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**第48話 逃げるが勝ち クラースは台所の戸棚を開ける。 (たいした物は無いな) 手ぬぐい、割り箸、計量カップ。それらは彼の探している物ではない。別の戸棚を開けてみる。 そこに有ったのは缶詰類。やはり彼の求めている物は見つからなかった。 その頃、台所から少し離れた和室で、エルネストは両腕の治療を行っていた。 もっとも両腕の火傷は軽く、治療と言うには少し大げさかも知れないが。 一段落付いた丁度その頃、クラースも和室に入ってきた。その手にはお盆を、お盆の上には湯飲み茶碗を2つ載せて。 「で、どうだ、使えそうな物は有ったのか?」 エルネストは湯飲み茶碗を受け取りながら聞く。 「いや、包丁やナイフどころかアイスピックすら見つからない。全く、徹底しているよ」 クラースは腰掛けながら答える。クラースは武器に成りそうな物――包丁やナイフを探していた。 元々エルネストの腕の治療を行うために民家に入ったのだが、その時にエルネストに「探してみてくれ」と頼まれたのだ。 「そうか……武器の現地調達は不可能。なのに何故こんな物を……」 「札束にエロ本だったっな? ふふ、ルシファーと言う男もなかなか良い趣味をしているな」 クラースはスケベほんを手に取りながら笑いをこらえる。エルネストはこの民家に入ってすぐ、自分の支給品を出して見せていた。 「笑い事じゃ無いぞ。渡された方はたまったもんじゃない」 「すまん、すまん。まぁそんなことよりだな――」 クラースが話題を変えようとしたとき、不意に入り口のドアノブを捻る音が数回聞こえてきた。 扉は鍵を掛けて置いたので開くことはない。だがこのことで、この家に人がいることを相手に悟られた可能性が有る。 二人は武器を手に取り息を潜める。相手がゲームに乗った者なら、扉をぶち破ってでも中に入ってくるだろう。 だが、数分が経過しても動きはなかった。 「さて、どうする?」 「知り合いの可能性も有る……姿だけでも確認した方が良いだろう」 二人はお茶を一気に飲み干すと、玄関に向かった。 ■ 二人が玄関に向かう数分前―― G-2のとある民家のドアノブを捻った後、フェイトは首を傾げた。 「ん? 鍵が掛かってる?」 フェイトはここまでに数件の民家に入っていた。無論仲間を探すために。 彼が入った民家はいずれも鍵は掛かっていなかった。今、目の前に有る民家を除いては。 「人が……いるのか?」 だが、中からは物音一つ聞こえてこない。たまたまこの家だけに鍵が掛かっており、中には誰もいないかもしれない。 しかし、フェイトは中に人がいると仮定して思考を始めた。 (相手の身になって考えるんだ。もし僕が家に隠れているとき、入り口から物音が聞こえてきたらどうする?  僕なら……まず息を潜めて様子を窺う。鍵を壊して中に入られたら? そのときは別の出入り口から逃げるかな) 数秒間考えた後、ひとまず家から離れることを決めた。暫くの間様子を見るために、この民家とは逆方向に歩き出した。 フェイトは直ぐに立ち止まることになった。 前方から見たこともない男がこちらに向かってきている。先ほどは思考中だったため気づけなかった様だ。 体には木製の盾を縛り付け、拳には炎とその出で立ちはおかしなものだったが、それよりもフェイトは男の顔に釘付けになる。 酷く嫌な笑顔を浮かべていた。 フェイトは鉄パイプを構える。男が――ミカエルがゲームに乗っていると直感で悟った。 「早速見つけたぜ」 ミカエルはそう呟き、次の瞬間炎の灯った拳を振り上げ、フェイトに殴りかかった。 フェイトはそれを鉄パイプで受け止める。 「ッ……!」 その一撃は、とても重く、そして『熱い』。この男のの攻撃は何度も受け止めるべきでは無い、とフェイトは悟る。 間髪入れず繰り出されたアッパーは、今度はギリギリのタイミングで回避した。 ■ エルネストとクラースは、家の真ん前で始まった戦闘を、少しだけ開けた扉の隙間から覗いていた。 「あれは……ミカエル! よりによってアイツか」 「知ってるのかエルネスト!」 「ああ、奴の名はミカエル。詳細は省くが、とにかく厄介な相手だ。今の装備では太刀打ち出来ないかもしれないな」 目の前で繰り広げられている戦いは、決定打は与えられていないものの終始ミカエルが押している。 その戦いを見れば、直接戦ったことが無いクラースでも相手が相当な実力者だと理解できた。 「どうする? 