響茜投下します。
・4-4のシミュレート裁判から数日後の設定。
・響也が若干やさぐれ、ヘタレ気味です。




「宝月刑事、取調べの方はどうなった」
殺人の容疑のかかった被疑者の取調べに立ち会い、
それを終えて戻ってきた宝月茜に、上司である課長が声をかける。
「相変らず容疑を否認しています」
「そうか。裁判明日に決まったよ。担当は牙琉検事だ」
「が、牙琉検事ですか・・・?」
その名前を聞いて心臓の鼓動が少し早くなる。
「ああ、だから早急にこの資料、検事局まで持っていってくれ」
「はい・・・」


「今回の事件、牙琉検事が担当だってね」
「久しぶりじゃない?こんな大きなヤマ担当するの」
「あのシミュレート裁判以降、バンドも解散してずいぶん大人しくなっちゃったもんね」
「上がそうさせてるんでしょ?これ以上問題増やされちゃかなわないって」
「あの裁判はマスコミも大騒ぎだったもんねー。おかげでこっちまで仕事になんなかったし」


検事局へ行く前に入ったトイレで、鏡の前でお喋りする婦警たちの話を茜は個室の中で黙って聞いていた。
牙琉響也のまわりで立て続けに起こったバンドメンバーと身内が犯した犯罪。
特にあの裁判員をテスト起用したシミュレート裁判以降、みんなの響也を見る目が変わってしまった。
彼に同情する者もいれば、罪を犯した彼らに対する響也の容赦のない追及に、
残酷、血も涙もないと陰口を言う人もいた。
組織全体が彼を腫れ物に触るような扱いをしているのが嫌でもわかる。

「あいつは何も悪いことしてないじゃない・・・」
自分にしか聞こえないくらいの小声で言った。
婦警たちがいなくなるのを待って、茜はそっとトイレから出て行った。

30分後、茜は検事局に到着した。

コンコン
「どうぞ」
「失礼します」
ドアを開けると、部屋の主はいつもの優しい笑顔で茜を出迎えた。
「明日の裁判の資料を持ってきました」
「ありがとう。早速拝見するよ」
響也が書類に目を通している間に茜は部屋を見渡す。
天井からぶら下がっている大型モニターが3台、
以前は3台すべてがフル稼働していて複数の事件の詳細が映し出されていた。
でも今は1台で事が足りるようだ。他2台には電源も入っていない。
以前は目障りに感じた壁一面のギターたちも、今はどことなく哀愁を感じる。

「よし、明日は予定通りいけそうだな。刑事クン、証言のほうしっかり頼むよ」
「わ、わかってます!」
急に話しかけられ、ついいつもの強い口調で返してしまう。
「ははは、その意気だよ」
「では失礼しました!!」
部屋を出て行こうとしてふと響也のほうを見る。
響也は窓際に立ち、どこか寂しげな表情でぼんやりと外の景色を見つめていた。
茜はドアノブから手を離し、再び響也に近づく。

「ん?まだ何か?」
戻ってきた茜に響也は少し驚いた。
当たり前だ。いつもの茜は用件が済むとまるで1分1秒でもここには居たくないと言わんばかりに立ち去って行くのだから。
茜は響也の前に立ち、肩から提げていた鞄の中からまだ開けていないかりんとうの袋を取り出し、
どれを半ば強引に響也に渡す。
「それあげるから、あんたの方こそ明日の法廷しっかりやんなさいよ!」
我ながらなんて可愛くないのだろうと茜は思った。
渡した後の響也の反応も見ずに、茜は足早に部屋を出た。
その茜が出て行ったドアのほうをじっと見つめる響也。
「しっかり・・・か・・・」

翌日の法廷。
終始検察側のペースで進み、被告の有罪という結末で幕を閉じた。
響也の隙も無駄もない鮮やかな法廷戦術に、その場にいた誰もが感嘆の声をあげた。

「さすがだね牙琉検事。1日でケリつけちゃったよ」
「実力はお墨付きだからね。上の連中が今後彼をどう扱うかまた見物だな」

ざわついた法廷内から傍聴人や裁判官たちがぞろぞろと退出していくなか、
響也は検事席から動こうとしなかった。
その表情はどこか虚ろで、いつも人に見られることを意識している彼らしくない無表情だった。
茜はそんな響也の表情を見て、胸が締め付けられた。
(なんて顔してんのよ・・・勝ったんだからもっと嬉しそうな表情しなさいよ・・・バカ・・・)
お疲れ様でしたとか、おめでとうございますとかかける言葉はあったはずなのに、
今はどの言葉も彼には届かない気がして、茜は何も言わず裁判所を出た。
そしてそのまま警察署へと戻っていった。


「んー、やっと終わった!」
時計の針は夜の9時を過ぎたところだった。
茜は昼間の裁判が終わってから自分のデスクに戻り、溜まっていた報告書をまとめていた。
仕事中もずっと響也のことが頭から離れなかった。
いつもキザでナルシストでちゃらちゃらじゃらじゃらしてるあいつが大嫌いだった。
大嫌いだったはずなのに・・・

