糸鋸×冥③

冥は最近調子が悪い。
つい最近生まれて初めて裁判で負けたせいもあるかもしれなかったが、その
他にもいろいろ困っている事があるのだった。
「狩魔検事、どうかしたッスか?」
終業後、冥の自室で一緒に捜査資料を見ていた糸鋸刑事が、冥の顔をのぞき込んでそう言った。
「なんでもないわ……」
「あー、あの……い、いや、何でもないッス……ぎゃあ!」
「何かいいかけて、そこでやめない!気になるでしょう?」
思わずムチが出てしまった。糸鋸刑事は叩かれた胸を撫でながら、冥の顔を見て、バツ悪そうにつぶやいた。
「い、いや……おとといの晩はかなり検事にムリさせたッスから、まだ体がつらいのかと思って」
そう、おとといのクリスマスの夜に、あろうことか冥はこの男と一夜を共に過ごしてしまった。
男に体を預ける事など初めてだったが、イヤでもなかったし、不思議と怖くはなかった。
捜査が終わって一段落ついたので、珍しく冥が糸鋸に食事を奢り……冥の自室に
そのまま一緒に行って、そのまま朝まで一緒に過ごした。
困っているのは部下と男女関係になったという、その事実だけではなかった。
「別に……つらくなんてなかったわよ」
そう言いながら組みかえた冥の膝を、糸鋸の手がとらえた。
「それなら、いいんスけど……」
困るのは、会話がとぎれたらすぐこういう雰囲気になってしまう事だった。
言葉を続けようかどうしようかと迷っていた冥の唇に、糸鋸の唇が重なった。
「ん……ダメ…よっ……」
濡れた舌が歯列を割って口腔内に進入してくる。
舌を絡め取られ、セックスを連想させるような官能的なキスに、冥の心臓は鼓動を増してゆく。
「検事……ソファの上がイヤならベッドに行くッスけど?」
いつもは冥の前でムチ打たれる事に怯えてオドオドしているくせに、
こういう時だけは大胆だ。大きな手が、膝を割って奥へと進入してくる。
「バカ、そういう意味じゃないでしょ……あっ!……」
タイトスカートをめくり上げられ、冥は小さい悲鳴を上げた。
「……分かったわ……好きにしなさい」
実は再度こうなる事を望んでいたのは冥も同じだった。
今日も捜査の上で相談したい事があると、理由をつけて誘ったのは冥の方だった。
糸鋸刑事の仕事が終わる時間まで余裕があったので、こうなることを少し期待してシャワーも浴び、待っていた程だ。
だがそのプライドの高さゆえ、男の体を求めていると素直に認める事はできなかった。
糸鋸の熱意に降参してふりをして、許可を出した。
「了解ッス……」
糸鋸は軽く微笑んでそう言うと、冥のストッキングをゆっくり脱がし、黒
い布地に白い糸で花の刺繍が施されたパンティを引き下げた。
「狩魔検事……もう、濡れてるッスよ……」
太い指が、冥の入り口付近を緩やかに撫でた。
冥の耳にも女の蜜の濡れた音がかすかに聞こえた。
「はあっ……っ……ああん……」
こんな嫌らしい声を出したくないと思っていても、つい唇から漏れてしまう。
糸鋸の指はそのまま前後運動をして、冥の入り口付近の肉ヒダをかきまぜてゆく。
恥ずかしさと気持ちよさが体を支配し、覚えたばかりの性の快感が冥の思考回路を乱していった。

いつの間にかタイを解かれ、ベストのボタンもはずされ、冥の乳房は糸鋸のもう一方の手の中にあった。
乳房の先端にある桃色の飾りに、糸鋸の舌先が触れた。
「やっ……はぁ……んっ…」
舌先で愛でられている乳首とは反対側の乳首は、指先で弄られてすでに勃起している。
乳輪はピンク色にふっくらとふくらみ、先端は赤く色づいて男の欲情を誘うような風情をたたえていた。
「検事……もしかしてお風呂に入って自分の事待ってくれていたッスか?」
「なんでそう思うのよ……」
「体から、いい香りがするッス」
胸元に顔を埋めて、糸鋸が言った。
「やめなさい、くすぐったいじゃないの……」
ひとしきり笑った冥のそこに、糸鋸が顔を埋めた
「検事のここ……もうトロトロッスね……舐めてもいいッスか?」
冥は赤い顔をしながら、静かにうなずいた。

「……う……んっ…はぁ…」
充血して勃起した女の敏感な部分を、男の舌が刺激してゆく。
冥はソファーに座り、糸鋸はその足下に跪いて冥の足の間に顔を埋めている。
部屋に聞こえるのはかすかに聞こえる濡れた音だけだった。
軽く舌先で愛撫されるだけでも、冥の体の芯に、電流が流れるような刺激が駆け抜けていった。
「……こんな事、本当にふつうするものなの?」
初めての夜にも糸鋸から舌での奉仕を受けた冥だが、こんな刺激の強い事を
普通の男女がしているなんて冥は想像もした事が無かったので、今でも糸鋸を疑っているのだった。
「本当ッスよ、信じられないなら誰かに聞いて確かめてみればいいッス」
冥が確かめる事などできないと知っていて、そんな事を言う。
気持ちよさで白んでくる意識を呼び戻し、冥は糸鋸にシャワーをすすめた。
このまま仕切られて好きなようにされるのも悔しいと思ったからだった。
シャワーを浴びている音が聞こえてくると、冥はソファーから起きて、着替えを始めた。
今まで着ていたシャツやベストを脱ぎ、ショーツとキャミソールだけをつけ、ベッドに寝ころんだ。
さっきの愛撫が忘れられず……気付いたらみずから愛撫されていた場所に触れていた。
考えてみれば、ここは自分の体だというのに、自分ではあまり触れてみた事がない。
糸鋸の舌先や指が触れた場所を思い出しつつ触れてゆくと、体の奥からどんどん蜜が溢れてくるのがわかった。
「んっ……」
触れるたびに体の芯が熱くなってゆくのが自分でも分かる。冥は指の動きを少し早くした。
「…んっ……はぁ……っ」
糸鋸に触れられている時とは似て非なる快楽に飲み込まれそうになったが、ふと我に返り、冥は愛撫をやめた。
(……あいつの事を考えて自慰行為だなんて……私はいったい何をしているの……)
体の火照りはますますひどくなるばかりだった……。
最終更新:2007年12月28日 12:16