成歩堂×冥(7)


『スナオ』
かつかつかつ、と裁判所の廊下にテンポの速い足音が響く。
「信じられないわ‥‥この私が、また負けた!‥‥成歩堂龍一‥‥成歩堂龍一ぃぃぃ‥‥!」
愛用の鞭と先程までの法廷の資料を片手に、鬼のような形相で歩く狩魔冥に、
廊下を歩いていた人々は恐れおののき、思わず道をあけていく。
ぶつぶつと今日の裁判で冥のカンペキな証拠・証言に異議を唱え、無罪を勝ち取った男
――成歩堂龍一の名を呟き続けながら裁判所の玄関に続く真直ぐな廊下を歩いていると、
冥の目の前に見慣れた人影が躍り出た。
ギザギザのとがったアタマに青いスーツ。胸に光る弁護士バッヂ。
それはまさに冥の苛立ちの原因になっている、成歩堂龍一、その人であった。
「狩魔検事」
先程までの法廷がまるでなかったかのように、挨拶をするように成歩堂は冥の名を呼ぶ。
「成歩堂龍一‥‥!」
冥がその名を言い終わるか終わらないかのうちに彼女の左手から鞭の一撃が成歩堂にむかい繰り出される。
風が唸りをあげ、成歩堂の顔面に鞭が直撃するはずだった。
しかし実際は鞭はただ空を切り、床に打ちつけられた硬い音だけが響いた。
成歩堂はわずかに体を横にずらしてそれを避けたのだ。
「なっ‥‥。ふ、フン、よく避けたわね!」
「そりゃあぼくだって、あれだけきみのムチを喰らってるんだからいい加減慣れるよ」
成歩堂は得意そうに笑ったが、冥はそれが気に食わなかった。
「ところで狩魔検事、さっきから凄い顔してるから、みんな怖がって逃げてるけど?」
「キサマのせいよ、成歩堂龍一!」
びしぃ、と冥の指先が成歩堂にむかいつきつけられる。
「どうしてみんなぼくのせいにするかな‥‥」
呆れ顔で成歩堂は言う。が、成歩堂は口の端をにやりと歪め、つきつけられた冥の細い手首を握った。
「な、何するの!?」
「‥‥でもそれは、それだけぼくのことが気になってるってことなのかな?
狩魔検事。きみはぼくのことが好きだって意味で、受けとっていいのかな?」
成歩堂の言葉に冥は顔を真っ赤にする。反論しようとするが、手首を強く握られて、痛みでそれどころではなかった。
「なるほどう‥‥!」
「かわいいよ、狩魔検事」
腕を引き寄せられて、口にハンカチをあてられて、冥の視界は遮られた。
それと同時に、冥の意識は途切れた。


気が付くと冥は薄暗い部屋の中、ベッドに寝かされていた。
まだぼんやりとはっきりしない意識の中、冥は必死に今の状況を理解しようとする。
(私は‥‥裁判で成歩堂龍一に負けて‥‥裁判所の出口で成歩堂龍一に会って‥‥それで?)
僅かに人の近づいてくる足音が聞こえた気がした。びく、と冥は体を震え上がらせる。
「ようやく起きたみたいだね、狩魔検事」
「成歩堂龍一!?」
姿は部屋が暗くてはっきりとは見えないが、その声の主は間違いなく、成歩堂だった。
「ここは一体どこなの?!」
冥はベッドから起き上がろうとしたが、瞬間、手首に食い込むような痛みを感じた。
よくよく確認してみると、冥の両腕は頭の上で彼女自身の鞭によって拘束され、ベッドに括りつけられている。
「これは‥‥一体どういうことかしら!? 成歩堂龍一!」
拘束されている恐怖に打ち勝とうと冥は一層声を張り上げる。
しかし成歩堂は全く動じることなく、冥の寝るベッドに近づいてきた。
「きみがスナオになれるように手伝ってあげたつもりなんだけど」
言うと成歩堂は冥の上着を乱暴に脱がせ、そのままシャツのボタンも弾けさせる。
「このひらひらのリボン、どうやったら外せるかよく分からないんだよな」
胸元のリボンはそのままにして、冥のブラジャーを外しやわらかそうな彼女の胸を露わにさせる。
「いや‥‥やめなさい! 成歩堂龍一!」
冥の静止をよそに、成歩堂は冥に覆いかぶさるようにベッドに昇るとその掌で冥の胸を揉む。
乳首を指先で弄られるとぞくりと背筋に何かが走った。
「ふ、あっ!」
成歩堂の愛撫によって赤く染まった乳首は固くなり、触れられると痛みすら感じられるほどであった。
成歩堂は指で愛撫するだけに留まらず、冥の柔らかい胸に顔を埋めて舌先で乳首を舐める。
「はぁん! いや、ああっ!」

