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帝國SSにおける香典と祝賀金の送金について

なにか頭に浮かんだものを書き付けてみます。まずかったら無かった事に。
送金屋は「戦争の経済学」という本にあったハワラシステムを相当参考にしました。


葬典祭祀と魔導を生業とし、一般的な生活からは離れているように見えるヴァレリウス一門。
だが、彼らと帝國の民は意外な所で深く繋がっている。
それはヴァレリウス一門の知られざる顔、送金屋である。
この業務は元々、遠隔地の祝い事や葬儀の際に安全に送金する事を目的として始められたものである。
その歴史は古く、古代魔導帝国時代には原型が既に存在していたという。
古代魔導帝国の崩壊と魔族戦争によって一度その組織は崩壊に近い状態となり、帝國の成立と共にゆっくりと復活した。
帝國の経済の成長と帝國市民の移動の活発化によって、この事業の必要性は次第に増して行く事になった。
この送金システムは実に簡素な組織で成り立っており、小さな田舎の村の隅にも送金する事が出来た。
また資金を実際には移動しない事から安全性が高く、手数料が安い事から気軽に利用できた。
このシステムの有用性が次第に明らかになると、これを日常の用途に使いたいという要望が高まった。
ヴァレリウス一門は最終的にその要望を受け入れ、彼らの送金為替システムは帝國ばかりか諸外国へも広まる事になった。

例えば、ある個人が南方から帝都近くの村にある故郷の教会へ、親の供養料を送金したいとする。
彼はまずどの村にも一軒はある送金屋(小さな村なら教会関係者か墓地の管理人がやっている事が多い)へ行く。
無利子の決済口座を開設している場合も多いので、銀行口座から金を振り込んで使うのもいい。
そしてそこで、いつ・どこへ・いくら送金するかを口頭ないし書類で伝えると、送金屋に送りたい金額と手数料を払い、合言葉を受け取る。
もし送金先が送金可能な外国であれば、この段階で送金先の現地の通貨での払い出しを選ぶ事も出来る。
大都市の送金屋であればこれはかなり重要な業務で、通常店内に手数料の値段と共に為替相場が張り出されている。
手数料は金額と送金距離によって変動するが、おおむね送金額の百分の一から五十分の一と小額である。
合言葉は、単純な単語・短い数字の組み合わせ・聖書の一節など、様々なものがありうる。
そして次に送金屋はヴァレリウス一門の連絡網を使って送金先の同業者に連絡する。
合言葉と払い出し金額を告げると、送金地の送金屋の仕事はこれで終りである。
一方、送金を依頼した客は資金を受け取る相手にその合言葉を伝える。受け取り先は合言葉に含まれる事が多い。
この段階では様々な手段がある。手紙などで送る事も出来るし、伝書屋を使ってもいい。
ヴァレリウス一門が整備した慶弔文送受信用の連絡網を使うことも出来る。
通信の秘密を護るため、その連絡網の担当者は必ず送金屋とは別個人なので、合言葉が漏れる心配は無い。
いずれの手段にせよ、合言葉を受け取った相手は現地の送金屋へ行き、合言葉を告げてお金を受け取る。
以上で送金と払い出しは終了。取引は連絡網を使用した場合、帝國外でも二十四時間以内に完了する。

このシステムが信頼を維持できる理由は、これが国際的であると同時に地域社会に根ざしたものだからだ。
この送受金網は同時に広大な情報網でもあり、信用できない者の情報は急速に広まる。
すると信用されない者はすぐにこの送受金網を利用できなくなるばかりか、地元社会から排除されてしまう。
こうした効果があるので、顧客も仲介する送金屋もこのシステムを使いたければ評判を維持しようとするのだ。
なお先に触れたが、このシステムで物理的な資金移動はほぼ無い。移動する金は相当部分が相殺されるためだ。
もし資金の貸し借りが溜まったら、宝石か現金で輸送するか、賃借の債権化か、または銀行送金で資金が移動される。
送金記録は犯罪防止のため記録されているが、裁判所の令状が来ない限りそのまま眠りにつく。

ヴァレリウス一門宗家が片方に加担した内戦中もこのシステムは稼動した。ただし内戦の敵対勢力間の取引は流石に停止したため、経済的混乱が帝國で発生し、それはかなり深刻な事態でもあった。
このシステム(と慶弔文送受信用の連絡網)の運用によって、ヴァレリウス一門は特に資金的利益を得ていない。
元々の用途が彼らの本来業務の葬典祭祀の円滑な運用のためだった事もあり、手数料は組織維持費でほぼ消える。
またこれによって巨大な諜報機関を運用できているわけでもない。送金屋は基本的に宗家相手だろうと秘密を護るからだ。
このシステムを経済的攻撃手段とすることもできない。それをすると一門が逆にシステムから排除されかねない(と彼らは主張する)。
ただ、このシステムを運用する事によって得られる人々の信用は、彼らにとってもかけがえの無いものであるし、その事は問われれば彼らは微笑みと共に認めるだろう。

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