作者様より転載許可をいただきましたので、アップローダーに上がったテキストを転載します。



32 亡霊×心音。ぬるいけど鬼畜陵辱もの  [sage] 2014/07/03(木) 22:25:45.51 ID:DOhW2klr
 昏睡状態の心音ちゃんを……な非ジャスティスなシチュでの亡霊×心音。
 ぬるいけど鬼畜陵辱ものですご注意を。


 投下するどころかエロパロ板に書き込みするのがいつ以来だ? というレベル=忍法帖のレベルもないので長文投下できないのと、
 内容が人を選ぶネタなので、アップローダーを使って投下します。


 ダウンロードパスは GYAXA です。



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 <<WARMING!>>

 昏睡状態の心音ちゃんを……な非ジャスティスなシチュでの亡霊×心音。
 ぬるいけど鬼畜陵辱ものなのでご注意を。


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 震えが止まらないのは、12月の夜気のせいじゃない。
(い、勢いで隠れちゃったけど……)
 GYAXAの展示室の片隅、巡回の目が届かぬ物陰にて、歯の根をガチガチ揺らしながら心音は座
り込む。
 やっぱ帰れば良かったかなとも思ったが、すぐに頭を振って後悔を捨てた。
(……夕神さんは、お母さんを殺したハンニンなんかじゃない……!)
 その事を証明する為に7年間ずっと頑張ってきた。法廷に立つのがまだ怖いけど、それ以上に彼を
助けたいという願いを支えに戦ってきた。
 でも。真実に向き合う為には、その前に克服しなければならないトラウマがある――この場所だ。
 だから、それを克服する為に、もう一度向き合う為に、こうして展示時間が終わった夜半に潜伏し
ているのだが……。
『……コワイヨー』
 胸のモニ太がぽつりと呟く。
「!?」
 がらんとした空間に響いた電子音に、心音が慌てて首からモニ太を外す。が、あまりにも急いで外
したせいで、手の中からモニ太が吹っ飛んだ。
 カツーンッ、と、モニ太が床に跳ねていく。
 次の巡回がくる前に回収しようと心音が隠れていた所から飛び出す。と、床に転がるモニ太に革靴
の爪先が触れているのに気が付いた。
(見つかった!!)
 その恐怖で心音の頭がざっと冷たくなる。瞼も大きく開かれ、靴下なしで履いている足や、真っ白
なズボンもよく見える。
(――え?)
 見覚えのある足元に心音が顔をあげた刹那、見覚えのある相貌に見た事もないような冷たい煌めき
を宿している”彼”の顔を認識した刹那、心音の意識は切れた。

 ※※※

「――クスリが効いたか」
 床へ倒れた心音を見下ろし、亡霊はふっと息をつく。突然物陰からモニ太が飛んできた時は心臓が
飛び跳ねるかと思ったが。
(しかし……職員がきた時の事を想定して散布しておいたクスリに、まさか彼女がかかるとは)
 7年前の時といいイレギュラーな乱入をしてくる娘だなと亡霊が思った途端、右手の甲の古傷が疼
いた。
(…………そういえば、これも彼女のせいだったな)
 手袋の上から右手をじっと見つめ、亡霊は物思う。
(ジブンの正体を曝く危険なデータが二つに増えたのも、本来なら打ち上げの妨害だけで済む仕事に、
月の石を奪還するという使命まで入ってしまったのも……)
 ――これも全て、彼女のせい。
 右手の古傷が再び疼いたかと思うと、亡霊の胸の中で何かがゾワリと蠢いた。
「……?」
 右手を胸にあてて亡霊が首を傾げる。が、胸で蠢いたモノの正体を追求するより先に、別の考えが
脳裏を過ぎった。
(――もし、このまま彼女がここで眠り続けていたらどうなるだろう?)
 明日の打ち上げ妨害と月の石の奪還が何事もなく終えればそれで良し。
 だがもし何からのトラブル――抵抗してきた職員を殺害するような事態が起きた時、その罪を擦り
付けられるのではないか?
 思い当たった途端、亡霊の目が開かれ、唇が大きく吊り上がる。
「……そうと決まれば、ココネクンにはもう少し……長く眠って貰わないとな」
 この空間に散布したクスリを、もっと――もっと多く深く摂取して、眠りについてて貰わねば。
 床へ倒れた心音を見下ろして顔を大きく歪めると、亡霊はモニ太を拾い上げた。


 人の目の届かぬ物陰まで連れ込むと、霧状にして空間に散布したクスリを、液体のまま心音の口へ
注ぎ込む。
「ん……」
 力の抜けた声と共に、クスリが彼女の唇から溢れ、顎を伝って落ちていった。
「……やはり口腔摂取では限度があるか」
 意識や肉体を弛緩させる効用のクスリだから仕方ないが。
(注射器は持ち合わせていないし、効用が切れる頃合いを見計らって定期的に摂取――は、明日の準
備が出来ないので却下だ)
 さてどうしようかと亡霊が頭を捻っていたら、心音の足が動いた。
 スカートが捲れ、タイツを履いた太腿が露わになる。ランニングが趣味というだけあって、すらり
と形良く引き締まっている。つと興味を覚えて触れてみると、予想以上に柔らかい筋肉の弾力が返っ
てきた。
(……そういえば、持ってきた物の中に脱脂綿があったな)
 亡霊の右手の古傷が疼き、連動して胸の中でも何かが動く。
「――丁度良い」
 7年前につけられた古傷の恨み、ついでに返させて貰おう。
 亡霊はニヤリと笑うと、心音の足からショートブーツを外した。
 スカートも脱がし、タイツを破らぬよう慎重に足から剥いで、パンツ一枚だけにする。水色と白の
ボーダー柄に、紺色の小さなリボンが一つついただけのシンプルなデザイン。おそらく闊達に動き回
れるようにとチョイスしたのだろう。
「んっ……」
 脱がされて寒くなったのか、心音が身動ぐ。
 亡霊は、近くにあった――おそらく彼女自身が持ち込んで羽織っていたのだろう――ブランケット
を床へ敷くと、その上に彼女を寝転がした。
(さて、と……)
 脱脂綿を取り出してクスリをたっぷり染み込ませると、それを右手中指にのせて亡霊は心音の股へ
近付く。パンツを横にズラした途端、心音が寒そうに身動ぎ、サーモンピンクに染まった淫花が羽ば
たくように揺れた。
 薄暗い灯りの下でも瑞々しい光沢を放つ淫花と、その上へちょこんとくっついた粒肉が、心音の呼
吸のリズムに合わせてゆるゆる動く。
(若いだけあって綺麗だな)
 亡霊は素直に賞賛すると、右手中指にのせた脱脂綿を心音の淫花へ宛がう。
「んっ……」
 途端に心音が少し顔をしかめて首を振る。それに構わず亡霊は脱脂綿を押し込んだ。
 淫花がグニャッと歪むや、心音の身体がビクンと跳ねる。固い弾力が亡霊の右手中指ごと脱脂綿を
吐き戻そうとしてくる。
「ひっ……ん、ゃ……」
 心音の口からか細い声が漏れるのを聞きながら、亡霊は必死に右手中指を押し出す。親指の腹で粒
肉を押して揉んでほぐしつつ、脱脂綿に沁みたクスリを淫花や牝肉孔へ擦り付けて潤滑油にして試す
事しばし、ようやく第一関節分だけ脱脂綿を押し込めた。
「……ふぅ」
 亡霊は思わずため息ついて、心音から手を離す。まるで蓋をするかのように横にズラしていた心音
のパンツが戻り、脱脂綿を押し込んだ淫花が視界から隠れる。
(……クスリが効いているからある程度は弛緩しているというのに……)
 それでも尚、侵入を拒むほどの強い弾力と感触を思い出した途端、亡霊の背骨がゾワっと揺らぎ、
ズボンの中で牡茎が鎌首をもたげた。
「――!?」
 膨らんだ股の布地を見下ろして、亡霊が息を呑む。スパイとして感情を亡くして生きてきたせいか
性欲などの欲求も薄く、己の手でしごぐ以外で勃起する事など殆どなかったのだが。
(……まさか夢想する程度で、ジブンがこうなるとは……)
 妙な感心を覚えながら、亡霊は心音の胸へ手をかけ、ブラウスのボタンを外し始めた。
 日に焼けてない肌が雪原のように白く輝き、そのきめの細やかさと相まって、亡霊は思わず息を呑
む。
 ブラのカップを脇へずらせば、予想以上に豊かで瑞々しい張りのある乳房が出てきた。
 水色のネクタイがくにゃりと曲がって、彼女の胸の谷間へ落ちる。左右の乳房の大きさを強調して
くる。
 桜貝のような色をした乳首が、彼女の寝息にあわせて微かに動く。
「……」
 ぽかんと口を開けて見つめる亡霊の中で、右手の古傷と胸の奥が同時に蠢き、空腹にも似た感情が
去来する。ズボンの中で起き上がった牡茎の中にも鼓動と熱が駆け巡る。
(――ジブンが、ここまで女性に対して興味を強くした事はあったろうか?)
 いや、無い。
(ならば何故、ジブンは彼女に対してこうも強い興味を覚えるのだ?)
 そんな疑問に亡霊はしばし固まるが、今は先に決めたタスクを――彼女に、クスリを強く深く”摂
取”させる事が重要だと考え直して、悩むのを止めた。
 試しに、と、亡霊は舌で彼女の乳首へそっと触れる。
「んっ」
 心音がぴくんと身体を揺らす。連動して乳房もぷるんっと震え、亡霊の舌の上で乳首がころころ転
がる。
「ぁ……」
 眠る心音の顔が歪み、頬も少し赤くなった。
「……そうか。キミもキモチヨクなりたいか」
 亡霊はニヤァと笑うと、触れたままだった舌を動かし始めた。
 片方の乳首を舐めて咥えて軽く吸いつつ、もう片方の乳首を左手の指で摘んで挟んでコリコリ弄く
る。
「ぁ……ん、ゃ、ぁっ……」
 心音が寝顔を歪めて身体をピクピク震わせ、頬の赤味を強くしていく。
 その反応が面白くて、亡霊は左掌で乳房全体を掴むと、指の爪で乳首を勢いよく弾いた。
「ひゃっ……」
 途端に心音が身を竦ませ、足を組み替えるように動かす。
「おや、もう濡れてきたのかなぁ?」
 まるで起きているような――実際はクスリが効いて昏睡状態の心音へ笑いかけると、亡霊は右手を
彼女のパンツへ突っ込む。粒肉を押し潰すように乗り越え、脱脂綿を突っ込んだ淫花まで伸ばせば、
クスリとは明らかに違う粘度の感触が指先を濡らしてきた。
 亡霊は顔を綻ばせると、右手を動かし始める。指先で淫花と粒肉を掻き回すように擦って押して弾
く。
「ん、ゃ、ふぁ、ぁ、あ……」
 眠る心音がビクビクと痙攣を始め、乳首がぴんと盛り上がってくる。そこへ亡霊がしゃぶりつけば、
か細い嬌声をあげてきた。
 右手へ熱い飛沫がかかってくるや、淫花を弄くっていた指先がいきなり呑み込まれる。
「っ――!?」
 トロっと熱い感触に亡霊が思わず息を呑んで固まる前で、心音がか細い声をあげて身体を震わせる。
指を呑み込んだ彼女の牝肉孔もビクビクッと痙攣するや、むぎゅぅと締め付けながら快液を吐き出し
てきた。
(昏睡状態の中でもイった、か……)
 右手の指先から伝わる彼女の熱と弾力が、亡霊の胸の中をぽわっと膨らませる。衝動のままに彼女
の乳首を噛みそうになって、慌てて離れる。
 心音の牝肉孔に入れてた右手の指も外れ、指先から彼女の快液が滴り落ちた。
(余計な痕跡を残して、すぐに勘付かれたら厄介だからな)
 あくまでも、彼女の意識がないうちにすませる。
(そう……あくまでも、ココネクンの肉体だけを、イかせ、よがらせる)
 床に敷いたブランケットの上で眠る心音を見下ろして舌なめずりをすると、亡霊はズボンのジッ
パーを下ろした。
 待ちくたびれたと言わんばかりに、牡茎が外へ飛び出してくる。熱と血で膨張しきった牡茎は鉄の
ように硬化し、先端は先走り液でしっとり濡れている。
「……ここまでジブンに興味を持たせたのはキミが初めてだよ、ココネクン」
 何故だろうなぁと嗤いながら、右手の古傷と胸の奥が微かに疼くのを感じながら、亡霊は心音のパ
ンツを剥ぎ取り、露わになった淫花へ自身の牡茎を宛がった。
「ぁっ……」
 眠る心音がピクンと肩を揺らす。こころなしか頬の赤味も強くなる。
 亡霊は口元を大きく歪めると、そのまま牝肉孔の侵略を始めた。
「っ……」
 心音の口から呻くような声が漏れ出たかと思うと、牡茎をねじ切って追い出そうとする圧力がかか
ってくる。
(クスリで弛緩しているのにこの締め付けか……!)
 奇妙な驚きと感動を覚えつつ、亡霊は閉じようとする牝肉孔を無理矢理こじ開けた。
 クスリを染み込ませた脱脂綿を、牡茎を使って奥へ押し込む。
「ゃっ……」
 心音がうなされるような声を漏らして顔をしかめる。無意識のまま本能で逃げようとする彼女の肉
体を亡霊はがっしと掴んで押さえつけると、腰を彼女へ近づけていく、牝肉孔へ牡茎を頬張らせてい
く。
「ゃん、ぁっ……」
 イヤイヤする心音の頬が真っ赤に染まるのに合わせ、ずっ……ずぶぐぶっ……と、微かな音が二人
の腰から響き始める。
 抵抗は未だ強いが、押し返せる程ではない。
 亡霊はふっと息を吐いて嗤うと、一度腰をひき、それから素早く切り返した。
 ぱしんっ――と、少し鋭い音が物陰にて響く。
「――!?」
 心音が眠ったままビクンと飛び跳ねる。牝肉孔も驚いた風に鳴動し慌てて閉じようとしてくるが、
勢いつけた牡茎でもって無理矢理切り開き、根元までズブンと突き上げる。
 その途中で子宮口のコリっと固い感触が牡茎の先端に当たったかと思うと、逃げるように――否、
亡霊の牡茎の尺に合わせて牝肉孔がゴムみたいに伸びた。
「うおっ?!」
「っあ……!」
 思わず驚いた亡霊の下で、心音が苦悶の声を漏らす。強く密着した二人の腰で、破瓜の血を含んだ
快液が亡霊の白いズボンを染めていく。
「初めて……だったのか……」
 だからクスリが効いてても、これ程までの締め付けを――。
 ぽつり口ずさんだ亡霊の背中がぞわぞわっと震える。
(ジブンが、ココネクンの初めてを奪った……世の女性にとって重要視される初めてを、ジブンが手
に入れた……!)
 その事実は胸の奥で熱となって全身を駆け巡り、右手の古傷にくすぐったいような感触が走る。
「あぁ……あぁあ……?」
 一方、眠る心音の口からは困惑するような声が零れ出て、身体が怯えるように震え始める。痛いの
か、喪った処女を嘆いているのか、あるいはその両方か――。
 ただ一つ確かなのは。
「……素晴らしいよ、ココネクン。ジブンが最初に考えてた以上に愉しい気分だ!」
 亡霊は口を開けて嗤うと、腰を前後に振り始めた。
 じゅぶっ、ぐぶっ、と、快液が濁った音をたてて亡霊のズボンに染みを作っていく。心音の股にも
快液は散るが、亡霊が腰を密着させる度にズボンへ全て転写されていく。
 勢いで心音の乳房も前後に揺れ動き、尖った乳首が手招きするような残像を描く。
(あぁ、むしゃぶりついて噛んで痕をつけたい……)
 彼女のナカだけでなく、ソトも滅茶苦茶に掻き回して、雪原のように滑らかに輝く柔肌へ刻みつけ
てやりたい。『キミノハジメテ、ジブンガ奪ッテタンダヨ』と知らしめてやりたい。
 だけどそれは許されない。万が一の保険――ジブンの身代わりで罪を被って貰う為にも、彼女には
眠り姫のままで、犯してイカして汚すのだ。
(――アア、ナント素晴ラシイ!)
 右手の古傷の痕が疼いたかと思うと、亡霊の胸へ炎が灯る。目に映る全てがキラキラ輝き始めて、
牡茎と淫花の狭間で快液がたてる音がよく聞こえるようになってくる。
 煽られて、亡霊の腰打つ動きも勢いを増す。ハッハッと零れる息が熱を持ち、身体が汗でじっとり
湿ってくる。
 牡茎の剛直具合も膨大し、ねじ込まれる牝肉孔が悲鳴をあげるような痙攣を繰り返す。抗うような
反応、それを力ずくで隷属させて心音の子宮口を全力で突き上げボコボコ凹ます度、征服感と達成感
が亡霊の心を満たしていく。
 先に押し込んだ脱脂綿も牡茎の出し入れでグチャグチャに掻き回され、お互いの肉体へ刺激をもた
らす。
「ゃ……ぁ、あぁ……っ……」
 苦悶でこわばっていた心音の寝顔が、徐々に解けて惚けていく。顔だけでなく全身も仄かに色づき、
牡茎が牝肉孔へめり込む度にブルンと揺れる乳房に汗がうっすら浮いてくる。
 淫花から零れる快液も量を益し、打ち込みの度に響く音がピチャピチャ澄んだものへ変わっていく。
「あぁ……素晴らしい……素晴らしいよココネクン……」
 恍惚とした声で呟きながら、亡霊は腰を振って心音を犯し続ける。
 牡茎を根元までめり込ます度、彼女の牝肉孔は熱を含んだ弾力のある締め付けでもって包み込んで
くる。牡茎から腰、そして全身へ、痺れるような快楽が広がっていく。
 亡霊の顔は自然と綻び、右手の古傷と胸の奥がジリジリと暖かくなっていく。陰茎の奥で熱と圧力
が高まり、堪えがきかなくなってくる。
「あぁ、こんなにも名残惜しいのは初めてだ……!」
 うっとりした顔のまま呟くと、亡霊は全身全霊の一突きを繰り出した。
 パァンッ――と、柏手のような音が二人の腰と腰とで響き渡る。
 亡霊の腰骨を甘美な稲妻が貫いたかと思うと、次の瞬間には牡茎が裂けるような痙攣を起こし、鈴
口が堰を切って精液を噴出した。
 心音の子宮口へ、精液の零距離射撃が襲いかかる。
「あ、ん……ぁ……あぁぁあぁ……?」
 眠ったままの心音も、がくんがくんと全身を揺らし、くぐもった嬌声をあげる。牝肉孔も嘆くよう
に悦ぶように痙攣をし、牡茎で思い切り貫かれて形を窪まされている子宮口がビクンビクンと飛び跳
ねた。

 ※※※

「……そしてジブンは、ライターにつけた葵大地の指紋をココネクンのと書き換え、法廷へ提出した」
 話を終えると、亡霊はほぅと息をつく。
「とても素晴らしい一時だったよ……眠る彼女の顔、クスリで弛緩しているにも関わらずきゅうきゅ
うに締め付けてくるナカ……今も思い出す度に、ジブンのムスコは元気になってしまうんだ」
 履いているズボンをちらと見やり、熱と硬さを増す牡茎の感触を確認すると、亡霊は再び顔をあげ
た。
 面会室の分厚いガラスの向こうで、顔色と表情を失ったユガミが視界に飛び込む。
「……なにおおぼらこいてやがるテメェ……」
「キミこそ、ちゃんと考えてみたまえ」
 長い時の果てにようやく声を絞り出せたユガミへ、亡霊は逆に聞き返してやった。
「もし、ココネクンが【事件のあった前日からGYAXAにいた】という確証もないまま偽装工作を
して、『前の日は他の人達と一緒にいました!』と否定されたら? そんな危ない真似をする位なら
他の常駐職員へ濡れ衣を着せた方がよっぽど確実だ」
 亡霊の瞳から鋭い光が放たれ、ユガミが身動ぐ。
「ジブンがココネクンへ罪を被せようとしたのは、彼女が前日の夜からあそこへいたのを知っていた
からだ。そして、彼女がそれを告白したのはジブンが提出した証拠で拘束された後」
 つまり。
「ジブンは前日の夜、あの場所でココネクンと出会った。そしてジブンの散布したクスリで昏睡状態
に陥った彼女を犯した」
「ふざけるなァ!!!」
 淡々と告げた亡霊へ、ユガミは怒鳴りつけた。
「クスリでココネが昏睡したというなら、何故テメェは無事だった!?」
「専用のカウンタードラッグを服用せずに散布するとでも?」
 追求するもの、されるもの、全てが逆転した面会室の壁がビリビリ震える。
「……やれやれ、ユガミくんは疑り深いなぁ。明確な証拠もあるというのに」
「証拠だァ?」
 ユガミが呻いた後で、ざっと顔を青ざめる。
「どうやら気が付いたようだね」
 額が裂けたままのマスクに笑みを浮かべて、亡霊は告げた。
「もしココネクンが何も対処していなければ、彼女の胎内にはジブンが突っ込んだ脱脂綿がまだ残っ
ている筈だ。もしかしたら、ジブンの精液も付着しているかもしれない」
 たっぷり注いでやったからなぁと嗤う亡霊へ、ユガミが全力で殴りつける。分厚いガラス窓がそれ
を遮り、ガァンと重い音が響き渡る。
 亡霊は、ガラス窓へ血を滴らせていくユガミの拳へ顔を近づけると、囁いた。
「今の話、裁判になったらちゃんと証言するつもりだ。キミがいくらウソだと叫ぼうと、聞いたニン
ゲンは……ココネクンはどう思うかな?」
 ここで一度言葉を区切ると、さらに声量を落とし、ユガミにしか聞こえない程の囁き声で続けた。
「……尤も、裁判が始まるまでジブンがここへ居続ければの話だがな」
「――!? テメェまさか俺に脱獄の手引きをしろと……?」
 ガラス窓の向こう側で、ユガミの顔が大きく歪む。
「こんなザル警備、キミの手を借りるまでもない」
 亡霊ははっと笑い飛ばすと、椅子から立ち上がった。
「もう一度言う。ジブンは裁判が始まったら今の話を証言する。こんなザル警備の中へいつまでも居
座る気もない」
 それだけ言い残すと亡霊は面会室から出て行く。
 隅っこに立っていた係官がはっと我に返ると、おっとり刀で亡霊の両手に手錠を、腰に縄をかけて
きた。
(さて、これでユガミくんはどう動くか……)
 両脇に抱えられるようにして連行されながら亡霊はぼんやり考える。
(このままジブンが脱獄するのを大人しく見逃すならば、少し物足りないがそれで良し)
 だがもし――。
(脱獄したジブンを追跡すると見せかけて殺そうとしてくるならば……返り討ちにした上で、ココネ
クンをおびき寄せる餌になって貰おう)
 そう。
(――眠り姫でないココネクンを犯す為の……な)
 ユガミを助ける為に猛勉強して弁護士になった彼女だ。彼の助命と引き替えにといえば進んで肉体
を捧げてくるだろう。
(あの時は眠っていたから反応は薄かったが、次はたっぷりよがらせてあげよう。ココロが逆らえな
い程の絶頂を何度でも与えてやろう。何もかも忘れる程の快楽を、共に味わおう)
 眠りながら犯されていた心音の姿を夢想して、亡霊の口元が自然と綻ぶ。
 連動して右手の古傷と胸の奥も蠢き、亡霊ははっと我に返った。
(それにしても……あの一時からずっと、ココネクンを思い出す度に右手と胸の奥が疼くのは何故
だ?)
 疼く右手を見下ろし、亡霊は首を捻る。
(次にココネクンと会えた時……彼女を犯した時、解るのだろうか?)
 少なくとも、正体がバレて拘束され、時間だけはたっぷりあるこの環境下では、答は見つかりそう
になかった。


