キノウツン藩国 @ ウィキ

剣技

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kinoutun

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剣技

L:剣技 = {
 t:名称 = 剣技(技術)
 t:要点 = 剣,構え,振り抜ける
 t:周辺環境 = 挑戦の塔
 t:評価 = なし
 t:特殊 = {
  *剣技の技術カテゴリ = ,,,個人技術。
  *剣技の白兵距離戦闘行為補正 = 白兵距離戦闘行為,,条件発動,(白兵距離での)攻撃、評価+2。
 }
 t:→次のアイドレス = 軽業(技術),剣投げ(技術),二刀流(技術),剣受け(技術)


塔にて


「高いな。」

 塔まであと数十歩だった。
 いまさら気づく。
 砂漠の砂嵐に囲まれた塔は、遠くからその全容を知ることが難しい。
 見上げた天平線の先の先まで、塔は続いている。

「バベルの塔って訳でもないだろう、俺の修行が終わるまでは落ちてくれるなよ」

 砂をはらい、歩き出す。

 気取って塔にはいると第一階層にメイド喫茶があった。
 そういえばここはキノウツン藩国だった。
 まあその辺の話は、割愛。
 英気を養い、上の階へ。

「ようこそ、ここが最終階だ」
「ひっく!!?」
「いや、剣技の修得だろ? ここで十分じゃん」

 カッターシャツ、バンダナにマントを羽織った少年がすらりと長刀を引き抜く。
 その刀は柄が無かった。
 代わりとよべるのかどうなのか、茎にテニスラケットのグリップが巻かれていた。

「さ、やるぞ」


 挑戦者――はる は、その少年の出で立ちにはつっこまず、まあ挑戦の塔だしこんなこともあるかと嘆息した。
 彼が最強であることは、情けないほどよく知っている。

 剣を構えた途端、彼は十度、全方向から斬りつけてきた。
 五つめまでを受けたところで剣が折れた。衝撃で折れたのではない、そもそも刀は曲がることはあっても折れにくい。
――金属疲労で折れたのだ。五度、左右から交互に打ち付けられていた。
 二つを躱し、もう二つをアーミーナイフで弾く。
 最後の一つが、背中を貫く気配。
 避けられるタイミングではなかった。

ぎぃん――

「良いナイフだな」
「俺のお手製でして」
「その魔剣もか」
「これは頂き物です」

 背中に隠していた黒刀が、天井に舞い上がり、ぶらさがる。
彼が上を見上げて嘆息する。

「天井が好きなのか」
「シャイなんですよ」

 バックステップで白撃の間合いから逃れる。
 右に半身を取り、膝を僅かに曲げナイフをホルダーに納める。
 興味なさげに彼はそれを見て、

「居合いか」
「ちょ、見抜かないでください」
「いや、だって構えからして。まあいいや、来いよ」

 言われるまでもなく。
 腰を沈め、膝を落とす。
瞬間的に全身は自由落下状態となり、重力が全体重にかかっていく。
 その全体重の落下エネルギーで地面を蹴った。

 納刀したナイフを鞘を走らせて――振り抜く!
 目にも止まらないスピードであった。
 だが、

「疾いが――居合いではないなあ」

 目を見開いて驚愕する。
 さっきまで青眼に構えていた彼が、視界から消えていた。
 無論、目を閉じていたわけではない。

――えっ、なにこれ

「自分で考えろ」

 躱された時点で、とっさに前転している。
 お陰で、追撃を受け止める時間はあった。
 彼が青眼に構えてから、打ち下ろしてくるのが見える。
 ナイフで受け止めようとすると、その斬撃がすり抜けた。

「ば」

 すり抜けた刀の軌道が首を捉える。
そして――

ぎぃいん

「良い剣だなあ。」

 再度命を助けた魔剣を、彼は嘆息しながら褒めた。

「勘違いしないで、こいつを殺す剣は俺だと言っています」
「なにそのツンデレ」

 ダモクレスの剣を握りしめる。
 いかにこいつでも、彼の刀を何度も受けるわけにはいかない。
 さて、どうする――

「良い剣に免じて教えてやろうか」
「ええ、是非」
「おまえ、反応できてないんだよ」
「それは判っていますが...」

 彼は、せせら笑うように見上げてきた(背が低いのだ)。挑むような目。
こちらを試しているときにしてくる、イヤな目。

 いや。
 本当に判っているのだろうか。

 躱された剣。
 消えたように見えていたが、自分と同じく落下を利用した体操作でただ横に移動しているだけだった。
 ただそれだけで、反応できなくなったのだ。

 すり抜けた剣。あれも、見えていた。
 刀とナイフが交差するかと思えた瞬間、彼は交差の直前に刀を止めて横にずらしたのだ。
 刀の交差に意識を取られていた俺は、その動きに反応できなかった。

「反応できない――」

「居合いとはなんだ」 ふん、と彼は笑う。「まさか、居合抜きで斬撃がカマイタチになって飛ばせる技と思ってたりするのか? まあ、それはそれでありだが」

「――居合いとは、座ったままの状態からすばやく剣で切る技術です」

「そう、だから居合抜きも本来は納刀状態から素早く切るための技術だ。
だから、”そう言う技術”なのだから居合いの剣は”それほど速いというわけではない”
 だが、”居合いは速い”。そして、その極意は剣の速さ...にあるわけではない」

 彼は刀を空中に浮かせて、そこに腰をかけた。

「居合いの剣は、不意に打つ剣だ」

「どんな、態勢、姿勢、タイミング、スタンスからでも、
どんな、負傷、損傷、傷害、障害、があろうと、
常に全力で、最速の一撃を振るうための技術だ。

 座ったまま、普通の剣のように全力の一撃がくる。
だから驚く。
 刀を納めた状態で、全力で踏み込んだ一撃を放ってくる。
だから速いように見える。
 古武術の特殊な体操作で、通常の動きよりは半分ほど速く移動できる。
だから消えたと錯覚する。
 普通では止まらないようなところで、斬撃をキャンセルする技術がある
だからすり抜けて見える。

故に
 居合いの極意は、
――”相手に反応させない”ことにある」

 彼は、自分の剣を蹴って、天井へと飛んだ。
 来る―― 一撃が。

「俺の攻撃を躱して俺に一撃入れてみろ。
ヒントをやったんだ。次で体得できなけりゃ死ね」

「代金が寿命のヒントなんていらねーよ!!」

 とはいえ、やるしかなかった。
 腹を括ろう。 

#そのあと5・6回死んだのは言うまでもない。




文・イラスト(はる)

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