舌が乳首からだんだんと下へ降りていき、冥の体中を蹂躙していった。
急に成歩堂が顔を上げると、冥の下にはいているものをすべて乱暴に脱がせて足を大きく広げさせる。
まだ触れてもいないそこは既に蜜を溢れさせ、濡れていた。
「いや、そんなところっ‥‥! 見ないで」
「すごいね、あれだけでもうこんなになっているよ、狩魔検事。よっぽど感じやすいんだ」
そっと指先で濡れたそこに触れられて、くりくりと中心を指で挟まれ弄ばれる。
「それとも相手がぼくだから?」
「そんなワケな‥‥っはぁ、ん!」
迫り来る快感の並に必死に耐えるように冥は瞼を固く閉じる。
しかし成歩堂は容赦なく、今度は舌先ですっかり固くなった冥の中心を愛撫する。
それを濡らしている蜜を舐めとっていくが、蜜は止むことなく彼女の中から溢れ出していた。
「ああ、‥‥くぅんん! こんな‥‥も、やあ‥‥」
「体は正直だよ、狩魔検事」
ずくずくと冥の下半身は熱を持ち疼き始めていた。
けれどこの行為は冥が望んでの行為ではなく、成歩堂に拘束されたあげく、勝手にされているのだ。
確かに冥は成歩堂に対して何か自分でもよくわからない、不思議な感情を抱いていた。
けれどそれが彼を「好き」だという感情だとは思っていない。
冥は成歩堂に対しての感情と似ているような感情を彼女の弟弟子である御剣怜侍にも抱いてた。
冥は恋愛面で幼かった。恋愛ということをすることをまだ知らなかったのだ。
それなのに成歩堂にこのような行為をされ、それにここまで
乱されてしまう自分が嫌悪を通り越して不思議でしかたなかった。


成歩堂が冥を愛撫する手を中断し、彼の青いスラックスからすでに十分な質量と大きさをもったものを取り出す。
初めて目の前にする男のものを見て、冥の顔から血の気が引いた。
「あ‥‥いや‥‥っ」
先程までの快感がウソのように、恐怖が彼女を支配する。
「いや! やめて、そんなの‥‥ダメぇ!」
逃げようと必死でもがくが、成歩堂に上からのしかかられているし、
拘束された手首はぎしぎしと鞭が軋む音を立てるだけだった。
成歩堂が自身を冥にあてがう。
「いやあ、イヤっ! 助けて‥‥たすけて、レイジ!」
冥が彼女の弟弟子の名を叫ぶのと同時に成歩堂は己を冥の中に突き刺した。
「ひあああああああっ!」
冥の悲痛な叫びが部屋に響く。先程までの行為で十分に濡れたそこは成歩堂を簡単に飲み込んだ。
成歩堂は容赦なく腰を動かし、冥の奥まで突き上げる。
「んあっ、いや‥‥止めて、やめてぇ!」
「‥‥きみが助けを求めるのはやっぱり‥‥御剣、だったんだな」
体の動きとは正反対に冷めた口調で成歩堂が言った。
「え‥‥?」
「それでもぼくでこんなに感じちゃってるんだろ? 凄い、絡み付いてくるよ。きみの中は‥‥」
腰を打ち付けられて、冥は体ごと揺さぶられる。
「ああっ! はぁんっ! あああっ!」
悲鳴に近かったその声も、次第に快感を貪る濡れた嬌声に変っていった。


「こんな乱れたきみを‥‥御剣は見たことがないんだよね。ぼくだけしか見たことないなんて、もったいないよな」
冥は御剣の名に反応したのか、一瞬表情を固まらせた。
両足を持ち上げ、角度を変えて挿入する。押し寄せる快楽に溺れていく冥に成歩堂は思わず自らの唇を舐めた。
「かわいいね‥‥狩魔検事。今度御剣にも見せてあげようか。きみのこの顔を」
「い、イヤぁ、そ、んなのっ‥‥レイジが‥‥こんなことっ、するはずないわ‥‥!」
「御剣は助けてくれるって思ってるの?」
「‥‥‥‥」
にやり、と成歩堂が意地の悪い笑みを浮かべる。けれど、その目は笑っていなかった。
「御剣は、助けてくれないよ」
「なっ‥‥!?」
絶望をつきつけられた気分だった。
「どう‥‥して‥‥」
「御剣もきみと同じでスナオじゃないからね。アイツ、きみのことが好きなんだよ。御剣だって男だからな。
 ‥‥それに、ぼくがいるのに、御剣にきみを助けさせると思う?」 
成歩堂の残酷なまでの言葉に、今まで必死に堪えていた涙が冥の瞳から溢れ出した。
「ウソ‥‥そんなの、ウソ、よ‥‥」
抵抗することを完全に止めた冥の体内に、成歩堂は無慈悲に精を吐き出した。
最終更新:2007年12月28日 02:24