幸い私達には気づいていない様だし、裏口から逃げるか?」 戦闘は極力避けたい、相手が強者なら尚更だ。クラースは早くこの場から立ち去りたかったのだが……。 「少し考えさせてくれ……」 エルネストも今ミカエルと戦うのは危険ということは理解している。 だが、ミカエルと対峙している人物がどうしても気になった。 記憶が確かなら、事の始まり――ルシファーが現れたときに真っ先に反応した人物、それが彼だった様な気がしてならない。 少し考えた後。 「……彼を助けよう」 エルネストはフェイトを指さしそう告げる。 「なっ! 正気か!!」 「まぁ、聞け。彼はルシファーに付いて何か知っているかもしれないぞ?」 それを聞いたクラースは訝しげな表情を浮かべていたが、暫くして結論を告げた。 「……解った」 「良し、では行「待て!」」 出鼻を挫かれたエルネストはクラースの方を見る。 クラースは一度溜息を付いた後。 「ここは私の言うとおりに動いてもらおう」 そう言った。 ■ 「でやぁっ!」 フェイトは鉄パイプを振り下ろした。それをミカエルは片手で受け止める。 片手で受けようものなら普通の人間なら骨折は覚悟しなければならない。『普通の人間』なら。 「痛ぇじゃねぇかオイ!」 鉄パイプの一撃を完全に受けきり、即座に反撃に移る。 (何なんだコイツは) フェイトは一端距離を取った後、勢いを付けて突きを放つ。狙いは頭部。 だが、その突きはミカエルのこめかみ辺りを掠る程度で終わり、隙が出来たフェイトはミカエルに蹴り飛ばされる。 「ちったぁやるじゃねぇか」 頭部の血を拭いながらフェイトを見下ろす。何故か追撃はしない。 そのことにフェイトは一瞬疑問を感じたが、直ぐに理由が解った。拳の炎が一層大きくなる。おそらく紋章術を使うのだろう。 「燃えろ」 その一言を聞きフェイトは身構えるが、術が放たれる様子は無い。その代わり地面から妙な熱気を感じた。 (何だ? まるで設定温度を上げすぎた床暖房……床!) 「しま――」 「イラプション!」 地面から吹き出た炎がフェイトに襲いかかる。 彼は直ぐに横に飛びコレを回避した。だが―― 「ぐぅああぁぁあ」 完全には回避出来なかった。炎はフェイトの左足を黒く焦がしていた。 ミカエルは笑みを浮かべながらフェイトを見下ろす。フェイトは顔を苦痛で歪めながらミカエルを見上げる。 勝負は決した。 「フン、片足だけ随分暖かそうになったじゃねぇか。安心しろよ、次は全身骨まで暖めてやるぜ!」 そう言って右腕を振り上げようとするが、その行為は横から飛んできた物体に遮られた。 エルネストは、武器も持たずにゆっくりとミカエルに近づいて行く。 本当はシルバーマトックを投げつけるつもりは無かったが、あの状況では仕方がない。 「ここから先は俺が相手になってやろう、ミカエル」 「あん? テメェは確か……」 「覚えてくれていた様だな。なら話は早い、あの時と同じように叩きのめしてやる」 「……調子こいてんじゃねぇぞ。群なきゃ何も出来ねぇ雑魚が」 暫くにらみ合った後、ミカエルはエルネストに殴りかかろうとする。だが、その瞬間を見計らってエルネストは前方に紙切れを撒く。 ミカエルは驚き足を止めたが、紙切れの正体は何の変哲もない紙幣――エルネストの支給品だった。 「……何の真似だ?」 「では、後は任せたぞクラース」 「任せておけ。……シルフ!」 直後ミカエルの周囲につむじ風が起こり、地面に散らばっていた紙幣を巻き上げた。 「何っ!?」 巻き上げられた紙幣は、次々とミカエルの顔面に張り付き視界を奪う。 「ちっ、姑息な真似をしやがって!」 ミカエルは自分を中心とした爆炎を起こし、周囲の紙幣を焼き払う。胸のウッドシールドがどうなろうと知ったことでは無かった。 紙幣が燃え尽き、爆炎が納まり、視界が開ける。そこには―― 「やってくれるじゃねぇか、糞野郎が!」 ミカエル以外の人影は無かった。 ■ 「これで本日二度目の敵前逃亡だな。何だか情けなくなってこないか?」 「いいや全然。昔の人だって言っているだろ『逃げるが勝ち』ってな」 ミカエルは3人を追ってこなかった。作戦は成功した様だ。 それでも彼らは足を止めない。ミカエルからは出来るだけ離れておきたかったからだ。 そんな中クラースは考え事を始める。今エルネストに背負われている青年――フェイトに付いてだ。 彼の左足は惨い有様だった。 (あの足では戦力どころか足手まといにしかならないな。何処かで彼を切り捨てる必要が――) 「――ス! おい、クラース聞いてるのか?」 