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 <<WARMING!>>

 亡霊×心音もの第2話。
 思いっきり鬼畜陵辱しているのでご注意を。


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「ユガミくん。キミは重大なミスをした」
 人里から離れた廃墟の中、塗装が剥げてコンクリが露わになった床へ、革靴で歩く音がカツコツと
響く。
「確かに、ジブンが話した”あの事実”を隠蔽するには、脱獄したジブンを追跡するフリして殺して
しまうのが最善手だろう」
 だが。
「……ジブンを殺せる実力があると過信したのがキミのミスだよ」
 コツン、革靴の音が止まり、ヒュッと風を切る音が続く。
 カラカラカラッ……と、乾いた音をたてて折れた日本刀が床を滑り、柱に拘束されたユガミの前で
止まった。
「グゥッ……!!」
 呻くユガミの唇から血がゴポリと溢れ出て、シャツの襟を赤く染めていく。
 痣で変色して腫れ上がった顔。衣服がボロボロに裂けて露わになった全身には切り傷や痣が幾つも
刻まれている。
 それでも、双眸に宿る光は屈せず、目の前に立つ亡霊を睨み付けていた。
「てめェ……なにが、狙いだ……!」
 掠れる声で、ユガミが呻く。口から血が滴るのも構わずに。
「すぐに解るさ」
 亡霊が不敵に笑う傍から、駆けつけてくる足音がけたたましく響いてきた。
「夕神さんっ!!」
 心音が二人の前へ現れると同時に、亡霊は持ってた拳銃をユガミへ突きつける。
「!? ダメだ、逃げろココネ……!!」
 はっと息を呑んで立ち止まった心音へ、ユガミは精一杯の声で叫ぶ。が、それはとても弱々しく、
むしろ零れる血の量が多いほどだった。
「止めてお願い……夕神さんを殺さないで……!!」
「それはキミ次第だよ、ココネクン」
 目に涙を浮かべて懇願してくる心音へ、亡霊は銃口をユガミへ向けたまま歩み寄る。
「わたし次第って……一体何をすれば良いんですか……?」
「察しが良くて助かるよ」
 亡霊は心音の前で立ち止まると、ニコっと笑みを造って言った。
「ココネクンが身体を使ってジブンを肉体的に満足させてくれるなら、ユガミくんは助けてあげよ
う」
 亡霊の声が朗々と響くなり、心音とユガミの表情が一変する。
「それって……」
「もっと直接的にアメリカンに、セックスしようと言った方がいいかな?」
「!」
 心音の顔が更に青くなる。身体がカタカタ震え始めて、胸のモニ太もヤダヨーと泣きべそをかく。
が。
「ダメだココネ、逃げ……っ!!」
 柱に拘束されたユガミがふいに激しく咳き込み、血を吐き散らすのを見た途端、心音が震えるのを
止めた。
「……解り……ました……」
 瞳に覚悟の色を宿して心音が頷く。
「では早速、服を全部脱いで貰おうか。あ、胸に下げたその機械は、念のため電波を遮断するこの箱
へ入れてくれたまえ」
 はきはきした声で箱を突き出した亡霊へ、心音は震えながらもう一度頷き、モニ太を外した。
 モニ太が箱の中へ仕舞われる。
「…………」
 真っ青な顔で震えながら、心音は身体を包む衣服をゆっくり脱いでいく。
 まずは次にネクタイ、ショートブーツ。髪をまとめていたリボンをほどけば、サイドテールにして
いた亜麻色の髪が解けて流れる。それからジャケットを脱いで畳むと、少し迷ってからタイツをゆっ
くりゆっくり脱いでいく。
 誰かが駆けつけてくる奇跡を期待しての時間稼ぎ。だがここは人里から離れた廃墟の中。願いは虚
しく、心音は一糸纏わぬ姿へなった。
 鍛えられて引き締まった四肢。キュッとくびれたウエストの上下は、瑞々しい果実をそのままくつ
けたかのような乳房と尻。灯りのない廃墟の中でも雪原のように滑らかに輝く柔肌に、男達は一瞬心
を囚われる。
「……【今日も】動きやすい下着なのだな」
 丁寧に畳まれた心音のパンツをちらを見やって、亡霊が告げる。
 強調された【今日も】の部分に、心音がピクリと目端を揺らし、柱に拘束されたユガミが大きく息
を呑んだ。
 一方、亡霊は床に赤いブランケットを敷き、心音へ座るよう促す。
 言われるままに正座した心音の前へ、亡霊は革靴のままブランケットの上へあがり、ズボンのジッ
パーを下ろした。
「まずは口でご奉仕して貰おうか」
 亡霊がズボンから自身の牡茎を引き摺り出す。
 赤黒く膨張した表面を微かに震わせる亡霊のソレに、心音が大きく息を呑んで凍りつく。
「解っているとは思うが、もし歯を立てたり噛み付いたりしたら、その時点でユガミくんを殺す」
 双眸に冷たい輝きを宿して告げる亡霊に、心音はカタカタ震えながら了承し、牡茎へおそるおそる
顔を寄せた。
 心音の吐息がかかって、亡霊の牡茎がピクンと跳ねる。
「きゃっ!」
 思わず悲鳴をあげて心音が離れる。が、頭上から注がれる冷たい眼差しに気付くと、再び顔を寄せ
る。そして震えながら口を開き、舌で牡茎をそおっと舐めた。
 紅色の舌が這うくすぐったさに、牡茎がピクピクッと跳ねる。
「っ……」
 苦くてしょっぱい味に心音が顔をしかめ、亡霊が恍惚と息を吐く。
「ヤメロ……頼む……俺なんざ見捨てて逃げてくれ……」
 柱にくくりつけられたユガミのか細い嘆き声が響く中、心音は亡霊の牡茎を舐めていく。最初はお
そるおそるだった動きが徐々にこなれて、しかめ面だった表情も解けていく。
 咀嚼するように舌と口が動き、牡茎の表面が唾でテカっていく。
「あぁ……イイ……素晴らしいよココネクン……」
 亡霊がうっとりした顔で口ずさみ、よしよしと心音の頭を撫でる。
「でも、そろそろ舐めるだけでなく、しゃぶっては貰えないだろうか」
 この提案に心音が肩をビクリと震わせて固まる。が、数秒後にはコクンと頷き、口を大きく開いた。
 熱い吐息が亡霊の牡茎へかかったかと思うや、心音の口の中へ呑み込まれる。
 舌のざらっとした感触と、上顎や頬の裏のつるつるした感触。それらが複雑に包み込んでくる気持
ち良さに亡霊は思わず感嘆の声をあげた。
「んっ……」
 ちゅっ……ちゅぱっ……と、音をたてて、心音が亡霊の牡茎をしゃぶる。裏筋をなぞって舐める舌
へ、ビクンと跳ねる感触と鼓動が返ってくる。
「むぁんっ……」
 嫌悪感と、亀頭が喉を突いてくる息苦しさから、心音が顔を大きくしかめる。
「……根元まできちんと咥えて貰えまいか?」
「こへいひょうふぁ、はひりはへん……」
 見下ろしながら請う亡霊に、心音は咥えたまま言い返す。
「ならばせめて、咥えない部分は胸で挟む事ぐらいはしてくれないか? 先端だけ暖かいのは落ち着
かない」
「ふぇ?」
 胸で? 首を傾げる心音へ亡霊は頷き、両手で彼女の乳房を脇から持ち上げた。
「ひゃいっ!?」
 思わず驚いて口を離した心音に構わず、亡霊は両手で持ち上げた彼女の乳房を谷間に寄せつつ、自
身の股へ密着させる。
 牡茎の根元が心音の柔らかな乳房によって包まれ、乳房の谷間から突き出るような格好になった。
「ぇ……ぁ……」
 乳房の隙間からニュっと生え出て下唇へ触れてくる牡茎に、心音が盛大に戸惑う。自分の乳房がま
るでアンプみたいに牡茎の熱や鼓動を伝えてきて、心音の身体を揺さぶってくる。
 が。
「こうして挟めば、充分しゃぶれるだろう? ……解ったなら、自分で支えてみるんだ」
 頭上から降る冷たい声に我に返ると、心音は両手を持ち上げ、亡霊の手と入れ替わる格好で乳房を
両脇から寄せて支え始めた。
 むにゅん、と、乳房が歪み、谷間に挟んだ牡茎を揺さぶり、押さえつける。
 頭上で亡霊が恍惚とした表情を浮かべる一方、心音は嫌悪に顔をしかめながら牡茎へ口を寄せた。
 ゆるゆると、心音が亡霊の牡茎をしゃぶって、舐めて、挟んで、包む。
(うぅ……誰か……早く誰か、助けて……)
 必死に願いながら心音が顔を前へ傾けていた所へ、亡霊が気持ち良さそうな声を漏らして腰を突き
出す。
 ずりゅっ――と、牡茎が突き出るように動き、先端が心音の上顎の裏を勢いよくしごいた。
「っ!?」
 思わず咳き込みそうになった心音が、ぎゅっと目を閉じて身を強ばらせる。生温かい風を浴びた時
のような感覚が体内に走り、訳もなく身体が震える。
「よくむせなかったな」
 上出来と頭を撫でてくる亡霊にあえて何も答えず、心音は牡茎を咥え直した。
 ぴちゃ、くちゃ、と、唾の音が部屋の中へ響いていく。牡茎の表面を心音の舌や唇が波打つように
動き、乳房は鼓動に合わせて微かな振動を繰り返す。
(頼むからもう止めてくれココネ……!! 俺なんかの為に、おめぇさんが犠牲になる事ァねェ!)
 亡霊の股の前へ傅き頭を微かに揺らしている心音の後ろ姿に――彼女が強いられている行為のおぞ
ましさに、ユガミが奥歯を折る勢いで噛み締める。せめて拘束が取れれば……と手足を動かしても、
亡霊との闘いで傷ついた肉体に鎖を引き千切るだけの力は無かった。
「っ……!?」
 また亡霊が腰を揺らす。牡茎で心音の口腔をしごいて喉を突いてくる。
「ぅうっ……!」
 気持ち悪さに顔をしかめる心音の体内で、また生温かい風を浴びた時のような感覚が巡り、ぞくぞ
くっと背骨が震えて乳房が揺れる。
 亡霊は、そんな彼女の頭を優しく撫でると、再び腰を寄せた。
 牡茎が心音の口腔へ勢いつけて潜り込む。反動で、じゅぱっ、と唾の飛沫が周囲へ飛び散る。
「んくっ……!」
 心音が顔をさらに強くしかめて、身体をガクガク揺らす。それに構わず、亡霊は腰を前後に振り始
めた。
 心音の乳房と口腔が、亡霊の牡茎に弄ばれていく。
「んーぅ、んんーっ、んあー!」
 心音が顔を真っ赤にしてイヤイヤと首を振る。そこを牡茎の先端が突けば、彼女の頬が内側からボ
コリと凸られる。
「んぁっ!?」
 心音が肩をビクンと竦ませ、背骨をプルプル痙攣させる。両手で寄せた乳房にも痙攣は伝播し、挟
んでいる牡茎を優しく揺さぶる。
「ウム……最高だよ、ココネクン」
 亡霊が恍惚の表情を浮かべて息を漏らすと、心音の頭をぐっと掴んで引き寄せた。
 口の中で響く亡霊の音が変わる。
「!?」
 心音がはっとなったと同時に、亡霊の牡茎が大きく揺らぐ。
 鈴口の先端から精液が噴水のように迸り、心音の舌や喉へ豪雨の如く降り注ぐ。
「んあっ……ゃあぁぁっ……!」
 鼻の奥を直に刺激してくる生臭い香りと、舌を削ぐような強烈な苦味と塩味に、心音が堪らず涙を
流す。頬を伝って流れる雫は、口端から溢れ出た白濁の飛沫と混ざって落ちていった。


 ひとしきり放出すると、亡霊は心音の頭を掴んでいた手と腰を離す。
 陰茎が心音の口から引き抜かれた途端に、彼女の下唇から精液が滝のように流れ落ち、顎や乳房を
汚していく。
「ぅっ……!」
 心音が顔をしかめたかと思うと、床に両手をついて何度も激しく咳き込む。その度に、彼女の口は
精液の飛沫を撒き散らし、床に敷かれた赤いブランケットの上へ染みを作る。
「ウム、我ながら大量に出したな!」
 むせ続ける心音を見下ろして、亡霊がふざけた調子で嗤った。
「テメェいい加減にしやがれェ……!!」
 柱に拘束されたユガミが顔を怒りに染めて暴れる。
 亡霊はフンと鼻を鳴らして嗤い返すと、ぺたんと座り込んだ心音を後ろから抱き締める格好でしゃ
がんだ。
 右手を彼女の股へ宛がい、彼女の粒肉と淫花を指で触れれば、しっとりとした感触が返ってくる。
「……ぃ……い、や……お願い、もう変な事しないで……」
 亡霊の右手を見下ろし、心音が怯えと恐れに顔を歪める。
「ではユガミくんを見殺しにすると?」
「! ち、ちがっ……そういうんじゃなくて……!」
「なら大人しくジブンへ身を捧げるんだ。別に危害を加えようって訳じゃない。ただちょっと、君の
ココに残っている脱脂綿を取り除こうってだけだ」
 亡霊が指で彼女の淫花を軽く叩いて述べた途端、心音の顔から血の気と表情が消えた。
「…………どうして……?」
 瞬きするのも忘れて、心音が亡霊の顔を見て問いかける。
「どうして、それを、貴方が知っているんですか……!?」
「おや? もしかして既にココネクンの体内から排出されてたか?」
 亡霊はわざとらしいまでに目を大きくした後で、唇を愉快そうに吊り上げた。
「知っているも何も、キミの体内へ脱脂綿を挿入したのはジブンだ。葵大地殺害事件の前夜、GYA
XAの展示スペースに隠れていたキミと……」
「黙りなァ!!!」
 亡霊の言葉を、ユガミの絶叫が断ち切った。
「これ以上、ココネへ余計な事を吹き込むンじゃァねェッ!!!」
 文字通り血を吐きながらユガミが叫ぶ。全身の傷口が開いて、赤い血が滴るのも構わずに。
「酷いなぁ。ジブンは、キミタチの大好きな真実を話しているだけなのに」
 亡霊は肩を竦めると、心音の右耳へ唇を寄せた。
「……なぁ、ギモンに思わなかったかい? いくらトラウマがあったにしても、次の日の昼過ぎまで
昏倒し続けるなんて」
 亡霊の囁く声に、心音の右耳を飾る三日月のイヤリングが激しく揺れる。
「もちろん、ちゃんと理由はある。意識や肉体を弛緩させる効用のクスリをたっぷり染み込ませた脱
脂綿……それを、ジブンがキミの胎内へ挿入する事で、すぐに起きられないようにしたんだ」
 そう。
「こんな風にね」
 亡霊が、心音の股へ触れたままだった右手をぐっと曲げる。粒肉を押し潰し、淫花をひしゃげさせ
て左右へ開かせながら、牝肉孔の入口へ指先を突っ込む。
「っあ!」
 心音がビクンと飛び跳ね、仰け反った。
「……あの夜の時も、こんな感じだった。クスリで弛緩させているというのに、キミの身体は頑固で
中々受け入れてくれなかったんだ」
 侵入した指先をねじ切りそうな勢いで押し返そうとする心音の牝肉孔に抵抗しながら、亡霊は淡々
と語りかける。
「抵抗があまりにもキツいんで、指だけで押し込むだけだと心許なかったんで、こっちも使ってキミ
の奥まで脱脂綿を押し込んだ」
 そう言うや、放出した後も臨戦態勢のままでいる牡茎を心音の尻へ擦り付けた。
「!!!」
 心音が目を剥き、ざっと顔を青ざめる。
「……う、ウソ……だって、そんな様子は……」
 意識を取り戻した時は、何も変わった事はなかった。服もそのままだったし、身体が痛いとかも無
かった。
 真っ青な顔で震えながら自分自身を抱き締める心音へ、亡霊はしみじみとした様子で囁いた。
「あの時は驚いたよ。まさかジブンがココネクンの初めてになったとは」
「――!!!」
 心音が身を竦ませ、彼女の右耳を飾る三日月のイヤリングが激しく飛び跳ねる。
「いや……嫌ぁぁあぁぁっ……!!!」
 自覚させられた真実――知らぬ間に亡霊に犯され処女を喪っていた事実に、心音が首を何度も左右
に振って泣き叫ぶ。
「畜生……」
 柱に拘束されているユガミも歯を食いしばって涙を流す。
 二人の涙と嘆きで満ちる廃墟の一角。その中で亡霊は唇を綻ばせると、左手で心音の乳房を鷲掴み
にした。
 同時に右手を更に折り曲げ、指をもっと侵入させる。
「ぃやぁ!!」
 掴まれてない方の乳房をプルンと揺らして、心音が悲鳴をあげる。そんな彼女を押さえつけながら、
亡霊は両手の指を動かし始めた。
 むにゅ、むにゅ、ぐに、ぐに。心音の乳房が亡霊の左手に弄ばれるままに変形していく。
 くり、くり、ぐり、ぐり。心音の粒肉や淫花、それに牝肉孔が、亡霊の右手に弄ばれるままに捻れ
ひしゃげ捩れ擦られ、小さな痙攣を走らせる。
「やっ……あ、あっ……あ……」
 涙に濡れた心音の顔に赤味がほんのり戻ってくる。
 くち、ちゅく、くちゅ、と、微かな水音が、亡霊の右手の辺りからたち始める。
 少しずつほぐれてきた彼女の肉体。最初は右手の中指を入れるのでやっとだった牝肉孔が、人差し
指や薬指も受け入れるまでになっていた。
(こなれてきたか……)
 亡霊の右手の古傷と胸の奥が、ぽわあっと熱くなってくる。勢いで彼女の首筋へ吸血鬼のように吸
い付けば、汗の香りと艶めかしい喘ぎ声が返ってきた。
(……――素晴らしい)
 しっとりと熱い心音の肌に、亡霊は、右手の古傷が埋まっていくような錯覚に陥る。
「あぅ……やぁっ、あぁ……」
 一方、心音は絶望と悲しみの表情のまま喘ぐ。勝手にコリっと尖ってきた乳首と粒肉を亡霊の手に
転がらされては、快液の熱い飛沫を淫花から散らしていた。
「――ひゃぅっ!」
 不意に、心音の声が大きくなる。
「ム? ココが気持ち良いのか??」
 亡霊が一端手を止め、心音の声が大きくなった時の位置まで指を戻す。と、牝肉孔の表面に豆粒の
ような膨らみが出来ていた。
「ひゃいいいっ……!!」
 亡霊の指が件の膨らみを擦った途端、心音が歯の根を鳴らして悶え始める。
「――そうか、これが俗に言うGスポットというものか」
 亡霊がぱっと顔を輝かせ、牝肉孔の膨らみをグリグリと揉んで擦りだす。同時に、乳房を緩急つけ
て握り締めては指先で乳首を弾くようにしごていく。
「ひっ……! や、やめっ、そんな、いじんないで……!!」
 心音が身を竦ませたかと思うと、顔を真っ赤にして悶える。絶望と悲しみ一辺倒だった瞳がぼんや
り曇って、奥の方に別の煌めきが生まれ始める。
 粒肉と淫花がピクピク身悶え、牝肉孔も捩れるような動きをみせる。快液が源泉のように滴り落ち
て、亡霊の右手はおろか敷かれた赤いブランケットまでびちゃびちゃに濡らしていく。
 弄り攻める亡霊の呼吸も自然と速まり、鼓動が早鐘を打つ。心音の尻に擦り付けた牡茎がビキッと
軋むように膨張し、表面に血管を幾筋も浮き上がらせる。
 ぐちゅぐちゅ、ぬぷぬぷ、音がたつ。
「いやっ……何か……何か、ヘンなの、が、く……クるっ、くるのぉっ……!!」
 呻く心音の身体が強ばる。それを解きほぐすように、無理矢理裂くように、亡霊が指を掻き回した
刹那、心音が背筋をピンと逸らした。
「やっ……あ、あぁぁあぁっ!」
 顔を真っ赤にした心音の嬌声が周囲に響き渡る。
 牝肉孔も淫花も大きく鳴動したかと思うと、ぶしゃぁっ、と、大量の快液を吐き散らしていく。
 彼女から発される絶頂の激震を、亡霊は身体で受け止め堪能する。その最中、右手の古傷が疼いて
胸の奥が満ちた。


