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LIVE A LIVE」(2008/12/06 (土) 03:57:28) の最新版変更点

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**第66話 LIVE A LIVE 「あ、村だ…」 森の中を歩くこと数時間、レナとディアスの二人は氷川村へと到着した。 「村だったら他の人もたくさん来るだろうし、クロード達もいるかもしれないね!」 「ああ、そうだな…」 村には恐らく人が集まる、故に知り合うと会う可能性も高い…基本的にはそういう思考でディアスは村を訪れた。 だが、知り合いを捜す目的は共に行動する為では無い。 (レナを…共に連れて行くわけにはいかない) 彼が知り合いを探す目的は、レナを『信頼できる人物に託す』事である。 勿論レナといる現在は、彼女の保護を最優先として行動するつもりだ。 しかし彼の真の目的は、この殺し合いというゲームに乗った者を始末する事。 自衛の時のみ戦うというつもりは無い。ゲームに乗っている人物…即ち『マーダー』がいたら、自ら戦いを挑み、殺すつもりだ。 それは危険な行動に、レナは連れていけない。 (ここまで生存者には未だ会えていない。急がねばならないな…) ディアスは焦っていた。 先程の放送では死亡者として13人もの名前が呼ばれた。予想以上に多い数字だ。 その中には、あの心優しい動物学者ノエルの名前もあった。 加えて、先程の二人の惨い遺体。彼女らが呼びかけを行った人物だったとすると、これで死者は15人だ。 この事から考えるに、かなりの人数がこのゲームに乗っている事が予想される。 62人中死亡者が15人、自分の知り合いで死亡したのは1人…。言い方は悪いが、恐らくこれはかなり運が良い方だ。 次に死ぬのは自分の知り合いかもしれない。いや、既にもしかしたら…。 「レナ、もう大丈夫なのか?」 「うん、大丈夫!」 見た所レナも少しは元気を取り戻したようだ。 先程の放送でノエルの名が呼ばれた時、レナはかなり動揺していた。 そしてあの二人の死体。 精神的にもかなり堪えるものがあっただろう。そして休むことなく、氷川村まで歩いてきた。 疲弊しても仕方ないと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。 二人は村の中を回るついでに、何軒かの民家を物色した。 しかし武器になるような物は無く、手に入ったのは缶詰が3食分、そして懐中電灯といった日用品レベルのものだった。 まな板や鍋はあるのに包丁などが一切見当たらなかったあたり、武器になりえる物は意図的に排除されているのだろう。 (他の民家を回っても、大した収穫はなさそうだな) だが民家というのは待機場所、隠れる場所として最適だ。 どこか逃走経路がしっかりしていそうな場所の民家を探せば、安全に過ごすことができる。 そう考えながら付近の住宅を見渡していた時。 前方の建物の向こうから、微かに人の気配を感じた。 「ディアス、どうしたの?」 「…人の気配がする。近くに誰かいるな」 「…ホント!?もしかしたらクロードとかセリーヌさんかな?」 気配のする場所に向かおうとしたレナを、ディアスが手で制した。 「俺が様子を見てくる。安全な人間だと判断するまでここにいろ」 民家の塀に身体を寄せ、ディアスは慎重に様子を伺う。 参加者の中にはガブリエルやミカエルといった実力者が名を揃えていた。 恐らく彼らレベルの強さを持つ者も他にいると推測される。 塀の影から、人の姿を探した。 (いた…) こちらに向かって歩いてくる人影。 遠目からはよく分からないが、背丈の高さからして男のようだ。 やがて男は姿がはっきりと分かる位置にまで歩いてきた。 左腕には、肩まで届こうとかという位のガントレットを装着している。まるで義手のようだ。 重要なのはこの男がゲームに乗っているか否か。 ゲームに乗っているなら始末し、そうでないなら信頼できる人間かどうか見極める必要が…。 「おいそこに隠れてる奴。バレバレだぜ、出て来いよ」 男がディアスが隠れている方向を見ながら言った。 (見つかったか…!?) どうやらこちらの気配も察知されたようだ。できるだけ気配を殺していたつもりだったが、なかなかできる奴だ。 こちらが隠れている事に気付いているにも関わらず声をかけてきたという事は、殺しには乗っていないか? (まだ安心するのは早いな) 姿を現すのはもう少し待っておこう。 ディアスはそう判断し、沈黙を保ってさらに相手の様子を伺おうとした。 だが。 「いつまで隠れてやがんだこの阿呆が!」 汚い怒鳴り声が飛ぶ。 「奇襲かけようとか考えてるんならただじゃおかねえぞクソ虫め!」 さらに追撃。随分と気性の荒い人物らしい。 ここまで言われては仕方ないので、ディアスは男の前に姿を現すことにした。 (何という悪人面…見ただけで危ない人間だと分かってしまった、この男は間違いなく殺し合いに乗っている) その男を正面から見たディアスの感想はそういうものだった。 男にしては妙に露出の高い服装。プリンのような髪色。そしてその凶悪な面構え。 加えて先程の言動から、ディアスはこの男はかなり好戦的な性格、すなわちゲームに乗っている可能性が高いと結論づけた。 護身刀竜穿を取り出して戦う構えを取る。 しかし男の口から出た言葉は意外なものだった。 「けっ、てめえもこのゲームに乗ったって訳か。あんな男の言いなりになりやがって、小せえ野郎だぜ!」 「…?」 今男が放ったのは、殺し合いに乗った者への文句。そして主催に対する敵対心だった。 言い方が乱暴なのは気になるが、マーダーが口にするような言葉では無い。 「貴様は殺し合いに乗っていないのか?」 「たりめーだ。俺はルシファー如きの命令を聞く気なんてさらさらねえ」 人相の悪い男…アルベルというらしいが、彼が殺し合いに乗ってない事が分かったディアスは、レナを呼んで情報交換を試みた。 アルベルが嘘をついている可能性も考えたが、彼の乱暴な言葉遣いが逆に信用する決め手になった。 嘘をついてこちらを陥れようとするなら、もっと丁寧な言葉遣いで油断させてくるだろうから。 だからといってさすがにアルベルにレナを託そうとは思わないが。 現にレナも少し怖がっているようだ。 「まずはそうだな…先程の言葉を聞くに、お前はこの主催者の事を知っているようだったが?」 ディアスが真っ先に聞いたのはそれだ。 『あんな男の言いなりになりやがって』『ルシファー如きの命令を聞く気なんてさらさらねえ』 言葉から察するに、アルベルはどうやら主催者であるルシファーの事を知っているようだ。 