女「男君が死んだ……」 女友1「えっ……」 女友2「嘘……」 深夜にコンビニへ買い物をしに行った男君は事故にあった。 いつも私が可愛がっている野良猫を助けるために。 男「明日も女とマッタリするんだろうなぁw」 ふと道路を見ると子猫が小さくなり怯えている。 男「んなっ!!!!!」 飛び出してしまった……。 何故だかは分からない……。 子猫を抱きかかえ視線をそちらに向けると クラクションの音と共に視界がホワイトアウトした。 大きな衝撃……キラキラ光る街灯……。 浮遊感の中で愛しいあの人への想いを広げた。 男「(アイツ悲しむだろうな……)」 抱きかかえられた子猫は腕から離れ心配そうにウロウロしている。 男「俺は駄目みたいだから俺の代わりになってくれよ……?」 ミーミーと細い声をあげる子猫の頭を撫でて笑顔のまま目を瞑る。 その瞼(まぶた)からは広がり膨らんだ想いが一筋となり溢れた。 周りの騒がしい音が除々に小さくなり消えた。 葬式当日、親戚やクラスの仲間が会場へ集まり葬儀が進行する。 女友2「女……大丈夫?顔色悪いけど……」 女「うん……」 女友1「男友は……?」 女友2「出ないって……」 女「……何も言わないけど一番悲しんでるのは男友君だよ……」 女友1「何言ってるの?好きだったんでしょ?」 女友2「一番悲しいのはアンタだよ……」 女「……もう……帰るね……」 一人ゆっくり帰る事にした。 女「晴れてるのに綺麗じゃない……」 空は当てつけの様に蒼く澄んで高かった……。 途中細い泣き声が聞こえてきた。 子猫「ミー」 女「あれっ最近見なかったのに……」 女は子猫を抱き抱え話しかける。 女「男君はね……子猫を庇って死んだんだって……   前は男君が止めたのに自分が……馬鹿だよね……」 ??「あぁ馬鹿だ!」 女「えっ!?」 不意に後ろから声が聞こえた。 女「男友君……」 その手には牡丹の花束が握られている。 男友「ダセぇ死に方しやがって……勝手に……」 女「出てくれていたの?」 男友「出てねぇよ……会場前で引き返した……」 女「ありがとね……」 男友「コレはやる……墓にでも差しとけw」 笑顔を作る彼を見て悲しくなった。 椿は枯れる時には花ごと落ちるために葬式や見舞いなどに相応しくない花……。 男友君らしい別れの挨拶だ……。 女は歩いた……家には戻らず子猫を抱きかかえ歩いた……。 気が付くとそこは学校の屋上だった。 たまに男と風に当たりに来ていた場所だ。 ―――――――――――――――――――――――― 男「寒ぃ……戻ろうぜ……」 女「ん〜……良い天気だよぅ?気持ち良いよ?w」 男「しょうがない……」 女「んふふw」 男「何だよその笑い方……」 ―――――――――――――――――――――――― ココにいると男の声が聞こえる気がする……。 目を閉じて手を差し出すとギュっと握ってくれる気がする……。 女「……おとこぉ………ヒック」 涙が止まらない……。 どうしても溢れてくる想いが流れ出てしまう。 女「私もあっちに行ったら会えるかな?」 子猫に問う彼女の姿は今にも折れてしまいそうな感じだった。 子猫を地面に置いてフェンスを越えた。 見下ろすとグラウンドが見える。 見上げると蒼く澄んだ空が広がっていく。 女「そっちに行くね?今会えるよ……」 子猫「ミー……」 はっと我に返った。 女「私を止めるの?」 子猫「ミー……」 女「私は男君がいないと駄目なの!!!おとこ……」 女はその場に泣き崩れる……。 子猫が死ぬなと諭してるように鳴き続ける。 ?「死ぬなよ!!!!!」 突然聞こえてくる懐かしく暖かい声……。 男「戻って来い……そっちに行っちゃ駄目だ!!!」 女「男君?男君どこ!?」 必死に周囲を見渡すが男の影は無い。 男「死んじゃ駄目だ!!!女友1も女友2も男友も俺も悲しい……だから死ぬな!」 声が聞こえる方を見つめると子猫が座っている。 女「男君……?」 次の瞬間子猫が眩しく輝いた。 その光は屋上を学校を空を大地を世界を包む。 目の前が真っ白になり何も見えない……。 男「戻って来い!!!俺の元へ!!!!!」 光がゆっくりと静まり目を開けた。 目を開けるとそこは白い部屋……。 目の前に男がいる……。 女友2も……皆いる……。 女「お・と・こ……?」 男「そうだ男だ!皆いるぞ!先生!先生ぇ!!!」 ナースコールのボタンを押し必死に医師を呼ぶ。 全てを理解した……。 事故にあったのは男ではなく私……。 子猫をかばって車道に飛び出し車と接触したのだ。 私のいるべき世界はアッチじゃなくて男のいるコノ世界。 嬉しさのあまり男に抱きついた。 男「おっおい!病み上がりだろ!?」 女「良いのぉ〜w」 女友1「いきなり見せつけちゃってコノぉ〜www」 女友2「アンタが寝てる間は男の戸惑いようったらwww」 男「おっ女友2!!!!!」 男友「確かにウケたwwwあっコレ見舞い……」 差し出したには椿の花 女友2「アンタ!!!!!」 女友1「死ね!!!!!!!!!!」 男友「なっ何で〜……ッグハ!!!ヒデブ!!!!!」 女「あはははははwwwww」 女が珍しく勢いよく笑ったために皆ポカーンとした。 男「お前……頭打ったのか?w」 女「何でも無いよ〜wやっぱりコッチは楽しいね!w」 いつまでも続く友情そして愛情……。 それはどんなものも包み込む決して見ることの出来ない光なんだと実感した。