キノウツン藩国 @ ウィキ

T15と私。 (浅田)

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T15と私。


(以下、廃棄書類の裏書より抜粋)

キノウツン藩国に摂政は二人いる。

一人は著名なアシタスナオ。
藩王会議、大統領府、オフ会花見にバンタンク。
説明文ならいくらも並ぶ、ツン国摂政の一人である。

摂政二人の、もう一方。
名前を知っている人間は、極めて少ない。
アシタが倒れても藩王会議には出るなといわれ、設定国民には哀れまれ、
ツン国屈指のタカ派であり、狂犬故に封殺され、政庁で判子を押す機械。
その姓を浅田という。名は、ない。職業はメイドらしい。

それがT15を思い返すとき、まずはじめに行ったのは、テンダイスを見ることでも、
質疑履歴をみることでもなかった。
文殊にアクセスし、自国民のマイル移動履歴を見る。
それだけで、浅田の脳裏には色鮮やかに、T15の思い出が蘇る。
外の景色は何も知らない。知ろうとしたこともあったが、過去の話だ。
目の前を通り過ぎた書類の書面が、浅田と外とを繋ぐ糸だった。

ツン国は、幸か不幸か、国民の多くに収入源があり、そして支出の当てがあった。
それは妻であり、国であり、そして趣味であった。

高原鋼一郎の履歴を見て、着々と覇道を進んでいるのを確認した。
船橋の履歴を見て、空歌へのプレゼントに気づき、微笑んだ。
藩国の履歴を見て、戦争があったことを振り返った。
そして最後に己の履歴を見て、クリスマスを過ごした事を懐かしんだ。
これが、浅田にとってのT15だった。

浅田にとって、アイドレスはT15もリアルだった。
結局のところ、世界情勢は、テレビの中に見えるニュースの出来事。
遠くの国で死んだ人に、知人が居なくて、ほっとする。
浅田にとって、アイドレスの日常とは、そのようなものだ。
時折話す、知人の、そして己の色恋沙汰。
その合間に、気づけば始まり、終わっている戦争。

第五世界は、闘争の結果、最早存在しないと聞いた。
いつか、たとえ戦争であってもあの世界へ行こうと、決めていたはずの場所。
足を踏み入れることもなく、消えた。

今日も窓から、浅田は国を見下ろして、考える。
自分にとってのアイドレスは、少なくともこの政庁が壊れるまでは、変わらないのだろう。
T14までと、T15と、T16の違いが何なのか。
政庁の奥、執務机近くの窓から見える町並みは、多少変われど、細かな違いは見えないままだ。
この城が崩れるときに、私は本当のキノウツン藩国を。アイドレスを、知るのかもしれない。
頭の隅でそう考えながら、今日も浅田は判子を押す。




(996文字)

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