ゲームからの脱出を目指すのに、主催者の情報は必要不可欠である。 「当たり前だ。知ってるも何も、俺がぶっ倒してやった」 「倒しただと…殺したのか?」 「ああ」 この男は、あの主催者を殺したことがある…。 これだけの人間に加え、ガブリエルやミカエルを参加者に加え、あのルシフェルを瞬殺したような奴に、この男が? だが、次なる疑問が浮かんでくる。 「ならば、何故あの男は生きている?殺したのではなかったのか?」 至極当然な質問だ。 「知らねえよ。そんなのは大した問題じゃねえ、生きてるんならもう一度ぶっ殺せばいいだけだ」 大した問題だと思うのだが…。 まあ確かに考えても仕方ない事かもしれない。それを言うならガブリエル、ミカエル、ルシフェルだって自分達で倒したはずなのに生きている。 分かったところであまり役に立つ情報とは思えなかった。 それより知りたいのは、主催者がどんな人物かという事だ。 「ルシファーという男は一体どういう人物なのだ?」 「あー…何だっけな…どっかの社長?だったか…?」 「社長だと?」 「タイムゲートとかいう門からFD?とかいう所に行って…エターナル何とかがどうとか…」 「…」 言ってる事がさっぱり意味不明だ。 「とにかくだ!あいつが何者だろうと、倒せばいいんだよ!」 どうやらあまり当てになりそうに無い。 アルベルからこれ以上ルシファーの情報を引き出すのは無理だと考えたディアスは、アルベルと共にルシファーを倒したという人物の名前と特徴を聞き出し それらの人物に当たることにした。 続いて、自身の知り合いに会ったかどうかを尋ねる事にした。 クロード達の名前や外見をアルベルに説明する。 「一人見かけたぜ、その長い髪の三つ目の女ってのはな」 「本当ですか!?」 レナが目を輝かせる。 「長い髪の三つ目の女」―――恐らくオペラの事だろう。 仲間の目撃情報を得て、レナは安堵の表情を見せた。 だがアルベルの次の言葉が、再びレナの表情を沈ませる事になる。 「あの女、この俺を騙して殺そうとしてやがった。逃げられちまったがな」 「…!?」 「そんな…嘘…」 仲間が殺し合いに乗っていたという言葉に、二人は衝撃を受ける。 レナは体を震わせ、ディアスは表情こそ崩さないものの下唇を噛んだ。 「事実か?」 「嘘を言ってどうする」 「見間違い、という事も無いな?」 「当たり前だ、阿呆が」 …人違い、という事も無いだろう。 アルベルには、「金髪でウェーブがかかった長髪、額にも目がある三つ目の女性」と説明した。 該当する人物が他もにいるという可能性は限りなく低い。 「どこへ逃げた?」 「さあな。突然消えちまったよ。パーッてな」 「そうか…」 そこまで聞けば、もう充分だった。 単独行動すると言うアルベルと別れ、ディアスはまだ青い顔をしているレナを連れその場を去った。 ディアス達二人と別れたアルベルは、引き続き村での武器探しを続けた。 だが予想通り、武器になりそうな物はほとんど見つからない。 一応建築現場らしき場所で木材を沢山発見したのだが、試しに空破斬を放ってみたら一発で折れてしまった。 それでも無いよりはマシと、五本ほどストックしておく事にする。 リュックの中に角材を入れていると、中に入っていたメイド服が目に入った。 この服の持ち主の事を思い出す。 (この俺を初対面でちゃん付けする、馴れ馴れしいガキだったな) 先程の放送によると、彼女はもう死んでしまったという。 ふと、アルベルはそのメイド服を取りだした。 畳んでいる時気付いたのだが、このメイド服はどうも濃縮自在のようだ。 つまりデザインは変わらないもののどんなサイズの人間も着れる仕様になっているらしい。 (このメイド服はあのガキの形見ってわけか…) … … 気付くと、アルベルはそのメイド服を… 「着るか!着ねえよ!絶対着ねえからなっ!」 …リュックにしまっていた。 【I-06/午後】 【アルベル・ノックス】[MP残量:90%] [状態:左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障があり)] [装備:木材] [道具:木材×4、メイド服(スフレ4Pver、濃縮自在の為万人着用OK)、荷物一式] [行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす!方法?知るか!] [思考1:もっとマシな武器が無いか探す] [思考2:左腕の代用品の調達または修理] [思考3:しばらく氷川村での散策を続ける] [現在位置:I-06、町中] ※木材は大体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負担がかかる技などを使うと折れます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「とりあえずこの村での探索を続けるぞ」 「ディアス…」 レナが不安そうにディアスを見上げる。 「オペラの事は、まだ本当かどうか分からない。会って確かめればいい」 「そ、そうだよね」 そうは言うが、ディアスはオペラがゲームに乗った可能性は、ほぼ100%と考えていた。 そしてディアスの目的は、『ゲームに乗った者の始末』。 (もし…俺達まで襲うようなら…その時は…) ディアスは心の中で、非常な決断をしていた。 しかしこの後、二人は予想以上に早くオペラと会う事になる。 氷川村内を移動するうちに、レナとディアスは診療所まで辿り着いた。 「診療所か~。薬とかあるかもしれないね」 「待て、レナ」 診療所に向かっていくレナをディアスが止める。付近の異変に気付いたのだ。 …血の臭いがする。危険な香りだ。 先程と同じようにレナを付近に待機させると、ディアスは警戒しながら診療所へ入っていった。 オペラが目を覚ました時、既に時刻は夕方になろうとしていた。 「一応この場所にも夜はあるのね…」 僅かに赤みがかかってきた空を見上げながら、オペラは一人呟く。 夜は暗い。基本的には夜間は活動を控えるべきだろう。 しかしエルネストを守る為には出来る限り早い内に参加者を減らさなくてならない。 そして発想を逆転させれば、夜は奇襲のチャンス。 所有している武器が馴れない剣であるオペラにとって、攻めるには絶好の状況だ。 ここまで睡眠を充分取ったおかげで、万全とは言い難いが痛みやダメージも少し和らいだ。 オペラが行動を開始しようとしたその時。 診療所の扉が開く音が聞こえた。 (…全く、こっちは寝起きなのに) 足音はこちらに近づいてくるが、魔眼のピアスが反応しないという事は向こうに不意打ちするつもりは無いようだ。 やがて備品室のドアも開けられた。 