 心音の絶頂が落ち着いてから暫く、亡霊は彼女から両手を離す。とたんに、心音がこてんと寄りか
かってきた。
「はぁ……はあっ……ふう……ふぁあ……」
 すっかり茹で上がった顔で、心音が呼吸を繰り返す。瞳は悦楽で濁り、口端からは涎が垂れている。
力無く投げ出したた両足の奥では、淫花が快液をゴポゴポ流し続けていた。
「気持ち良くなってくれて嬉しいよ」
 亡霊はニヤリ笑うと、寄りかかってきた心音を両手で持ち上げ、その下へ自身の腰を滑り込ませた。
 牡茎が、真上に来た淫花の気配を察してビクンと蠢く。
「止めろ下郎がァッ!!!!」
 喉を裂く勢いでユガミが怒鳴る。しかし、声は虚しく響き渡るのみ。快液を垂れ流す淫花と牡茎の
距離は縮まり、零になってマイナスになる。牝肉孔へ牡茎がインサートされていく。
「やっ……あぁっ、あうっ……」
 ずぶずぶと入っていく異物――亡霊の牡茎を前に、心音が唇を戦慄かせる。血の気を失った顔に浮
かぶは絶望と嘆きの感情。だが亡霊の牡茎が根元までずぶんっとめり込んだ刹那、瞳の奥に悦楽の濁
りを浮かべて仰け反った。
「相変わらず、キミは、ぎゅうぎゅうに締め付けてくるなぁ」
 亡霊は心音を持ち上げていた右手を離し、彼女の粒肉と淫花を牡茎へ擦り付けるように押し潰す。
「ひゃいっ!」
 心音が再び悦楽の濁りを瞳に浮かべて跳ね、みっちり挿入された牡茎を自らしごく格好になる。
「うおっ!?」
「ひゃいぃ!!」
 強烈な締め付けと摩擦熱に亡霊が思わず声を漏らす前で、心音が甲高い嬌声をあげた。
「まさか、キミがそんなにヤる気満々だなんて、思わなかったよ」
 亡霊は熱っぽい声で囁きかけると、その場で飛び跳ねるように腰を動かし始める。
「! ち、違っ……あああ!!」
 首を横に振りかけた心音がビクンと身体を揺らす。
 彼女の牝肉孔にも電流のような痙攣が走り、亡霊の牡茎や腰骨を痺れさせてきた。
「どこか違うんだって?」
 亡霊は腰を動かしながら、右手で粒肉と淫花を圧して揉んで陰茎へ擦りつける。
 ずっちゅ、ぐっちゅ、と、陰茎のインサートのリズムにのって飛び散っていく快液。
「やっ、やだっ、そんなっ、ひっかかないでぇ……!」
 両手を顔に当てて悶える心音の乳房が、ぷるんぷるんと上下に揺れる。
「――ああ、そうだな」
 前ハ出来ナカッタ事、シヨウカ。
 キミノハジメテ、今現在、その証ヲ今コソ刻ミツケヨウカ。
 亡霊は右手を外すと、根元までしっかり結合した状態のまま体位を変えた。
 後背位から正常位へ。演舞のように鮮やかに、二人の位置が切り替わる。
 仰向けに押し倒された心音の長い髪が、さらりと衣擦れにも似た音をたててブランケットの外まで
広がる。
「ぁ……?」
 急に変わった視界に戸惑う心音の乳房へ、亡霊が猛然とむしゃぶりついた。
 欲情のままに乳房を吸って舐めて歯形をつけて、腰をガムシャラに動かしていく。
「やっ、あ、ああっ!」
 心音の嬌声が亡霊の耳をくすぐる度に、右手の古傷と胸の奥で何かが疼く。それに煽られるまま、
ぢゅうぅぅぅぅっ……! と、ビブラートをかけて乳房へキスをすれば、甲高い悲鳴と共に彼女の髪
が波打つように揺らいだ。
 雪原のように白く輝いていた心音の柔肌が、亡霊の歯形とキスマークでぽつぽつ赤く刻まれる。
 密やかに咲いていた淫花が、繰り返される牡茎の抽送に充血して膨らみ、自ら牡茎へ貼り付いて擦
られにいく。
「やっ、ま、また、ヘンなのが、くるっ……!」
 心音が歯の根を鳴らして全身を戦慄かせる。牝肉孔も打ち震え、何度も激しく小突かれている子宮
口がキュゥっと引き絞られては花咲くように弛緩する。
「やだ、クるの、やっ……」
 涙をぼろぼろ零してイヤイヤする心音に対し、亡霊は腰を止める。そして、牡茎が外れるギリギリ
まで下がった後、全力で打ち込んだ。
 ぱぁん! と、心音の尻と太腿から心地よい音が響く。
「あああぁっ!!」
 心音が背筋を伸ばすように仰け反り、余波で乳房が勢いよく上下する。それを手と口で捕まえ吸い
上げながら、亡霊は腰をガムシャラに動かす。
 悶えるように捩れる牝肉孔を牡茎でゴリゴリ擦り、剛直と化した亀頭で子宮口を何度も何度も殴り
つける。心音の口から絶頂の囀りを何度も響かせる。
 そうして、ようやく征服の証を刻む事への衝動が収まった亡霊が動きを止めて上体を起こした時に
は、すっかり茹で上がった顔で心音が床にのびていた。
 絶望や嘆きの表情に快楽の色を塗り重ね、ハーッ、ハーッと呼吸を繰り返す口端には涎の筋がつい
ている。くんにゃりと解けた手足はビクビクと小刻みに痙攣していた。
(……随分とイったようだな)
 見下ろす亡霊の前で、牝肉孔が大きくしゃくりあげる。
 根元までみっちり密着した牡茎が激しく揺さぶられ、思わずパっと弾けそうになる。
 とっさに奥歯を噛んで射精衝動を堪えると、亡霊は牡茎を外に出した。
 外の空気の冷たさに、牡茎が縮んで射精衝動が下がる。
「ぁ……」
「そこで四つん這いになるんだ」
 終わった……と、安堵しかけた心音へ亡霊は感情を消した声で命じた。
「っ……!」
 心音がギュっと顔をしかめつつも、亡霊の冷たい眼差しに身体をゆっくり回してうつ伏せになる。
そして、まるで生まれたての子鹿のように全身をプルプル震わせて、手足を伸ばし始めた。
 必死に四つん這いの体勢をとろうとする心音の姿に、外気にふれて落ち着いていた射精衝動が見る
間に昂ぶっていく。
 堪えきれず、心音の尻から骨盤を包む形で掴んで腰を浮かせると、苦しげに痙攣していた牡茎を突
っ込んだ。
 いやらしい水音たてて、牡茎が牝肉孔へ飛び込んでいく。
「あうっ――!」
 心音の上体が崩れ落ち、乳房がブランケットへプレスされる。両膝もガクガク揺れて滑ろうとする
のを亡霊が両手でしっかり押さえ込むと、衝動のままに腰を振り始めた。
 じゅっぷじゅっぷずっぷぐっぷ、快液からせわしなく音が響く。
 肌に珠のような汗をうかせて、心音の尻と乳房が瑞々しく揺れる。亡霊の牡茎が牝肉孔を勢いよく
突き進んでは子宮口をボコボコに凹ませるリズムにのって波打つ。
「あっ! あ! やっ、やぁあっ!! またなにかク……ぅっ……ぅあ、ああぁっ!!」
 下に敷かれたブランケットを握り締めて心音が悶える。右耳を飾る三日月のイヤリングもいやいや
するように左右に揺れる。
「お、おねが、い……もうゆるして……! はなしてぇ……!!」
「駄目だ。ジブンはまだ満足していない」
 亡霊が腰を打ち込む。
 牡茎が牝肉孔をゴリュゴリュ削ぐように進み、子宮口へ衝突する。
 牝肉孔が身悶えるように痙攣し、子宮口のひだが牡茎の先端を巻き込みながら収縮する。
 先端から全身へ駆け巡る電流のような刺激に亡霊がたまらず声を漏らす一方、心音が泣きながら絶
頂の声をあげた。
「素晴らしいよココネクン。もう何度出してしまおうとしたか解らない」
 臍の下に力を篭めて衝動を抑えたまま、亡霊が語りかける。
「出す……?」
 真っ赤に惚けた顔で呟く心音の胎内で、牡茎が大きく脈動して自己アピールしてくる。
「ひっ……! や、やめて! ださないでぇ!!」
「そうかそうか! ならばジブンもギリギリまで我慢しよう!!」
 あえて違う意味と捉えて嗤い返す。
「ち、ちが……あぁぁっ!!」
 か細い声で訂正しようとしてきた心音を牡茎で突き上げて黙らせると、亡霊は腰を振るスピードを
速めた。
 ぱっぱっと軽く叩くような音にのって、ぐちゃぐちゃぬちぬちぐぷぐぷごぷぅと、水音が激しく響
き渡る。
 心音の全身が戦慄くように揺らぎ、長い髪がムチのようにしなって右耳のイヤリングを呑み込むよ
うに隠す。
「やぁっ! ぃやあ……っ! ん、ああーっ!」
 ボロボロと涙を零して嘆く瞳は悦楽に溺れ、上下の口が涎と快液をだらしなく零していく。
 快楽が何度も集散し、やがて絶頂となって心音の胎内で爆発しては、また快楽となって散っていく。
「も、もう、止め、て……オナカ、おかしくなる、ヘンになっちゃうのぉ……!」
 口では懇願する一方、下の牝肉孔はぎゅうぎゅうに締めてしゃぶってくる。
 そのギャップと締め付けの気持ち良さに亡霊の頭の中もグツグツ煮え立ち、臍の奥が昂ぶっていく。
(さすがにジブンも限界だな……)
 亡霊も唇を綻ばすと、全力の一突きと共に身体の力を抜いた。
 ぼこんっと凹ました子宮口に向かって、びゅるっ、びゅるるるるっ……!! と、牡茎が精液を注
入していく。
「!? お、オトがっ……オトがするぅっ……! おなかに、ビクビクひびいてくるぅ……!!」
 心音がはっと目を剥き、それからボロボロ涙を流し始める。
「いやぁ……いやぁぁぁあああっ……!!!」
 首を何度も振って嘆く一方、声には隠しきれぬ程の悦びがのり、絶頂で痙攣する肉体の芯では牝肉
孔が身悶えうねる。
 その痴態を淡々と眺めながら、亡霊は、精液を絞り出して注いでいく。びゅるびゅると迸らせてい
く度に、右手の甲で古傷の痕が埋まっていく錯覚を抱いた。

 ※※※

 全てを注ぎ終えた後、亡霊は何度か腰を前後させてみる。
「あぅっ、あぁっ、あんぁっ」
 弛緩しきった声と身体で心音が揺れる。絶頂による痙攣のしすぎで麻痺したのか、牝肉孔はとても
なだらかで締め付けもこないが、これはこれで良い後味だった。
(……そろそろ止めておくか)
 全てを出し切った筈の牡茎が再び臨戦態勢へ入ろうとするのを察知し、亡霊は腰をひく。
 ずりゅぅっ――と、精液の混じった快液を一緒に掻き出しながら引き抜かれた牡茎が、少し不満げ
に蠢く。が、外気の冷たさを前に大人しくなった。
 亡霊が心音から両手を離す。
 ズボンへ牡茎を仕舞ってジッパーを閉めるのと同じだけの時間をかけて、心音の身体はゆっくり崩
れていった。
「…………」
 放心しきった顔で寝転がって、心音が呼吸を繰り返す。ただ静かに泣きながら、赤いブランケット
を握り締める。
 その顔をしばし眺めてから、亡霊は柱に拘束したままのユガミの方へ近付いた。
「……下種がァ……!!!」
 革靴の足音を聞きつけ、ユガミが閉じていた瞼をぱちり開いて亡霊を睨め上げる。溢れ出た涙が両
目を伝い落ち、襟に付いた血の染みと混ざり合う。
「約束通り、30分したらこの場所を警察へ通報しておく」
 亡霊ははっと笑い飛ばすと、踵を返して心音の元へ戻った。
 赤いブランケットで彼女の身体を包むと、そのまま横抱きにして持ち上げる。
「待ちなァ! ココネをどうするつもりだ!!」
 涙と血を散らしながらがなるユガミへ、亡霊は振り返らずに答えた。
「ココネクンにはジブンのDNA情報をたっぷり注入してしまったからね。このまま置いておく訳に
はいかないんだ」
 声が響くや、ユガミの頭の中が氷点下にまで冷える。
「ヤメロ! どのみちムショに入った時点でテメェの個人情報は洗いざらい登録されてンだ!! コ
コネには手をかけるな! 殺すなら俺を嬲り殺せ!!」
「――殺さないよ、ココネクンはね」
 騒ぐユガミの方を向いて、亡霊は顔を綻ばせた。
「初めてなんだ。ジブンが、ここまで飢えを覚えるのは。任務で何度か女を抱いてきたが、こうも愉
しい気分になって、渇望すら覚えたのは、ココネクンが初めてなんだよ」
 だから連れて行く。
「ユガミくんの命を助けたくば、ジブンを肉体的に満足させる……その約束を継続して貰う」
 そう言った時の、亡霊の被るマスクに穏やかな微笑みが自然と浮かんだ。
「!!! ヤメロ……!」
 ユガミが眼球を零さんばかりに瞼を剥いて震え始める。
「頼む……俺ァどうなっても良いからココネだけは……ココネだけは連れていくな! 頼む!!」
 懇願するユガミから亡霊はぷいと背を向ける。そして心音を抱えて歩き出そうとした矢先、彼女の
手が亡霊の頬に触れてきた。
「お願い……大人しく貴方について行きますから、その前に、夕神さんへサヨナラの挨拶をさせてく
ださい」
 懇願する心音の声は、亡霊の胸の奥と右手の古傷を疼かせる。
「……良かろう。ならば約束の口付けを」
 亡霊が顔を突き出せば、その唇へ心音が口を重ねてきた。
「――Excellent!」
 亡霊がぱっと明るい声で叫び、心音の身体をそっと下ろして立たせてあげる。
 羽織らされた赤いブランケットを両手で抱えるようにして握り、身体の芯からふらつくバランスを
かろうじて保ちながら、心音はユガミの前へ歩み寄って跪いた。
「……ありがとうございます、夕神さん。わたしの知らなかった恥辱を隠そうして、庇ってくれよう
として。7年前のあの時のように、心も身体もボロボロにしながら守ろうとしてくれたの、わたし嬉
しかった」
 後ろで亡霊が見張っているのを感じながら、心音はユガミへ話しかける。
「ココネ……」
 掠れきった声で呼びかけるユガミへ、心音はにこっと笑って言い放った。
「でもね、夕神さん。もう、お母さんに義理立てして、わたしを守る必要なんてないんですよ?」
 ユガミの表情にびきりと亀裂が走る。
「だから、これからはお互い相手の事なんて忘れて生きてきましょう。お互いの知らない場所で幸せ
になりましょう」
 心音は右耳のイヤリングを外すと、ユガミの前へそっと置く。それから、ユガミの顔を真正面から
見つめて微笑んだ。
「さようなら」
 これが最後だと思えば、笑顔は簡単に取り繕える事が出来た。
「わたしの事なんか忘れて、失った7年分の幸せを、ちゃんと取り戻してくださいね」
 ――貴方の事、ずっと大好きでした。
 ――でも、もうおしまいです。
「さようなら」
 もう一度笑って言うと、心音は亡霊によって紅く汚れた乳房をブランケットでそっと包み隠して立
ち上がった。
「……待ちなァ、ココネ……」
 柱に拘束されたまま震えるユガミを置いて、心音は亡霊の隣へ戻っていく。肩に手を掛けられ、抱
き寄せられるままに寄り添って、亡霊と共にこの場を立ち去っていく。
「頼む……俺の元から去ろうとすンな……そんな下種野郎なんかに着いて行くな……ココネ……!」
 ユガミが血を吐きながら叫んでも、心音は振り返らず亡霊と共に遠ざかっていく。下ろした髪の毛
を、まるでバイバイと手を振るように揺らしながら。
「駄目だ、行くな……! 行くんじゃねェ……! 戻ってこいココネ……!!!」
 ユガミがガチャガチャ鎖を揺らして手を伸ばしても、心音の元には届かない。亡霊に連れられるま
ま、視界から消えていく。
「ココネぇぇぇぇえぇぇっ!!!」
 柱に拘束されたまま嘆くユガミの絶叫は、廃墟の中に虚しく響き渡った。


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 <<WARMING!>>

 亡霊×心音もの第3話。
 今回も結構キツい鬼畜陵辱やってるのでご注意を。


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 わたしは今、どこか解らぬ山奥の別荘にて、お母さんを殺した男に飼われている。


「んっ……ふっ……んぅっ……」
 外から差し込む月明かりだけが照らす部屋の中、悩ましげな声と息を鼻から零しながら心音は顔を
前後に振り続ける。口に亡霊の牡茎を頬張って、その唇や舌、時には喉まで使ってしゃぶっていく。
「ココネクンも随分上手くなったなぁ。最初の頃は中程までしか咥えられなかったというのに」
 亡霊がどこか歓迎深げに口ずさむと、目の前で傅いている心音の頭を優しく撫でる。
 心音は何も答えずに、顔を亡霊の股へぶつけるように前へ振る。グロテスクなまでに膨張した牡茎
を根元まで呑み込む。
 ずりゅぅっ――と、唇と牡茎の表面で唾が滑る音が響き、口の中で牡茎がノックするような動きを
してきた。
「っ……!?」
 亡霊の音の変化を聞きつけ、心音が慌てて牡茎の位置をずらす。
 次の瞬間、牡茎の先端が大きく脈動するや、心音の口の中へ精液を吐き出してきた。
 舌を削ぐような苦味と塩味が、中途半端な生暖かさと粘りけが、まるでクラッカーのようにびゅる
びゅる飛び散る。
「んんっ……!!」
 心音は苦しげに顔をしかめつつも、唇は牡茎へぎゅっとくつけて、精液が外へ漏れないようにする。
 やがて放出が止まり、牡茎がゆっくり引き抜かれた。
「んぁっ……」
 心音の口が空気を求めて開かれ、中に溜まった白濁液がデロリと蠢く。
「その顔、いいな」
 出された精液を飲み干そうとした心音を亡霊が手で制すと、近くに置いてあったポラロイドカメラ
を掴んだ。
 右手で牡茎を心音の口端にくつけると、左手でシャッターを切る。
 ストロボの閃光に心音が顔をしかめた前で、ポラロイドカメラから写真がゆっくり排出されてきた。
「――ウム、なかなか良い」
 亡霊がぱっと顔を明るくさせると、身を翻してベッドに飛び乗り、頭上の壁に設置したコルクボー
ドへ写真をピン留めした。
「写真も随分増えてきたな。そろそろアルバムも用意しようか」
 コルクボードに貼った写真達――今し方撮ったばかりの【赤く惚けた顔で精液を口の中いっぱいに
溜めている心音】とか、【乳房に牡茎を挟んで先端をチロチロ舐めている最中の心音】とか、【亡霊
の上へ後ろ向きに跨り、肛蕾や淫花を晒して牡茎を咥え込んでいる】構図のとか、【ベッドの上へ寝
転がされ犯されている真っ最中】のとか、【快液と精液を垂れ流す股をだらしなく開いた心音の姿】
――を、亡霊が舐め回すように眺める。
 その後ろで、心音は黙々と精液を飲み干す。本当は吐き捨てたいが、それをやると亡霊の革靴をピ
カピカになるまで舐めさせられるので、大人しく全部飲む。
「ココネクンは素直で嬉しいよ」
 ようやくの思いで心音が嚥下し終えたのと同時に、亡霊が振り向いて笑ってきた。
(……やっぱり。わたしが飲み干すかどうか監視していた……)
 気怠げな眼差しで見返す心音へ、亡霊がベッドへくるよう手招きしてくる。
 それは、心音にとって、魔女の火炙りにも等しい合図。今宵もまた母を殺した男に犯され、身体を
隅々まで蹂躙されて焼き尽くされていく……。
(……いつまで、わたしは悲しむのだろう)
 ハジメテから、この男に身体を汚されているというのに、今も尚、何を悲しむのだろう。
「……」
 心音は気力の削げ落ちた顔で頷くと、のろのろした動きでベッドへ乗った。

 ※※※

 次の日。
 晴天の下、ランニングルックに着替えた心音が山の遊歩道を駆けていく。
 レモンイエローのタンクトップブラの中で乳房が機嫌よさそうに揺れ動き、サイドテールにした亜
麻色の髪が規則正しく左右に揺れる。

『食料等の生活必需品補充の為、数日ほど留守にする』
 早朝。亡霊の作った朝食を二人で食べながらの席で出た一言。
『その間、ココネクンには一人で過ごして貰う事になるが……』
『大丈夫です! わたしだって食事作れますって前にも言ったでしょう?』
 思わず喜びを隠しきれずに返答し、心音がしまったと息を呑む。
『そうだな。今だって洗濯はココネクンに任せているのだから』
 が、亡霊は特に傷ついた風もなく頷くと、白銀の金属輪を取り出してきた。
『ジブンが出かけると同時に、この家の仕掛けも起動状態にしておく。戻ってくるまでずっとこの首
輪を装着しておくんだ』
『この家の中で寝たり、シャワーを浴びる時も……ですか?』
 亡霊の手にされるがまま、心音は首輪を装着する。チリチリと微かな電子音が首の皮膚を伝ってく
る。
『ああ。でないとキミがランニングコースで見かける野生動物のようになる』
 亡霊がニヤリと嗤ってきた時、遠くから何かが動く音と動物の絶叫が木霊してきた。


「……朝の声は、あなたのだったのね」
 いつものランニングコースから少し離れた雑木林の中、杭を穿たれワイヤーで宙吊りにされた狸の
骸を、心音はそっと下ろしてあげる。
「ごめんね。スコップとかないからこの程度しか出来なくて……」
 周囲から枯葉をかき集めて骸へかけてあげると、心音は両手を合わせて冥福を祈った。

 雨天以外は毎日続けているランニング。四六時中監禁されるかと思っていたが、意外にも、毎夜の
陵辱以外は、おおむね前と変わらぬ日常を送れていた。むしろ亡霊から奨励されてきた。
 三回の炊事と別荘の掃除は亡霊が行い、心音が洗濯を担当する。これも亡霊からの提案だ。前に一
度、家事の担当を代わらないかと申し出たが、にべもなく却下された。
『スパイたるもの普段の食事や掃除は他人に任せない』
 そう言ってた時の亡霊の声に宿っていたのは、警戒のノイズ。
(ああ、この人は誰も信用していないんだ)
 食事に毒を盛られるかもしれない。食材を切る為の包丁を武器に襲いかかってくるかもしれない。
掃除をしながら、罠をこっそり仕掛けてくるかもしれない。
 だから、そうされないよう自分で行う。
『正直、キミこそジブンの食事を警戒もなく食べられるものだな』
『……この環境で、わたしが貴方に逆らえる事ってありますか?』
 呆れた風に返してきた亡霊に、心音は思わず涙を目に浮かべていた。


 心音はランニングコースまで戻ると、持っていた水筒に口をつける。
(……わたしは、いつまで”わたし”のままでいられるんだろう……)
 吊され死んでいた野狸の姿が自分自身の行く末と重なり、絶望に胸と顔が痛む。イヤリングの重さ
を失った右耳にも空虚な感覚が走る。
 それらから逃げるように、心音は再び駆けだした。
 山の中腹、ステンドグラスが割れて朽ちかけた教会の前で折り返すと、きた道を戻っていく。
 この辺りの山は昔リゾート地として売り出して失敗した地域らしく、人間の数――といっても心音
と亡霊の二人だけだが――よりも建物の方が多い。
(そうだ、せっかくだし他の別荘も調べてみよう)
 ふと思い立って、あちこちに点在する別荘を順々に立ち寄って、中を覗いてみる。
 心音達が住んでいる別荘と違い、窓ガラスが砕けて野ざらしになった室内はどこもがらんどうだっ
た。
「……倉庫の代わりに使う事もしてないんだ」
 誰も信用していない亡霊の事だ。簡単に見つかるような場所に危険物――になりそうなものは置か
ないのだろう。
 落胆の息をついた心音の顔へ、影がかかった。
「?」
 振り仰ぐと、一羽のカラスが雑木林へ向かって降下していく。
(そういえば、あっちにはさっき下ろしたばかりの狸があったっけ……)
 ぼんやりと考え、それから「!」と、竦み上がった。
「だ、だめっ!」
 心音が大慌てで駆けつけると、狸の眠る木の幹にカラスが杭で磔にされていた。
「ガッ、ガァアァァ!」
 心音の顔を見るやカラスがわめいて羽ばたく。
「ウソっ生きてる!?」
 心音も思わず顔に手を当てて驚く。よくよく見れば、杭を打ち込まれたのは片翼で、カラス自身の
命には別状なかった。
 が――。
 心音が杭を引き抜いた途端、カラスが羽ばたこうとしてそのまま地面へ落下する。
(翼……完全に折れちゃっている)
 ギャアギャア騒ぎながら必死に飛ぼうとするカラスを、心音は淡々と眺める。
 カラスは、この場では死ななかっただけ。翼を折られ、飛び立てないのなら結局は同じ――やがて
は衰弱して死ぬ運命だ。
「…………」
 心音は杭を投げ捨てると、カラスに向かって手を伸ばした。
「おいで。あなたの羽根、治してあげる。また飛べるようになるまで、お世話してあげるから」


