成歩堂×冥④

晩秋も近い平日の夕方、冥は突然成歩堂法律事務所を訪ねた。
狭いながらも小綺麗に片付けられているそこを見回すと、冥は口を開く。
「……今日は綾里真宵は居ないの?」
デスクへとゆっくり歩を進める。
「うん。今日は里の方で行事があるとかで」
と、この事務所の主が歩み寄ってくる冥の顔を見上げる。
「珍しいね。君の方からここに立ち寄るなんて」
「たっ……たまたま近くを通りかかったのよ!」
ぷいっと横を向いてムキになる様がなんだか可愛く思えて、成歩堂はクスリと笑った。
デスクの上に広げていた書類を束ねてファイルに収める。
「さて……と、そろそろ切り上げようかな」
そう言いながら成歩堂は伸びをした。
「……暇そうな弁護士の仕事は、今日はもう終わりなの?」
少し悪戯っぽい視線で冥が成歩堂を見る。
「うん、今日はおしまい」
ファイルを片付けながら冥に笑顔を向ける。
「君が来てくれたのに仕事してるなんて勿体無いよ」
「……バカね。それじゃ私が中断させたみたいじゃない」
「でも、僕は嬉しい」
真っ直ぐな視線でそう言われ、冥は顔が熱くなるのを感じた。
「……おいで?」
デスクの向こう側から成歩堂が手を差し伸べる。
冥は小さく『バカ』と呟いて成歩堂の許へと近づいていった。

二人が親密な関係になって少し経つ。
成歩堂と冥の間には、法廷で顔をつき合わせる時は別として、以前ほどの距離はもうない。
プライベートで一緒に居る時間が少しずつ長くなっていた。


「狩魔検事の仕事は……?」
「今日の分はとっくに済ませたわよ」
「流石……じゃあ、今日はもうお互い終業だね」
チェアに腰掛けている成歩堂はそっと、目の前の細い腰を抱き寄せた。
バランスが崩れそうになって、冥は成歩堂の肩に手をつく。
成歩堂は冥の頬に手を添え、その親指で冥の柔らかく瑞々しい唇をなぞった。
「……っ」
唇を撫でられた感触がなんだかもどかしく思えて、冥は自ら成歩堂と唇を重ねる。
成歩堂の腕が冥の背へと回っていき、更に自分へと近づけた。
重ねられた唇の隙間から成歩堂の舌が進入してきて、冥の口腔内を弄る。
たどたどしく冥が舌を伸ばすとすぐに成歩堂に捉えられ、激しく絡みつかれる。
暫く深く激しいキスを堪能して唇を離すと、冥の唇から甘い吐息が漏れた。
「……はぁ……」
成歩堂の手がするすると冥の背を伝って下りていき、尻の辺りを撫で回す。
「あっ……ちょっと……!」
スカートの中に手が滑り込んできたところで冥が慌てて成歩堂を押し離した。
「……?どうしたの?」
成歩堂が冥を見上げると、冥は少し困惑したような表情だった。
「その……ここでする気なの?」
「……ダメ?」
成歩堂が叱られた犬のような目でじっと冥を見つめる。
「……そんな目で見ないでよ」
冥のさっきよりも困っている様子が明らかに見て取れる。
ずっと成歩堂が冥を見つめ続けていると、しまいには目線を逸らしてしまった。
「ふふ、僕の勝ち」
そう嬉しそうに笑うと、成歩堂は冥をデスクに腰掛けさせた。