入ってきたのは、オペラのよく知る人物だった。 「ディアス…無事だったのね」 「何とかな」 目の前に現れた男は、かつて共に旅をした仲間。ここに来てからは初めて会った知り合いだった。 だが、オペラは再会を素直に喜ぶことは出来ない。 「早速だが聞きたい事がある。待合室の男の死体…殺したのはお前か?」 やはりそれか。 予想通りの質問だった。 あの待合室の状況を見れば、今までここにいた自分が殺したという事は誤魔化せないだろう。 「ええ、そうよ」 だからオペラは肯定する。 「診療所に入ったら、中に潜んでいたあの男が襲ってきたのよ。苦戦したけど返り討ちにしてやったわ」 こう言えば問題ない。自分から襲っていったという証拠は無いのだ。 殺した事は否定できなくても、殺し合いに乗っていない事さえ否定すればいい。 「一応聞いておく。お前はこの殺し合いというゲームに…」 「乗ってるわけないでしょ。変な事聞かないでよ」 これでOK。 ディアスも「そうか、災難だったな」と信用した様子だった。 今度はこちらが質問する番だ。 「ディアス、貴方今は一人?」 「一人だ」 オペラは心の中でほくそ笑む。 「支給品は?」 「この機械だけだ。武器になりそうな物は無かった」 そう言ってディアスはリュックの中から『クォッドスキャナー』を取り出す。 色々機能はついているようだが、ディアスにはよく分からないらしい。 「貴方が一人なら私と一緒に行動しない?私も貴方のような強くて信頼できる人がいると心強いわ」 「いいだろう。俺も武器が無い分、一人で行動するには不安があるからな」 断るわけが無い。彼と私は元々仲間同士。こんな状況で知り合いと会えて、ディアスといえど安心しないという事は無い。後は… 「ここは血の臭いが不愉快だ。詳しい話は外に出てからにするぞ」 ディアスが背を向け、備品室から出て行く。オペラもその後を追った。 完璧だ。 予定通り事が運んでいる。 ディアスは強い。まともに戦えば、ランチャーも無い自分に勝ち目は薄い。 だが今ディアスは武器を持っていない上、一人だ。 そして自分を信用している。今なら勝てる。 診療所から出たディアスを背中を見ながら、オペラは咎人の剣を振りかぶった。 …殺す事に抵抗はある。彼は仲間なのだから。 それでも、エルネストの命とディアスの命、選ぶとしたら前者だ。 (ごめんなさい…許さなくていいわ…。エルの為に、死んで) そのままディアスめがけ、剣を振り下ろした。 だが、剣がディアスを切り裂く事は無かった。 「…どういうつもりだ?」 寸前で振り向いたディアスが、短剣でオペラの斬撃を受け流したのだ。 (そんな…!?) オペラは素早くその場から飛び退いた。 「武器は無いって…」 「悪いが試させてもらった」 ディアスは明かな敵意をその目に浮かべ、オペラを睨む。 (試した?私が殺し合いに乗っている事を予測していたというの?ばれていた?いつ?どこで?) 止め処なく浮かぶ疑問にオペラは困惑する。その疑問に答えるようにディアスは言った。 「アルベルと言う男に会った。知っているな?」 「…!」 「どうやらあいつの言った事は正しかったようだな」 そう言ってディアスは短剣を構える。 「例え知り合いだろうが、殺しに乗っている者を放っておくわけにはいかん」 言葉と共に、ディアスは一気にオペラに肉薄して短剣を振るう。 オペラもすかさず持っていた剣でこれを防御。剣の刃と刃が衝突して火花が散る。 続いて繰り出されたディアスの横薙ぎは後ろに飛び退いて回避。 だがディアスはすぐにオペラに迫って次々と追撃を繰り出していった。 「ハッ!」 「っ…!」 お互いの武器にかなりのリーチ差がある為、オペラは何とかディアスの攻撃を防御し続けることができている。 だが、剣の技術差はそのリーチ差以上のもの。 短剣とは言え、元々剣の類を得意とするディアスと、得意のランチャーとは全く毛色が違う武器を持つオペラ。 実際に攻撃をしているのはディアスだけで、オペラは防戦一方だった。 「このぉっ!!」 攻撃と攻撃の僅かな隙を突き、オペラは思いっきり剣を振る。 さすがにディアスもこれを受け流すことはできず、バックステップでオペラから離れる。 その間にオペラもその場から離れ、ディアスから距離を取った。 距離が開き、お互いが睨み合う。 「何故殺す?」 ディアスが問いかける。 「他の61人の命を奪ってまで、生き延びたいか?」 「…」 オペラは答えない。 「そうか」 沈黙を肯定と取ったのか、再びディアスが前進し距離を詰めてきた。 「はあぁっ!」 「くぅぅっ……!」 交錯する刃がキィンと乾いた音を立てる。 ディアスが短剣を振るうたびに、オペラは自ら後ろに下がっていった。 オペラもこれまでかなりの修羅場を潜ってきている。 不得手な武器を使いながらも、その戦い方を覚え始めていた。 間合いに入られると、小回りが利き手数が多い短剣の方が有利。 よってこちらは相手から距離を取って戦わなければならない。 だからオペラは後退しながら、腕を伸ばして出来るだけ前の方でディアスの攻撃を防いでいた。 だが、やはりオペラの体に残ったダメージや疲労、そして剣技の差はあまりに大きかった。 何度目かのディアスの攻撃を受け止めた時、オペラの足下がふらついた。 その隙をディアスが逃すはずも無い。 「夢幻!」 カキン!キィン!カキン! ディアスの必殺技、夢幻。休む間もなく繰り出される連撃。 最初の三発を防いだものの、ついに四発目がオペラの体を捕らえる。 「あああっっ!」 左肩に激痛。完全にバランスを崩したオペラは、五発目を受けてとうとうその場に倒れ伏した。 そして喉元に短剣を突きつけられる。 「終わりだ…」 無表情のまま、ディアスがオペラを見下ろす。 その時だった。 「やめてぇ!」 悲鳴と共に、レナが物陰から飛び出してきた。 「やめて…ディアス…こんな事…オペラさんも…」 「レナ…!隠れていろと…!」 目に涙を溜めて訴えるレナ。 ディアスが一瞬、オペラから注意を逸らす。 その隙を、オペラは逃さなかった。 仰向け状態のまま、ディアスの股間に一発蹴りを入れる。 思わぬ反撃受けたディアスはその激痛に顔を歪ませた。 その間にオペラは素早く起きあがり、レナに向かって走る。 場の状況を理解できないままのレナを後ろから拘束して、剣を彼女の頬に突きつけた。 「動かないで。ちょっとでも動いたら、レナを殺すわよ」 「オ、オペラさん…」 「オペラ…貴様ァ…!」 レナは恐怖に満ちた顔で、ディアスは怒りを浮かべた表情でオペラを見る。 「そこまで堕ちたか…!そうまでして生き延びたいか!」 「武器を置いて両手を上げて。今すぐに」 睨みながらもオペラの言う事に従うディアス。 「言う通りにしたぞ。