注意
・巌徒×巴
・巌徒と巴は愛人関係という妄想前提
・フェラのみ。本番なし
・女攻め描写あり
>>555のネタを引っ張っているが、単体でも読める

・キャラが壊れているのは仕様
・おっさんが喘ぐのも仕様



セックスが好きか、と訊かれれば、否、と答える。
けれど嫌いか、と訊かれても、まあそれほどでも──と答えるしかない。
そもそも宝月巴にとって、性行為は。もっと言えば巌徒海慈とのそうした行為は、
好き嫌いでくくれるものではなかった。食事と一緒だ。メニューによって好き嫌い
はあれど、基本は“やらなきゃならないコト”だ。何しろ食べないと死ぬ。
ああ、世の中には食事が楽しくてたまらない人間もいる、という点でも一緒かも
しれない。巴には理解し難いが、セックス自体が好きでやると幸せになる人間もいる
のだろう。
それとも。巴は考える。
恋人とか、夫とか。そういう“愛する相手”とするなら別なのだろうか。
よく分からない。
過去には好きな相手とも経験があったはずなのだが、よく覚えていない。

巌徒海慈を愛しているか、と訊かれれば、間違いなく、否、と答える。
けれど嫌いか、と訊かれても──さてどう答えよう。自分の意志で身体を預けて
いるのだから生理的に嫌だとか触るとじんましんが出るとかレベルで嫌ってはいない
はずなのだが。

宝月巴は考える。
こうして言い訳めいた独り言を繰り返している時点で、自分と彼との関係も知れた
ものだ、と。

考え過ぎがよくないのかもしれない。鉢植えのサボテンにだって、毎日世話をして
やれば情も湧く。名前だってつける。

つまり。
宝月巴が巌徒海慈との性行為に対してちょっとは気を遣ってあげようとか思っても、
それは彼を愛しているからではなく、セックスが好きだからでもなく、単にそういう
付き合いのある相手にサボテンと同程度の情がわいたから──ということなのだろう。
オーケー。言い訳完了。
巴はプラスチックの容器を手にひとり頷いた。極細二百本入り、抗菌加工。『手を
清潔にしてからご使用ください』。
「よし」
頑張ろう。
巴は覚悟を決め、容器のフィルムパッケージを破った。


『今度くちでする際にはもっと上手くやります』
そう発言したのは巴だった。但し“今度”の時期を決めたのは彼女ではなかった。
今夜を“今度”と定めたのは巌徒の方だった。
「や。や。まさかトモエちゃんがこんなコトしてくれるとはねー。変われば変わる
モンだ。イヤホント」
腹立たしいくらいに朗らかな様子で椅子に腰掛ける巌徒と、その足の間に屈みこむ
巴。なんだか何時かに見た光景だった。はだけたバスローブから男根が覗いている
ところも、微妙に下向き加減のそいつを何とも言い難い具合でつつき回している女
の両手も、なにかの繰り返しのようだ。

以前とちょっとばかり違うのは、巴が身につけたバスローブの帯をしっかり結んで
いるところだろうか。お蔭で巌徒としては視覚的に残念なことになっている──かと
思いきや。かっちり合わせた衿と、裾を割り覗く太腿の対比が、これはこれで宜しい。
よくよく考えれば巴の胸元は普段の格好でも見れる。
通常隠されるべき場所が露わになる、それだけでも興奮はする。
しかし同時に通常どうってことなく晒されている場所が隠されると、前者のみの
場合より興奮する──誰の言葉だったか。
まあ、いい。
見たくなったら剥げばいいだけの話だ。
その程度の要求が通るくらいには手懐けてある。
ここしばらくの成果にご満悦な巌徒。彼の心中なぞ知る由もなく、忠実な、少なく
とも余人の評価ではそうなっている女は、相も変わらずの真摯な態度で行為を開始
した。

