ポケモンショーは大騒ぎ!【3】


「そ、そんな…勝つ手段はあるのか?」
目の前の絶望的な状況に、ホクトが珍しく弱音を吐いた。
 ──こいつは強い──
今までのマジカルリーダーのように気軽に挑んでは敵わぬ相手だ。
優しそうな目をしているが、その目と見かけで判断してはいけなかったのだ。
あの人は…心根は優しいが、芯が強く、誰に対しても全力で立ち向かう人であろう。
そんな妄想を頭で練っていたが、それは現実のものとなった。
「エルレイドはサイコカッター、ニョロトノはバブルこうせん!」
弱っているエルに対しても、攻撃の手を緩めなかったのだ。エルはなんとか避けている状態である…
「これで最後よ。エルレイド、インファイト!!」
かくとうタイプ最強の技…。そうエルレイドは、進化してかくとうタイプが追加されたのだ。
あく、こおりタイプのエルには効果抜群。
あく<かくとう
進化してしまったせいで、相性が悪くなってしまった。
まったく、あの石を落としたのは誰なん…
「あれー?私のめざめ石が無くなってる。何処かに落としたのかなー。…アイナさん、知ってます?」
…こいつか。意外と犯人は近くにいたのであった。
そんなココナと話していた最中に───

ドドドドドドドッ!!!!!

ものすごい音に振り返ると エルが倒れていた。
それを見つめるホクト…瞳には涙をいっぱい溜めて…
静まり返ったステージ。わいわい騒いでいたはずの観客も一斉に黙ってしまい、聞こえるのはホクトのすすり泣く声だけ…
「しょ、勝者はライム! ホクト君。残念だが、また挑戦して…」
「負けた…ちくしょーっ!!」
またまたホクトはピエロの話を聞かずに、観客を押し退けて去っていってしまった…
その後、ライムの気づかいによってショーは続けられた。たちまち広場は観客たちの笑い声で溢れていった。
だが、アイナの心は痛んでいた。まるで自分が負けた時のように…。しかし、あえて追わないことにした。
今、ホクトに会っても言える言葉が無い…それに、もっと傷つけてしまうと思ったから…………
最終更新:2006年12月08日 17:09