レナを離せ」 「それはまだできないわ」 「ぐっ…」 ディアスは爆発しそうな怒りを懸命に抑えながらオペラを睨む。 オペラはその視線をつまらなさそうに受け止めた。 その場に静寂が訪れる。 「…ど…うして…」 静寂を破ったのは未だオペラに拘束されたままのレナだった。 「どうして…人殺しなんてするんですか…こんな事しないで…みんなで帰りましょうよ…」 「それは無理なのよ。生き残れるのは一人なんだから」 「でも…私達だけじゃなくて、ここにはエルネストさんだっているのに…」 「…だからよ」 「え…?」 オペラのその言葉に、レナとディアスは疑問の表情を浮かべる。 「私はエルに死んで欲しくないわ。エルにはどんな事があっても生き延びて欲しい。 だから私は決めたのよ。エルをここから脱出させる為に、他の人達には死んでもらうって。 エルは人を殺せるような人じゃないから…私が殺すしかないのよ」 「そんな…オペラさんがそんな事して、みんなを殺して生き残ったって、エルネストさんが喜ぶわけないじゃないですか!」 「分かってるわよ!エルがそんな事望んでないのも…悲しむのも…でもいいのよ! それでも、私はエルに生き残って欲しいの!生きていてほしいのよ!」 タカが外れたようにオペラは捲し立てる。その目には涙が浮かんでいた。 好きな人に死んで欲しくない…だからオペラは自身を含めた他の61人に死んでもらう選択をした。 でも…そんなの間違ってる。レナがそう言おうとした時、再びオペラが口を開く。 「ディアス…貴方はそう思わないの?貴方はレナを大切に思ってるんでしょ? どんな事をしてでも、他の人を殺してでも、生きていて欲しいと思わないの?」 「思わん」 ディアスの答えは即答だった。 「お前は何も分かっていない……残された者の孤独を…つらさを…悲しみを……それが死よりも苦しいという事に」 ディアスは幼い頃、両親と妹を殺された。自分以外の家族が死に、自分だけが助かってしまった。 その後に待っていたのは、まさに地獄のような日々。 「俺は知っている…その苦しみを…」 自分だけが生き延びてしまったという罪悪感と孤独。殺した者への憎悪。失った家族への悲しみ。 長い間、ディアスはこの苦しみに耐えてきた。 「俺はあの苦しみを、レナに背負わせたくない。だからレナ一人を生き残らせようなどと考えない。 レナを大切に思っているからこそ…俺はこの殺し合いから、他の仲間と生きて脱出する道を選ぶ。例えそれがどんなに厳しい道でも、必ずな」 ディアスは静かに…だがその目に強い意志と覚悟を宿らせて言った。 そこまで聞いたオペラは、 「そうね…私には分からないわ。残された人の苦しみは」 ディアスと同じ位、その目に強い意志を込めて 「だから私は、どんなに苦しくても生きていて欲しいと思ってしまう」 ディアスと同じ位、強い覚悟を感じさせて 「私は、エルを生き残らせる!貴方に勝つ!」 レナの拘束を解いて彼女を突き飛ばし、オペラはそのまま剣を振り上げてディアスに襲いかかる。 「馬鹿が…っ!」 ディアスは、それを難なく避けて。 地面に捨てた短刀を拾い直して。 もう一度向かってきたオペラに向き直って。 ディアスの持った短刀が、オペラの胸を貫いた。 オペラは仰向けのまま夕焼け空を見上げた。全身の力が抜けていく。 その横でレナが懸命に回復の紋章術を唱えていた。 「やめなさい…もう助かる見込みは無いわ…」 「しゃ、喋らないで下さい」 「万が一、一命を取り留めたとしても、私はまた貴方達を殺しにかかるわよ…」 「そんな事…」 「いいからやめなさい…こんな所で、紋章術を無駄遣いする事はないわ」 レナが涙を浮かべながら見つめてくる。 「泣くんじゃないわよ…殺人鬼が減るのよ、喜ぶもんでしょ?」 「…仲間が死んじゃって…喜ぶわけないじゃないですかぁ…」 この期に及んでまだ私を仲間と呼ぶのね。仕方ない子、と感じながらも嬉しく思う。 「ディアス…」 レナの隣に立ち、自分を見下ろしているディアスに声をかけた。 「何だ」 「レナや仲間と…生きて脱出するって言ったわよね…」 「言った」 「エルの事も…頼めるかしら?」 「努力はする」 ぶっきらぼうな返事だったが、先程と同じく強い意志が感じられた。 その事に少しだけ安心する。 未練は多い。この手でエルネストを助けられなかったのだから。 だが自分が死ぬ以上、もうエルネストの事は彼らに託すしか無かった。 罪の無い者を殺した自分は、恐らく地獄へ行く。 エルネストはきっと地獄に行くような罪は犯さない。 だからエルネストに会う事は、もう二度と無いだろう。 それでも、彼が生き抜いてくれれば自分は救われる。そう思った。 オペラの三つの目が、ゆっくりと閉じられる。 エル…結局、私は貴方に追いつけなかったわ。 貴方を追いかけて星から星へ。挙げ句宇宙の存亡をかけた戦いにまで。 やっと追いつけそうだと思ったら、またこんな事に巻き込まれて。 貴方の事だから、最後までこんな状況には抗って見せるんでしょうね。 すぐに殺し合いからの脱出を諦めてしまった私は、貴方のそういう強さにも追いつけなかった。 でもいいの。 私はそんな貴方が好きだったのだから。 だから、お願い。 最後まで生き抜いて。 最後までその強さを見せて―― ―――最後まで、私が愛したエルのままでいて――― 【I-07/夕方】 【ディアス・フラック】[MP残量:90%] [状態:疲労] [装備:護身刀“竜穿”@SO3] [道具:クォッドスキャナー@SO3、????←本人確認済み、荷物一式] [行動方針:ゲームに乗った参加者の始末、ゲームからの脱出] [思考1:レナを最優先に保護] [思考2:仲間を探しレナを託す] 【レナ・ランフォード】[MP残量:90%] [状態:極度の精神的疲労、深い悲しみ] [装備:無し] [道具:????×2←本人確認済み、荷物一式] [行動方針:仲間と一緒に生きて脱出] [思考1:オペラを弔う] [思考2:仲間と合流したい] [現在位置:I-07、診療所前] &color(red){【オペラ・ベクトラ@SO2 死亡】} &color(red){【残り42人】} ※オペラの荷物は彼女の死体のそばに落ちています。 ---- [[第65話>使い捨て]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第67話>騎士の宅急便]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第40話>続・止まらない受難]]|アルベル|[[第82話>逃走しよう、そうしよう]]| |[[第59話>幸運と不幸は紙一重?]]|ディアス|[[第87話>奇跡の光が放つ輝き]]| |[[第59話>幸運と不幸は紙一重?]]|レナ|[[第87話>奇跡の光が放つ輝き]]| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|COLOR(red):オペラ|―|