巴は右手で陰茎の部分を握り、左手は下から支えるようにてのひらを合わせている。
緊張しているせいか、手は微かに湿り、冷たい。ほんのり朱らむ目尻とは対照的だ。
指先は、更に温度が低い。その強張った部分が竿と陰嚢の間をかりかり撫ぜる──
爪を立てないので、ひっかく、とまではいかない──のは、なかなかに刺激的だ。
動きは、猫の喉を掻いてやる仕草に似ている。小刻みに指を動かし、心地好さげに
反りかえる部分を掌を使って優しく撫ぜる。対象が犬猫みたいに可愛らしいもので
ないのを除けば、そのものだ。
「失礼、しますね」
ん。と。
巴が口をあけて、舌を突き出し。亀頭を舐める。
鈴口に沿ってつうっと裏側から舌先でなぞる。刺激にじくりと滲み出た体液を舐め
とるかたちになる。男根が反応し、こころもち持ち上がる。
やわらかい唇とやわらかさの中に弾力と熱を持った舌が、勃起し始めた男根を愛撫
する。
乾いた陰茎に唾液を垂らし、舌でなすりつけ、唇ではむ。巴の頭が徐々に下がり、
側面を圧迫しつつ根元へと向かう。追従するようにして、微かな鼻息が濡れた箇所
にかかる。一瞬だけ冷やされる皮膚は、すぐに内側からの熱で元に戻る。偶に当たる
硬い感触は、歯か。
未だ遠慮というか弱弱しさが残る口淫では、却っていいアクセントになる。
そくそくとした、しかし吐精までには至らない快感が、腰の辺りに溜まってゆく。
「──っは」
舌の動きが止まる。
巴が顔を離し、ぐずるように小さく鼻を鳴らし。
「――」
蚊の泣くような声で、再度、失礼します、と呟いて。
立て膝の姿勢から、顔が伏せられる。
覆い被さる。何に。屹立する男性器に。
まずは亀頭が舌の上に載り、ざらざらした味蕾で擦られ。たっぷりと唾液を溜めた
口腔に迎え入れられる。
舌先は亀頭を越え、張り出した雁の下をつつく。その生温かな舌と、硬い上顎で、
咥えた部分を圧迫される。全体の三分の一ほどだが、巴にはここが限界なのだろう。
それ以上には進まない。

巌徒からは、巴の表情は見えない。
微かに上下する頭と、緊張からか息苦しさからか、強張る背だけが視界に入る。
唯、口のなかのモノを咥えてねぶって吸う、ぢゅうぢゅうという下品な音と、膣内
とはまた違う絡み方をしてくる口の様子から、想像はついた。
それはもう、みっともなく歪んでいるのだろう。
下腹部からくる刺激とは別の、頭の内側からくる愉悦。
彼女を支配するのは己れ。
この女は自分のモノだ。その証拠に。
「──っ?! ん、く――っ」
上顎の、奥。柔らかい肉の辺りをめがけて突き上げる。温かく張りのある感触が
押し返してくる。
苦しかろうに、巴は直ぐには口を離さなかった。身体の震えを殺し、歯を立てぬ
よう唇を開き、耐えている。ひくひく痙攣する咥内はどろりと熱い。
は。と、短い呼気が洩れて。
男根が温かな場所から放り出されて外気へと晒される。熱持つ場所に、ぽたりと
垂れてくる唾液。量が多いのと粘つくのは、巴のものではない体液が混じるせいか。
咳込む音。呼吸を阻害するまでは耐えたらしい。
見上げてくる瞳が、潤んでいる。
「ダイジョーブ?」
口先だけの心配に、こくりと頷くさまが、何とも。
バスローブの袖で口許を拭う仕草と相俟って。
ひどく、煽る。
さて。このまま続けさせて口の中にブチまけるか、それともきちんとした場所に
突っ込んで終わるか。どちらも魅力的な選択肢だが──
と。
まあ。
そんな楽しい悩み事を抱えていたものだから。
「ええと、こう……よね?」
屹立の先端にぞわりとした異様な感覚が生まれるまで、巴がナニをしているのか
気づかなかった。
ぐい、っと。
「おふぅ?!」
ぞわぞわが、押し込まれる。途端、精管を逆流する快感──快感?!
野太い男の喘ぎ声なんて気色悪いものが自分の口から発せられたというのも充分
ショックだったが、それよりも鈴口を起点とするワケの分からん感覚を“きもちいい
もの”と受け取ったことの方が信じられない。自分のことなのに。
歯を食いしばり、脂汗を流しながら、足の間を見る。
屈みこんだ巴がいる。これはいい。左手で屹立を握っている。これもいい。巴の
右手は男根の先端近くで──何か、細いものをつまんで──天井を仰ぐ。平常心。
そう、まずは落ち着いて。現状把握はそれから。
ぐりっとまた掻き回される。今度は堪える。刹那腰が浮きかけたが、堪える。
視線を戻す。巴がいる。巴の鼻先には雄々しくそそりたつブツがある。そしてブツ
の先端に──
「……トモエ、ちゃん?」
「はい」
「ナニ、してるの、かな?」

