金だけを頼りに生きてきた。
女も、知名度も、政治力さえも、金で手に入れてきた。
それで自分は一時は多くの人の上に立ち、時代を変革する力すらも手に入れた。
だけど。
ほんの何度か、ちらと思ったことがあるのだ。
もしある日突如、金が何の意味も持っていない世界に迷い込んでしまったとしたら。
その時、私は・・・・・・


「して、岸田とやら、ここから脱出するということじゃが一体どうやってするつもりじゃ?」
岸田洋一が作ったおでんを食べながら、ネコミミメイド魔法老人のリリカルかみなりはエプロンをつけた岸田に訊ねた。
その隣では、◆E3y/x3899E氏がカラシの辛さに顔を顰めながら大根をつついている。
この殺し合いという異常な世界の中で、そこは完璧なまでに「屋台のおでんやさん」という情景を醸していた。
「そうですねえ・・・・・・まあ、あのセワシという少年を倒すのがまずは先決でしょう」
岸田は布巾でまな板を拭きながら答えた。
今まで数々の女を好きにして、悪逆非道とまで呼ばれた俺が一体なんでこんなことをしているのか、岸田には全くわからない。
しかしこの状況下では味方を作っておくのは必須だろうし、折角なかなか上玉の女二人に出会ったのだ。
こいつらの信頼を得ておくためにも、おでん作りくらいは買って出ていいだろう。
「ああ、ワシもそう思っていた。しかしあやつはどこに隠れているのだ?」
おでんをつつきながら、なぜか屋台の中に備えられていた酒を口に運ぶリリカルかみなり。
その美貌からはあまりに想像しにくい親父臭い姿だった。
「れも、たぶんあいふはわたしたちをろこかからかんししていりゅはふはよ」
ちくわを咥えたまま、◆E3y/x3899E氏が何事かを叫んだ。
「こら、行儀の悪いことをするな!! 全く最近の若い奴は!!」
リリカルかみなりの怒号が少女に飛ぶ。
どう見ても十代の容姿をしていながら「最近の若い奴」とか言えるお前は何物なのか、とさすがに岸田も気味の悪いものを感じ始めた。
◆E3y/x3899E氏はちくわを飲み込んでから続ける。
「あのね、私はこういうことに詳しいの。多分あいつは私達のすぐ近くにいて、私達の動きを監視していると思うの。
だから何とかしてこの首輪を外してこの会場から出られたら、あいつのところに行けると思う」
かみなりと岸田は思わず顔を見合わせる。
「おいおい、なんでお前がそんなことを知ってるんだ?」
「何でって、私はこの世界の外から来たカオスロワイヤルの書き手で・・・・・・」
空気の読めない◆E3y/x3899E氏を無視して、リリカルかみなりは腕を組んで呟いた。
「まあ確かに、あやつがこの会場のすぐ側にいる可能性はあるかもしれん。少なくとも会場内にはいないだろう」
「そうですね。あの手の悪役というものは、自分は安全圏にいて惨劇を見物するというのが王道ですし」
岸田もうなずく。
「そうすると、まず目下の問題は・・・・・・」
「この首輪ですね」
岸田とリリカルかみなりは、自分の首に手を伸ばした。
「お前、機械はいじれるか?」
「あまり自信はありません。そもそも、知識があったとしても道具があるかどうか」
「首輪の破戒なら、名簿に載ってる中では長門って人とわくわくさんって人が出来ると思うわよ。
それに、道具は多分だれかの支給品に混じってると思うわ」
勝手におでんをおかわりしながら、◆E3y/x3899E氏が口を挟んだ。
岸田が自分の分として取っておいたおでんまで自分の皿に取ると、それをあっという間に平らげてしまった。

「長門やわくわくさんとやらが信用できるかはともかく、道具は確かに探せば見つかるかも知れんな」
◆E3y/x3899E氏を叱ることも忘れて、リリカルかみなりはうなずいた。
「ええ・・・・・・」
自分の分のおでんが無くなったことに呆然としながらも、岸田は同意した。
わくわくさんなんて胡散臭すぎる名前の人物を信用したいとは思わなかったが、動いていれば
あるいは道具や協力者を見つけることができるかもしれない。
その過程でついでにいい女でも見つけることができれば更に上々。
(結局、お宝は自分の力で探すしかないってわけか・・・・・・ま、そういうことは得意だけどな)
岸田は一人ほくそ笑むと、まずは今晩中にどうにかこの二人の少女をモノに出来ないかと思案し始めた。
と、その時。
おでんを食べていたリリカルかみなりが、突如勢いよく立ち上がった。その衝撃で岸田の手におでんの汁が飛んだ。
「ど、どうしたんですか?」
「ばっかもん、どうもこうもあるか、あれを見ろ!!」
岸田は自分の背後にある池を振り向いた。そしたら、そこには一つの人影らしきものが浮いているではないか。
果たして本当に人間かと岸田が目を凝らしたとき、すでにリリカルかみなりはレイジングハートを手に池に飛び込んでいた。
激流に抗いながら、かみなりさんは叫ぶ。
「おいレイジングハート、あいつを助けたい。水の流れを止めてくれ」
「はいマスター。それと、こういう時のための機能を使いましょう」(本当は英語)
レイジングハートの言葉に合わせて、リリカルかみなりの体から光が溢れた。
それに合わせて、リリカルかみなりのメイド服は吹き飛び、魔法老人は全裸になった。
「マスター、これなら水の抵抗が少なくてすみます」(本当は英語)
リリカルかみなりはとりあえずレイジングハートを水の中に沈めると、急いでうつ伏せで浮いている男の元に向かった。