**第66話 LIVE A LIVE 「あ、村だ…」 森の中を歩くこと数時間、レナとディアスの二人は氷川村へと到着した。 「村だったら他の人もたくさん来るだろうし、クロード達もいるかもしれないね!」 「ああ、そうだな…」 村には恐らく人が集まる、故に知り合うと会う可能性も高い…基本的にはそういう思考でディアスは村を訪れた。 だが、知り合いを捜す目的は共に行動する為では無い。 (レナを…共に連れて行くわけにはいかない) 彼が知り合いを探す目的は、レナを『信頼できる人物に託す』事である。 勿論レナといる現在は、彼女の保護を最優先として行動するつもりだ。 しかし彼の真の目的は、この殺し合いというゲームに乗った者を始末する事。 自衛の時のみ戦うというつもりは無い。ゲームに乗っている人物…即ち『マーダー』がいたら、自ら戦いを挑み、殺すつもりだ。 それは危険な行動に、レナは連れていけない。 (ここまで生存者には未だ会えていない。急がねばならないな…) ディアスは焦っていた。 先程の放送では死亡者として13人もの名前が呼ばれた。予想以上に多い数字だ。 その中には、あの心優しい動物学者ノエルの名前もあった。 加えて、先程の二人の惨い遺体。彼女らが呼びかけを行った人物だったとすると、これで死者は15人だ。 この事から考えるに、かなりの人数がこのゲームに乗っている事が予想される。 62人中死亡者が15人、自分の知り合いで死亡したのは1人…。言い方は悪いが、恐らくこれはかなり運が良い方だ。 次に死ぬのは自分の知り合いかもしれない。いや、既にもしかしたら…。 「レナ、もう大丈夫なのか?」 「うん、大丈夫!」 見た所レナも少しは元気を取り戻したようだ。 先程の放送でノエルの名が呼ばれた時、レナはかなり動揺していた。 そしてあの二人の死体。 精神的にもかなり堪えるものがあっただろう。そして休むことなく、氷川村まで歩いてきた。 疲弊しても仕方ないと思っていたが、どうやら杞憂だったようだ。 二人は村の中を回るついでに、何軒かの民家を物色した。 しかし武器になるような物は無く、手に入ったのは缶詰が3食分、そして懐中電灯といった日用品レベルのものだった。 まな板や鍋はあるのに包丁などが一切見当たらなかったあたり、武器になりえる物は意図的に排除されているのだろう。 (他の民家を回っても、大した収穫はなさそうだな) だが民家というのは待機場所、隠れる場所として最適だ。 どこか逃走経路がしっかりしていそうな場所の民家を探せば、安全に過ごすことができる。 そう考えながら付近の住宅を見渡していた時。 前方の建物の向こうから、微かに人の気配を感じた。 「ディアス、どうしたの?」 「…人の気配がする。近くに誰かいるな」 「…ホント!?もしかしたらクロードとかセリーヌさんかな?」 気配のする場所に向かおうとしたレナを、ディアスが手で制した。 「俺が様子を見てくる。安全な人間だと判断するまでここにいろ」 民家の塀に身体を寄せ、ディアスは慎重に様子を伺う。 参加者の中にはガブリエルやミカエルといった実力者が名を揃えていた。 恐らく彼らレベルの強さを持つ者も他にいると推測される。 塀の影から、人の姿を探した。 (いた…) こちらに向かって歩いてくる人影。 遠目からはよく分からないが、背丈の高さからして男のようだ。 やがて男は姿がはっきりと分かる位置にまで歩いてきた。 左腕には、肩まで届こうとかという位のガントレットを装着している。まるで義手のようだ。 重要なのはこの男がゲームに乗っているか否か。 ゲームに乗っているなら始末し、そうでないなら信頼できる人間かどうか見極める必要が…。 「おいそこに隠れてる奴。バレバレだぜ、出て来いよ」 男がディアスが隠れている方向を見ながら言った。 (見つかったか…!?) どうやらこちらの気配も察知されたようだ。できるだけ気配を殺していたつもりだったが、なかなかできる奴だ。 こちらが隠れている事に気付いているにも関わらず声をかけてきたという事は、殺しには乗っていないか? (まだ安心するのは早いな) 姿を現すのはもう少し待っておこう。 ディアスはそう判断し、沈黙を保ってさらに相手の様子を伺おうとした。 だが。 「いつまで隠れてやがんだこの阿呆が!」 汚い怒鳴り声が飛ぶ。 「奇襲かけようとか考えてるんならただじゃおかねえぞクソ虫め!」 さらに追撃。随分と気性の荒い人物らしい。 ここまで言われては仕方ないので、ディアスは男の前に姿を現すことにした。 (何という悪人面…見ただけで危ない人間だと分かってしまった、この男は間違いなく殺し合いに乗っている) その男を正面から見たディアスの感想はそういうものだった。 男にしては妙に露出の高い服装。プリンのような髪色。そしてその凶悪な面構え。 加えて先程の言動から、ディアスはこの男はかなり好戦的な性格、すなわちゲームに乗っている可能性が高いと結論づけた。 護身刀竜穿を取り出して戦う構えを取る。 しかし男の口から出た言葉は意外なものだった。 「けっ、てめえもこのゲームに乗ったって訳か。あんな男の言いなりになりやがって、小せえ野郎だぜ!」 「…?」 今男が放ったのは、殺し合いに乗った者への文句。そして主催に対する敵対心だった。 言い方が乱暴なのは気になるが、マーダーが口にするような言葉では無い。 「貴様は殺し合いに乗っていないのか?」 「たりめーだ。俺はルシファー如きの命令を聞く気なんてさらさらねえ」 人相の悪い男…アルベルというらしいが、彼が殺し合いに乗ってない事が分かったディアスは、レナを呼んで情報交換を試みた。 アルベルが嘘をついている可能性も考えたが、彼の乱暴な言葉遣いが逆に信用する決め手になった。 嘘をついてこちらを陥れようとするなら、もっと丁寧な言葉遣いで油断させてくるだろうから。 だからといってさすがにアルベルにレナを託そうとは思わないが。 現にレナも少し怖がっているようだ。 「まずはそうだな…先程の言葉を聞くに、お前はこの主催者の事を知っているようだったが?」 ディアスが真っ先に聞いたのはそれだ。 『あんな男の言いなりになりやがって』『ルシファー如きの命令を聞く気なんてさらさらねえ』 言葉から察するに、アルベルはどうやら主催者であるルシファーの事を知っているようだ。 ゲームからの脱出を目指すのに、主催者の情報は必要不可欠である。 「当たり前だ。知ってるも何も、俺がぶっ倒してやった」 「倒しただと…殺したのか?」 