「ん、ああ、すまない。考え事をしていたのでな」 エルネストに声を掛けられ、クラースはその思案を一時中断する。 「取り敢えず彼を治療したいのだが、何処か良い場所を探してくれないか?」 そう言われクラースは、地図を眺める。 「ここからだと余り良い場所が無いな。平瀬村を除くと一番近くても菅原神社とホテル跡だ。それでは遠すぎるだろ?」 地図を見せられたエルネストは溜息を付く。 「そうか……なら適当な場所で治療を行うしかないか」 「すみません、僕のために……」 「気にするな。こちらは君に聞きたいことが有って助けたのだからな」 「聞きたいことですか?」 「ああ、このふざけたゲームの主。ルシファーのことだ」 【F-2/昼】 【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%] [状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)、フェイトを背負っている] [装備:無し] [道具:スケベほん@TOP、荷物一式] [行動方針:打倒主催者] [思考1:クラースと行動] [思考2:仲間と合流] [思考3:炎のモンスターを警戒] [思考4:フェイトからルシファーに関する話を聞く] [現在位置:F-2南西 道沿いに移動中] 【クラース・F・レスター】[MP残量:90%] [状態:正常] [装備:シウススペシャル@SO1] [道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式] [行動方針:生き残る(手段は選ばない)] [思考1:エルネストと行動] [思考2:ゲームから脱出する方法を探す] [思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ] [思考4:フェイトを何処かで切り捨てる?] [思考5:フェイトからルシファーに関する話を聞く] [現在位置:F-2南西 道沿いに移動中] [備考]:エルネストの支給品を把握しました 【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:100%] [状態:左足火傷(歩行、戦闘に支障有り)、エルネストに背負われている] [装備:鉄パイプ-R1@SO3] [道具:荷物一式] [行動方針:仲間と合流] [思考:エルネストとクラースにルシファーのことを話す] [現在位置:F-2南西 道沿いに移動中] 【G-2/昼】 【ミカエル】[MP残量:75%] [状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)] [装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)] [道具:ミックスグミ、魔杖サターンアイズ、荷物一式] [行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利] [思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す] [思考2:平瀬村で得物を待つ] [思考3:使える防具が欲しい] [現在位置:平瀬村] [備考]:デコッパゲ(チェスター)は死んだと思っています。    :ウッドシールドの一部が炭化しました。 &color(red){【札束 全滅】} ※シルバーマトック@TOPはG-2平瀬村の何処かに放置されています。 【残り52人】 ---- [[第47話>ツイてねぇ]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第49話>かくれんぼ]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第18話>私の名はクラース、お前は狙われている!]]|エルネスト|[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]| |[[第18話>私の名はクラース、お前は狙われている!]]|クラース|[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]| |[[第8話>アイテムの良し悪しも人次第]]|フェイト|[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]| |[[第17話>小さな手~愛しき人と炎の記憶~]]|ミカエル|―|