 カラスを抱えて自分達の住む別荘まで戻ると、心音はカラスの翼を慎重に折り畳み、ビニールテー
プを巻いて固定する。
「クアァ……」
 カラスが不信感を露わに巻かれたビニールテープを見やる。
「翼が折れた時はね、まずはこうやって応急処置をするの」
 本当はすぐに病院へ連れて行かなきゃいけないが、亡霊に”飼われている”身ではそれも叶わず。
「……大丈夫。治るまで毎日新鮮な水と餌をあげるから」
 心音が微笑みながら述べると、餌という言葉に釣られてかカラスが上機嫌に鳴いて膝に乗ってきた。
「ありがとう。信じてくれて」
 再度微笑み、指の爪でカラスの首筋を掻いてあげる。かつて法廷で彼が相棒の鷹へそうしていたよ
うに。
「っ……!」
 思い出して顔をしかめた心音へ、カラスが不思議そうに鳴いてくる。
「……ごめん、何でもな――」
 言いかけた心音の瞳にカラスの顔が映る。眦が鋭くて目元も坐り、常時睨み付けている――まるで、
7年の獄中生活を経てやさぐれてしまった彼のような目つきが映る。
「…………夕神さん……」
 気付いて呟いてしまった途端、心音の両目が大粒の涙をぼろっと零した。
 まるで豪雨のように顔を濡らした涙に、心音が息を呑んで震え始める。
(何で……)
 お互い忘れましょうって言って背を向けたのは、わたしの方なのに。
 絶叫あげて何度も呼びかけてくる彼を見捨てて亡霊に着いていったのは、わたしなのに。
 なのに、何で。
「あぁっ……うわぁぁあぁぁぁっ……!!」
 膝に乗っているカラスが焦るのも構わず、心音は声をあげて泣き始めた。

 ※※※

 涙に引きずられるように心音の意識が闇の中へ沈んでいく。
 膝の上で心配そうに見上げてくるカラスの感触も消え、身も心も解けていく。
 夢の中。まどろみ。心音がゆらゆらたゆたっていたら、ふいに誰かの絶叫が響いてきた。
 絶叫がココネと呼んだような気がして振り向こうとした矢先、手袋をした大きな手が身体を掴んで
くる。
 手の主の――亡霊の顔を見てひっと息を呑んだ心音へ、亡霊がニヤリと笑いかけてきた。
 世界が90度傾く。闇の中で仰向けになった心音へ亡霊が覆い被さってきた途端、心音の衣服が弾
けるように消滅する。
『嫌っ……!』
 暴れもがこうとする心音の頭を、また別の手――白い手袋に包まれた亡霊の手が、掴んでくる。
 気が付けば、心音の周りを亡霊が幾人にも増えて囲ってきていた。
『ウソ……』
 ざっと顔を青くする心音へ、亡霊達が一斉に笑いかけてくる。そして、全員で心音の身体を押さえ
つけてきた。
『ココネクンも随分上手くなったなぁ。最初の頃は中程までしか咥えられなかったというのに』
 亡霊の一人がどこか歓迎深げに口ずさむと、心音の口の中へ牡茎を突っ込んでくる。
『生理か……仕方がない、その間はこちらで愉しませて貰おう』
 別の亡霊が心音の真下へ潜り込んできたかと思うと、熱をもった剛直が肛蕾を貫いてくる。
『相変わらず、キミは、ぎゅうぎゅうに締め付けてくるなぁ』
 最初に心音へのし掛かってきた亡霊が、恍惚と唇を綻ばせながら牝肉孔へ牡茎をめり込ませて腰を
振ってきた。
 ぎっちぎっちと軋むように、心音の肉体が亡霊達に嬲られ、犯されていく。
『んっ!! やっ、やああっ……!!』
 たまらず心音が悲鳴をあげて身悶える。が、それは口に頬張った牡茎へビブラートの刺激を与え、
肛蕾をグリグリ押し込んでくるように蠢く牡茎へ締め付けを与え、快液を周囲へ撒き散らしながら牝
肉孔を出入りする牡茎を悦ばせるだけ。
『アア、素晴ラシイ、素晴ラシイヨココネクン!』
 亡霊達が一斉に嗤うと、腰を振るペースを更に速めてきた。
 口の中や舌をしごかれ、喉を何度も射貫かれる。
 肛蕾のひだが、牡茎の表面で脈打つ血管によって更に押し広げられ、グリグリゴリュゴリュ削られ
る。
 ずっちゅずっちゅぐっぷぐっぷとせわしなく水音を響かせる牝肉孔の奥で、子宮が何度も突き上げ
られる。
『ひゃいっ――!』
 心音の身体の芯がゾクリと揺らぐ。三方向から同時に犯される快楽が一つに収束し、絶頂を招き寄
せる。
『ヒッ……やっ、やああ、ぃやああああ!!!』
 鮮魚のように勢いよく跳ねて囀った心音へ、亡霊が一斉に唇を歪ませると、それぞれの牡茎から精
液を迸らせた。
 心音の体内で、びゅ、びゅびゅ、びゅるるるんっ! と、音が重奏に響き渡る。
 肉体を炙り焼き尽くす欲情の熱と音は、心音の目を限界まで剥かせて全身を激しく震わせる。
 一方、精液を出し終えた亡霊達は、周囲で待機していた他の亡霊達に場所を譲る。
『あ……え……?』
 熱で浮かされた顔で心音が亡霊達を見やると同時に、未放出の牡茎が心音のナカへ侵攻してきた。
『ひゃいいっ!!』
 心音の口が、肛蕾が、牝肉孔が、再びめり込んできた剛直を前に大きく痙攣する。
『お、おねが、い……もうゆるして……! はなしてぇ……!!』
『駄目だ。ジブンはまだ満足していない』
 懇願する心音へ亡霊達がにべもなく言い放つと、腰を打ち込んでくる。
 口を肛蕾を牝肉孔を同時に穿たれた心音が、泣きながら絶頂の声をあげた。
『んむぁっ……あぁっ、く、クるっ……クっ、んぁぁぁぁっ!』
 犯され嬲られ何度もイカされた果てに出されては、後ろで待機していた別の亡霊達が新たに心音を
犯してくる。
 休む間もなく注がれる精液で心音の唇と顎は真っ白に濁り、お腹がボコリと膨らんでくる。
『ヒイッ……赤ちゃん出来るっ……出来ちゃうぅ……!』
『安心したまえ。ジブンは無精子症なんだ』
 お腹を見下ろして戦慄く心音へ、亡霊が淡々と語りかけてくる。
『だからこれは全て、純粋なるジブンの精液……ジブンがキミを犯して隅々まで汚した証だ』
 そう言って亡霊が嗤う前で、また新たな精液が心音へ注入されていく。無理矢理引き摺り出した絶
頂と混ざり合って心音の身を焼き尽くしていく。
 やがて、お腹のナカにも入りきれなくなった精液が、外へ零れてくるようになる。
 亡霊達に嬲られ犯され続けている心音を中心に白濁の沼が広がり、全身の皮膚や髪にべっとり絡み
ついてきた。


「ひゃいっ!」
 息を呑んだ反動で心音の意識が夢の中から切断される。
「あ……あっ……!」
 よりにもよって、亡霊本人が遠出していなくなってくれたこの時期に!
(なんて……酷い、夢……)
 青ざめた顔で自分の身体を抱き締めると、両手で顔を覆って俯いた。
「クアァ……」
 膝の上にのったカラスが切なげに鳴く。
 気にかけてくれる優しいノイズ。それに何も答える事が出来ず、心音はただ静かに涙した。

 ※※※

 それから数日、心音はがむしゃらに動いた。
 また、幾人にも増えた亡霊達に犯され続ける淫夢を見てしまうのではないか――そう思うと、怖く
てじっとしていられなかった。
 左肩にカラスを乗せて、あちこちにいって調査を繰り返す。時には自分達の滞在している別荘をく
まなく調べる。亡霊の寝室は流石に鍵がかかっていて入れなかったが、それ以外の箇所はかなり細か
な所まで調査する事が出来た。
 そう。些細だがギモンを感じさせるような所まで。


「……やっぱり、ここの配線、どこかおかしい」
 別荘の一画、とある壁の中を覗いて心音が訝る。
 この別荘がオール電化で、自前の発電機で全てまかなっているのは別に良い。むしろ、脱獄犯であ
る亡霊が平気で滞在出来る程に人がこない山奥では、当然の仕様だろう。
 電動式ポンプで組み上げている地下水も、美味しいので問題ない。
 だけど、壁に張り巡らされた配線、この一画だけが妙なのだ。どこにも接続されてない配線が幾つ
もあったり、ハブの部分に使われているコンデンサがやたら耐久性の低いものが使われているのだ。
(ただの偶然? それとも、何か意味があるのかな?)
 心音は無意識のうちに右耳の下を指で弾く真似事をして、慌てて引っ込める。
「クワァッ」
 代わりに、カラスが掻いてくれと首を伸ばしてくる。
「……ありがとう」
 陰鬱な気持ちになりかけた所への懇願に心音も顔を綻ばせ、指でカラスの首筋を掻いてあげる。
 カラスも常時睨み付けているような目元を気持ち良さそうに細めてすり寄ってくる。ここ数日のお
世話を経てすっかり慣れてくれた。
「……考えていても仕方がないし、ここは一つ、シミュレーションをしてみよう」
 握った右手を左手に軽く叩き付けると、心音は頭の中で図を描き始めた。
 発電機から入ってくる最大電力と電圧が流れた場合を考えて配線を辿っていく。と、ブレーカーが
落ちる前にハブに使われている機材が耐えきれずにショートする結果が出た。
「……ショートして爆発したら大変なのになぁ」
 何の気なしに口ずさんだ後、心音が顔をざっと青くして息を呑む。
「ちょ……ちょっと待って……」
 左肩に留まるカラスがどうしたと首を傾げてくるのに構わず、心音は配線を再び見回す。接続され
ていない配線全ての裏側に、耐久性の低いコンデンサがくっついていた。
「待って……もし、仮に、これらを全部接続した状態で最大電力が流れたら……」
 耐えきれずにショートするコンデンサが幾つも発生して……。
「この別荘そのものが……吹き飛ぶ……!?!」
 心音の顔がざあっと青ざめる。想像が正解とは限らない。誰も信用していない亡霊が、心音に気付
かれるようなヘマをするとは考えにくい。もしかしたら、結論に至った事そのものが罠かもしれない。
 それでも、今しがた導き出された解答は、心音の胸をゾクゾク震わせ熱くさせる。夜毎に陵辱され
続ける現状へ降って湧いた切り札――になるかもしれないもの――は、それだけで甘美な魅力を放っ
てきた。
(もっとよく調べてみよう)
 心音が瞳をキラキラさせながら壁の中へ頭を突っ込もうとした矢先、外からエンジン音が聞こえて
くる。
 はっと息を呑んで壁を閉じた心音の前で玄関ドアが開き、荷物を抱えた亡霊が帰ってきた。
「……ジブンが居ぬ間に、珍客を招き入れたようだな」
 亡霊が、心音の左肩で警戒を露わにするカラスを冷たく一瞥する。
「肩に鳥なんて乗せて、ユガミくんの真似事か?」
「! 違うの、このこ、翼を怪我して飛べなくなっていたから……!!」
 まくしたてる心音を、亡霊が無機質な目で見据えてきた。
「……カラスか……食べられない事もないか」
 亡霊の口からぼそり呟かれた声に、心音の頭の中が冷たくなる。
「止めて! 食料なら買ってきたばかりなんですよね!? 何で……」
「キミだって、ジブンのいない間その鳥と同棲のオママゴトをしていたんだろう? それと同じ、特
殊部隊が行うサバイバル訓練のオママゴトだよ」
 亡霊がにっこり嗤った後、急に表情を消して続けた。
「無論、ココネクン自らの手でその鳥を捌いて調理して貰う」
 心音が顔を青ざめ硬直し、カラスがダミ声で悲鳴をあげる。
「ま……待ってお願い……殺さないで、このこを……お願い……!!」
 目に涙を浮かべて懇願する心音を、亡霊が表情の消えた顔で見つめてくる。
「では……その鳥の命の分、キミのカラダで払って貰おうか」
 告げられた言葉に、心音が目を丸くする。
「カラダでって、そんなのでいいんですか?」
 思わず聞き返した心音に、今度は亡霊が目を丸くしてくる。が、ニタリと顔を歪めて笑うと、ああ
と頷いてきた。

 ※※※

 朽ちた教会の中へ月が光を落とす。
 参列席の上空、ワイヤーで吊された猪や狸や野犬の死骸がシャンデリアのように幾つも下がってい
る様子が照らし出されていく。
「せっかくだし、参列者もいないとな」
 亡霊が参列席へ古ぼけたマネキンを座らせると、祭壇へ向かう。数歩して、ワイヤーが音もなくマ
ネキンの首へ巻き付き、吊り上げた。
 マネキンが、野生動物達の骸に混じって宙を揺れる。
 亡霊がやれやれと肩を竦めると、祭壇に登った。
「こちらへ」
 亡霊が夜影で隠れた隅へ手を伸ばせば、白いパンプスを履いた足が闇の中から現れ、ついで心音が
ゆっくり歩み出てきた。
 亜麻色の髪を下ろした頭にベールを被り、首には白銀の金属首輪、手には瑠璃蝶々とクロガネモチ
のブーケ。これでドレスを纏っていれば花嫁の姿だが、彼女が身に着けている衣服は白いガーターベ
ルトにガーターストッキングだけ。乳房は勿論、茂み生える股も、臍も、尻も、全て丸出しだった。
「まずは誓いのキスを」
 やってきた心音へ亡霊が請えば、月明かりが直に差し込む祭壇にて二人の唇が重なり合う。
「では、そこへ仰向けに寝転がるんだ」
 満足げな顔で唇を離して命じる亡霊へ、心音は陰鬱な表情のままに頷くと、のろのろと横たわった。
 月光が、仰向けに寝転がった心音の身体へ降り注ぐ。豊かな乳房や臍の窪みへ微かな陰影がかかる。
「もう少し足を開いてくれ」
 言われるまま、心音は足を左右に大きく開かせる。
 亡霊が宜しいと頷くと、心音の手首と足首へ半円型の杭を被せ、そのまま床へ打ち込んだ。
 心音の手足が、祭壇の床へ拘束される。
「……結婚式の真似事をするだけじゃないんですか……?」
 標本の蝶のような格好にされた心音が顔を強ばらせる。
「何を言う。花嫁になるというなら、一番大事なウェディングドレスが足りないだろう」
 亡霊が心音の頭上へまわると、ニヤリ顔を歪めて膝をついた。
 床に広がった亜麻色の髪の毛が亡霊の膝や足に踏みにじられる。
 髪を引っ張られる痛みに心音が顔をしかめていたら、頤をぐっと逸らされ喉をまっすぐ伸ばされる。
「だから、ドレスの代わりにジブンの精液でココネクンの身体を飾ってあげようではないか」
 天地が反転した心音の視界に亡霊の牡茎が逆さまになって映ったかと思うと、唇を割って入ってく
る。
「んむぅっ……!!」
 心音がびくんと背中を揺らす。枷で床に磔にされた手足が動けない分、揺れは胴体に集まり乳房が
ぷるるんと大きく動く。
 その動きに亡霊は唇を綻ばせて腰を動かし始めた。
 心音の喉を牡茎で容赦なく突き上げては、舌や上顎の裏、それに歯茎などでしごいていく。その度
に彼女の胴体はしなるように動き、乳房が躍るように跳ねて、亡霊の目を楽しませる。
 牡茎へかかる刺激も逆転し、新鮮さは快楽を増幅させる。予想よりも早く第一波が亡霊の腹の奥へ
迫り上がってくる。
 亡霊は心音の口から牡茎を外すと、こちらの突き上げに合わせて踊りを披露していた乳房へ精液を
ぶっかけた。
 べちゃべちゃっ、と、衝突する欲情の生温かさに心音が息を呑んで竦む。白い粘液が乳房の上でデ
ロっと広がり、蜘蛛の巣にも似た模様を作る。
「流石に一回の量では到底足りないな……最低でも五・六回分の精液は必要か」
 心音を見下ろし、亡霊がぼやく。
「! まさか、その五・六回全部出すまで、わたしの口で……?」
 心音が顔を青ざめ、床に磔にされて動けない手足をカタカタ震わせる。
「いいや。キミの下の口も当然使わせて貰うよ」
 亡霊はあっさり答えると、身を翻して心音の股の前へ陣取る。
 月明かりに照らされた淫花や粒肉が、亡霊の接近を感じてか微かに身動いだ。
「……そうそう。言い忘れていたが、五・六回で終わるとも決まってない。足りなければ何度も……
それこそ夜通し続ける」
 両手の指で心音の淫花や粒肉クチュクチュ弄くり始めながら、亡霊が思い出したように告げる。
「あのカラスの命の対価、カラダで支払うんだろう?」
 息を呑んで顔を強ばらせた心音へ、亡霊はニヤリと笑いかけると、快液をチョロリと垂らした牝肉
孔へ指を突っ込み、ぷくり膨らむGスポットを擦り始めた。
「ひゃいっ!? あっ……あぅ、ああっ!」
 心音が、床へ磔にされた両手足をガチャガチャ動かして身悶える。乳房も激しく揺れ動き、ぶっか
けられた精液が下へ垂れていく。
「そんな事してていいのか? せっかく飾ってあげたのに最初からかけ直しだ」
「えっ!? ぁ……」
 心音がビクンと身を竦ませ、それから自身の乳房を見下ろして息を呑む。
 そこへ亡霊がGスポットを指で強くしごいてやると、心音が息を止めて動きを止めた。
 淫花と粒肉がひしゃげひきつり、ぶしゃぁっ……! と、大量の快液を吐き散らす。
「やっ……あっ、あうあぁっ……!!」
 快楽に全身を戦慄かせながらも、必死で跳ねまいと――ぶっかけられた精液を落とさぬようにと抗
う心音。そんな彼女の健気さに亡霊の胸も熱くなって牡茎もムクリ起き上がる。
「さぁて、何回で着飾れるかなぁ?」
 ニヤリ笑って告げると、濡れてヒクつく淫花を割って牡茎を突っ込む。
 か細い悲鳴をあげて仰け反る心音の牝肉孔で、ずっちゅぬっちゅと淫靡な響きが始まった。


 陰影の変化で、夜空に浮かぶ月の位置が西へずれたのを察知する。
(日時計ならぬ月時計だな)
 気付き思わず笑う亡霊の下では、心音が犯されるままに身体を揺らし続けていた。
 真っ赤に染まった顔色。限界まで剥いた両目は、瞳孔が何度も収縮しては焦点が明滅する。開きっ
ぱなしになった口端には涎が垂れて乾いた痕が幾筋もついていた。
「やれやれ。ココネクンは脆いなぁ」
 亡霊は腰を引いて離れると、己の手で牡茎を数度しごいて精液をぶっかける。
 びゅるっ、びゅるるるん、と、一発目から変わらぬ勢いで放出された精液が心音のお腹にべちょっ
とぶつかり、先に出された精液らと混ざり合って白濁のレースを形作った。
「……! ……!」
 心音が微かに身動ぎ、精液でコーティングされた乳首がピクピク揺れる。
 亡霊はふっと唇を綻ばせると、絶頂による痙攣のしすぎですっかり緩くなった牝肉孔へ牡茎を再び
突っ込み、次の射精に向けてしごき始めた。
 亡霊が突き上げるままに、心音の身体が前後に滑る。床へ磔になった手足も一緒に動いては、枷の
部分で急停止する。
「せっかくドレスアップしてあげるのだから、もう少し締め付けて協力する位はしてくれないか」
 ぬるぬる力無く滑る牝肉孔の感触に、亡霊は物足りなさを感じ始める。が、今までぶっかけた回数
――その為に、上の口や下の口へ牡茎を突っ込んではしごいてよがらせた回数をぼんやり思い出すと、
致し方ないなと思い直した。
 なんせ、今までは下の口へ精液を一度注入すれば終わらせていたのだ。それでも心音は激しくよが
りまくって絶頂を囀って、精根尽き果てていたのだ。何度も牝肉孔を擦られ抉られ掻き回されて、何
度も子宮口を殴られ叩かれ凹まされて、身体へぶっかけられてはまた犯される今宵は、さぞかし辛か
ろう。
 かといって、解放してやる気はさらさらない。カラダで支払って貰う契約はきちんと遂行して貰う。
(次は上の口でしごくとするかな)
 舌のザラザラした感触は、ただなぞるだけでも結構な快楽をもたらしてくれる。
 亡霊が夢想していたら、牡茎にも少し圧力がかかって膨張と硬直を増した。
「……!」
 胎内を蹂躙する牡茎から脈動を聞きつけて、心音の肩が自然と揺れる。熱で茹であがった意識も視
界も少しだけ戻って、亡霊の精液でデロデロに汚れた胸元やお腹を認識する。
「…………」
 心音の脳裏に、かつて見た淫夢が――幾人にも増えた亡霊達が休みなく心音を犯していく悪夢が過
ぎる。
(同じ、だ……あの夢と……)
 目の前の亡霊は分身していないが、それ以外は同じだ――身体が大量の精液で覆われるのも、休み
なく何度も犯され蹂躙されるのも。
(ああそうか……あの夢は啓示だったんだ)
 心音は悟る。
(亡霊が出かけて喜んでいたわたしへ、”飼われている”意味を、現実を、告げてそして……)
 とうに枯れ果てていた目の奥で、ふいに熱い刺激が迸る。
「ぅ……」
 開いたまま動かなかった唇を微かにしかめて声を漏らした刹那、心音の身体を特大の稲妻が貫いた。
 今まで弛緩しきっていた牝肉孔が、ぎゅむぅぅっ! と、強烈な締め付けを復活させる。
「うをっ!?」
 亡霊が目を剥いて驚く前で、心音の牝肉孔が火山口のようにぐつぐつ煮え立ち蠢きだした。
「まっ、まさかまだこんな隠し球があったのか……!?」
 亡霊の右手の古傷と胸の奥に満たされるような感覚が湧く一方で、腹の奥から強烈な飢餓感と衝動
が込み上げてくる。
「――アア、ナント素晴ラシインダ!!」
 朽ちた教会の中へ亡霊が高笑いを響かせると、腰を全速力で振り出した。
 牡茎と淫花の狭間で響く水音が再び引き締まる。奥を叩き込まれる度に子宮口が収縮して牡茎の先
端へ茨のように絡みつく。
 その気持ち良さに亡霊の歯の根も自然と鳴って、腰がブルっと武者震いをする。
 負けじと、子宮口を外へ引き摺り出す勢いで腰をひいては切り返す。余波で心音の手足を抑えてい
る枷が彼女手首足首を擦って皮膚を擦過するのも構わず、腰を叩き込む。
 そうして何度も何度も攻め立てていたら、ふいに心音が両目と口を目一杯剥いた。
 牝肉孔に激震が走り、引きかけていた亡霊の牡茎を無理矢理奥へ戻す。
 亡霊がぎょっとする前で、心音の牝肉孔は牡茎を全力で引き込み、自ら子宮口へ先端を深く深くめ
り込ませた。
 月が光を落とす祭壇の上で、心音の身体が飛び跳ねるように痙攣する。
 二人の体内を甘い激震が何度も駆け巡り、堪えきれなかった牡茎が精液を心音の胎内へ迸らせた刹
那。急に牝肉孔と子宮口の締め付けが消えた。
 糸が切れたように、心音がガクンと身体を落とす。
 緩みきった胎内へ、牡茎が所在なさげに欲情の精を注ぎ込む。
「……まさか気を失う前に、こんな強烈な締め付けをしてくるとは……」
 吐き出し終えてから暫くして、亡霊が心音の顔を見下ろしてぽつり呟いた。
 祭壇の床に手足を磔にされたままの心音は、ぴくりとも動かない。亡霊が萎んだ牡茎を胎内から引
き摺り出しても動かない。大量の白濁液をレースのように纏った胸元が微かに上下しているのを見な
いと、生きているか否かの判別すら出来ない程だった。
「……」
 精液が混ざって濁った快液が、淫花からだらしなく垂れる。
 亡霊は生唾を飲み込むと、別荘から持ってきたポラロイドカメラを手にとりシャッターをきった。
 フラッシュが教会の祭壇にたかれ、祭壇の床へ蝶の標本よろしく磔にされて気絶した心音の写真が
カメラから排出される。
「……素晴らしいよココネクン。いつまでも、ジブンは、飢えが止まらない」
 頬を微かに赤らめて亡霊が口ずさむと、今度は彼女の股の前から写真を撮る。
 月が光を落とす教会の中で、ポラロイドカメラのフラッシュは何度も焚かれた。