「ああ」 この男は、あの主催者を殺したことがある…。 これだけの人間に加え、ガブリエルやミカエルを参加者に加え、あのルシフェルを瞬殺したような奴に、この男が? だが、次なる疑問が浮かんでくる。 「ならば、何故あの男は生きている?殺したのではなかったのか?」 至極当然な質問だ。 「知らねえよ。そんなのは大した問題じゃねえ、生きてるんならもう一度ぶっ殺せばいいだけだ」 大した問題だと思うのだが…。 まあ確かに考えても仕方ない事かもしれない。それを言うならガブリエル、ミカエル、ルシフェルだって自分達で倒したはずなのに生きている。 分かったところであまり役に立つ情報とは思えなかった。 それより知りたいのは、主催者がどんな人物かという事だ。 「ルシファーという男は一体どういう人物なのだ?」 「あー…何だっけな…どっかの社長?だったか…?」 「社長だと?」 「タイムゲートとかいう門からFD?とかいう所に行って…エターナル何とかがどうとか…」 「…」 言ってる事がさっぱり意味不明だ。 「とにかくだ!あいつが何者だろうと、倒せばいいんだよ!」 どうやらあまり当てになりそうに無い。 アルベルからこれ以上ルシファーの情報を引き出すのは無理だと考えたディアスは、アルベルと共にルシファーを倒したという人物の名前と特徴を聞き出し それらの人物に当たることにした。 続いて、自身の知り合いに会ったかどうかを尋ねる事にした。 クロード達の名前や外見をアルベルに説明する。 「一人見かけたぜ、その長い髪の三つ目の女ってのはな」 「本当ですか!?」 レナが目を輝かせる。 「長い髪の三つ目の女」―――恐らくオペラの事だろう。 仲間の目撃情報を得て、レナは安堵の表情を見せた。 だがアルベルの次の言葉が、再びレナの表情を沈ませる事になる。 「あの女、この俺を騙して殺そうとしてやがった。逃げられちまったがな」 「…!?」 「そんな…嘘…」 仲間が殺し合いに乗っていたという言葉に、二人は衝撃を受ける。 レナは体を震わせ、ディアスは表情こそ崩さないものの下唇を噛んだ。 「事実か?」 「嘘を言ってどうする」 「見間違い、という事も無いな?」 「当たり前だ、阿呆が」 …人違い、という事も無いだろう。 アルベルには、「金髪でウェーブがかかった長髪、額にも目がある三つ目の女性」と説明した。 該当する人物が他もにいるという可能性は限りなく低い。 「どこへ逃げた?」 「さあな。突然消えちまったよ。パーッてな」 「そうか…」 そこまで聞けば、もう充分だった。 単独行動すると言うアルベルと別れ、ディアスはまだ青い顔をしているレナを連れその場を去った。 ディアス達二人と別れたアルベルは、引き続き村での武器探しを続けた。 だが予想通り、武器になりそうな物はほとんど見つからない。 一応建築現場らしき場所で木材を沢山発見したのだが、試しに空破斬を放ってみたら一発で折れてしまった。 それでも無いよりはマシと、五本ほどストックしておく事にする。 リュックの中に角材を入れていると、中に入っていたメイド服が目に入った。 この服の持ち主の事を思い出す。 (この俺を初対面でちゃん付けする、馴れ馴れしいガキだったな) 先程の放送によると、彼女はもう死んでしまったという。 ふと、アルベルはそのメイド服を取りだした。 畳んでいる時気付いたのだが、このメイド服はどうも濃縮自在のようだ。 つまりデザインは変わらないもののどんなサイズの人間も着れる仕様になっているらしい。 (このメイド服はあのガキの形見ってわけか…) … … 気付くと、アルベルはそのメイド服を… 「着るか!着ねえよ!絶対着ねえからなっ!」 …リュックにしまっていた。 【I-06/午後】 【アルベル・ノックス】[MP残量:90%] [状態:左手首に深い切り傷(応急処置済みだが戦闘に支障があり)] [装備:木材] [道具:木材×4、メイド服(スフレ4Pver、濃縮自在の為万人着用OK)、荷物一式] [行動方針:ルシファーの野郎をぶちのめす!方法?知るか!] [思考1:もっとマシな武器が無いか探す] [思考2:左腕の代用品の調達または修理] [思考3:しばらく氷川村での散策を続ける] [現在位置:I-06、町中] ※木材は大体1.5m程の細い物です。耐久力は低く、負担がかかる技などを使うと折れます。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 「とりあえずこの村での探索を続けるぞ」 「ディアス…」 レナが不安そうにディアスを見上げる。 「オペラの事は、まだ本当かどうか分からない。会って確かめればいい」 「そ、そうだよね」 そうは言うが、ディアスはオペラがゲームに乗った可能性は、ほぼ100%と考えていた。 そしてディアスの目的は、『ゲームに乗った者の始末』。 (もし…俺達まで襲うようなら…その時は…) ディアスは心の中で、非常な決断をしていた。 しかしこの後、二人は予想以上に早くオペラと会う事になる。 氷川村内を移動するうちに、レナとディアスは診療所まで辿り着いた。 「診療所か~。薬とかあるかもしれないね」 「待て、レナ」 診療所に向かっていくレナをディアスが止める。付近の異変に気付いたのだ。 …血の臭いがする。危険な香りだ。 先程と同じようにレナを付近に待機させると、ディアスは警戒しながら診療所へ入っていった。 オペラが目を覚ました時、既に時刻は夕方になろうとしていた。 「一応この場所にも夜はあるのね…」 僅かに赤みがかかってきた空を見上げながら、オペラは一人呟く。 夜は暗い。基本的には夜間は活動を控えるべきだろう。 しかしエルネストを守る為には出来る限り早い内に参加者を減らさなくてならない。 そして発想を逆転させれば、夜は奇襲のチャンス。 所有している武器が馴れない剣であるオペラにとって、攻めるには絶好の状況だ。 ここまで睡眠を充分取ったおかげで、万全とは言い難いが痛みやダメージも少し和らいだ。 オペラが行動を開始しようとしたその時。 診療所の扉が開く音が聞こえた。 (…全く、こっちは寝起きなのに) 足音はこちらに近づいてくるが、魔眼のピアスが反応しないという事は向こうに不意打ちするつもりは無いようだ。 やがて備品室のドアも開けられた。 入ってきたのは、オペラのよく知る人物だった。 「ディアス…無事だったのね」 「何とかな」 目の前に現れた男は、かつて共に旅をした仲間。ここに来てからは初めて会った知り合いだった。 だが、オペラは再会を素直に喜ぶことは出来ない。 「早速だが聞きたい事がある。待合室の男の死体…殺したのはお前か?」 やはりそれか。 予想通りの質問だった。 