男は気を失っていたが、幸い命に別状はないようだった。
岸田たちは池岸で焚き火をして男とリリカルかみなりの体を温めた。
ちなみにリリカルかみなりのメイド服はしばらく修復不可能、とのことであり、裸でいるわけにもいかなかったので仕方なく
かみなりさんは◆E3y/x3899E氏のスクール水着を借りた。
サイズが小さすぎるスクール水着が、かみなりさんのそこそこナイスな体付きに食い込んで大変なことになったのは言うまでもない。
が、当の本人はそれを意に介さず助けた男の顔を心配げに覗き込んでいた。
「この男・・・・・・」
「誰かに突き落とされたのでしょうか?」
岸田はこんな中年男には毛ほどの興味もなかったが、他の二人に怪しまれないように一応心配するふりをしておく。

「私、このおじさん知ってるよ」
と、またしても◆E3y/x3899E氏が声を上げた。
「テレビで何度も見たもん」
「何、本当か? こいつ有名人なのかイテテ」
最後のは、体をよじったときにきつい水着が肌に食い込んで思わずもれた悲鳴である。
「うん。パパは、この人はお金儲けのことばっかり考えてる悪い人だって言ってたよ。
お兄ちゃんは、金で女がついてくるのは本当だけど空気嫁って言ってた」
◆E3y/x3899E氏自身も、おそらくこの男にあまり好感を持っていないのだろう。気絶しているその男にあまり近寄ろうとしなかった。
彼女の言っている通りなら、あまり尊敬に値しない人物だということになる。
(しかし、だからといって見捨てるわけにはいかんな)
リリカルかみなりは、油断すると水着からこぼれそうになる胸を両手で押さえながら男の回復を待った。
一方の岸田は内心穏やかで無かった。
なんでこんな時に、こんな中年男のせいで足止めを喰らわなくてはならないのか。
こうしている間にもここに殺人者が近づいているかもしれないし、第一こいつがいたら少女をモノにすることが出来ない。
そんな三者三様の思惑に見守られながら、ついに男の目がゆっくりと開いた。
「ここは・・・・・・どこだ」
男はそう呟いた。そして、かろうじて首を動かしてあたりを見渡し、三人の顔を眺めると再び口を開けた。
「私は・・・・・・誰だ・・・・・・」


家族が欲しかった。
心を許しあえる人が欲しかった。
なんとなくわかっていたのだ。
「金で買えないものがある」なんてしたり顔で話す大人なんかちっとも信用はしていない。
だけど、きっと世の中には「自分にはいくら頑張っても手の届かないもの」があるのだ。
自分には、金でも、誠意でも買えないものが。
だけど、もしいつかそういう人が私の前に現われたら・・・・・・
私は、その人のために戦えるだろうか。
金も地位も名誉も、投げ出せるだろうか。


【一日目 4時(第一回放送直前)】
【C-7 ホテルの前、池の岸】

【リリカルかみなり@ドラえもん】
[状態]:水着がきつい
[装備]:レイジングハート スクール水着
[道具]:支給品一式
[思考]
1:男から情報を収集する
2:知り合いと早く合流したい
3:首輪を外すことのできる道具と協力者を探す


【◆E3y/x3899E氏@テラカオスロワ書き手】
[状態]:小学四年生 空気読めない
[装備]:なし
[道具]:支給品一式
[思考]
1:何でもいいから早く脱出したい
2:早くもとの世界に戻ってSSの続きを書く


【岸田洋一@鎖】
[状態]:健康
[装備]:おでんの屋台
[道具]:支給品一式
[思考]
1:リリカルかみなりを早いとこ手篭めにしたい
2:男とはあまり関わりたくないのだが・・・・・・
基本方針:生き残るのが第一目標だが、好みの女がいれば
   状況によってはいつも通りのことをする


【ホリエモン@現実】
[状態]:記憶喪失
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:
1:ここはどこだ・・・私は誰だ・・・

日本刀と支給品は川の中に落としました



【レイジングハート@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:溺れている



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最終更新:2007年05月15日 23:16