 ※※※

 カラスの呼びかける声が心音の意識を目覚めさせる。
 気付けば、別荘にある自分用のベッドに横たわっていた。
 時計を見れば明け方の4時15分。もうすぐ夜明けらしく、灯り無しでも部屋の様子がぼんやり見
えた。
(……わたし、教会で亡霊に気絶するまで犯されて……)
 思い出して顔を歪めた心音へ、ベッド下からカラスが再度呼びかけてくる。
「えっ……もう飛べるようになったの?」
 鳴き声のノイズから聞き取れた事を心音が聞き返せば、カラスが力強く鳴いてきた。
「……」
 心音がゆっくり起き上がり、カラスの身体に巻き付けたビニールテープを外してあげる。
 暗い部屋の中、黒い両翼が綺麗に広がったかと思うと、カラスが数度羽ばたいてきた。
「……!」
 両手で口を覆って息を呑む心音の前で、カラスがどうだと言わんばかりに胸を張る。
「ちょ、ちょっと待って……!」
 心音は傍にあったガウンを羽織ると、カラスを肩に乗せて駆けだした。
 部屋から別荘の外まで出れば、ひんやりと尖るような夜気が出迎えてくる。
 亡霊はまだ就寝中らしく、追いかけてくる気配はない。
「……もういいよ、飛んで」
 心音が囁くや、カラスが羽ばたき、東の空が白み始めた空へダイブするように飛び上がった。
 危うげもなく空を飛行するカラスの雄姿に、心音が目に涙をにじませて息を呑む。
「良かった……ほんと、良かった……!」
 泣きながら跪く心音へ、カラスが静かに降りたって鳴いた。
「え……」
 一緒ニ行コウと誘うノイズに、心音が涙を止めてカラスを見る。
 カラスがクワっと短く鳴いて翼をはためかす。
「そっか……わたしの事、気にかけてくれるんだね。ありがとう」
 でも。
「――あなたがわたしを助けたいと思うのなら、どうかこのまま遠くへ飛び去って。わたしの前へ二
度と現れないで」
 心音の言葉に、カラスがえっと驚くように竦み上がった。
「夢を見たいの……あなたが、わたしの知らない場所で幸せになっているって。その為には、あなた
が遠くへ飛び去って、わたしと二度と出会わない事が重要なの」
 そうすれば夢想するだけで過ごしていける。
 どんな現実だって、観測出来ないのなら無いと同じ。いつまでも、お伽噺のエンドマークのように
【しあわせにくらしましたとさ】。
「だから……お願い、飛んで! わたしに、希望を夢見させて!」
 身を切るような声で心音が請うた。
 カラスが常時睨み付けているような目元に神妙な光を浮かべる。が、やがて意を決したように頷く
や、バサリと両翼を広げて羽ばたいた。
 夜明け前の世界に一陣の風が吹く。
 その先導を担うかのようにカラスが舞い上がり、心音の前から飛んでいく。空へ融け込むように消
えていく。
「……さようなら……」
 カラスの消えていった方を仰ぎ見ながら、心音は、風に吹かれて追いすがるように空へ伸びた亜麻
色の髪を手で押さえた。


 朝日が照らすリビングに、二人分の朝食が並ぶ。
「ごめんなさい、早く起きて暇だったから勝手に作っちゃっいました」
 リビングの入口で硬直している亡霊へ、心音が身を縮めながら述べた。
「いらないなら、わたしがお昼に食べるから……」
「…………いや。いただこう」
 亡霊が首を軽く振って答えると、止まっていた足を進める。
「ひゃいっ!?」
 まさかの返答に心音が両手を頬に当てて喚声あげる。そこへ、後ろのIHヒーターからドリップポ
ットが沸騰を報せてきた。
 心音が慌てて踵を返し、ドリップポットでコーヒーを淹れ始める。
 その様子を横目でみながら、亡霊は席に着いた。
 ツナやハムチーズが挟まれたサンドイッチ。表面をこんがり焼いたウインナー。ちぎったレタスに
ミニトマト。ケチャップでモニ太の顔が描かれたオムレツ。それらが亡霊を出迎える。
「…………」
 スパイたるもの、普段の食事や掃除は他人に任せない。
 食事に毒を盛られるかもしれない。食材を切る為の包丁を武器に襲いかかってくるかもしれない。
掃除をしながら、罠をこっそり仕掛けてくるかもしれない。
 だから、そうされないよう自分で行う。今まで、そしてこれからも――の筈だったのに。
(……何故、ジブンは了承したのだろう)
 食材は補給してきたばかり。食べないならココネクンが昼に食べると宣言もしてきた。
 ジブンが食べねばならぬ事などない、のに。
「…………」
 亡霊は心音の方を見る。真剣な眼差しでお湯を注いでいく心音の瞳は喜びでキラキラ光り、顔も綻
んでいる。ここに来て初めて見る、彼女の明るい笑顔だった。
「……」
 亡霊は、目の前に置かれたツナサンドを手に取り、一口囓る。
 パンのふわふわした感触と、マヨネーズであえられたツナの味が舌へじわっと広がった途端、亡霊
の右手の古傷と胸の奥で、何かがオムレツのようにふんわり膨らんだ。

 ※※※

 かちり、と、時計が時を刻む。
「お待たせ致しました」
 外からの光が差し込まぬ倉庫の中、闇にとけ込むようにして立っていたユガミの元へ、ゆらり陽炎
のように人影が歩み寄ってきた。
「フン……わざわざ時間がくるまで隠れてるたァ、噂通りの律儀さだな。……虎狼死家左々右エ門」
 ユガミが人影の方を向いて鼻を鳴らす。
「殺し屋という商売は、依頼人との信頼関係が最も大切なのです」
 人影――コロシヤは、穏やかな笑みを浮かべてユガミへ会釈すると、持っていた封筒をうやうやし
く差し出した。
 ユガミは無言で奪い取り、中身を――数枚の風景写真と地図を、確認する。
「成る程……ここに亡霊とココネがいるんだな」
 淡々と口ずさむユガミの瞳で激情の焔が揺らいだ。
「それでは、私は依頼通りに」
 立ち去ろうとしたコロシヤへ、ユガミが待ちなァと引き止める。
「亡霊の首は俺が獲る。オマエは、俺がしくじった後に、亡霊を殺してくれ」
「……失礼を承知で申し上げますが、怪我をしている今の貴方では亡霊相手に勝機はないかと」
「失礼じゃねェさ。万全の状態で戦いを挑んでも負けちまったんだから」
 穏やかな表情を崩さぬまま告げてきたコロシヤに、ユガミが肩を竦めて笑った。
 陣羽織の下、治りきってない傷がズキリと鈍い痛みを走らせる。
「ならばいつ仕掛けても同じ事さァ。だったら、この生き地獄を早く終わらせてェのよ俺ァ」
「それが、検事局の機密情報を売り渡し、先方からの【私を雇う】という条件を呑んでまで亡霊の居
場所を知った理由……命を捨ててまで向かう理由ですか」
 淡々と尋ねるコロシヤに、ユガミはそうだと頷いた。
「……依頼を受ける前に、一つ、聞かせて貰えますかな? 何故そうまでして向かおうとするのか」
「…………ココネがいるんだ。亡霊に負けて殺されそうになった俺を助ける為に自ら……」
 ユガミが顔を歪め、奥歯を激しく食い縛る。
 目を瞑ればいやでも蘇る。ユガミの前で犯され無理矢理イカされながら、何度も絶頂を囀った心音
の嘆き声。
 彼女が今どんな目に遭っているか――考えるだけでユガミの身体は内側から裂かれ、絶叫をあげそ
うになる。
「こンだけ日数が経ったンだ。正直もう………………生きちゃいねェだろうなァ」
 よくて精神崩壊、悪ければとうに骸だろう。
「それでも俺ァ、アイツにもう一度会って、伝えなきゃならねェんだ。もし俺の命でそれが叶うなら
安いもんだ」
 ユガミが胸に手をそっとあてて、ひきつった顔で力無く笑った。
「――仁義、ですな」
 コロシヤの表情が微かに綻ぶ。
「買い被るな。一刻も早くこの生き地獄から逃げ出したいだけの臆病モンさァ」
「いえいえ、大変素晴らしい。我が一族へ入り婿として加わって欲しいくらいです」
 コロシヤの言葉に、ユガミがはっと笑い飛ばす。
「おいおい、亡霊が死んだら俺も殺すよう奴等から依頼を受けてんだろォ?」
 いいのかよと笑うユガミに、コロシヤがぴたっと静止する。
「『そこまで見抜いておきながら……』って顔だなァ、コロシヤさんよ」
 ユガミがからから笑った後、急に真剣な表情になって跪いた。
「……悪ィがココネと出会うまでは、頼む。俺を生かしてくれ」
 倉庫の床へ正座して、ユガミが深々と頭を下げる。
「ココネに出会えて伝えられたら、後はいい。俺が亡霊と戦って嬲り殺されるのを眺めているか、ア
ンタが自らの手で俺達を殺すか……好きにしてくれ」
「……解りました。その仁義と忠義に私も全力でサービスさせて頂きましょう」
 頭を下げたまま願うユガミに、コロシヤも片膝ついてうやうやしく頭を垂れた。


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 <<WARMING!>>

 亡霊×心音もの最終話・前編。
 今までと変わらぬ鬼畜陵辱に、
 ユガミ×心音の純愛エロが混ざってます注意。


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 凪のない海のようになだらか――悪く言えば何の手応えもない――だった感触に、突如嵐のような
締め付けがやってくる。
 今宵最後のボーナスタイムの始まり。全身全霊の力でもってラストスパートをかける。
「ほんとキミは素晴らしいよ、ココネクン……」
 亡霊が唇を大きく歪めて笑うと、牡茎をもぎとらんばかりの勢いで締め付けてくる牝肉孔へ腰を叩
き付けた。
 パァンと平手打ちのような音がベッドの上で響き、乱れるシーツの上へ仰向けになった心音が身を
震わせる。牡茎を根元までみっちりめり込ませた牝肉孔でも万力のような締めつけが発生し、その気
持ち良さに亡霊は息を乱す。
 思わず精液を放出しそうにもなったが、この締め付けがあるうちはまだ愉しみたくて、亡霊は再び
腰を引いて動き始めた。
 ぎっしぎしぎしとベッドが軋む。
 ずっちゅぬっちゅぬっぷぐっぷぅと、二人の腰の間で快液が白く泡立ち、ぱちぱち弾けて消えてい
く。時折、ついさっき放出したばかりの精液がデロリと零れ、牡茎と淫花の狭間で伸びた。
 時には激しく、時にはゆるやかに。亡霊は腰の動きを調整して、心音の意識を少しでも長く繋ぎ止
める、弄ぶ。
 瑞々しく実った心音の乳房が悩ましげに揺れ、ぷくり尖った乳首がワタシヲタベテと亡霊を誘って
くる。が、ここで乳房を弄ると、危ういバランスで繋ぎ止めている心音の意識を一気に断ち切ってし
まうので、牝肉孔と子宮口の攻め立てだけに集中する。
(今宵こそは互いにタイミングを合わせてイきたいものだが……さて上手くいくかな)
 陸揚げされた魚のように口をパクパクさせ、悦楽で艶めいた瞳から焦点をぱっぱっと消しては戻っ
てくる心音をじっと観察しながら亡霊が腰を使っていると、牡茎が抑圧に抗議してきた。
「……!!」
 牝肉孔を揺さぶられた心音が音を立てて息を呑む。瞳から光が急速に失われていく。
(ここが頃合いか)
 亡霊は急いで腰を密着させて身体を弛緩させた。
 枷を外された牡茎が、喜び勇むように身動ぎながら心音の牝肉孔を駆け上り、子宮口へめり込み、
精液を噴水のように迸らせる。
「ぁ…………!!!!」
 心音の口から微かな喘ぎが響いたかと思うと、全身をぎゅううっと小さく丸めようとしてくる。牝
肉孔もぎゅううっ……! と、エビ反りしそうな勢いで収縮する一方、子宮口が咀嚼するような動き
をしてきた。
 亡霊が精液を出した傍から、心音の子宮が飲み干していく。稚児を宿し育む器へ、自ら亡霊の欲情
を招き入れて汚れていく。
「アァ……イイ……素晴ラシイ……!」
 腰を打ち付けた体勢のまま亡霊が感極まって震える。溜まっていた精液を全て流し込んでも、牝肉
孔と子宮口は牡茎を強く抱き締めていた。
「……今日はジブンの方が早く尽きたみたいだな」
 乱れた呼吸で囁きかけると、亡霊は牡茎をゆっくり引き抜く。その瞬間、心音がベッドそのものを
揺さぶる程に激しく飛び跳ねて、倒れた。
 心音の瞳から光と焦点が消える。
「――なんと! 引き抜いた動きで気絶してしまったか」
 亡霊は大袈裟なまでに驚くと、そのまま高笑いしながら心音を掻き抱いた。
「素晴らしい、素晴らしいよココネクン!! キミはどこまでもジブンを飢えさせては腹一杯に満た
してくれる!」
 笑いながら心音を抱き寄せた亡霊の右手で、古傷が疼きながら塞がっていくような感覚が起きる。
 一方、心音は糸の切れた人形よろしくユラユラ揺れる。意識を失い、抜け殻と化した顔に絶望の色
を残して。
 ベッドの頭上の壁へ貼られたコルクボードにピン留めされた沢山の写真――【頭には花嫁のベール
を、胸には大量の精液を被って気絶している心音】や、【顔射された精液を指ですくって舐めている
最中の心音】や、【気絶するまで精液を注入した回数を正の字で書き込んだ心音の尻】など――が、
項垂れるように揺れた。

 ※※※

 世界を穿つ勢いで雨が降る。
 雨音が重く響き渡る別荘のリビングにて、ランニングルックの心音が震えながら包丁を両手で握り
締めて立ち竦む。
「どうした? 別に遠慮はいらない」
 一方、亡霊はソファーに悠然と座ったまま、心音へ手招きした。
「う……わぁぁぁあああっ!!」
 心音が雄叫びをあげて突進する。
 亡霊が呆れた風に笑うと、マタドールのように寸前で身を翻し、心音の背中へ抱きついた。
 包丁が根元までソファーに突き刺さり、心音の手から離れる。
 二人が躍るようにクルリ回って、包丁が刺さったのとは違うソファーへ一緒に座る。
「いくら身体能力が良くても、そんな解りやすい軌道では誰も――それこそ格下の相手だって殺せな
い」
「わたしのは護身術だからいいんです!」
 心音を押さえ込んだまま諌める亡霊へ、がなる声が返ってきた。
「後の先を極めた達人ならともかく、ココネクンの実力で相手にわざわざ先制を許すのは愚策だ」
「貴方だって、わたしにわざと包丁もたせて襲うよう命じたじゃないですか!」
「以前、普通に手合わせしたら、ジブンに両足どころか左手すら使わせずに負けたのはココネクンで
あろう?」
 亡霊が指摘すれば、眦を尖らせて怒っていた心音が少し気まずそうに息を呑む。
「そんなんでは立派なスパイになれないぞ」
 亡霊が呆れた風に囁き、右手で心音の乳房をまさぐりだした。
 レモンイエローのタンクトップから彼女の乳房が一部引き摺り出される。
「わたし、スパイになんてなりたくありません……!」
 イヤイヤと首を振る心音だが、亡霊の指が乳首を探り当てた途端に身体を竦めて嬌声を漏らす。
「みんな最初はそう言う」
「!? じゃあ貴方も最初はスパイになるのを嫌がったの……!?」
「いや全く」
 亡霊が淡々と言い返すと、左手で心音の太腿を舐め回すようにさすった。
 ホットパンツから露出した生足の弾力が、求肥みたいにしっとりつるつるした肌の感触が、手袋を
通して伝わってくる。
「さて、ランニングは豪雨で不可。代わりの模擬戦も速効で終了したし……別の事でカラダを動かそ
うか」
 囁く彼の声に潜む欲情のノイズを聞きつけ、心音がひっと息を呑んだ。
「ま、まま待った! まだ夕方前です……ご飯だって食べてないのに、早すぎます……!!」
「いいじゃないか。どうせ他にやれる事などない」
 行為そのものを拒否してこなかった彼女に亡霊が思わずほくそ笑んでいたら、ふいに雨の音が止ん
だ。
 陽の光がリビングに差し込む。
「! わたしランニングに行ってきます! 行くったら行きます!!」
 心音が亡霊の手を振り払ってソファーから勢いよく立ち上がった。
 亡霊は悔しさと消沈を露わにため息つきつつもソファーからたち、外出許可証ともいえる白銀の金
属輪を取り出す。
 が、いざ心音へ首輪を装着させる寸前、亡霊の懐から微かなバイブ音が響いた。
 亡霊の表情が強張る。どこか余裕めいていた双眸が、急に冷たく鋭くなる。
「? どうしたんですか……」
 おそるおそる尋ねた心音に、亡霊は無言で彼女のみぞおちを打った。
「すまないが、しばらく眠ってくれたまえ」
 かふっ……と、息を吐きながら気絶した心音を亡霊が抱きかかえると、そのままベッドまで運んで
寝転がせる。
 改めて心音へ首輪を取り付け、ついで意識や肉体を弛緩させるクスリをたっぷり染み込ませた猿ぐ
つわを噛ませると、亡霊は急いで自分の寝室へ飛び込む。
 部屋に設置してある、この辺り一帯を管理し統括しているモニターを見やれば、監視カメラの一つ
に黒い人影が映っていた。

 ※※※

 クロスボウから射出された漆黒の矢が、地面へ虚しく突き刺さる。
「まさかキミがその武器を使うとは、意外だったぞ!」
 亡霊の笑う声に、ユガミがちぃっと舌打ちしながらクロスボウへ矢を装填し、亡霊へ向ける。が、
ユガミが矢を撃ち出すより早く、亡霊が懐へ踏み込んできた。
「だが――付け焼き刃ではムリがある」
 冷たい眼差しで淡々と告げて、亡霊が掌底をユガミの腹へ叩き込む。
 どんっ! と、いう音を響かせてユガミが5メートルほど後ろへ吹っ飛ぶ。
「……プロテクターを装着しているか」
 すぐさま立ち上がったユガミに亡霊がつまらなさそうに鼻を鳴らすと、一歩前へ踏み込む。
 ユガミも避けようと移動した瞬間、彼の足元の地面が割れ、巨大なトラバサミが飛び出してきた。
 ガキィン! と、鋭い音をたててトラバサミが閉じ、地面へどうと倒れる。
 間一髪でトラバサミから逃げたユガミ。その頭を狙って亡霊が回し蹴りを放ち、屈んで避けられた
所へ、軸足を切り替えてのローキックをお見舞いした。
 サッカーボールのように、ユガミの身体が宙を舞って地面を転がる。そのまま地面の終わり、崖の
外まで滑って落ちそうになったのを、ユガミは雑草を掴んで押し留まる。
「ジブンに殺される為に、わざわざここを突き止めてやって来るとは、馬鹿だなぁ」
「てめぇのような下種野郎に言われたかねェ……!」
 雨上がりの地面をさくさく歩いて迫る亡霊へ、ユガミが立ち上がりながら罵った。
「ココネクンが、何の為にジブンへ肉体を捧げたと思っているんだ」
「黙りなァ!!」
 ユガミが激情のままに矢を射出する。が、あっさりかわされ、亡霊に腕を掴まれた。
 ぶぉん、と、風が唸る。亡霊が円盤投げよろしくユガミの身体を盛大にスイングさせて放り捨てる。
「どこで戦っているか、地理をちゃんと把握するのだな」
 冷たく言い放つ亡霊の前で、ユガミの身体が崖下へ消えていった。
 少し時間をおいてから亡霊が下を覗き込む。と、うつ伏せになったユガミが頭部から赤い血を流し
て倒れていた。
「……さて、と。これから忙しくなるな」
 亡霊は覗き込むのを止めると、肩を竦める。
(ここがユガミくん――第三者に漏洩した以上、滞在し続けるのは不可能。もしかしたら、ここを用
意した組織がジブンらを売り渡した可能性もある)
 現状を冷静に分析・推理し、求められる次のタスクを導き出す。
(とりあえず、当座の荷物と資金とココネクンを連れて次の場所へ移動せねば……)
 組織が知らぬ隠れ家を幾つかピックアップすると、亡霊は心音の眠る別荘へ戻る事にする。が、い
ざ一歩踏み込もうとした刹那、空を斬る音にのって一本の矢が飛来してきた。
 地面へ刺さった矢羽に描かれたサザエのマークに、亡霊が顔をひきつらせる。
「コロシヤが来ているだと……!」
 全速力で雑木林の中へ逃げ込み、木の影に隠れた。
(組織から用済みの烙印を押されたか……!)
 亡霊が様子をそっと窺おうとした途端、盾にしている木の幹へ第二の矢が突き刺さる。
 慌てて頭を引っ込めた亡霊の胸中に恐怖がじわりと膨らんできた。
(流石はコロシヤ……)
 クロスボウは飛距離も短く、弾道も比較的単純なのに、どこから狙撃されているのか解らない。解
らないと、この場から動きようもない。
「…………」
 亡霊は瞼の裏へ二本の矢が打ち込まれた時の記憶を呼び出し、そこから狙撃ポイントのおおまかな
方向を算出する。
(今はリスク覚悟で戻るしかない)
 亡霊は隠れていた木の幹から飛び出すと、矢がくるより先に別の木の裏へ回った。


