例の初稿

本項は岡野哲の派生記事

本来ならこのような記事は不要なのだが。

  • 良作まとめとして相応しい優秀な記述だったとは思う。
  • ゲーム紹介として 執筆者の愛が伝わってくる良い記事だった。 未だにこのような往生際の悪い書き込みが寄せられるので記事を用意するに至った。

    ※内容に関しては話し合いの結果、『不適切』としてほぼ満場一致といっていい結論がとっくに出ている。また、外部サイト及びコミュニティでも「不適切」ということで一応既に決着がついている。

    これが、噂の記事である。なお原文はテンプレ・画像付だったがここでは省く。彼に関するWikiにテンプレ・画像を含めたバックアップがあるのでそちらも見ることを薦める。
    頭出しから何やら胡散臭いが気にしてはいけない。

正に隠れた名作である。知名度は僅か、プレイした経験のある人数もそう多くは無いが、手塚作品にある程度触れた者ならば感銘を受けずにはいられないソフトだろう。
何せゲームタイトルは鉄腕アトムでも、ゲストキャラクターは46人も登場。ブラック・ジャックやユニコ、マグマ大使と言った主役級からアセチレン・ランプにハム・エッグら名脇役、スカンク草井やプライム・ローズら少々マイナーなキャラに「来るべき世界」のフウムーンまで、最早「鉄腕アトム」で作る気なんか最初から無かったんじゃないかと思える顔ぶれを見せてくれる。

と言うのはセガが持つ「手塚プロダクションが保有する全キャラクターの包括的独占ゲーム化権及びサブライセンス権」を最大限に利用したもので、更にシナリオを担当したのも熱狂的手塚マニアであるゾルゲール哲(こちらも知る人ぞ知る、だが……)。ゾルゲ氏の持ち味である「原作を最大解釈した上で物語を大胆に再構成する」手法が存分に発揮された形となる。
この事から建前上は2003年版アニメ『アストロボーイ・鉄腕アトム』のキャラゲーではありながら、もはや『海底超特急マリンエクスプレス』(79年に24時間テレビにて放送された、手塚キャラオールスターアニメ)のリメイクと言っても差し支えの無い、日本国内のキャラゲーではこれ以上無い豪華な出演陣のゲームとなっている。

さて肝心のゲーム内容だが、見慣れた2Dアクションであり、特に目新しい要素は無い。
だからと言って凡作と言うことでは無く、例えば「ジェット飛行中は無敵になる」演出はあたかも空を駆け回り敵を翻弄するアトムを表しているようだし、全体的なステージ構成も「死んで覚える」昔ながらのテクニック系のアクションゲームになっている。
またかんたんモードでは必殺技(画面全体攻撃など)の上限が99回となっているためゴリ押しだけで進むことが出来るが、むずかしいモードではなんと3回までに制限されており、それでも慣れていく内にどうにか限度内で進めるようになるなど、アクション面での間口の広さが見もの。
敵キャラが同じ絵素材の拡大縮小による使いまわしと言う、あからさまなマンネリズムだけは勿体無いが、2Dアクションの成熟した形と見て良いレベルである。

以上から「ゲーム性」と言う点では多少練り込み不足な感はあるものの、うまくまとまっている。が、ここで終われば勿論「よくできたキャラゲー」止まりだろう。
しかしこのゲームを名作たらしめているのはひとえに、前述の「シナリオ」なのだ。

アクションゲームにシナリオ? と思われるかもしれないが、実際、ゲーム開始時のアトムに大冒険をこなすほどの大それた動機は無い。
お茶の水博士によるトレーニング兼チュートリアルをさせられ、元祖ボクっ娘・和登さんがロボット兵団にさらわれる。開発会社トレジャーお得意の多関節ボスを倒し先に進むうち、何か大きな悪の根源の予感に触れる。
その根源こそが表ボス・写楽保介であり、当面は写楽の持つある野望を阻止すべくステージ制のごく普通の2Dアクションをこなしていくのが、このゲームの最初に提示される大きな目標である。

しかしシナリオは人間とロボットの共存と言うテーマへと展開し、やがてアトムが恋したロボット少女・ニョーカが、全てのロボットの電子頭脳を破壊する“デスマスク”そのものであると知る事になる。アトムは写楽を撃破するが、既に作動を開始したデスマスクによって、あえなく破壊されることになるのだ。
バッドエンドを見せ付けられ、スタッフロールも流れてプレイヤーは呆然とすることになる。折角悪の根源を絶ったのに聞こえてくるのは使いまわしの音楽と素っ気無い文字列だけ。
そこに、手塚作品最強のキャラクターが満を持して登場する。

“火の鳥”はアトムにチャンスと称し、今一度の生命と、時間を自由に行き来する能力を与える。
このゲームの本番は、全てのステージをクリアしスタッフロールを見たその後であり、写楽の陰謀と登場はしたものの全く役立たなかったゲストキャラ、或いはステージで起こったミニイベントそれぞれの相互関係に潜む「伏線」を回収する2周目が始まるのである。
あるステージの謎を解くには、先のステージで歴史を見定める必要がある。あるキャラがアトムに協力してくれないのなら、その原因を別のステージで解明する必要がある。
ひとつの「バッドエンドの歴史」を提示した後、その未来を防ぐためにプレイヤーの任意でステージを選べる2周目を用意する。これ程必然性に満ちた2周システムはそうはないだろう。