**第48話 逃げるが勝ち クラースは台所の戸棚を開ける。 (たいした物は無いな) 手ぬぐい、割り箸、計量カップ。それらは彼の探している物ではない。別の戸棚を開けてみる。 そこに有ったのは缶詰類。やはり彼の求めている物は見つからなかった。 その頃、台所から少し離れた和室で、エルネストは両腕の治療を行っていた。 もっとも両腕の火傷は軽く、治療と言うには少し大げさかも知れないが。 一段落付いた丁度その頃、クラースも和室に入ってきた。その手にはお盆を、お盆の上には湯飲み茶碗を2つ載せて。 「で、どうだ、使えそうな物は有ったのか?」 エルネストは湯飲み茶碗を受け取りながら聞く。 「いや、包丁やナイフどころかアイスピックすら見つからない。全く、徹底しているよ」 クラースは腰掛けながら答える。クラースは武器に成りそうな物――包丁やナイフを探していた。 元々エルネストの腕の治療を行うために民家に入ったのだが、その時にエルネストに「探してみてくれ」と頼まれたのだ。 「そうか……武器の現地調達は不可能。なのに何故こんな物を……」 「札束にエロ本だったっな? ふふ、ルシファーと言う男もなかなか良い趣味をしているな」 クラースはスケベほんを手に取りながら笑いをこらえる。エルネストはこの民家に入ってすぐ、自分の支給品を出して見せていた。 「笑い事じゃ無いぞ。渡された方はたまったもんじゃない」 「すまん、すまん。まぁそんなことよりだな――」 クラースが話題を変えようとしたとき、不意に入り口のドアノブを捻る音が数回聞こえてきた。 扉は鍵を掛けて置いたので開くことはない。だがこのことで、この家に人がいることを相手に悟られた可能性が有る。 二人は武器を手に取り息を潜める。相手がゲームに乗った者なら、扉をぶち破ってでも中に入ってくるだろう。 だが、数分が経過しても動きはなかった。 「さて、どうする?」 「知り合いの可能性も有る……姿だけでも確認した方が良いだろう」 二人はお茶を一気に飲み干すと、玄関に向かった。 ■ 二人が玄関に向かう数分前―― G-2のとある民家のドアノブを捻った後、フェイトは首を傾げた。 「ん? 鍵が掛かってる?」 フェイトはここまでに数件の民家に入っていた。無論仲間を探すために。 彼が入った民家はいずれも鍵は掛かっていなかった。今、目の前に有る民家を除いては。 「人が……いるのか?」 だが、中からは物音一つ聞こえてこない。たまたまこの家だけに鍵が掛かっており、中には誰もいないかもしれない。 しかし、フェイトは中に人がいると仮定して思考を始めた。 (相手の身になって考えるんだ。もし僕が家に隠れているとき、入り口から物音が聞こえてきたらどうする?  僕なら……まず息を潜めて様子を窺う。鍵を壊して中に入られたら? そのときは別の出入り口から逃げるかな) 数秒間考えた後、ひとまず家から離れることを決めた。暫くの間様子を見るために、この民家とは逆方向に歩き出した。 フェイトは直ぐに立ち止まることになった。 前方から見たこともない男がこちらに向かってきている。先ほどは思考中だったため気づけなかった様だ。 体には木製の盾を縛り付け、拳には炎とその出で立ちはおかしなものだったが、それよりもフェイトは男の顔に釘付けになる。 酷く嫌な笑顔を浮かべていた。 フェイトは鉄パイプを構える。男が――ミカエルがゲームに乗っていると直感で悟った。 「早速見つけたぜ」 ミカエルはそう呟き、次の瞬間炎の灯った拳を振り上げ、フェイトに殴りかかった。 フェイトはそれを鉄パイプで受け止める。 「ッ……!」 その一撃は、とても重く、そして『熱い』。この男のの攻撃は何度も受け止めるべきでは無い、とフェイトは悟る。 間髪入れず繰り出されたアッパーは、今度はギリギリのタイミングで回避した。 ■ エルネストとクラースは、家の真ん前で始まった戦闘を、少しだけ開けた扉の隙間から覗いていた。 「あれは……ミカエル! よりによってアイツか」 「知ってるのかエルネスト!」 「ああ、奴の名はミカエル。詳細は省くが、とにかく厄介な相手だ。今の装備では太刀打ち出来ないかもしれないな」 目の前で繰り広げられている戦いは、決定打は与えられていないものの終始ミカエルが押している。 その戦いを見れば、直接戦ったことが無いクラースでも相手が相当な実力者だと理解できた。 「どうする? 