『……亡霊が逃げ始めました。このまま暫く、この近辺に足止めしておきましょう』
 崖下にてコロシヤの声が響くなり、うつ伏せに倒れていたユガミがむくりと起き上がる。
「すまねェなァ、迷惑かけて。せっかくアンタからご教授頂いたクロスボウも壊しちまった」
『いえいえ、これもサービスの一環ですから』
 懐からレシーバーを取り出して喋るユガミへ、コロシヤの穏やかな声と、クロスボウが矢を撃ち出
す物音が返ってきた。
 ――崖から落下していく最中にクロスボウからワイヤー付きの矢を射出し、それで勢いを削いで地
面へ降り立った。そして、予め用意していた血糊を頭へ割って、いかにも墜落死したかのように見せ
かけたのだ。
『見た所、亡霊は完全にあなたが死んだと思っていた風でした。一帯のトラップも解除したので、こ
のまま件のお嬢様のいる別荘まで問題なく行けるかと』
「そうか……ありがとうよ」
 胸に手を当て、ユガミが顔を綻ばせた。
『足止めするお時間は、2時間ほどで宜しいですかな?』
「そりゃまた随分な大サービスだな」
 レシーバーから響いた言葉に、ユガミは思わず呆れかえる。
『気象レーダーによれば、もうじき夕立がくる模様なので。亡霊も、雨が止むまではうかつに移動し
ないでしょう』
 雨が降れば矢の飛距離は短くなるが、矢や人の接近にも気付きにくくなる。
「そうか……なら今から2時間、遠慮無く頂くぜ」
『どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ』
 ユガミとコロシヤは、お互い穏やかな声で告げあうと、レシーバーの通信を切った。

 ※※※

 ガラスをノックする音が、眠る心音の耳と意識を揺さぶってくる。
「んっ……」
 心音がうっすら目を開け起き上がる。自分のベッドへ腰掛けてぼ~っとする事しばらく、別荘の中
に亡霊のいる音が聞こえてこないのに気が付いて、首を傾げた。
 首輪も――そして心音自身は知らないが意識や肉体を弛緩させるクスリを染み込ませた猿轡も――
ない。実は、心音が昏睡している間、この辺りのトラップを解除する為に別荘へ侵入したコロシヤが
外していったのだが、彼女にそれを知る由もなかった。
(一体なにが……)
 意識を失う直前で聞こえた微かなバイブレーションと、亡霊の双眸の変化。
 それを思い出して心音が頭を捻っていた矢先、再びガラスがノックされる。
 はっと振り向けば、ギンがガラス窓の前でホバリングしていた。
(――夕神さんがここへ来ている!?)
 全てを悟って、心音が大きく息を呑む。
 会いたいという衝動の箍が外れ、心臓が熱く飛び跳ねる。
 が、窓の外で待つギンの方へ駆け寄ろうとした矢先、コルクボードにピン留めされた写真達からカ
サッと微かな音がたった。
 自分のすぐ傍にある写真――亡霊に陵辱された様子を記した写真らの存在を思い出して、心音の身
体は氷点下まで冷える。
(そ、そうだ……わたし……ずっと亡霊に慰み者にされて……!)
 ここへ連れてこられる前だって、彼の目の前で犯されて何度もよがり狂った痴態を披露して。
 ずっと嫌だって言いながらも亡霊を拒めず、夜毎の陵辱に数え切れない程イカされ汚されて。昨夜
だけでも、一体どれだけの量の精液を胎内へ溜め込んだか。
「だ……だ、め……」
 ベッドに腰掛けたまま心音がブルブル震え出す。
 窓の外でホバリングしていたギンが、つまらなさそうな目をしたかと思うと、降下していく。しば
らくして、玄関のドアがガチャリと開かれ、ブーツを履いた足音が響き始めた。
(だ、め……ゆうがみさ、ん……)
 会いに来ないで。
 汚レタわたしを見ナイデ。
 亡霊に殺される前に逃げて……!
 叫びたい衝動は全て身体の震えに転化される。
「ゃっ……ひっ……ひぃっ……!」
 ひきつけも始まり、視界も定かでなくなってくる。
 一方、別荘の中を歩く足音は徐々に近付き、やがて、心音の居る部屋の前で止まった。
「ひぃっ――!!!」
 部屋のドアが開く音に、心音が盛大に身を竦める。
 振り向く事はおろか、声も出せない――ただ自分で自分を抱き締めて丸まったまま、ひきつけを起
こして震えるしかない。
 一方、ギンを肩に乗せて部屋に踏み込んだユガミは、振り向きもせずベッドに腰掛けて震えている
心音の後ろ姿を見て、唇を噛み締めた。
(やはり……心は死んでいたか……)
 彼女の傍の壁にあるコルクボードへピン留めされた写真――彼女のあられもない痴態を撮った数々
の写真――の存在にも気付いて、ユガミは指を折る勢いで拳を握り締める。
 が、力無く頭を振ると、ユガミは心音の前へゆっくり回り込んで片膝を着いた。
「……すまねェ。迎えにくるのが、遅くなっちまった」
 瞳から光と焦点を消して震える心音の顔を、ユガミが手でそっと触れる。
「今までずっと、辛かったろう、苦しかったろう。俺なんざ助ける為に、すまねェ……」
 心音を真正面から見据えるユガミの目が涙を零す。
「ココネ。おめぇさんは俺にお互い忘れようと言ったが、7年分の幸せ取り返せと願ってきたが、そ
んなの無理な話だ。おめぇさんが傍にいないで、俺ァ幸せなんか掴めねェよ」
 静かに泣きながら心音へ語りかけると、ユガミは胸へ手を当て、そこからモニ太と三日月のイヤリ
ングを取り出した。
「俺ァおめぇさんを守りたかった。師匠への義理とか忠義とか、そんなんじゃァねェ……俺自身の意
思で、願いで、感情だ」
 ノイズのない声で告げながら、ユガミが心音の右耳へイヤリングを、胸元へモニ太を、装着させて
いく。かつて彼女が置いていったものを再び返していく。
「……じゃあギン、頼んだぞ」
 ユガミは懐から懐刀と白い組紐を取り出すと、心音の髪の毛を一房切り取って束にし、ギンのス
カーフへねじ込んだ。
 ユガミが心音の前から立ち上がって窓を開け放てば、ギンが任せろと言わんばかりに羽ばたいて飛
んでいく。
 どんより重たげな曇り空を切り開くように遠ざかっていったギンを見送った後、ユガミは再び心音
の前へ跪いた。
「成の字たちの元へ髪の毛しか還せなくてすまねェ。だが、これからは俺ァずっと傍にいる。もう二
度と、おめぇさんを離さねェ、一人にはさせねェ……」
 心音の頬をそっと撫でて微笑みかけると、ユガミはベッドに腰掛けたまま震える彼女を抱き上げる。
 イヤリングをつけた心音の右耳が彼の胸へ密着し、鼓動がトクトクと伝わってくる。手が身体が心
音を温かく包み込んでくる。
 7年前のあの日と同じように抱かれて包まれる温もりに、心音の震えとひきつけが収まる。そこへ
ユガミが声を強くして告げた。

「ココネ、愛している。今までも、そしてこれからも、俺ァおめぇさんを愛している」

 満ち足りた感情をのせて告げられた言葉は、心音の瞳に光と焦点を戻す。
 真っ黒だったモニ太が喜びのグリーンに輝き、ユウガミサンとか細い声を零す。
「……ココネ?」
 ユガミが少しきょとんとした後、嬉しそうに顔を綻ばして心音を強く抱き締めた。
「ありがとうよ、ココネ。おめぇさんのその反応だけでも、俺ァ幸せさ」
 彼女の頭へ愛おしげに頬ずりすると、ユガミは部屋から出る為、歩き出す。が、
「……どうして……」
 最初の一歩が床へ着く前に、心音の口が声を零した。
「どうして……そんな事を言うの……?」
 はっとなって立ち止まったユガミへ、心音はもう一度問いかける。
「わたしは、あなたがわたしの知らない場所で幸せになっていると夢想するだけで充分でした。お互
い二度と出会わず、別々の場所で生きている。そう思えば生きていけました」
 どんな現実だって、観測出来ないのなら無いと同じ。いつまでも、お伽噺のエンドマークのように
【しあわせにくらしましたとさ】。
「夕神さんも見たでしょう……そこの写真。わたし、こんなに汚れているんですよ……醜いんですよ
……わざわざ迎えに来て貰える資格なんて、ないんですよ……」
 言葉が進むにつれて心音の顔は青ざめ、身体が再び震え、喉がしゃくりあげる。
「夕神さん、いつまでもわたしに触れてたら、だめです。あなたまで汚れて、殺されてしまう……だ
から、早く……」
 早く、亡霊が戻ってくる前に、わたしを置いて逃げて……!
 心音が目に涙を溜めて言いかけた矢先、
「黙りなァ」
 ユガミが優しく囁いてきた。
「俺ァもう、おめぇさんのいねェ世界で生き続ける気はこれっぽっちもねェよ」
 抱き締めた腕の中で竦む心音へ、ユガミは穏やかに語りかける。
「おめぇさんが汚れたってェなら俺も同じように汚してくれ。殺されるってンなら、喜んで殺されて
やるさ……一矢報いてからだけどなァ」
 そう言ってからから笑うユガミの胸へ、じわり暖かいものが触れてきた。
「――おめぇさんが納得するまで俺ァ何度でも言ってやる」
 静かに涙を流していく心音を、ユガミはそっと抱き締める。
「愛している。俺はおまえを愛してる。師匠への忠義や義理とか関係ない、俺自身の意思と感情が、
ココネ、おまえを愛しているんだ」
「ゃっ……!」
 心音が泣きながらイヤイヤと首を振る。一方で、胸のモニ太は嬉しさ一杯に輝き笑う。
『モットギュットシテー、ダイテー、Hシテー』
「もっ、モニ太ーー!!」
 調子よく喋るモニ太に、心音が涙ボロボロ零しながら声を荒げた。
「バカ……久しぶりに会えてこんな事言うなんて……!」
 間違いなく呆れられた、見限られた。
(あ、でも、これで夕神さんも気兼ねなく逃げてくれるかも……)
 ふと思い直して心音が唇を開きかけた矢先、
「――いいのか?」
と、ユガミが問うてきた。
 驚いてはいるけど呆れていないノイズに、心音が思わず目を丸くして振り仰ぐ。と、頬を赤く染め
て唇を気まずそうに曲げている彼の顔が飛び込んできた。
 見つめ合う二人の間で、微妙な――喩えるなら、空いた座席の前でお互い『どうぞどうぞ』と譲り
合いをやり過ぎて後に引けなくなったような――空気が漂い始める。
『イイヨー。ユウガミサントHシタイヨー』
 じわじわと顔を赤くする心音の胸元でモニ太が元気よく光った。
 お互いの顔の赤味がさらに濃くなり、気まずそうに瞼を軽く伏せる。が、お互い相手から目を逸ら
せない。
 しかし、やがてユガミが意を決した風に息をつくと、心音を抱っこしたままベッドへ腰掛けた。
 二人分の体重を受けて、ベッドがぎしり軋む。
「……嫌ならすぐに言え」
「嫌な訳ないじゃないですか。あなたの事、ずっと大好きだったんですよ……」
 泣き笑いで答えた心音の唇へ、ユガミが唇をそっと重ねてきた。
 最初は、小鳥がさえずり喋りあうようなバードキスをして。それから、口をそっと開いてスライド
キスへ移行する。時折甘噛みのアクセントを行いつつお互いの唇の感触を心ゆくまで確かめ合うと、
舌を吸い上げては、相手に舌を吸い上げられて、繰り返す。
「んっ……」
 歯茎を探るように舐められ、心音が涙の止まった目端を揺らす。歯を越えて入ってきた彼の舌を自
分の舌で抱き締めるように包み込めば、彼の舌もピクリと揺れて心音の舌を包み返してきた。
「ぁ……ふぁ、はあっ……」
 心音はたまらず口を離して喘ぐ。キスだけでも背骨は甘い稲妻で貫かれ、身体の芯がじっとり湿っ
てくる。
 一方、ユガミは心音を抱き締めていた手を解くと、右手で彼女の乳房をまさぐり始めた。
 レモンイエローのタンクトップがくしゃっと歪み、乳房を露出させる。
「……嫌か?」
「ううん、もっと、して……あなたので、わたしを上書きして」
 左手で彼女の太腿をさすりながら尋ねるユガミへ、心音は艶めいた声を出して請うた。
「――解った」
 声に欲情のノイズを乗せてユガミが頷き、心音をベッドへ押し倒す。
 ランニングシャツをたくしあげて心音の乳房を露わにさせると、乳首をぱくり咥えて舌でねっとり
舐め始めた。
「あ……いっ、いぃ……!」
 身体の中でぽわあっと膨らむ快楽に、心音が頬を染めて身をくねらす。果実のように瑞々しい乳房
も悩ましげに揺れて、もっともっととユガミを誘う。
 ユガミもニヤっと笑うと、ぢゅぅぅっ……! と、舌を小刻みに震わせて乳首を吸い上げてきた。
 ベッドの上で心音が跳ねる。肌が汗で湿り気を帯び、髪の毛が数本貼り付く。
 瞳を艶めかせて微笑む心音に、ユガミも顔を綻ばせると、乳房や首筋、胸骨の上などを口で吸って
噛んできた。
 心音の肌の上へ赤い痕が次々と咲いていく。ユガミに触れられ刻まれる度に、心音の口は甘い吐息
を零し、身体の芯が熱く蕩けていく。履いたままのパンツはおろか、ランニング用のホットパンツま
で快液でしとどに濡れていく。
「夕神さん……わたし、もう……!」
 太腿の付け根まで濡らす快液に堪えきれず、心音は自らホットパンツとパンツを脱ぎ捨てる。
「もう欲しいのか?」
 剥き出しになった心音の股へユガミがそっと右手を添えれば、甲高い嬌声が部屋を揺らした。
 陰花がくしゃみするようにひしゃげ、噴水のように快液を迸らせてユガミの右手を濡らす。
「――夕立がきている間だけだ。止んだら流石に亡霊もここへ戻ってくる」
 右親指の腹で心音の粒肉をくすぐり、残りの指で心音の股や陰花を撫で回したり蜜孔へねじ込んで
擦りながら、ユガミが告げる。
 気が付けば、窓の外の世界は、全てを穿つような豪雨が始まっている。
「は……い……」
 惚けた顔で心音がかくんと頷くと、ユガミがズボンのジッパーを下ろした。
 固く膨張した雄茎を取り出すと、心音の陰花へ宛がう。とたんに陰花が涎を垂らすように快液を零
してユガミの雄茎を塗りたくっていく。
「夕神さん……わたしを、いっぱい、汚して。あなたの精液、わたしのナカヘ、いっぱい出して」
 快楽に瞳を潤ませた心音がユガミの背中へ両手を回したと同時に、雄茎が心音の蜜孔への侵食を始
めた。
「あぁぁっ……」
 身体のナカへ広がっていく暖かく満ち溢れる感覚に、心音が喜びの声を囀る。蜜孔も雄茎をぎゅっ
と抱き締め、更に奥へ招き入れる。
 外の雨音に潜むように、ちゅっ……くにゅ……くちゅぅ……と、水音がたつ。
「っ……ココネ……」
 名を呼ぶユガミの声に溢れる、愛おしいという感情。
「夕神さん……愛してます……」
 心音の手がユガミをぎゅっと抱き締めた刹那、彼の雄茎が最奥の子宮口へ到達した。
 ぐり、と、子宮口を抉られる感触に、心音が甘い声を漏らして仰け反る。彼の雄茎を招き入れる為
に身丈を伸ばした蜜孔も歓喜に震え、陰花が快液を滴らせていく。
 気持ち良さに心音も全身をぷるぷる震わせてユガミに抱きついていたら、ふいに身体が大きく揺さ
ぶられた。
 ぎっし、ぎっし、と、ベッドを軋ませ、ユガミが腰を振るっていく。その雄茎でもって心音の蜜孔
を舐め回すように擦り剃り抉り、子宮口を圧し凹ませては陰花と粒肉をひしゃげ潰す。
「あっ、あんっ、あん、あっ」
 心音は揺さぶられるままに身を任せ、嬌声を響かせる。彼の雄茎の脈動を感じる度に、蜜孔のあち
こちを擦られ抉られる度に、子宮口を鋭く貫かれ圧される度に、快楽の電流が全身を駆け巡り、肌に
汗が噴き出てくる。
「いい……凄く、いいです……夕神さん……! わたし、もうイっちゃ……うっ」
 ふいに心音がビクンと揺れる。
 次の瞬間、蜜孔と子宮口に甘い激震が駆け抜け、一つになった二人を強く揺さぶる。
 ユガミが歯をくっと噛み締めて堪える一方、心音が絶頂の声をあげて喜びの涙を散らした。
 心音の手から力がぬけて、ユガミの背中から滑り落ちそうになる。が、先にユガミが身体をぐっと
密着させて、心音の両手を留める。瑞々しく膨らんだ二つの乳房が二人の間でムギュゥとプレスされ、
心音が頤を逸らして切なげな吐息を漏らした。
 ずっ、じゅっ、と、再びユガミが動き出す。
 二人から圧される格好になったベッドがくぐもった物音をたてる。
 抽送の角度が変わり、彼の雄茎からもたらされる刺激も快楽もパターンを変える。
『コレモイイヨー、キモチイイヨー、マタスグイッチャウヨー』
 たくしあげられたままのタンクトップの中で、モニ太の陽気な声が響く。
「そうかそうか。……じゃあ一緒にイくか? ココネ」
 ユガミが強張った顔で囁きかければ、心音が喘ぎながら元気よく頷いてきた。
 目元を綻ばせると、ユガミは心音へ口付けを交わす。互いに舌を差し出すようにして舐め合い、グ
チュグチュと唾の音を響かせる。
 下も負けじと快液を間欠泉の如く迸らせては、ぐぷぬぷぬちゅうと奏でていく。
 一つ一つ探るように確かめるように、雄茎が蜜孔を駆け上っては子宮口をタップする。その度に二
人の腰と腰がパンパン叩き合わされ、子宮口を叩かれるタイミングと相まって、心音をゾクゾク震わ
せる。
 遠慮無くプレスされては弄ばれる陰花や粒肉が、電流にも似た快楽を発して心音の全身を侵食して
いく。
 一突き、また一突きされる度に、心音の身体の中で快楽が風船のように膨らんでいく。
『マタクルー、クルヨー、ワタシイッチャウヨー、ユウガミサーン』
 互いの唇や舌を貪り合う二人の間で、モニ太の少し焦る声が響く。
 心音の唇に口を密着させたままユガミが微かに頷くと、全身に力を篭めて心音へぶつかった。
 パァン! と、一際鋭い音がたつ。
 音に負けぬ勢いでユガミの雄茎が心音の子宮口を突き貫き、そして全てを解き放つ。
 その脈動を察し、子宮口が花閉じるようにひだを収縮させ、放たれた情欲の礫ごとユガミの雄茎を
包み込んだ。
 びゅくどくどくどくっ……! 精液を解き放つ雄茎と、それ受け止める子宮口と蜜孔とで、互いに
音を奏で合う。
「んむぁっ……」
 オナカの一番奥でユニゾンになって聞こえてくる射精音に、心音がユガミとキスしたまま悶える。
どこまでも暖かくて穏やかな音は、絶頂と母の胎内にいた時のような安らぎを同時に呼び起こす。い
つまでもこうしていたいと願う。
 が、どんな事も終わりはくる。ユガミの雄茎から出る精液が止まり、ユニゾンも終止する。
『ヤダー、モットシテー、モットダシテー』
 とたんに響き渡るモニ太の声に、心音が盛大に竦み上がった。
「……もっと、か。……――そりゃァいいなァ」
 ユガミが唇を離して笑う。その声に潜む微かなノイズ――これから殺される事を自覚し覚悟した感
情を聞き取って、心音が再び竦み上がる。
 が、心音はすぐに納得した。
(そうですよね……夕神さんが一人でここへ来て、わたしの髪をギンちゃんに預けた理由……わたし
が死んでいようとココロが壊れていようと”迎えに来た”理由って、それしかないですよね)
 ――彼ははなから生きて帰るつもりはない。
 ――心音だけでも助けよう生かそうとも思っていない……もう無理だと諦めている。
「なァ、ココネ。おめぇさんはどうだ? もう嫌か?」
 一方、ユガミが恍惚と遠くを見るような目で心音へ問う。声へ本心が漏れ出た事に気付かぬまま、
腰と雄茎は心音へしっかと密着させたまま。
「……わたし……夕神さんと、もっと、したいです」
 ――これから共に死ぬ定めなら、その前にいっぱい愛し合いたいです。
 心音は自然と微笑み作ると、腰を揺らす。
「今度は、わたしが上で動いて夕神さんを気持ち良くさせたいです」
 たちまち呻いて硬直したユガミへ心音は甘えた声を出してねだる。
 ユガミが顔をひきつらせて笑いながら頷くと、心音の肩を掴んで反転した。
 ベッドの上で、二人の上下が逆転するや、心音が膝立ちになって動き始める。
 ぎっちぎっちとベッドが軽やかに軋む。
「っく……ぅ……!」
 ユガミの上へ両手をついて腰を振る心音の乳房を、たくしあげていたレモンイエローのタンクトッ
プがずり下がって隠していく。
 ユガミがちょっと不服そうな目をすると、心音のタンクトップを力任せに剥いだ。
「ひゃいっ!?」
 驚く心音に合わせて、乳房もブルンブルンと揺れ動く。
「こりゃァいい眺めだ」
 ニヤニヤ笑うユガミに、心音も恥ずかしそうに頬を膨らませる。が、ナカに咥え込んだ彼の雄茎に
も興奮が戻ってくるのを感じると、短い嬌声をあげて仰け反った。
 大きく背伸びするかのように乳房が揺れる。その下で、陰花と粒肉もピュクヒク痙攣していた。


