彼女の為にできないことなど、無かった。
それを聞いて、冥は安心しきったように目を閉じた。
「パパには……ナイショよ……」
そう呟いて、やがて、すやすやと寝息を立てはじめる。
「……先生、か」

逆に、御剣は現実に引き戻された。冥の父親で、自分の師匠である、狩魔 豪の存在を、今更ながら思い出した。
今夜のことが知れようものなら、どんな怒りを買うか想像できない。
しかし、将来彼女をこの手で幸せにするには、いずれいつか自分の想い告げなければいけないだろう。
まあとりあえず、現時点では。
「先生にはナイショ……だな」
様々な思いを交錯させながら、御剣は夜が明けるまで、幸せそうに眠る彼女の顔を見つめていた。

最終更新:2020年06月09日 17:22