幸い私達には気づいていない様だし、裏口から逃げるか?」 戦闘は極力避けたい、相手が強者なら尚更だ。クラースは早くこの場から立ち去りたかったのだが……。 「少し考えさせてくれ……」 エルネストも今ミカエルと戦うのは危険ということは理解している。 だが、ミカエルと対峙している人物がどうしても気になった。 記憶が確かなら、事の始まり――ルシファーが現れたときに真っ先に反応した人物、それが彼だった様な気がしてならない。 少し考えた後。 「……彼を助けよう」 エルネストはフェイトを指さしそう告げる。 「なっ! 正気か!!」 「まぁ、聞け。彼はルシファーに付いて何か知っているかもしれないぞ?」 それを聞いたクラースは訝しげな表情を浮かべていたが、暫くして結論を告げた。 「……解った」 「良し、では行「待て!」」 出鼻を挫かれたエルネストはクラースの方を見る。 クラースは一度溜息を付いた後。 「ここは私の言うとおりに動いてもらおう」 そう言った。 ■ 「でやぁっ!」 フェイトは鉄パイプを振り下ろした。それをミカエルは片手で受け止める。 片手で受けようものなら普通の人間なら骨折は覚悟しなければならない。『普通の人間』なら。 「痛ぇじゃねぇかオイ!」 鉄パイプの一撃を完全に受けきり、即座に反撃に移る。 (何なんだコイツは) フェイトは一端距離を取った後、勢いを付けて突きを放つ。狙いは頭部。 だが、その突きはミカエルのこめかみ辺りを掠る程度で終わり、隙が出来たフェイトはミカエルに蹴り飛ばされる。 「ちったぁやるじゃねぇか」 頭部の血を拭いながらフェイトを見下ろす。何故か追撃はしない。 そのことにフェイトは一瞬疑問を感じたが、直ぐに理由が解った。拳の炎が一層大きくなる。おそらく紋章術を使うのだろう。 「燃えろ」 その一言を聞きフェイトは身構えるが、術が放たれる様子は無い。その代わり地面から妙な熱気を感じた。 (何だ? まるで設定温度を上げすぎた床暖房……床!) 「しま――」 「イラプション!」 地面から吹き出た炎がフェイトに襲いかかる。 彼は直ぐに横に飛びコレを回避した。だが―― 「ぐぅああぁぁあ」 完全には回避出来なかった。炎はフェイトの左足を黒く焦がしていた。 ミカエルは笑みを浮かべながらフェイトを見下ろす。フェイトは顔を苦痛で歪めながらミカエルを見上げる。 勝負は決した。 「フン、片足だけ随分暖かそうになったじゃねぇか。安心しろよ、次は全身骨まで暖めてやるぜ!」 そう言って右腕を振り上げようとするが、その行為は横から飛んできた物体に遮られた。 エルネストは、武器も持たずにゆっくりとミカエルに近づいて行く。 本当はシルバーマトックを投げつけるつもりは無かったが、あの状況では仕方がない。 「ここから先は俺が相手になってやろう、ミカエル」 「あん? テメェは確か……」 「覚えてくれていた様だな。なら話は早い、あの時と同じように叩きのめしてやる」 「……調子こいてんじゃねぇぞ。群なきゃ何も出来ねぇ雑魚が」 暫くにらみ合った後、ミカエルはエルネストに殴りかかろうとする。だが、その瞬間を見計らってエルネストは前方に紙切れを撒く。 ミカエルは驚き足を止めたが、紙切れの正体は何の変哲もない紙幣――エルネストの支給品だった。 「……何の真似だ?」 「では、後は任せたぞクラース」 「任せておけ。……シルフ!」 直後ミカエルの周囲につむじ風が起こり、地面に散らばっていた紙幣を巻き上げた。 「何っ!?」 巻き上げられた紙幣は、次々とミカエルの顔面に張り付き視界を奪う。 「ちっ、姑息な真似をしやがって!」 ミカエルは自分を中心とした爆炎を起こし、周囲の紙幣を焼き払う。胸のウッドシールドがどうなろうと知ったことでは無かった。 紙幣が燃え尽き、爆炎が納まり、視界が開ける。そこには―― 「やってくれるじゃねぇか、糞野郎が!」 ミカエル以外の人影は無かった。 ■ 「これで本日二度目の敵前逃亡だな。何だか情けなくなってこないか?」 「いいや全然。昔の人だって言っているだろ『逃げるが勝ち』ってな」 ミカエルは3人を追ってこなかった。作戦は成功した様だ。 それでも彼らは足を止めない。ミカエルからは出来るだけ離れておきたかったからだ。 そんな中クラースは考え事を始める。今エルネストに背負われている青年――フェイトに付いてだ。 彼の左足は惨い有様だった。 (あの足では戦力どころか足手まといにしかならないな。何処かで彼を切り捨てる必要が――) 「――ス! おい、クラース聞いてるのか?」 「ん、ああ、すまない。