あの待合室の状況を見れば、今までここにいた自分が殺したという事は誤魔化せないだろう。 「ええ、そうよ」 だからオペラは肯定する。 「診療所に入ったら、中に潜んでいたあの男が襲ってきたのよ。苦戦したけど返り討ちにしてやったわ」 こう言えば問題ない。自分から襲っていったという証拠は無いのだ。 殺した事は否定できなくても、殺し合いに乗っていない事さえ否定すればいい。 「一応聞いておく。お前はこの殺し合いというゲームに…」 「乗ってるわけないでしょ。変な事聞かないでよ」 これでOK。 ディアスも「そうか、災難だったな」と信用した様子だった。 今度はこちらが質問する番だ。 「ディアス、貴方今は一人?」 「一人だ」 オペラは心の中でほくそ笑む。 「支給品は?」 「この機械だけだ。武器になりそうな物は無かった」 そう言ってディアスはリュックの中から『クォッドスキャナー』を取り出す。 色々機能はついているようだが、ディアスにはよく分からないらしい。 「貴方が一人なら私と一緒に行動しない?私も貴方のような強くて信頼できる人がいると心強いわ」 「いいだろう。俺も武器が無い分、一人で行動するには不安があるからな」 断るわけが無い。彼と私は元々仲間同士。こんな状況で知り合いと会えて、ディアスといえど安心しないという事は無い。後は… 「ここは血の臭いが不愉快だ。詳しい話は外に出てからにするぞ」 ディアスが背を向け、備品室から出て行く。オペラもその後を追った。 完璧だ。 予定通り事が運んでいる。 ディアスは強い。まともに戦えば、ランチャーも無い自分に勝ち目は薄い。 だが今ディアスは武器を持っていない上、一人だ。 そして自分を信用している。今なら勝てる。 診療所から出たディアスを背中を見ながら、オペラは咎人の剣を振りかぶった。 …殺す事に抵抗はある。彼は仲間なのだから。 それでも、エルネストの命とディアスの命、選ぶとしたら前者だ。 (ごめんなさい…許さなくていいわ…。エルの為に、死んで) そのままディアスめがけ、剣を振り下ろした。 だが、剣がディアスを切り裂く事は無かった。 「…どういうつもりだ?」 寸前で振り向いたディアスが、短剣でオペラの斬撃を受け流したのだ。 (そんな…!?) オペラは素早くその場から飛び退いた。 「武器は無いって…」 「悪いが試させてもらった」 ディアスは明かな敵意をその目に浮かべ、オペラを睨む。 (試した?私が殺し合いに乗っている事を予測していたというの?ばれていた?いつ?どこで?) 止め処なく浮かぶ疑問にオペラは困惑する。その疑問に答えるようにディアスは言った。 「アルベルと言う男に会った。知っているな?」 「…!」 「どうやらあいつの言った事は正しかったようだな」 そう言ってディアスは短剣を構える。 「例え知り合いだろうが、殺しに乗っている者を放っておくわけにはいかん」 言葉と共に、ディアスは一気にオペラに肉薄して短剣を振るう。 オペラもすかさず持っていた剣でこれを防御。剣の刃と刃が衝突して火花が散る。 続いて繰り出されたディアスの横薙ぎは後ろに飛び退いて回避。 だがディアスはすぐにオペラに迫って次々と追撃を繰り出していった。 「ハッ!」 「っ…!」 お互いの武器にかなりのリーチ差がある為、オペラは何とかディアスの攻撃を防御し続けることができている。 だが、剣の技術差はそのリーチ差以上のもの。 短剣とは言え、元々剣の類を得意とするディアスと、得意のランチャーとは全く毛色が違う武器を持つオペラ。 実際に攻撃をしているのはディアスだけで、オペラは防戦一方だった。 「このぉっ!!」 攻撃と攻撃の僅かな隙を突き、オペラは思いっきり剣を振る。 さすがにディアスもこれを受け流すことはできず、バックステップでオペラから離れる。 その間にオペラもその場から離れ、ディアスから距離を取った。 距離が開き、お互いが睨み合う。 「何故殺す?」 ディアスが問いかける。 「他の61人の命を奪ってまで、生き延びたいか?」 「…」 オペラは答えない。 「そうか」 沈黙を肯定と取ったのか、再びディアスが前進し距離を詰めてきた。 「はあぁっ!」 「くぅぅっ……!」 交錯する刃がキィンと乾いた音を立てる。 ディアスが短剣を振るうたびに、オペラは自ら後ろに下がっていった。 オペラもこれまでかなりの修羅場を潜ってきている。 不得手な武器を使いながらも、その戦い方を覚え始めていた。 間合いに入られると、小回りが利き手数が多い短剣の方が有利。 よってこちらは相手から距離を取って戦わなければならない。 だからオペラは後退しながら、腕を伸ばして出来るだけ前の方でディアスの攻撃を防いでいた。 だが、やはりオペラの体に残ったダメージや疲労、そして剣技の差はあまりに大きかった。 何度目かのディアスの攻撃を受け止めた時、オペラの足下がふらついた。 その隙をディアスが逃すはずも無い。 「夢幻!」 カキン!キィン!カキン! ディアスの必殺技、夢幻。休む間もなく繰り出される連撃。 最初の三発を防いだものの、ついに四発目がオペラの体を捕らえる。 「あああっっ!」 左肩に激痛。完全にバランスを崩したオペラは、五発目を受けてとうとうその場に倒れ伏した。 そして喉元に短剣を突きつけられる。 「終わりだ…」 無表情のまま、ディアスがオペラを見下ろす。 その時だった。 「やめてぇ!」 悲鳴と共に、レナが物陰から飛び出してきた。 「やめて…ディアス…こんな事…オペラさんも…」 「レナ…!隠れていろと…!」 目に涙を溜めて訴えるレナ。 ディアスが一瞬、オペラから注意を逸らす。 その隙を、オペラは逃さなかった。 仰向け状態のまま、ディアスの股間に一発蹴りを入れる。 思わぬ反撃受けたディアスはその激痛に顔を歪ませた。 その間にオペラは素早く起きあがり、レナに向かって走る。 場の状況を理解できないままのレナを後ろから拘束して、剣を彼女の頬に突きつけた。 「動かないで。ちょっとでも動いたら、レナを殺すわよ」 「オ、オペラさん…」 「オペラ…貴様ァ…!」 レナは恐怖に満ちた顔で、ディアスは怒りを浮かべた表情でオペラを見る。 「そこまで堕ちたか…!そうまでして生き延びたいか!」 「武器を置いて両手を上げて。今すぐに」 睨みながらもオペラの言う事に従うディアス。 「言う通りにしたぞ。レナを離せ」 「それはまだできないわ」 「ぐっ…」 ディアスは爆発しそうな怒りを懸命に抑えながらオペラを睨む。 オペラはその視線をつまらなさそうに受け止めた。 その場に静寂が訪れる。 「…ど…うして…」 静寂を破ったのは未だオペラに拘束されたままのレナだった。 「どうして…人殺しなんてするんですか…こんな事しないで…みんなで帰りましょうよ…」 「それは無理なのよ。