冥のブラウスのボタンを一つずつ外していく。
段々と露になってくる冥の白い肌に、成歩堂は思わず息を呑んだ。
何度見ても情欲を煽られてしまう。
成歩堂は最後のボタンを外し、細い首筋に唇を宛がう。
「ん……」
冥の身体がピクリと揺れる。
唇を宛がった箇所を強く吸うと、紅い花が散った。
成歩堂は唇を少しずつ下方へと這わせて、細い鎖骨を通過し、なだらかな曲線のふもとへと辿り着く。
唇を冥の肌から離すと、二つの膨らみを覆っている淡いピンク色のブラジャーのフロントホックに手をかけた。
ホックが弾けると冥の柔らかな乳房が現れる。
大きいとは言えないが、成歩堂の掌に丁度収まる程の大きさの胸をやんわりと掴む。
「……あっ……」
小さく冥の声が漏れる。
もう片方の乳房に成歩堂が唇を這わせると、冥は息を詰めた。
優しく胸を揉まれる感覚に、冥は酔いしれそうになる。
成歩堂の唇が少しづつ乳房の先端に近づいていく。
肌にかかる息がとても熱く感じられて、冥が身を捩ると『逃げちゃダメだよ』と言わんばかりに
空いている腕を背中に回され、抱き寄せられた。
「ふぁ……っ」
成歩堂が先端に辿り着くと、思わず冥は声をあげる。
ちろちろと舌先で転がしてみたり、突ついてみたりと成歩堂は冥の敏感な場所を刺激する。
「……やっ……あ……」
刺激された部分は段々固く尖る。
「可愛いね、感じてるんだ。こんなにコリコリになってるよ」
成歩堂が冥を見上げると、冥の顔は羞恥と快感で真っ赤になっていた。
「は……恥ずかしいコト言わないで……っ」
「『事実』を言ったまでなんだけどな。なんなら証言してみる?」
「……っ!!バカっ!!」
冥が成歩堂を睨み付ける。
だが、成歩堂はお構いなしに行為を再開する。
「あ……んっ……ぁ」
もう一方の乳房を掴んでいる手は乳首をこね回し、摘み上げる。
両方の敏感な先端を執拗に責められて、冥の口からは抑えられなくなった喘ぎ声がこぼれた。
成歩堂の顔が少しずつ下がっていく。
解放された部分が成歩堂の唾液で濡れていて、空気の冷たさを少し感じた。
成歩堂は冥の腹部にキスを繰り返す。
乳房を掴んでいた手はそこを離れ、太腿の内側に触れた。
条件反射で閉じようとする冥の脚の間に入って、それを妨げる。

タイトなスカートの隙間に手を差し入れると、スカートの裾が少し捲れ上がった。
そのまま手をスライドさせていき、ストッキングの穿き口にまで手を伸ばす。
「冥、少しお尻上げて……?」
ふるふると冥が首を振った。
「……じゃあ、コレ破っちゃうことになるけど?」
「替えは持ってきてないわよ……」
「それじゃ、言う通りにしてよ」
「……」
冥はしぶしぶ成歩堂の言う通りにする。
ゆっくりと破れないように気を付けながら、成歩堂はストッキングを膝のあたりまで引き下げる。
現れた下着には濡れたようなシミが広がっていた。
指先で触れてやると、布地越しでもぬるっとした湿り気を感じる。
「こっちも可愛がってやらないとね」
そう言いながら、成歩堂は下着越しに少し浮きあがって見える突起を摘み上げた。
「ひぁっ……!!」
ビクッと身体を震わせて、冥が一際高い声を上げる。
やはり、もっとも敏感な箇所だからだろうか、今までの反応で一番いい。
気を良くした成歩堂は、そのまま冥の敏感な突起を擦り続ける。
「ふっ……くぅ……あ、あっん……」
冥の甘い声が絶えず成歩堂の耳に届く。
「すごいね……下着の上からでもこんなだよ」
下着から染み出したやや泡だった愛液を指先に塗りつけ、冥の目の前で糸を引かせた。
「あ……やぁ……っ」
それを目の当たりにした冥は更に顔を紅潮させる。
「こんなに濡れてちゃ気持ち悪いでしょう?……脱がせてあげようか?」
成歩堂の口元が少し意地悪そうにつり上がる。
「……」
コク、と冥が頷いたのを成歩堂は見ていたが、敢えて無視することにした。
「……分からないなぁ。ちゃんと言ってくれなきゃ」
彼を見る冥の目は涙で潤んできている。
成歩堂は何か言いたそうな視線と目を合わせた。
「…………脱がせて……」
やっとの思いで冥が懇願の意を伝える。
成歩堂が冥の下着に手をかけると、冥は自ら腰を浮かせた。
ストッキングが留まっている膝の辺りまで引き下ろすと、冥から溢れ出る愛液が
デスク上に小さな水溜りを作った。
成歩堂は冥の秘部に指を滑りこませる。
くちゅり、と濡れた音が聞こえる箇所に少しずつ沈ませていく。
「んぁっ……あんっ……」
柔らかい襞が成歩堂の中指を包み込む。
「もう一本…入るかな」
更に人差し指を入口に添える。
一度中指を引き抜いて、二本同時に挿入していく。
「んくっ……ぅんっ……あっあぁ……」
冥はほんの少し苦しそうな声を上げたが、またすぐに色づいた声に戻った。