 ベッドの上で、二人の位置が幾度も入れ替わる。
 雄茎が蜜孔を丹念にねぶって擦って互いに何度も絶頂を辿った果てに、真っ白な情欲を心音の胎内
へこれでもかと注ぎ込んでは、また位置を変えて雄茎を蜜孔へ咥え込ませる。
「あっ……あ、ああっ、あんっ……あっ!」
 ベッドの上で四つん這いになった心音が悩ましげな声を漏らして身体を揺らす。
 お尻に彼の腰が当たって自分のナカを彼のモノが強く深く貫いていく度、快楽と熱が全身をくるみ
ココロが満たされていく。時折、視界に今までの痴態を撮った写真らをピン留めしたコルクボードが
目に入るが、不思議と嫌ではなかった。
「――ココネ、雨が止む」
 ふいにユガミが腰を止めて告げる。
 言われて心音が外を見れば、夕立の勢いが大分収まり、雲の切れ間から沈む夕日もうっすら拝めた。
『モット、ユウガミサントイッパイシタカッタナ……』
 悲しみの色に染まるモニ太に構わず、心音はユガミの右手へ自分の手を重ね合わせる。
「……そうだな。まだ少し時間はある」
 ユガミも承知した風に頷くと、重ねられた心音の手を握り締めて動き出した。
 挿入角度に微妙な捻りが加わり、心音が嬌声をあげて上体を崩す。そこへユガミが左手を差し入れ、
心音の乳房をぐにぐに揉みしごく。
「あっ、こ、これ、いぃ……イイ、です夕神さ……んんぅっ!!」
 心音が絶頂に全身を戦慄かせるや、自らも腰を揺らし始める。雄茎の挿入に捻り成分をさらに加え
て咥え込んで、互いの身体に甘い痺れを呼び起こす。
「夕神さん……ゆぅがみ、さぁんっ……!」
 何度も名を呼びながら腰を振る心音の右耳で、三日月のイヤリングが躍って光を撒き散らす。
「っ……ココネ……」
 ユガミも、右手で心音の手を、左手で彼女の乳房を、握りしめたまま腰を振るう。二度と離すまい
と、強く強く掻き抱いて。
 雄茎が射精衝動に苦悶しながら、捻れる蜜孔を何度も掘り進む、粒肉と陰花を擦ってよってひしゃ
げさせる、子宮口をコツコツ叩いて抉って突き上げる。その度に、心音の全身が小刻みに震え、頭を
ガンと殴られるような快楽と共にユガミの指先までビリビリ痺れさせる。
 二人の隙間から零れ出る快液が白く泡立ち、パチパチと弾けて消えていく。時折、精液と混ざった
のがデロリとベッドへ落っこち、シーツを濡らす。
 何度も何度も、二人は深く身を寄せ合う。互いのカラダの境界すら邪魔だと言わんばかりに激しく
ぶつかっては、雄茎と蜜孔と子宮口を限界まで密着させる。
 収まる雨の勢いに反して、二人の声とカラダの音は激しさを増し、部屋の中の気温も上昇していく。
二人の肌に珠のような汗が浮かんでは流れ落ちていく。
「――愛している、ココネ」
 ユガミがぼそっと囁くや、ラストスパートをかける。
「わっ、わたし、もっ……あ……ぃしてま、す……愛して、ます……!!」
 一段と激しさを増した揺さぶりに喘ぎながらも、自ら腰を揺らす事は止めずに、心音も返す。
「あっ、あっ……夕神さん……夕神さぁんっ……!!!」
 すがるように叫ぶ心音の目端に涙が浮かぶ。それはまるで、彼女の瞳を満たす喜びと悦びがそのま
ま粒となったかのよう。快楽と絶頂に打ち震える度に、心音の目端でプルプル揺れる。
 ベッドも苦しげに軋み、二人の髪も反動でしなり跳ねていく中、ふいにユガミが口惜しそうに歯を
食いしばった。
 次の刹那、子宮口を勢いよく貫いた雄茎が破裂するように身動ぎ、最後の精を解き放つ。
 熱き礫に蜜孔と子宮口もビクンと身を竦ませたかと思うと、むぎゅうぅぅうううっ……! と、雄
茎を強く掻き抱いた。
 びゅるるるる……どくんどくんっ……と、心音の中で音が響く。
「あっ……オナカで音がする……オトがするのぉ夕神さぁん!!」
 心音が勢いよく頤逸らし、絶頂に達した悦びに猛る。
 今まで彼女の目端に留まっていた涙が反動で零れ、頬に軌跡を描きながら落ちていく。その最中、
右耳で揺れる三日月のイヤリングの光を反射し、きらきら輝いた。
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 <<WARMING!>>

 亡霊×心音もの最終話・後編。

 【死にネタ】あります。ご注意を。


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「――本当は、終わった後このまま一緒に死にませんかって誘うつもりでした」
 肩を抱き寄せてきたユガミの手へ、心音は自分の手をそっと重ねる。
「どうせ共に死ぬのが定めなら、いっそ最高の瞬間で時間を停めてしまえば苦しい事もない……そう
思っていました」
 雨は既に止み、夜の帳が下ろされた外の世界。それを、灯りの消えたリビングのソファーに二人で
共に座ってぼんやり眺める。
「でも、いざ言えるタイミングになった時……どうせ共に死ぬのが定めなら、この幸せな時間を少し
でも長く覚えていたい……そんな欲求が、わたしの中へ湧き出てきたんです」
 ここで言葉を区切ると、心音は自分の身を包む純白のワンピースを見やる。行為の後、ユガミから
出された純白のワンピース。灯りを消した世界の中で眺めると、まるでウェディングドレスのようで
あり、死に装束のようでもあった。
「もしかしたらこの選択を後悔するかもしれない。お互い、前よりも酷い生き地獄へ落とされるかも
しれない……でも、それでも、わたし、は……」
 言い淀み震え始める心音を、ユガミは黙って抱き締めた。
「――覚えておこう。お互い、最期の瞬間まで」
 心音の顔を自分の胸へ押し当て、自身の鼓動の音を聞かせながらユガミが語る。人が泣き笑いする
時に放つノイズを声に乗せて。
「……はい……!」
 心音も顔をくしゃっとさせて頷くと、そのままユガミの胸の中で少しだけ泣いた。

 ※※※

(……なんだこれは……)
 リビングのすぐ外の廊下で、ずぶ濡れになった亡霊が胸を押さえる。
 コロシヤからの狙撃からほうほうのていで逃げながらも別荘へ戻ってくれば、灯りの消えたリビン
グで心音とユガミの二人が抱き合って寄り添い合っていた。
 リビングに設置してある隠しカメラの映像を手持ちのスマホへ転送させれば、幸せに満ちた顔でユ
ガミに寄り添う心音の姿が映し出される。
 ここへ来てから初めての、幸せそうな彼女の笑顔。亡霊にはついぞ見せてくれなかった笑顔を、彼
女はユガミへ向けていた。
 亡霊の右手の古傷と胸の奥が激しく軋む。両目を耐え難い渇きが襲って、涙をボロボロ零していく。
(ナンダコレハ――何故ジブンは泣いているのだ!?)
 亡霊が全身を戦慄かせて頭を振る。が、何度頭を振って濡れた髪から水滴を飛び散らしても、右手
の古傷と胸の奥の軋みは、目の奥の耐え難い渇きは、収まらなかった。
(わ……解らない何故ダ解ラナイ……解ラナイ!!)
 絶叫をあげかけた喉を、亡霊は寸前で押しとどめる。
 理性では、いますぐリビングに踏み込んでユガミを射殺し、心音と当座の荷物を持って逃げ出すの
がベストだと解っているのに、身体が見えない茨に囚われ、動けない。右手に握りしめた拳銃もカタ
カタ揺れ、標準を合わせられない。
(解ラナイ……)
 何故、身体の震えが止まらない?
 右手の古傷と胸の奥が痛んで止まらない?
 両目が涙を零すのを止められない!?
(何故ダ、何故ダ何故ダ何故ダナ故ダ何ゼダナゼダ!!!!)
 被っているマスクがずれそうな勢いで亡霊が頭を振っていた矢先、

「……わたしも亡霊と戦います」

 リビングにいる心音の声が、壁越しから聞こえてきた。
 亡霊の両目から涙を追い払い、見えない茨を身体から振り払った。

 ※※※

「……わたしも亡霊と戦います」
 涙が落ち着いてからしばらくして、心音がユガミの胸の中に顔をうずめたまま宣誓する。
「彼は強いです……わたし達二人がかりでも、勝ち目は薄いくらいに」
 何故7年前の幼い自分が亡霊を撃退出来たのか。その答が分かれば少しは違っていたのかもしれな
い。けど、もういい。
「わたしも一緒に戦わせてください。夕神さんと共に戦って、死なせてください」
 胸の奥へ微かに過ぎる痛みはストックホルム症候群によるものだと自分自身に言い聞かせ、心音は
ユガミへ請うた。
「――悔しいがその通りだなァ」
 ユガミが、はああああ……と大きなため息をついて頷いてくる。
 了承と受け取って心音が微笑み、胸元へ意識を向けた。
(たとえ”切り札”を使っても、相討ちに持ち込めるかどうか……)
 胸元にしまった小型リモコン――前に偶然知ったトラップを起動させるスイッチ――の感触を心音
が確かめていたら、ガァン! と、銃声がリビングのドアを打ち破った。
 驚いて竦んで振り向いた二人の前へ、拳銃を右手に握った亡霊がリビングへ入ってくる。その双眸
に夜よりも暗くて冷たいモノを宿し、二人を見下ろしてくる。
「だ……ダメっ!」
 銃口とユガミの間へ心音が両手を広げて立ち塞がる。
 亡霊が足を止め、無機質な目で心音を見る。
「! 待ちなァっ!!」
 ユガミが心音へ飛びついたと同時にリビングへ銃声が響き渡った。
 窓ガラスが砕け散り、外の風が入り込んでくる。
「テメェ! ココネごと撃ちやがったなァ!!」
 とっさに心音を押し倒して庇ったユガミが、素早く起き上がってがなる。
 亡霊は何も答えず、引き金にかけた指に力を篭める。
 ユガミが舌打ちしながら亡霊の手に飛びついたと同時に2発目の銃声がリビングに響いた。
「ひゃいいっ!」
 壁を穿つ銃弾に心音が起き上がりながら縮こまる。
「気にくわねェから始末するたァ随分なクソガキっぷりだなァおい……!」
「――それがキミの遺言か?」
 ユガミへ亡霊が淡々と言い返すや、掴まれている腕をブゥンと振り回す。
 188あるユガミの巨躯がリビングの中をクルリ舞って、壁へ叩き付けられる。
「! 夕神さ……!!」
 駆け寄ろうとした心音の頭へ、亡霊が銃を突きつけた。
 発射済みの銃口の熱が、心音のこめかみを焦がしてくる。
「――キミの遺言は何かね?」
 脂汗流して固まる心音に、亡霊が、今まで聞いた事ないノイズを声にのせて問うてきた。
「……わたし、は……」
 心音は祈り捧げるように両手を胸の前へ置いて、声を張り上げる。
「――夕神さんを、愛しています!」
 ずきり痛む胸を両手で強く圧す。隠し持っていた小型リモコンのボタンを、ワンピースの上から押
す。
 ぱっ。と、リビングの照明が灯る。
 急に明るくなった視界に3人が目眩を起こした刹那、別荘の壁の一画へ強大な電流が流れ込む。
 別荘の壁の一画にわざと接続された脆弱なコンデンサ達が耐えきれずに連鎖爆発を起こし、電流と
火災が別荘を吹っ飛ばした。

 ※※※

「ぅ……」
 口の中へ入った土の味と臭いに顔をしかめつつ、心音は身体を起こす。
 どうやら別荘の爆発と共に外へ吹っ飛ばされたらしく、あちこちがズキズキ痛む。とはいえ出血は
なく捻挫もしてないので、なんとか動けるのが僥倖といえるだろう。
 別荘も、外壁が吹き飛んだだけで、屋根や柱は殆ど残っている。尤も、それら全てがぼうぼう燃え
ているので、消滅するのも時間の問題だが。
(夕神さん……それに亡霊は!?)
 心音が辺りを見回すと、燃えさかる別荘の中でユガミが頭から血を流して倒れていた。
「!!! 夕神さんっ――!」
 よろよろと駆け出そうとした心音の腕が、後ろからがっしと掴まれる。
「素晴らしい……この仕掛けを自力で見つけ出して作動させるとはなぁ!!!」
 振り向き、恐怖と絶望に息を呑んで固まった心音へ、亡霊が大口開けて笑ってきた。
「ああ素晴らしい! 残念だ! キミならさぞかし立派なスパイになってくれただろうに! 男のジ
ブンでは無理な任務も華麗にこなせただろうに!!」
「――わたし、スパイになんてなりたくありません!」
「ああ、そうだな! キミは選んだ! ジブンではなくユガミくんを選んだんだ!!」
 叱責するような亡霊の声は、心音の胸をチクリ刺す。
「そうです……だから離して!」
 微かに痛む胸に苦悶しつつも心音が言い返した途端、亡霊の目がギョロリ動いた。
「駄目だ」
 にべもなく言い放つと、亡霊は心音を地面へ叩き伏せる。外したネクタイで心音の両手を縛り上げ
ると、彼女の両足を無理矢理深く胡座をかかせて地面へうつ伏せに転がした。
 ワンピースの裾を捲ってパンツの中へ右手を突っ込めば、ねとりとした感触が指先へ絡む。
「――随分とお楽しみだったようだな」
 亡霊はフンと鼻を鳴らすと、心音のパンツを力任せに引き千切った。
 夜気に晒された淫花がびくり身を竦ませる。
「! やっ……!!!」
 両手はネクタイで縛られ、両足は深く組まされた胡座で身動きがとれなくなった心音の腰へ亡霊が
のし掛かり、牡茎を牝肉孔へ突っ込んだ。
 前戯も無しに挿入された痛みに、心音が悲鳴をあげて頤を逸らす。摩擦熱に牝肉孔もぎちぎちと苦
しげに締めてくる。
 それらを亡霊は笑って無視して、腰を全力で振り始めた。
「いやぁ! 離して……離してぇ!!!」
 涙を撒き散らしながら叫ぶ心音の中を、亡霊の牡茎が無理矢理押し割って蹂躙していく。牝肉孔へ
残されたユガミとの営みの残滓を掻き出しながら、他の男のを咥え込んだ子宮口を全力で殴る。
 水音のないインサートに淫花が苦悶するように身動ぎ、牡茎の表面に巻き取られては削がれるよう
に擦られてく。
 普段よりも強い摩擦が熱を発し、互いの表面へ痛みを与えても、亡霊は腰の勢いを止めない。口元
をニヤリと曲げた顔で、心音のナカを滅茶苦茶に小突いて抉っていく。
「嫌! 嫌ぁっ! 夕神さぁん!! 起きてぇ! 逃げてーっ!!」
 痛みと絶望に顔を大きく歪めながら、心音が叫ぶ。亡霊に拘束されて犯される中でも尚前へ――目
の前で燃えていく別荘の中に倒れているユガミへ向かって、這いずろうとしながら。
「無駄だよ。多分、キミがスイッチを入れた爆発の際に、頭を打ったんだろう」
 亡霊は鼻を鳴らして嘲笑うと、腰を少し離した状態で停止し、両手で心音の尻たぶをゆるゆる揉み
始めた。
「やっ……!」
 心音が、くすぐったそうに肩を揺らす。牡茎を途中まで咥え込んだ淫花も悩ましげに震え、ひだで
牡茎の表面をなぞった。
「んっ――!」
 心音の声に、悦楽の色が混ざる。
 亡霊はしてやったりと嗤うと、尻を揉むのを止めて再び動き始めた。
 ぐりゅ、ぐりゅ、ずる、と、先程よりか少しばかりスムーズになった牝肉孔を、亡霊の牡茎が侵略
していく。
「あっ……やっ、やぁっ、ぃやあぁっ……!」
 艶めいた涙声を出して心音が震える。まだ前へ這いずろうとあがいてはいるが、その力は弱まり、
拘束されている指が空を掻く。
「お願い……夕神さん、逃げて……早く起きてそこから逃げてぇ……!!」
 喘ぎながら嘆き叫ぶ心音の声は、夜闇に虚しく響き渡る。
 燃え盛る別荘の中で倒れるユガミはピクリとも動かない。
「もしかしたら、頭を打ったショックで既に死んでいるのかもしれないな」
 亡霊が、ふと気が付いた可能性を心音へ告げた刹那、別荘の柱の一部がべきょり折れ曲がった。
 炎が一瞬だけ勢いを増す。その眩しさに亡霊の目がくらくらする。
(クッ、こんな時に……)
 響く轟音を聞きながら亡霊が瞬きをして視力を取り戻せば、ユガミのいた場所が炎に呑み込まれて
いた。
「夕神さん……!」
 心音が声を震わせる。亡霊の牡茎がめり込んだ牝肉孔もプルプル揺れる。
「――そうか、ついにぷちんと潰れたか」
 亡霊の胸の中が晴れやかな気分で満ちていく。喜びの余りに牡茎も身動ぎ、びゅるるっと精液を迸
らせる。
「ヒッ――!」
 心音が息をのんで引きつけ、白濁の情欲を浴びた子宮口と牝肉孔が絶叫をあげるように戦慄いた。
(ユガミくんはもう死んだ……)
 邪魔者はもういない。遠慮無しにココネクンを犯せる。彼女のナカに残っているだろうユガミくん
の残滓を自らの牡茎で掻き出し、ジブンので塗り替える。
(――アア、ナント素晴ラシイ!)
 亡霊はニヤァと顔を歪めるや、高笑いしながら心音を犯し始めた。
 注ぎ込んだ精液が牝肉孔をコーティングし、挿入の動きが若干滑らかになる。
「やっ、やぁぁっ! いやぁーっ!!!」
 首を激しく振って叫ぶ心音の顔から、涙の礫がキラキラ飛び散る。眼前で燃え盛る炎を反射させて
散っていく。
(まるで宝石のようだな)
 すぐ後ろからその様子を見下ろす亡霊は、素直な感想を抱くと同時に疑問が生まれる。
「……なぁココネクン。愛した男が目の前で焼け死んでいったのを眺めながら別の男に犯されるのは、
一体どんなキモチかね?」
 喉の奥を愉快そうに震わせながら、亡霊は心音へ囁きかけた。
 びくん、と、心音が身を竦ませたかと思うと、亡霊の方へ顔を向けてくる。
「あなた、は……!」
「おや、ショックで狂っていたかと思っていたが、意外とそうでもないんだな」
 7年前――『よくもおかあさんを!』と工具ナイフを振りかぶってきたあの時と同じ目をしてくる
心音に、亡霊は意外そうに肩を竦めた後、ふっと鼻を鳴らして嗤う。
「――7年前は不覚をとったが、今は違う」
 両手はネクタイで縛り上げ、足は胡座を深くかかせて外れないようにしている。
「キミに出来る事などない。肉便器というモノになってジブンに蹂躙されるしかないんだよ」
 右手の古傷が一瞬だけ疼いたのを感じつつ、亡霊は腰の動きを再開させた。
「大人しく受け入れた方が……濡れた方が身の為だよ」
 未だ濡れようとしない牝肉孔を牡茎がゴリゴリ擦るように前後していく。精液によるコーティング
は既に剥がれ、再び互いの身体に痛みを伴う摩擦熱が始まる。
「やっ、いやぁぁああっ!!」
 心音が頭を激しく振って拒絶する。淫花が苦悶するようにひしゃげ捻れる一方で、牝肉孔がじわり
湿り気を帯びていく。
「おやおや、やっぱり気持ち良くなってきたか」
「いっ、異議あり! 防衛本能によるものの可能性がありま……」
 心音の叫びを、亡霊は牡茎の一突きで黙らせた。
 パァン! と、心音の尻たぶへ亡霊の腰がぶつかり、鋭い音をたてる。
「うぅぅっ!」
 歯を噛み締めて心音が打ち震える。牡茎が捻り込まれた牝肉孔にも振動は伝播し、亡霊の腰へ揺さ
ぶりをかけてくる。
 今まで乾ききっていた淫花が微かに煌めいたかと思うと、快液を一筋滴らせてきた。
「ハッハッハッ! やっぱり気持ち良くなってきたんじゃないか!」
 牡茎を濡らしてくる感触に、亡霊はさらに腰を動かし始めた。
 互いの身体が幾度も叩き合わさる。その度に、少しずつ、ねとっとした音色が加わり、大きくなっ
てくる。
「うぅ……やぁっ……ああぁー……」
 心音が身体をガクガク揺らし、力のない声を漏らし続ける。項垂れるように脱力した淫花はしっと
り濡れて、牡茎の挿入に対して滑らかな反応をみせる。
 ポタリ、ポタリと、快液が外へ滴り落ちる間隔が短くなり、量も増していく。
 今まで苦しげに痙攣していた牝肉孔の動きも代わり、誘うような蠢きをして牡茎をぎゅっと締めて
くる。
 ようやく亡霊のを受け入れ始めた心音の胎内。だがまだ一カ所、抗う場所がある。
(いつまで持つかな)
 亡霊は唇を軽く舐めて嗤うと、未だ抗う心音の子宮口を全力で嬲り始めた。
 心音が震え、助けを請うような喘ぎ声をあげても、亡霊は手加減せず腰を打ち込み、子宮口へ牡茎
をボコンとめりこませる。
『ヤダー、コノママジャイッチャウヨー!』
「そうかそうか、素直だなぁキミは!」
 モニ太の機械音声――心音の本音に、亡霊が朗らかに笑ってラストスパートをかけた。
 ずっちゅぬっちゅぐっちゅぬっぷと、響く水音が激しさを増し、二人の腰や足を快液がべっちょり
濡らしていく。
 祈りを捧げるようにうつ伏せになった心音の肉体を亡霊の牡茎が幾度も貫き、チョコレートみたい
に甘い痺れを二人のナカへ広めていく。
『ヤダヤダ、ヤメテー! イッチャウ、イッチャウー!!』
 喘ぎおののく心音の代わりに、モニ太が嘆く。が、それも徐々に弱まり、やがて心音と一緒に嬌声
をあげていく。
 亡霊は顔を満足げに綻ばせると、腹の中で高まっていた圧力を解放した。
 びゅるっ、と、精液を吐き散らしながら牡茎が心音の胎内を駆け上っていく。
「ひぃっ……!」
 射精音を聞きつけた心音がひきつけを起こして硬直した所へ、牡茎が根元までズンとめり込み、溜
まっていた残りを一挙に迸らせた。
 子宮口が勢いよく凹まされるや、びゅる、びゅるびゅるびゅる! と響く欲情に合わせて無理矢理
振動させられる。
「ひゃいぃぃっ!!!」
 心音がエビぞりになって絶叫をあげたかと思うと、ナカとソトとで一斉に痙攣を起こした。
 痙攣は――快楽は、みっちり挿入させた牡茎を通して亡霊の肉体にも流れ込んでくる。
「いやはや素晴らしい! 素晴ラシイヨココネクン!! これがキミタチの主張する感情というもの
か! 喜びか!!」
 ほぼ牡茎一本で彼女の絶頂を引き出せた結果に亡霊が声を弾ませ、このまま3回戦目への突入準備
に向かう。
 ナカで牡茎が動く気配に心音がひっと息を呑んだその矢先、