生き残れるのは一人なんだから」 「でも…私達だけじゃなくて、ここにはエルネストさんだっているのに…」 「…だからよ」 「え…?」 オペラのその言葉に、レナとディアスは疑問の表情を浮かべる。 「私はエルに死んで欲しくないわ。エルにはどんな事があっても生き延びて欲しい。 だから私は決めたのよ。エルをここから脱出させる為に、他の人達には死んでもらうって。 エルは人を殺せるような人じゃないから…私が殺すしかないのよ」 「そんな…オペラさんがそんな事して、みんなを殺して生き残ったって、エルネストさんが喜ぶわけないじゃないですか!」 「分かってるわよ!エルがそんな事望んでないのも…悲しむのも…でもいいのよ! それでも、私はエルに生き残って欲しいの!生きていてほしいのよ!」 タカが外れたようにオペラは捲し立てる。その目には涙が浮かんでいた。 好きな人に死んで欲しくない…だからオペラは自身を含めた他の61人に死んでもらう選択をした。 でも…そんなの間違ってる。レナがそう言おうとした時、再びオペラが口を開く。 「ディアス…貴方はそう思わないの?貴方はレナを大切に思ってるんでしょ? どんな事をしてでも、他の人を殺してでも、生きていて欲しいと思わないの?」 「思わん」 ディアスの答えは即答だった。 「お前は何も分かっていない……残された者の孤独を…つらさを…悲しみを……それが死よりも苦しいという事に」 ディアスは幼い頃、両親と妹を殺された。自分以外の家族が死に、自分だけが助かってしまった。 その後に待っていたのは、まさに地獄のような日々。 「俺は知っている…その苦しみを…」 自分だけが生き延びてしまったという罪悪感と孤独。殺した者への憎悪。失った家族への悲しみ。 長い間、ディアスはこの苦しみに耐えてきた。 「俺はあの苦しみを、レナに背負わせたくない。だからレナ一人を生き残らせようなどと考えない。 レナを大切に思っているからこそ…俺はこの殺し合いから、他の仲間と生きて脱出する道を選ぶ。例えそれがどんなに厳しい道でも、必ずな」 ディアスは静かに…だがその目に強い意志と覚悟を宿らせて言った。 そこまで聞いたオペラは、 「そうね…私には分からないわ。残された人の苦しみは」 ディアスと同じ位、その目に強い意志を込めて 「だから私は、どんなに苦しくても生きていて欲しいと思ってしまう」 ディアスと同じ位、強い覚悟を感じさせて 「私は、エルを生き残らせる!貴方に勝つ!」 レナの拘束を解いて彼女を突き飛ばし、オペラはそのまま剣を振り上げてディアスに襲いかかる。 「馬鹿が…っ!」 ディアスは、それを難なく避けて。 地面に捨てた短刀を拾い直して。 もう一度向かってきたオペラに向き直って。 ディアスの持った短刀が、オペラの胸を貫いた。 オペラは仰向けのまま夕焼け空を見上げた。全身の力が抜けていく。 その横でレナが懸命に回復の紋章術を唱えていた。 「やめなさい…もう助かる見込みは無いわ…」 「しゃ、喋らないで下さい」 「万が一、一命を取り留めたとしても、私はまた貴方達を殺しにかかるわよ…」 「そんな事…」 「いいからやめなさい…こんな所で、紋章術を無駄遣いする事はないわ」 レナが涙を浮かべながら見つめてくる。 「泣くんじゃないわよ…殺人鬼が減るのよ、喜ぶもんでしょ?」 「…仲間が死んじゃって…喜ぶわけないじゃないですかぁ…」 この期に及んでまだ私を仲間と呼ぶのね。仕方ない子、と感じながらも嬉しく思う。 「ディアス…」 レナの隣に立ち、自分を見下ろしているディアスに声をかけた。 「何だ」 「レナや仲間と…生きて脱出するって言ったわよね…」 「言った」 「エルの事も…頼めるかしら?」 「努力はする」 ぶっきらぼうな返事だったが、先程と同じく強い意志が感じられた。 その事に少しだけ安心する。 未練は多い。この手でエルネストを助けられなかったのだから。 だが自分が死ぬ以上、もうエルネストの事は彼らに託すしか無かった。 罪の無い者を殺した自分は、恐らく地獄へ行く。 エルネストはきっと地獄に行くような罪は犯さない。 だからエルネストに会う事は、もう二度と無いだろう。 それでも、彼が生き抜いてくれれば自分は救われる。そう思った。 オペラの三つの目が、ゆっくりと閉じられる。 エル…結局、私は貴方に追いつけなかったわ。 貴方を追いかけて星から星へ。挙げ句宇宙の存亡をかけた戦いにまで。 やっと追いつけそうだと思ったら、またこんな事に巻き込まれて。 貴方の事だから、最後までこんな状況には抗って見せるんでしょうね。 すぐに殺し合いからの脱出を諦めてしまった私は、貴方のそういう強さにも追いつけなかった。 でもいいの。 私はそんな貴方が好きだったのだから。 だから、お願い。 最後まで生き抜いて。 最後までその強さを見せて―― ―――最後まで、私が愛したエルのままでいて――― 【I-07/夕方】 【ディアス・フラック】[MP残量:90%] [状態:疲労] [装備:護身刀“竜穿”@SO3] [道具:クォッドスキャナー@SO3、????←本人確認済み、荷物一式] [行動方針:ゲームに乗った参加者の始末、ゲームからの脱出] [思考1:レナを最優先に保護] [思考2:仲間を探しレナを託す] 【レナ・ランフォード】[MP残量:90%] [状態:極度の精神的疲労、深い悲しみ] [装備:無し] [道具:????×2←本人確認済み、荷物一式] [行動方針:仲間と一緒に生きて脱出] [思考1:オペラを弔う] [思考2:仲間と合流したい] [現在位置:I-07、診療所前] &color(red){【オペラ・ベクトラ@SO2 死亡】} &color(red){【残り42人】} ※オペラの荷物は彼女の死体のそばに落ちています。 ---- [[第65話>使い捨て]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第67話>騎士の宅急便]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第40話>続・止まらない受難]]|アルベル|[[第82話>逃走しよう、そうしよう]]| |[[第59話>幸運と不幸は紙一重? ]]|ディアス|[[第87話>奇跡の光が放つ輝き]]| |[[第59話>幸運と不幸は紙一重? ]]|レナ|[[第87話>奇跡の光が放つ輝き]]| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|COLOR(red):オペラ|―|

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