「冥、可愛いよ……」
指を抜き差しする度に、成歩堂の手が愛液にまみれていく。
淫猥な音は成歩堂の動きに合わせて響き、成歩堂と冥の感情を昂ぶらせる。
「あっ……ぅあ…はぁっん……」
膣内を男の指で掻き回され、冥は嬌声をあげ続けている。
ジュプ、クチュ、と恥ずかしい音を立てて自分の指が冥の中へと出入りする様子を、成歩堂は観察していた。
「僕の指をこんなに締め付けて……もっと欲しいのかい?」
「んん…っ……欲しい…けど……」
「…けど?」
「コレ以上…されたら…あっ…おかしく…なりそう…」
言葉を少しずつ繋げる冥はいつもの数倍も素直で、そんな彼女をもっと苛めてみたいと成歩堂の悪戯心が騒ぐ。
ズボンの中ではちきれそうになっている自分の分身を諌めて、彼は冥の下腹部へと顔を近づけた。
「……えっ?!…あ……」
冥の視界が急に事務所の天井を捉える。
成歩堂はデスクの上に倒した冥の脚を持ち上げて、局部に舌を伸ばした。
生温かいモノが敏感な所に触れると、彼女の脚がビクンと揺れる。
「あっ……あ…いやぁっ……」
成歩堂の舌が小さく尖った箇所を突つく。
その度に冥が可愛い声を上げるので、もっと聞きたくて更に突ついた。
冥の手が成歩堂の頭を押し戻そうとするが、成歩堂の腕はしっかりと冥の太腿を抱いて離さない。
成歩堂が溢れてくる愛液を啜り、ジュルッジュルッと派手な音を立たせる。
「りゅ……いち…ッ……ふぁっ…んんっ…」
もの欲しげにヒクついている箇所に舌を挿し入れると、その中はとても熱く独特のぬめりで潤っている。
成歩堂が舌で冥の膣内を弄ると、それを阻むかのようにキュウッと冥が締め付けてきた。
(…そろそろ僕も限界かも)
冥の愛液にまみれた口元を拭い、成歩堂が冥に覆い被さる。
早く彼女と繋がりたいと焦る自身を解放して、冥の入口に軽く触れさせた。
「あ……」
何がそこに触れたのかに気付いた冥は、成歩堂の顔を潤んだ目で見つめる。

『早く……』

無言でそう訴えられて、成歩堂はコクと頷き冥の耳元に顔を寄せた。
「挿れるよ、冥…」
低く囁かれた声に冥が小さく頷くと、狭い入口を成歩堂の肉棒が少しずつ押し入ってきた。
痛みは殆どないものの、強い圧迫感に襲われて冥は眉をひそめる。
「ん…ッ……あっ…あぁ…!!」
成歩堂が腰を進めた最奥はとても狭く、気を抜くとすぐに達してしまいそうだ。
「うわ…キツ……」
思わず口にした言葉だったが、考えてみれば彼女にとっても同じ状態なのだと気づく。
「冥、大丈夫?痛くない…?」
浅く呼吸を繰り返している冥は、微かに首を横に振った。
「大丈夫…だから…っ」
続けて、という言葉の代わりに彼の首へと腕を回す。
成歩堂は冥の頬に軽くキスをすると、彼女のお願い通りに続きを再開させた。

