防空リレーSS(3):「敵機発見から撃墜までの流れ」
<AM9:05 レンジャー連邦航空管制室>
バッジシステムの運用が始まり、レンジャー連邦には連携している各末端基地からの情報が集まってくるようになっていた。
「芥辺境空港航空基地、バッジシステムとのデータリンク開始します。」
芥辺境藩国の芥辺境空港航空基地に展開する防空レーダーの強固な防空網。
可動式レーダーサイトともいえるきゃりっじAWACSと連携することで、その防空網の穴が補われることとなる。
送られてくる情報からは、AWACSとのデータリンクによりその穴が埋められていくのが確認できた。
「レンジャー連邦ですどうぞ。こちらもリンク確認、皆様に幸運を。」
送られてくる情報から、防空網の行き届かない小さな穴を発見。
「こちらレンジャー連邦航空管制室、現在警戒行動中のデータのフィードバックを行います、どうぞ。」
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<同日PM23:55 レンジャー連邦航空基地アラートハンガー>
突如鳴り響くアラート音に、航空基地が緊張に包まれる。
警戒待機任務に就いていた2人のホープはすぐさまラスターチカに駆け寄り発信準備を始める。
「Dama、フライトチェックお願い」
『フライトチェックOK』
頷くパイロット。身につけた小型マイクに尋ねかける。
「オペレーターさん現状は」
「大統領府よりGOサイン、上がってます!」
現状渡せるデータはこれだけ、送られてくるデータはDamaに逐一データ送るから後はよろしく、と、逐一伝えられた内容に苦笑しつつも目線は既に遥か前線を見据える。
「いつもながら無茶な注文を」
「ごめんなさい、ご無事で」
アラート発生から5分。こうして慌しくラスターチカは天空へと飛び立った。
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<翌AM00:10 芥辺境藩国領空>
アラート発令より15分。
音を超える速度でラスターチカは未確認飛行機へと度々近づき、既に警告を繰り返していた。
「未確認飛行物体Aまで距離8000、対応するデータ見つかりません」
「未確認飛行物体Aに対しての警告は」
管制室とやりとりをするコパイ。
「応答ありません」
「仕方ない……最終警告を行います」
既に警告のための近接飛行を繰り返している。許容限度外だ。
緊張のあまり、操縦桿を握る手の感覚が鈍い。
その緊張を紛らわすように、共通回線から声を張り正体不明機に告げる。
「警告します。ここは芥辺境藩国の領空になります。速やかに所属を名乗りこちらの指示に従ってください」
火器管制に意識を集中。
出来れば、撃たせるな。
「この警告が受け入れられない場合は、対領空侵犯措置により要撃撃墜する事となります」
場に満ちる、沈黙。
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「距離2000、撃墜可能距離に入ります」
ホープが撃墜体制に入ろうとした、その瞬間反応したのは後部座席に座るコパイホープであった。
「あっ、正体不明機反転しました。領空距離から離れていきます」
通信から聞こえてくる方々の安堵のため息。
「他領域進入ないか、確認。AWACS引き続き警戒態勢願います」
引き続き聞こえてくるのは、警戒を強化する旨。
だが、二人のホープたちは、ニューワールドの空をひとまず守りおおせたと、今この一瞬だけは心休めるのであった。
(文:冴木 悠)
最終更新:2009年01月29日 23:13