『カナシイッテノイズモ、キコエルヨー』
 ふいにモニ太の機械音声が響き渡った。


「……なんだと」
 亡霊が、きょとんとした顔をして停止する。
「ジブン、今の声には何の小細工していないぞ?」
 間違いじゃないのかと亡霊がモニ太へ――心音の首筋へ顔を寄せようとした刹那、ふいに視界の隅
で何かがキラっと輝く。
 それが、己の目から零れた涙だと気付いた途端、亡霊が大きく竦み上がった。
「……?」
 ハァハァ荒い息をつきながら振り向こうとしてきた心音の頭を、亡霊は左手で押さえつける。そし
て、急いで右手で目元の涙を拭い取った刹那、後方から草を踏む音がしてきた。
(コロシヤか!?)
 はっと振り向いた亡霊の目に、頭から血を流して睨んでくるユガミの顔が飛び込む。次に、脇腹へ
激痛が走る。
 気が付けば、ユガミが亡霊の脇腹へ包丁を突き立てていた。
「下種野郎が……ココネから離れろォォッ!!」
 ユガミが吠え、亡霊を力任せに投げ飛ばす。心音の中に隠れていた牡茎も外へ引き摺り出されて遠
ざかる。
「ココネ! すまねェ……!」
 ユガミは心音の拘束を急いで解くと、強く抱き上げた。
「夕神さん……良かった……生きてた……」
 彼の鼓動と温もりに心音が涙を浮かべて安堵した途端、彼の後ろでゆらり白い影が――亡霊が立ち
上がる。
「! 夕神さん後ろっ!!」
 心音が悲鳴をあげたと同時に、亡霊の右手がユガミの首を掴んだ。
「しぶといヤツだな、キミは」
 亡霊が淡々とユガミの首を絞めていく。
「川向こうに立った師匠から笑顔でポン刀ブン投げられて還ってきたぜ……」
 ユガミがふてぶてしい笑みを浮かべて言い返すと、首にかかった亡霊の右手を両手でなんとか引き
剥がす。
「脇腹に包丁刺されてンのに相変わらずのパワーたァ、化け物にも程があるだろうが……!!」
 げほごほと咳き込みながら、ユガミが立ち上がって身構える。が、その全身は激しく震え、立つの
が精一杯といった様子。
 亡霊がはっと肩を竦めて嗤うと、掌底をユガミへ打ち込んだ。
 ドンッ――と、重く響く音と共に、ユガミが2・3歩よろける。
(流石のヤツもパワーが落ちている……!)
 前くらった時はもっと吹っ飛ばされていた一撃に、ユガミが転びそうになりつつも拳を振りかぶろ
うとした矢先、亡霊がタックルをかましてきた。
 再び響く、重い音。亡霊の体躯がユガミの腹の上へ思い切りのしかかる。
「重傷状態での戦い方など、いくらでもある」
 がふっ、と、血と息を吐いて痙攣したユガミへ亡霊が淡々と告げると、彼の喉へ右腕を宛がい、そ
のまま体重をかけ始めた。
「! 夕神さ……!」
 心音が叫び、駆け寄ろうとする。が、両足に力が入らず、その場へ盛大に転んでしまう。
 くっと歯噛みしながら心音がもう一度起き上がろうとした刹那、近くの草むらに拳銃が落ちている
のに気が付いた。
 心音は迷う事なく拳銃を掴むと、亡霊へ向けて引き金をひく。
 次の瞬間、頭蓋骨を割るような銃声が辺りに轟き、銃弾が亡霊の鼻先をかすっていった。
「夕神さんの元から離れて! 早く!!」
 目をまん丸にして振り向いてくる亡霊へ拳銃を突きつけながら、心音はゆっくり立ち上がる。ふら
つき今にも崩れ落ちそうな身体を必死で鞭打って、銃口は決して揺らさず亡霊へ。
「次は外しません……わたしがアメリカに7年住んでいたのは知っているでしょう?」
「銃の扱いには慣れている、という訳か」
 のし掛かっている今の体勢では、心音が撃つ前にユガミを盾にするのは不可能。
 亡霊は肩を軽く竦めると、ユガミの喉から右腕を離して立ちあがった。
 別荘の燃え続ける音が3人のいる場に響き渡る。殆どの柱を残したままの燃焼もそろそろ限界らし
く、時折軋む音と共に形が徐々に歪んでいく。
「……どうやら、今ので弾切れしたようだな」
 ユガミの元から離れても発射されない銃弾に、亡霊がニヤリ嗤うと、心音の方へ歩き始めた。
「――あ、あります!」
 心音が拳銃を構えたまま後ずさって亡霊から逃げる。燃える別荘へ自ら近付いていく。
「では何故撃たない?」
「…………普通に撃っただけでは、貴方に避けられますから」
 問うた亡霊に、心音は更に後ろへ下がりながら答えた。
「それは――いい判断だ」
 亡霊は素直に認める。
「かえすがえす、スパイになってくれないのが残念だよココネクン……」
 ――アア、何故、キミハ選ンダ。
「何故キミは、ジブンではなくユガミくんを選んだんだ!!」
 亡霊がギョロっと目を剥いて叫べば、心音が僅かに身を竦ませた。
 好機とみて亡霊が飛びかかる。が、寸前で心音に逃げられてしまう。
(この程度の動きも出来ないとは……)
 亡霊は歯噛みしつつも再び心音へ迫れば、彼女は拳銃を構えたまま、こちらと一定の距離を保つよ
うに後ずさった。
 じりじりと、二人の身体が徐々に別荘へ近付いていく。炎の熱で汗が蒸発する距離になっても、互
いに移動し続ける。
「で、いつまで逃げて――撃てるチャンスを狙っているんだ?」
「……ずっと、考えていたんです」
 亡霊の問いに、心音が、熱風に髪を揺らされながら静かに口をきった。
「これだけ強い貴方に、何故7年前のわたしは手傷を負わせる事が出来たのかって。そうしたら、気
が付いたんです」
 7年前のあの時と、今の違い。
「あの時の貴方は顔を隠す為に能面を着けていた。”視界に強い制限をかけられていた”。だから、
幼いわたしの攻撃を避けきれなかった」
 拳銃を握る手に力を篭めて心音が告げれた刹那、すぐ後ろで燃える別荘が再びめきょり歪んだ。
 炎がぶわっと膨らみ、輝きを強める。近くまで寄っていた亡霊の視界を光で塗り潰す。
(!! 彼女はこれが狙いだったのか!)
 しまったと歯噛みしつつも、亡霊は何も見えぬ中を動いた。
 銃声が鋭く響く。が、亡霊の身体に新たな痛みは――銃弾は、穿たれない。
(勝った!)
 直感だけで銃弾を避けられた喜びに亡霊が震える。視界も戻り、愕然とした顔で立ち竦んでいる心
音へ飛びつき、その手から拳銃を奪い取る。
「誰も動くな!」
 心音の頭へ拳銃を突きつけ、亡霊は冷たく言い放った。
 3人の動きがピタリと止まり、揺らぐ炎に映し出される影だけが躍る。
 後方で密かに立ち上がって駆けつけようとしていたユガミが、奥歯をギリリと食い縛った。
「残念だよココネクン」
 唇をきゅっと引き結んで仰ぎ見てくる心音を眺めて、亡霊が淡々と語る。双眸に宿る光はどこまで
も冷たく――でも時折微かに揺らいでいる。
「何度も言っているでしょう。わたし、スパイになんてなりたくありません」
 亡霊をじっと見つめて心音が静かに言い返す。頭に突きつけられた拳銃の引き金へ指がかかっても、
怯えたりもせずに。
 いつまでも騒がぬ心音に、亡霊は鼻でフンと鳴らすと、口を開いた。
「ココネクン……世の中には屍姦というプレイがあるのは知っているかな?」
 この言葉の意味を察して、心音とユガミが息を呑んで固まる。
「キミとのハジメテの逢瀬も似たようなものだった……ならば最後の逢瀬も眠るキミを犯す、ただし
永眠しているキミを……というのもオツなものだろうなぁ」
 命の光を喪ったキミの目は、顔は、どんなものになるのだろう?
 死後硬直はどうなるのだろうか? 弁慶の最期のように固く拒絶してくる? それとも全てを諦め
たようにぐんにゃり柔らかくなって、何の締め付けもないものになる?
「ああ、色んなトコロに孔を穿ってやるのもいいな」
 モノ言わぬ骸となった心音を犯す様子を夢想して亡霊が嗤えば、心音がひっと顔を歪めた。
「下種野郎がァ……どこまで堕ちれば気が済むんだテメェはッ!!」
 後ろで聞いていたユガミが眦を裂いて吠える。出来るなら今すぐ亡霊へ飛びかかりたい、が、この
距離では先に引き金をひかれてしまう、心音を殺されてしまう。
「愉しむのなら、顔は生前のままにした方が良いな」
 一方、亡霊は、怯え震える心音を舐め回すように観察する。彼女の頭に突きつけている拳銃の位置
をどこにずらすか考える。
 喉か、心臓か、それとも銃口を咥えさせて撃ち抜くか。どれも一長一短で亡霊は迷っていたら、心
音が急に震えるのを止めた。
 怯えを消して、優しげに微笑む彼女に、亡霊の意識が一瞬囚われる。その間隙をつくように、心音
が後ろへ――燃え盛る別荘へ向かって跳んだ。
 泥で汚れた白いワンピースが、ふわり羽衣のようにはためく。
「! ココネェッ!!」
 ユガミが叫び駆け出す前で、亡霊も動く。全速力で踏み込み、拳銃を持ってない手で彼女を掴む。
そして、炎の影響外まで引き摺り出そうとした矢先、心音が亡霊へ抱きついてきた。
 亡霊の動きが停止する。炎のすぐ傍に二人の身体が引き止められる。
「ごめんなさい賭けました! 貴方が、わたしを追いかけて捕まえようとしてくれると!」
 ぎょっとする亡霊へ心音がしがみついたまま声を張り上げた刹那、燃える別荘の残骸が苦しげに軋
み、崩落を始めた。
 二人へ向かって、燃える柱の残骸達が雪崩を打って倒壊してくる。
(ごめんなさい夕神さん……わたし、先に亡霊と逝ってます)
 炎と熱風が迫るのを感じながら心音が目をそっと閉じた矢先、亡霊から聞こえてくる鼓動が転調し
た。
 亡霊が拳銃を放り捨て、両手で心音を強く抱き返してくる。踏み留まろうとしていた心音の身体を
力任せに持ち上げて、そのまま炎の外へ向かって全力で飛び出す。
 驚く心音の足元で汚れたワンピースがマタドールの旗のように翻り、それとすれ違う格好で別荘の
残骸がぺしゃんこに潰れる。
(そんな――!)
 亡霊に抱き締められたまま驚愕する心音の前で、炎の中から拳銃の破裂音が響く。
 火で銃弾が暴発したんだと心音が気付いた途端、亡霊が急にバランスを崩し、包丁を突き立てられ
た方の脇腹を下にして倒れた。

 ※※※

 それは、この場にいる誰もが思っていた事だった。
「……何故、ジブンはこんな事を……ココネクンを抱えて逃げたのだ……?」
 仰向けに倒れたまま、亡霊が呟く。包丁が刺さっていた脇腹は転倒の衝撃で大きく切り裂かれ、血
を滝のように流していく。
 片足には銃弾による傷――暴発した弾が命中して、それで亡霊はバランスを崩したのだった――が
穿たれ、じんわり血を滲ませていた。
「普通ならば突き飛ばして逃げるが最善策……ジブンを殺そうとする相手を庇う理由などどこに、も、
な、ぃ……」
 なのに何故。
 言いかけた亡霊の口が、血の塊をゴポリ吐き出す。
 すぐ傍に立つ心音が、たまらず顔を逸らし俯く。
「…………ンなの、感情によるモンなんだからしょうがねェだろ」
 ユガミが、はああぁ……と、盛大なため息をつくと、どこかげんなりした顔で告げた。
「感情……?」
「まァだ自覚してなかったのかよ、テメェ」
 掠れる声で聞き返す亡霊に、ユガミはたまらずジト目を浮かべる。
「いいか。テメェは本気でココネに惚れてしまった。だからこそ、とっさの判断が感情を――愛する
ココネを救う方を――優先した」
 ユガミの告げた言葉に、亡霊が瞼を剥いた。
「ジブンが……ココネクンを愛していた、だと……?」
 そんな、馬鹿な。
 愕然とした様子で呟く亡霊に、心音が肩をびくりと震わせる。
「ああ、全く馬鹿な話だなァ。感情が殆どないと分析されていたテメェが、一番原始的な感情である
愛をいつの間にか得ていたなんてよォ」
 ユガミが静かに頷き返す。今まで散々やられてきた報復に笑い飛ばしてやりたかったが、そんな気
にはなれなかった。
「そんな……こんな馬鹿な理由でジブンは死ぬのか……」
 亡霊の双眸に恐怖が浮かぶ。
「嫌だ……ヤメテクレ……助けてくれ……」
「そういって命乞いをしてきた奴等を、テメェは今まで何人殺してきた!?」
 亡霊の叫びを、ユガミが黙りなァと一刀両断にする。
「安心しな。師匠に番轟三に葵大地……テメェの任務で殺されてきた奴等が、喜んで出迎えてくれる
だろうよォ」
 ユガミが口端を曲げて笑ったら、亡霊が裏返った声で悲鳴をあげた。
「アァ……ウァ、アァアアアア……」
 亡霊がガクガク震え出す。脇腹から零れる血の勢いが増し、双眸の光も見る間に弱まっていく。
 かつて伝説のスパイと謳われた亡霊の命が消える時。憎い仇とはいえ死ぬ瞬間を見るのは辛かろう
とユガミが心音を抱き寄せようとした矢先、それを振り切るように心音が動いた。
「……貴方はお母さんを殺した人だし、今までわたしにしてきた事を考えると、到底許せません」
 震える亡霊の傍へ膝をつくと、心音が静かに語りかける。
「でも。それでも。わたしを助けてくれた事には感謝します…………ありがとう」
 そう言って心音が小さく微笑んだ途端、亡霊の震えが止まった。
「……くっ……クックックック……ハァッハッハッハッハッハ!!」
 亡霊がニヤァと顔を歪めたかと思うと、血塗れの腹を抱えて笑い出す。
「まったく感情というのは滑稽だな! キミが他の男を選んだと解っているのに愛するのを止めぬど
ころか、庇った挙げ句ジブンは死ぬ!! なんと愚かな! なんと滑稽な!!」
 アア、ナノニ、ソレナノニ。
「……キミの今の一言だけで、全てが報われるような気になってしまったよ」
 ――感情が、全て納得してしまったよ。
 笑うのを止めて語りかけた亡霊に、心音が弾かれるように身動いだ。
(……アア、マタ、満たされる……)
 目の前の、心音の顔を見ていると、今までずっと疼いてきた右手の古傷と胸の奥が一杯に満たされ
ていく。
 視界がぼやけ、音が遠ざかり、意識が澱んで消えていっても何も怖くない。

 マスクを被った顔に自然な笑みを浮かべ、亡霊は静かに息を引き取った。


「……!……」
 亡霊の骸を呆然と見つめていた心音が、急に我に返る。
(わたし、今……)
 亡霊が亡くなる寸前、一瞬だけ過ぎった感情――想い。それに気が付いて、心音が自分の身体を両
手で強く抱き締めた。
(どうして……この人は、わたしのお母さんを殺した人で、わたしを慰み者にしてきた人……!)
 なのに、どうして。
(どうして――!?)
 心音の胸がズキリと痛む。
 身を包む汚れたワンピースの上で、亜麻色の髪の毛が怯えるように揺れる。
(そんな……わたし……わたし、は……)
 顔を真っ青にして縮こまった心音へ、後ろからユガミが抱きついてきた。
「詫びなんかすンじゃねェぞ、ココネ。おめぇさんは、この場にいる全員を救ったんだ」
 ユガミが先んじる。
「でも……夕神さんから怒っているノイズが聞こえてます」
 ――わたしが、微かだけど亡霊に対して想いを抱いていた事を悟って、怒っています。
 心音が、真っ青になった唇を震わせる。
「そりゃァ感情によるモンなんだからしょうがねェだろ」
 ユガミは呆れた風に息をつくと、だがな、と、続けた。
「今、俺がおめぇさんへ言った事もまた真実。俺の本心なンだよ」
 もしあのまま亡霊を逝かせていたら、心音はきっと後悔して――その感情でココロが磨り潰されて
いただろう。
「ココネ。おめぇさんは自分で自分の心を守った、そのついでにあの野郎も救ったんだ。それでいい
だろ?」
 だから、な。
「――俺ァずっと傍にいる。おめぇさんを決して一人にはさせねェから……だから今は存分に泣いち
まいな」
 そう言ってぎゅっと抱き包んできたユガミに、心音が顔をくしゃっとさせて頷くと、そのまま彼の
胸で嗚咽し始めた。




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 亡霊×心音もの おまけ小咄。
 エロはないです。


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 灯りのない夜、燃え尽きた別荘の近くにある木の幹でユガミと心音が抱き合うように寄り添って眠
り続ける。
 満天の星空から音が聞こえてきそうな程の静寂。そこへ余計な音をたてぬようそっと歩み寄る影。
「……律儀なアンタにしちゃァ珍しく遅かったじゃねェか」
 影が二人の前へ立ったと同時に、ユガミが目を開けた。
「……お目覚めでしたか」
「こンな大サービスされてちゃァ、起きて迎えなきゃ無礼ってモンだろうよォ」
 影――コロシヤの言葉に、ユガミが軽く笑い返すと、すぐ傍で眠る心音の顔を見る。ユガミの陣羽
織を羽織って眠る彼女の顔は、とても穏やかだった。
「奴等からの依頼、実行しにきたンだろ? 俺ァ別にいいが、心音はこのまま眠ったまま……どうか
何の苦痛も感じさせぬようにしてくれ」
 ユガミは心音をぎゅっと抱き寄せる。彼女の温もりとトクトク揺れる鼓動がユガミの肌を揺らし、
唇を自然と綻ばす。
「命乞い、なさらぬのですか?」
「殺し屋稼業は依頼人との信頼関係が何よりも重要といったアンタに、そンなの通じる訳ねェだろう」
 コロシヤの問いかけに、ユガミは思わず噴き出した。
「…………これはココネが生きている可能性を信じられなかった俺の罪さァ」
 生き地獄のような日々の中におかれても、それでもユガミの幸せを夢見る事で心を繋いでいた彼女
の強さを信じられなかった、罪。
「今更悔やんでもしょうがねェが、な……」
 ユガミがそっと瞼を閉じて、心音の顔へ頬をくつける。
 眼前のコロシヤから放たれる気配――殺気が鋭くなり、クロスボウを向けられても、不思議と怖く
なく、むしろ穏やかな心持ちなのは、彼女と一緒だと思えばこそ。
(師匠にはどやされるだろうが、許して貰えるまで全力で詫びるしかねェよなァ)
 ユガミが心音の鼓動と吐息に耳を澄ませ待っていたら、クロスボウの弦が勢いよくしなった。
 カァン! と、鋭い音がたつ。
 クロスボウの矢が、ユガミ達の頭上の幹へ突き刺さったかと思うと、くす玉とかクラッカーに使わ
れるような紙テープや紙吹雪をばらまいた。
「……こりゃァどういう事だ?」
 頭をカラフルに彩った紙テープや紙吹雪をそのままに、ユガミがコロシヤを仰ぎ見る。
「仕事の時に、こんなふざけた真似をするヤツとは聞いてねェぞ……?」
 怒りに眦を尖らせるユガミを、コロシヤはしばし無言で見下ろした後、クロスボウを下げた。
「どうやら、あなたが依頼情報を漏らした訳ではないようですね」
 失礼いたしましたとコロシヤがうやうやしく頭を下げてくる。
「実は数時間ほど前、成歩堂様からご連絡がありまして。亡霊が死んだ後に貴方達を殺す依頼がキャ
ンセルになったのですよ」
 告げられた言葉に、ユガミが目を剥いて息を呑んだ。
「ちょっと待てテメェ! 成の字がって、そりゃァどういう事だ!?」
「私も詳しくは……成歩堂様も【偶然】私めが先方との連絡に使っていた通信機の前にいたそうで。
なんでも、あなたがたを殺す依頼をしてきた方達と【偶然】お話しをしていたとか。それで、【せっ
かくですから】と、依頼のキャンセルを成歩堂様自ら伝えてきたのですよ」
 自分の胸を掴んで震えるユガミへ、コロシヤは優しげな笑みを浮かべて説明してくる。
「……バカな……」
 確かに、彼等も心音を救出する為に色々動いていた風だったが、まさか――。
 脂汗を流して胸を押さえ続けるユガミに、
「そういう訳で、今回の私の役目はこれで全て終わったのです」
 コロシヤがにっこり笑ってきた。
「正直な事を申しますと、あなたが”保険”をかけてたのかと思っていました」
「……テメェを裏切った阿呆の末路について、検事局にいた俺が知らねェとでも?」
 コロシヤからの告白に、ユガミが恐怖で顔をひきつらせて返す。と同時に、さっきの殺気はそうい
う訳だったのかと納得する。
「でも、一つ問題がありまして。貴方様からの依頼……私は果たせていないのですよ」
「俺が支払った金なら、そのまま持ってってくれて構わねェ」
「いえいえ、それではこちらの気が済みません」
 コロシヤは少し困った風に首を振ると、くるりと踵を返した。
「と、いう訳で。お二人分のブレックファーストを用意させて頂きました」
 コロシヤがうやうやしくお辞儀をすると、木の影からミニワゴンを引っ張り出してくる。
 ミニワゴンの上には、白磁器のティーセットに、スコーン、スクランブルエッグ。
 ご丁寧にスカイブルーのテーブルクロスをかけたミニテーブルと椅子2脚まで用意して、その上へ
ワゴンで運んできた朝食を載せた。
「そちらのお嬢様が起きましたら、どうぞお召し上がり下さいませ」
 唖然とするユガミへコロシヤはうやうやしく頭を垂れると、そのまま二人の元から遠ざかる。
「ああ、そうそう。貴方が裏切ったのでないならば、この件に関しては、私はこれ以上の行動を起こ
すつもりはございません」
 去り際にそう言い残してコロシヤが姿を消した。
「…………」
 ユガミはしばし呆然とした後、右手で額を抑えてため息をつく。
(……助かった事に対して、安堵より先にムカつきが出てくンのは、成の字の掌で踊らされたような
錯覚を抱いたからなんだろうなァ……)
 髪にひっついていた紙吹雪がヒラリ舞い落ち、心音の胸元へつく。
「んっ……」
 心音が微かに身動ぎ、ユガミの方へ密着してくる。そして、また安心したように笑って深い眠りに
戻っていった。
「…………」
 ユガミも思わず笑い返すと、心音へ寄り添って瞼を閉じる。
 世界は未だ夜に包まれ、一寸先は闇。だが、遠くでは鳥の目覚める鳴き声が微かに響き始めていた。
最終更新:2021年01月22日 22:47