考え事をしていたのでな」 エルネストに声を掛けられ、クラースはその思案を一時中断する。 「取り敢えず彼を治療したいのだが、何処か良い場所を探してくれないか?」 そう言われクラースは、地図を眺める。 「ここからだと余り良い場所が無いな。平瀬村を除くと一番近くても菅原神社とホテル跡だ。それでは遠すぎるだろ?」 地図を見せられたエルネストは溜息を付く。 「そうか……なら適当な場所で治療を行うしかないか」 「すみません、僕のために……」 「気にするな。こちらは君に聞きたいことが有って助けたのだからな」 「聞きたいことですか?」 「ああ、このふざけたゲームの主。ルシファーのことだ」 【F-2/昼】 【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%] [状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)、フェイトを背負っている] [装備:無し] [道具:スケベほん@TOP、荷物一式] [行動方針:打倒主催者] [思考1:クラースと行動] [思考2:仲間と合流] [思考3:炎のモンスターを警戒] [思考4:フェイトからルシファーに関する話を聞く] [現在位置:F-2南西 道沿いに移動中] 【クラース・F・レスター】[MP残量:90%] [状態:正常] [装備:シウススペシャル@SO1] [道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式] [行動方針:生き残る(手段は選ばない)] [思考1:エルネストと行動] [思考2:ゲームから脱出する方法を探す] [思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ] [思考4:フェイトを何処かで切り捨てる?] [思考5:フェイトからルシファーに関する話を聞く] [現在位置:F-2南西 道沿いに移動中] [備考]:エルネストの支給品を把握しました 【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:100%] [状態:左足火傷(歩行、戦闘に支障有り)、エルネストに背負われている] [装備:鉄パイプ-R1@SO3] [道具:荷物一式] [行動方針:仲間と合流] [思考:エルネストとクラースにルシファーのことを話す] [現在位置:F-2南西 道沿いに移動中] 【G-2/昼】 【ミカエル】[MP残量:75%] [状態:頭部に傷(戦闘に支障無し)] [装備:ウッドシールド@SO2、ダークウィップ@SO2(ウッドシールドを体に固定するのに使用)] [道具:ミックスグミ、魔杖サターンアイズ、荷物一式] [行動方針:最後まで生き残り、ゲームに勝利] [思考1:どんな相手でも油断せず確実に殺す] [思考2:平瀬村で得物を待つ] [思考3:使える防具が欲しい] [現在位置:平瀬村] [備考]:デコッパゲ(チェスター)は死んだと思っています。    :ウッドシールドの一部が炭化しました。 &color(red){【札束 全滅】} ※シルバーマトック@TOPはG-2平瀬村の何処かに放置されています。 【残り52人】 ---- [[第47話>ツイてねぇ]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第49話>かくれんぼ]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第18話>私の名はクラース、お前は狙われている!]]|エルネスト|[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]| |[[第18話>私の名はクラース、お前は狙われている!]]|クラース|[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]| |[[第8話>アイテムの良し悪しも人次第]]|フェイト|[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]| |[[第17話>小さな手~愛しき人と炎の記憶~]]|ミカエル|[[第80話>ある昼下がりの賢者]]|

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