腰をゆっくり前後させ、徐々に冥の膣内を解していく。
動く度に熱い襞が肉棒に絡み付き、成歩堂はなんとも言えない快感に襲われる。
「はっ…あぁん……」
少しずつ慣れてきたのか、冥の声にも艶が出てきて成歩堂の聴覚をくすぐった。
こんな時でもないと彼女のこういう声は聴けない。
いつもの気の強そうな雰囲気が霞んで、『あぁ、普段からこうだといいのに』と
本人を前にして言えないようなことまで考えてしまう。
「やぁ…あ、あんッ…あ…ダ、メ…っ」
「ダメって…イっちゃいそう?」
コクコクと冥が何度も頷く。
「いいよ、イっちゃって」
成歩堂は二人の身体の隙間に手を捩じ込み、親指で陰核を擦ってやった。
「ひっ?!ア…あぁあァ…ッ…!」
絶頂に近づいていた所で敏感な箇所を責められて、冥のカラダに電気のような
快感が走っていく。
「……アァ―――ッ!!!」
一際高い声を上げて、冥の体がぴくぴくと小刻みに痙攣する。
冥が達した時の締め付けで、成歩堂は危うく自分も達してしまいそうだった。
「くっ…!やば…」
なんとかギリギリの所で堪えて、ふぅ、と息をつく。
絶頂の余韻に浸っている冥の膣内からゆっくりと分身を引き抜くと、それは
彼女の愛液にすっかり塗れていた。触れると独特の粘りが糸を引かせる。
「うわ…すごいなぁ…」
思わず成歩堂が言葉を漏らす。
そう言って冥の方を見ると、先ほどまで成歩堂を受け入れていた部分が、また
もの欲しげにヒクリと蠢いた。
「……」
それを見て、オトコの性が黙っている訳がない。更にいきり立ったソレは、
また冥のナカへ入りたいと訴えている。
自分のオトコの本能に少し呆れながらも、成歩堂はくったりした彼女の身体を
机にうつ伏せの状態にさせた。
その上から覆い被さるような態勢をとったが、冥の反応は薄い。
「冥…」
耳元で名を囁いてやると、意識を手放していた指先がピクと反応した。
少しずつ冥の意識が戻ってくる。

「……ん…」

意識がハッキリしてきた頃に気付いたのは、秘部に宛がわれている熱い塊。
ゆっくりとそれが胎内に進入してくるのが分かる。
「ぃや…あ…あぁあ……っ…」
先ほど達したばかりで過敏になっている身体が、いやという程冥の快感を増幅させる。
「だ…め…ッ…まだ……った…ばかり…で…」
途切れ途切れな冥の言葉を聞いていたが、成歩堂には途中でやめるつもりはない。
「ムリだよ、こんな姿の冥を見てたら…ガマンなんて出来ない」
そう言って腰を更に進め、冥の最奥を探り当てた。
「ひぅっ…ア…あぁッ!……あ、熱…い…」
「冥…っ…」
成歩堂が抑制出来ない衝動に任せて、冥を責めたてる。
腰を打ち付けるたびに、肉のぶつかる音、濡れた音、デスクが軋む音、冥のつま先が
床を引っかく音、熱っぽい呼吸音が室内に響く。
「りゅ…いち…ッ……や…あぁ…!」
「…んッ……冥…!!」
二人の意識が一気に高みへと登りつめる。
激しかった成歩堂の動きが大きくなった後、その動きがゆっくりとなる。
それに合わせて冥の膣内に白い欲が幾度も吐き出された。


気付くと外は既に日が落ち、向かいのホテルの照明が灯されていた。
身支度を整えた冥はソファに腰掛けて、成歩堂の淹れたインスタントコーヒーに口を付ける。
一方、成歩堂は「うーん、此処だと後片付けが大変だなぁ…」などとぼやきながら、先ほどの
二人の情事の後始末に勤しんでいた。
「龍一、お腹が空いたわ。早くして」
急かすように声をかけると雑巾を手にした成歩堂が冥を振り返る。
「あぁ、もう少し待って。あとちょっとで終わるから」
冥に笑顔を向けると再び床へしゃがみ込み、拭き掃除を再開する。
そんな彼の背を、冥は無意識に笑みを浮かべつつ眺めていた。
最終更新:2006年12月13日 08:04