巴はそこで頬を赤く染め。「こうすると気持ち好くなる、と伺ったので」右手に
持った綿棒を、動かした。
綿棒の頭を呑みこんだ鈴口から、ぐちゅりと粘った音がした。
男性器から、白く細い綿棒が生えている。
ちょっと。いやかなり間抜けな光景だ。突っ込まれてるのが自分じゃなけりゃ指
さして笑いたいくらいだ。
巌徒の様子から何事か悟ったのか、巴の表情が曇る。
「申し訳ありません……慣れていないもので」
慣れているとか慣れていないとかの問題ではない。
そう文句をつける前に、抜かれた。そうっと尿道を滑る一センチメートルの距離
が無限の拷問に思えたとして、誰が責められようか。
とにかく。新しい世界への扉がおいでおいでしているのを幻視しつつも、巌徒は
どうにか耐え切っ「濡らさないと駄目なのかしら」
今。
恐ろしい、台詞が。
見下ろす巴は、
持っていた綿棒をひっくり返しはくんと口で咥えねぶり湿らせ構え直す彼女は、
明らかにナニが問題なのか理解していなかった。
逃げられなかった。
巌徒は椅子に腰掛け、巴に屹立を握られ、不肖のムスコときたら持ち主の意志を
無視してだらしなく口を開け涎を垂らしていた。
引っこ抜いたばかりで拡がったままの尿道へ、再度押し込まれる固い感触。出口
にしか使ったことがない、というか入り口になるとか普通有り得ない場所を逆流する
容赦のない痛みと快楽。ずるずると身体の内側を抉られて、あまつさえ──陰嚢を、
腹の底を震わせる鋭い──抜き差し、いわゆるピストン運動。ぐっちょんぐっちょん
いってるのは先走りだろうか。コレ、凄いことになってるんじゃなかろうか。奥歯
が砕ける勢いで歯を食いしばる巌徒に確認する術はないが。

――攻め手に回っている相手が、巌徒を屈服させてやろうとか。醜態を嘲笑って
やろうとか。そう考えているのであれば、反骨心とか抵抗とかそういうのが持てた
のだが。

「主席捜査官」
優しく。心配の色さえ込めた、問い。
「如何ですか」
私の遣り方で、間違いはありませんか。貴方の希望に沿うものですか。貴方を満足
させられていますか。
下の者から上の者への問い。奉仕する側から奉仕させる側への問い。

繊手が、綿棒を、不慣れな娘に挿入する如く気遣いながら──尿道へ押し入れる。

限界だった。

巌徒にとって幸いだったのは、巴が握ったものの変化を察知したおかげで彼自身は
情けない声を出す危険を冒さずに済んだことであり。

巌徒にとって不幸だったのは、巴が握ったものの変化を察知して、次なる行動に
移ってしまったことだった。

巴の思考の流れを読むのは至極簡単だ。でそう。出すにはフタしてちゃまずい。
フタを外さないといけない。
で。
結果。
慌てて、一気に綿棒を尿道から引っこ抜き。
射精とは似て非なるカタいものが中を駆けあがる感覚が。止めとなった。
「え──きゃっ! や、ちょっと、待っ」
巴の額へ、整った鼻梁へ、唇の上へ、半透明の粘液が振りかかる。
空気に触れて白く濁ってゆく己が体液と、涙目でそれを拭う巴を眺めながら、ああ
強姦される女性ってこんな気持ちなんだろうなァ──と、ふと思った。

「――は」
「……主席捜査官?」
「はっはっは」
そこで。今度から優しくしようとか。せめてプレイ前には合意を取りつけようとか
考えられるなら。巌徒の人生も随分変わっていただろう。
「トモエちゃん。さっき、“イカガですか”って訊いたよね」
巌徒が床からプラスチックの円い容器を拾い上げる。極細綿棒、二百本入り、抗菌
加工。『手を清潔にしてからご使用ください』。
「え、え」
屈辱だ。
例え巴の思惑が善意からであったとしても、とても我慢できるものではない。
「口で説明するのはムズカしいから──直にやろうか」
「ちょっと! 主席捜査官?!」
逃げ腰になる女の裾を踏みつけて、縫い止める。
「さ──最低です! 貴方、そんな──」
「へえ。自分はやっておいて、ヒトにはそんなコト言うの。トモエちゃんってさあ、
そーゆートコあるよねー」
「そんなつもりじゃ──!」
「ま。どっちにしろ」
ケースから綿棒を一本引き抜き、蒼褪める巴に示してやる。
「キミがきちんと“理解”するまで帰さないからね。――じゃ。始めようか?」

屈辱は、受けた分と同等かそれ以上の屈辱でしか雪げない。

巌徒海慈の、男の矜持を取り戻す戦い。或いは巴の不幸は始まったばかりだ。

最終更新:2020年06月09日 17:35