PPPPP・・・
「!」
自分の携帯が鳴っていることに気づき慌てて取る。
「はい!もしもし」
「あ、刑事クン?ぼくだけど」
「牙琉検事ですか!?どうしたんですか?こんな時間に」
「刑事クン、今家?」
「いえ、まだ職場です。でもこれから帰るところです」
「そっかぁ。こんな遅くまでご苦労様」
響也の声は陽気だった。元気になったのかな?と思っていると、
「じゃあさ、今からぼくの家に来てくれないかな」
「は!?な、何言ってるんですか!今からって・・・」
「たのむ・・・会いたいんだ・・・」
それだけ言って電話を響也が切ってしまったようだ。

(な・・・何よアイツ!こんな時間に呼びつけて!!家に来いですって!?
来てほしいのなら、アンタが迎えに来なさいよ!!ってそういうことじゃなくてー!!)

頭の中でごちゃごちゃ考えている内に、
電話をもらった約1時間後には響也のマンションの前まで来てしまっていた。

マンション1階の玄関で警察署で調べた響也の部屋の番号を入力し、呼び出しボタンを押す。
「はい」
「ほ、宝月ですけど・・・」
「今開ける。上がってきて」
目の前の自動扉が開いた。
(今ならまだ引き返せる。本当にこのまま彼の部屋に行っちゃっていいの?)
迷っていたが、自動扉が閉まりかけたとき、茜は咄嗟に扉の中に入ってしまった。

「やあ、待ってたよ。どうぞ」
「・・・・・」
部屋のドアを開けて笑顔で出迎えてくれた響也。
赤紫のジャケットは脱いでいたが、いつもと同じだった。
ただいつもと1つ違うのは・・・
「お酒、飲んでたんですか?」
響也からはいつもの男性物の香水に混じり、かなり強いお酒の匂いがした。
「うん、でも1人で飲んでるのも寂しくって。刑事クンから貰ったあれ食べたら刑事クンに会いたくなっちゃってさ。それで刑事クンに電話しちゃった」

リビングに通されると、テーブルの上にはすでに大量に飲んだであろう証拠が残っていた。
「適当に座って。何飲む?」
「あ、あたしはけっこうです。気にしないで下さい」
「えぇー、せっかく来たのに遠慮しないで。あ、コレ食べて食べて。意外と酒の肴に合うんだよ」
差し出されたのは昨日茜があげたかりんとうだった。
「じゃあいただきます」
大きなソファの一番端に浅く腰掛け、かりんとうを1つ摘まんで口に入れる。
「本当に好きなんだね。太らないのが不思議だよ」
「まあそれなりに気をつけてはいますから・・・」
「ふぅん」
「・・・・・」

会話が終わってしまった。
響也が無言でじっとこっちを見つめてくる。
そのあまりにも強い視線に茜は彼のほうを見ることができず、
視線を逸らしたまま何か会話の話題を必死に探した。

「き、今日の法廷、お疲れ様でした!」
咄嗟に出た今日の法廷の話題。
「ありがとう。刑事クンたちのおかげだよ」
「い、いいえ!みんな言ってましたよ。やっぱり牙琉検事はすごいって。今日の法廷だって終始検事が主導権握ってましたし。弁護側の理論を華麗に打ち崩していく姿なんかもう・・・」
「やめてくれ!!」
突然響也が大きな声を発し、茜はビクッと驚いた。

「君まで・・・君までそんなこと言うのか・・・。君までぼくを哀れむのか!!」
今まで見たことも聞いたこともない響也の声と表情に茜の体はすくんでしまった。
響也はがっくり肩を落としながら溜まっているイライラをどんどん吐き出していった。
「さっき検事局長から電話がきたよ。『これからもこの調子でしっかり頼む』だってさ。これからもって、しっかりってなんだよ!!ぼくは今まで一度も手を抜いたこともないし、真面目にやってきた!!真実を追究することがぼくの仕事だろ!?」
茜は何も答えられず、黙って聞いていた。

「なのにあのシミュレート裁判が終わってから、みんなぼくによそよそしくなったり、離れていったり、哀れんだり、挙句の果てにはぼくの側にいたら不幸になるとか言う奴までいる。もうたくさんだ。ぼくがいったい何をしたっていうのさ!!」
ダンッ!と響也がテーブルを思いっきり叩いた。その音が静まり返った部屋の中で大きく響いた。
お酒の力もあるのだろう、こんなに感情的になる響也を茜は見たことがなかった。

「君だってそうだ。いつもはぼくに冷たいくせに、まともに相手なんかしてくれないくせに・・・」
じりじりと響也が茜に近づいてくる。
「君に優しくされたのが一番ショックだった。君だけは普段と変わらないでいてほしかったのに…君にだけは哀れんでほしくなかったのに・・・」
響也の両手が茜の肩を掴み、響也の顔が茜の顔の至近距離までくる。その瞳にはいつもの優しさも力強さもなかった。
「あたし、そんなつもりじゃ・・・」
声が震えていた。励まそうとしたつもりが彼を傷つけてしまっていた。
好き勝手に言う連中と同じに思われたことが、茜もショックで泣きたくなってくる。
「じゃあどんなつもりだよ!」
「あたしはあなたのことが!!」
好きだから!!思わず口に出してしまいそうになり茜は下唇をきゅっと噛んでこらえた。