勿論、ストーリーにまつわる各キャラのセリフがカッコ良い。
ストーリーの要となる少女を助けるために呼んだ、世界一の名医ブラック・ジャックを交えたボス戦では、手術用エアーテントにダメージを与えないよう戦う必要がある。「ここまで来てオペ中止などできるか!」と言うブラック・ジャックの正義感も交えた熱いバトルだ。
またその手術の裏で、アセチレン・ランプによる同情を誘う悲哀めいた名悪役っぷりがあったり、アトムを捨てたヒールとして描かれる“天馬博士”とブラック・ジャックの舌戦もシブさがある。

そして、写楽が欲したエネルギー“魔神ガロン”を破壊し、破片となったニョーカを抱いて太陽へと飛び込むアトム。
「ニョーカ!ああ!これが…これがキミなのか!なんていうすがたに、なっちまったんだい!」
と言う如何にもな“手塚節”のセリフと、これまたトレジャーお馴染み、1分間のダメージ受けっぱなし耐久ステージは、アトムを気遣うゲストキャラクター達の表情とあいまって極上の感動シーンになっている。
更に最後の最後に現れる天馬博士の独白。このゲームでの天馬はアトムが徐々に得ようとしている人間としての感情を否定するような素振りを見せ、要所要所で現れてはアトムを突き放すのだが、エンディングにて初めてその真意が明かされるようになる。


「お父さん。どうして人間はいつまでも、にくしみあうの?どうして、あらそいがなくならないの?」
「それが人間の限界なのだよ。トビオ。人間には、くらやみの中から、未来をてらし出す情熱の炎がある。 だがそれは、みずからを焼きつくす危険な炎でもあるのだ。
人間は一人ぼっちだ。くらやみの中でたった一人、恐ろしさのあまり炎をふりまわしては、みずからを傷つけている。
どこから来て、どこへ行くのか、自分でもわからない。
…ともだちが必要なんだ。
くらやみの中で、いっしょに炎をささえてくれる仲間が。
だから私はそれを…人間もロボットもこえる科学の子を、この手で作ろうとしているんだよ。」
「その子の名前は?」
「アトム…。そう名づけようと思う。けっして分けることができないものという意味のギリシャ語だ。
どんなときも、人間のそばにいてくれるように。
弱くておろかな人間と、ともに歩んでくれるように。
それはきっと、おまえたちにとってすばらしいともだちになるだろう…」
「うん!ぼくはきっとその子と…アトムといっしょに行くよ。どこまでも行くよ…」

「トビオよ、見ているか。アトムだ。
あれが、おまえのアトムだ。
アトムよ、人間を越えろ!
国家や民族を!
思想や宗教を!
飢餓や貧困を!
戦争を!
人間の産み出した、くだらないものすべてを、越えて飛べ!
おまえは飛ぶのだ、人間が超えられなかった高みへ!
おまえは行くのだ、人間が行けなかった未来へ!」


鉄腕アトムには、ファミコンにてクソゲーと言って差し支えない、少なくとも原作レイプゲーとは言える奇妙なゲーム化がされた歴史がある。またキャラゲーと言う分野そのものも、名作のできづらい土壌だと言われている。
しかし結局は作り手がどう料理するかが問題であり、例えばこの作品のように原作にはまるで準じていないが、もうこれは公式に並ぶだろうと言うものも生まれるのである。

さて、最早閲覧者にはおなかいっぱいなページだとは思うが、最後にこのゲームの「究極の手塚愛」について記しておく。
タイトル画面でオプションを選ぶとキャラクター名鑑を見ることが出来るのだが、これが……

  • (火の鳥は)手塚先生がライフワークとしていた大長編の主人公であり、その歴史は30年以上にもおよび、実写では78年に市川崑監督による黎明編が、またアニメでも鳳凰編が86年、宇宙編とヤマト編が87年に公開された。手塚先生じしんが力をいれられたのは80年の「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」。実写合成、ロトスコーピング、スリットスキャンなど、かずかずのいよくてきな技法がもりこまれている。メカデザインは御厨さと美さんで、マンガ化も担当した。冒頭の未来都市を、主人公ゴドーがエアカーで走りぬけるシーンは、「大回転シーン」とよばれ、フルアニメの背景動画で、未来都市の模型も作って、ワンカットでじつに700枚という壮大なもの。これは、名アニメーターである小林準治さんの作画によるもの。こののち、さらに全編が4000枚の背景動画という、驚異的な短編「ジャンピング」が作られた。この映画ならではのめずらしいアニメーション技法として、止まった絵を2、3枚のトレスを重ねることによってフルアニメ風に表現するというものがあり、これはリミテッドアニメとフルアニメの両方に造詣の深かった手塚先生ならではのほかでは見られない独創的アイディアといえる。(ほぼ全文)

ゲームにそこまでの情報を載せる必要があるのか!? と言うレベルである。 一通り読むだけでも手塚博士と自称して良い情報量は、キャラゲーとしてこれ以上無い姿勢だろう。


  • なお原文はまったく改行されておらず、読みづらいことこの上なかった。
    • あれ?これどこかで聞いたような……。

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最終更新:2011年06月04日 22:09