(好き?あたしがこいつを?だからあたしは、こいつを放っておけなかったんだ…)

でも今ここで言ってしまったら、きっと響也のことをさらに傷つけてしまう、
そう思った茜はただただ黙って俯くしか出来なかった。
そんな茜を見て響也は小さく不適な笑みを浮かべた。
「わかったよ」
そう言って響也はいきなり茜の唇を奪った。

「!!ん・・・っ!!」
突然のことに茜は驚き、必死に響也から離れようとするが、
響也は片方の手で茜の頭をしっかり押さえ込み、もう片方の手で茜の肩を強く押さえた。
舌を強引に押し込み、茜の口内を激しく犯していく。
「んーーっ!!」
苦しくなり、茜は響也の胸をドンドン叩く。
響也が唇を離し、手の力を少し弱めた隙に茜は響也から離れた。
「あ、あたし、やっぱり帰ります!!」
立ち上がり玄関の方へ駆けて行こうとしたが、腕を響也に掴まれ引き戻される。
「帰さない」
低い声だった。響也の目を見て茜は震え上がった。とても冷たい目だった。
同じ目をした男を茜はふと思い出した。
あのシミュレート裁判のときに証言台にいたあの男・・・・・・

「逃げるなんてダメだよ。それに君もさ、夜男の部屋に1人で来て、何をされるかわからないほど子供じゃないだろう?」
家に来て欲しいと言われたときから、この家に足を踏み入れたときから茜はなんとなく覚悟はしていた。
もしかしたら、心の奥底では期待していたのかもしれない。
それを見透かされたような気がして、茜は恥ずかしくて響也から目を逸らしてしまった。
「まさか本当に来てくれるなんて思わなかったけど、来たってことはこういうことしたくて来たんだろ?」
再び唇を強く奪われ、響也の舌が口内の奥深くまで侵入してくる。
「んんっ・・・」
響也を押し戻そうとする茜を制止し、両方の手首を片手でまとめ上げ壁に押し付ける。
もう片方の手で茜の胸元のスカーフを少し乱暴に解き、ブラウスを力任せに思いっきり引き裂いた。
「あっ・・・」
弾け飛んだブラウスのボタンが床に落ち、転がっていく様子を茜は呆然と見つめた。
もう本当に逃げられない・・・。茜は完全に覚悟を決めた。
これで彼の気が済むのなら・・・そう思って茜は黙って耐えることにした。

響也の唇が茜の唇から首筋、鎖骨、そして胸元へとじょじょに下がっていく。
胸を覆い隠す下着を下にずらし、露になった胸の先端に響也は吸い付いた。
「あっ・・・!ん、んんッ・・・」
堪えていた声が思わず出てしまい、両手を押さえられているため口を塞ぐことが出来ず、唇をさらに噛み締め声を抑えた。

「我慢しなくていいよ?ぼくは刑事クンの声聞きたいな」
長い指で茜の唇を撫で、茜の口が少し開いたところに中指を突っ込み軽く咥えさせる。
そうしている間も硬くなっている胸のピンクの先端を舌で唇で弄ぶ。
「ん、ぁぁ・・・っ・・・ふぅん、あっ、あぁぁ・・・っ!」
「可愛いね。もっともっと聞かせてよ」

響也は茜の口から指を抜き茜のズボンのベルトを手早く外した。
ズボンを膝まで下ろし、下着の上から茜の秘裂をなぞっていく。
そこは布越しでも十分にわかるくらい熱く潤っていた。
下着の中に手を滑り込ませ、秘部に直接触れる。
「い・・・やぁ・・・ああぁ!」
「はは、すごい感じてるんだね。どんどん溢れてくるよ。でもまだ触ってるだけだよ?指を中に入れちゃったらどうなるかな」
意地悪な笑みを浮かべて、さっきまで茜の口に入れていた指を今度は秘所へと割って入っていく。
「あっ・・・!!」
すんなりと指の進入を許してしまった。

響也が指を出し入れしているところから、くちゅくちゅという水音が静かな空間に響き渡る。
自らが発している卑猥な音に、茜の羞恥心が増していった。
指をもう1本増やし、中をかき混ぜるように響也の指が激しく動く。

「も・・・もぅ・・・や・・・めてええぇぇっ!!」
茜の限界が近いことを察知しても、響也は指の動きを止めなかった。
そして薄っすらと汗ばんできている茜の白い胸元に、思いっきり強く吸い付いた。
「あぅっ!あぁぁぁっ!!」
頭と目の前が真っ白になる感覚を茜は初めて体験した。

 

最終更新:2020年06月09日 17:34