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**第79話 力が無ければ頭を使え! 鎌石村を目指すエルネスト、クラース、フェイトだったがその歩みは遅い。 足を怪我しているフェイトを残りの二人で交代しながら背負っているので仕方がないが、 背負われたフェイトは歯痒い思いだった。 どうせならこんなおっさん連中じゃなく美女に背負われたかった…という訳ではなく。 自分が完全に足手まといになっている事についてだ。 主催者ルシファーと最も深い因縁があり、さらに戦闘経験もある自分は 本来率先して主催者打倒の為に行動しなければならない立場だ。 それがこの様。戦うことはおろか、歩くこともままならない。 既に数人の知り合いが犠牲になっている中、 何も出来ず、エルネストやクラースに負担をかけっぱなしになっている事が申し訳なかった。 平瀬村から随分と歩いてきた。 交代しながらフェイトを背負ってきた二人にもさすがに疲れの色が見えてくる。 「すまない、ここで休憩にしないか?」 現在フェイトを背負っていたクラースがついに力尽きてしまったようだ。汗を流しながら、ゼイゼイと息を切らしている。 「何だクラース、もうバテたか?全くそれで俺より若いのかよ?」 「そういうお前こそ、両目だけでなく額の目からも疲労が訴えられてるようだが?」 「いえ、ここで休憩にしましょう」 意地を張る中年二人をフェイトが制した。 「フェイト、さっきも言ったが俺達に気を使う必要はないんだぞ?」 「大丈夫です。もう自分でも歩けると思いますし…さっきの話の続きもしたいですから」 先程の話…簡単な情報交換の後フェイトから聞かされた、主催者ルシファーについての情報。 この宇宙はエターナルスフィアと呼ばれる『人工』の世界であり、それを作ったのがルシファーというあの男。 先程はこれらの説明、さらにルシファーがそのエターナルスフィアに対して行った所業などを聞いた。 そしてその話を聞いた時から、エルネストには引っかかる箇所があった。 「少し質問があるんだが、いいだろうか?」 「何でしょうか?」 「ルシファーはエクスキューショナーという怪物を送り込んで、宇宙を滅茶苦茶にしたらしいな? だが俺はそんな事件を聞いた事が無い。それほどの出来事を知らないという事は無いと思うんだが…」 聞けばエクスキューショナーは多くの宇宙基地、そして地球をも破壊してしまったらしい。 歴史に残る大惨事だったと言えるだろう。 しかしエルネストはエクスキューショナーなんて見たこと聞いたことも無い。 まして知り合いも多く住んでいる地球までも襲われているなど寝耳に水だ。 だからといってフェイトがデタラメを言ってるようにも聞こえない。 「ああ、それは知らなくて当然だと思います」 フェイトはしれっと答える。 「エルネストさん、今は宇宙歴何年ですか?」 「宇宙歴?確か366年の筈だ。それがどうした?」 「エクスキューショナーが現れるのは、宇宙歴772年。エルネストさんの時代から、推定400年後の話です」 「よ、400年後だと!?」 仰天するエルネスト。 「馬鹿な!それなら、何故君は400年後の事実を知っているというんだ?」 「僕がその時代の人間だからです。僕が生まれたのは753年ですから」 「…つまり、お前達二人は、それぞれ異なる時代の人物だと?」 今まで黙っていたクラースが問いかけた。 「恐らくそういう事でしょう。生きている場所は同じですが、生きていた時代は違う。 宇宙歴が分からない以上時代はハッキリしませんが、クラースさんも僕達と同じエターナルスフィアに存在する、どこかの未開惑星の住人だと考えられます」 「しかし…異なる時代から人間を連れてくるなど、そんな芸当が…」 エルネストはまだ全てに納得がいかないといった様子だ。 「有り得ない話では無いだろう。私の星にも、時空を移動する能力を持った者がいた。 創造主という程の存在ならば、そこから多数の人間を連れてくる事が出来てもおかしくない」 「そうですね。僕達の住んでいる宇宙はルシファーが作った物です。 あいつからすれば、ゲームのセーブデータをロードするような感覚でしょう」 確かにフェイトが言うルシファーの立場からすれば、不可能な芸当では無い。 倒したはずの十賢者を呼び出し、そしてルシフェルを瞬殺したあの力。 ルシファーが本当に創造主という存在ならば…。 「しかし君とその仲間はあいつと戦い、勝利したのだろう?どういう対処をしたんだ?」 次はクラースが疑問をぶつけた。 フェイトの話だけだと、ルシファーを倒すなんて事は絶望的に思える。 だがフェイトはそのルシファーと戦い、そして勝利を収めている。それならば何らかの対処法があったはずだ。 クラースの質問に対し、フェイトもルシファーとの戦いの顛末を語る。 マリアの持つ能力「アルティネイション」。 ソフィアの持つ能力「コネクション」。 自分自身が持つ能力「ディストラクション」。 そしてタイムゲートを通じ、FD空間へ向かい、繰り広げられたルシファーとの死闘。 「ならば、そのマリアとソフィアという人物と合流できれば脱出も可能という事か?」 「いや。ルシファーが一度負けたのなら、そういった能力の対処も当然行っているだろう。すんなり上手くいくとは思えないな」 「うーむ…」 考え込む中年二人。 (これは…想像以上に過酷な状況だな…) クラースの目的は生き残る事。脱出だろうと優勝だろうと、それこそ手段は問わない。 しかしフェイトの話を聞く以上、ルシファーに対抗するのはかなり苦しく感じる。 勿論クラース自身としても、ゲームに乗らず脱出できるならその方が良いのだが 今の状況を考えると、優勝を目指した方が現実的に思える。 最大の敵と考えていたダオスが既に死亡しているのだから、上手く立ち回れば優勝も不可能では無いだろう。 自分は何としてもミラルドの下へと帰らなければならないのだ。 (愛する女、ねえ…) 今、クレスはどうしているだろうか。 ふとクラースの頭の中に、仲間だった少年少女の顔が浮かぶ。 仲間の中でも人一倍正義感が強く、常に前を向いていたあの少年。 最愛の女性を失った彼は、この状況でも希望を捨てずにいられるのだろうか? エルネスト、クラースとの話を終えた後、フェイトもまた考え込んだ。 二人に話した事は、自分が考えていた全てでは無い。 だが確実とは言えず、さらに推測に過ぎない情報はまだ話すべきでは無いと判断したのだ。 まず、この『会場』は一体どんな空間に存在するのか。 FD空間で無い事は確かだろう。 本来エターナルスフィアの人物はFD空間には存在できない。 創造主であるルシファーならば自分達がFD空間に存在できるようにする事は可能だろうが、 エターナルスフィアの技術向上を恐れていた者が、わざわざそこの住人をFD空間に連れて来るだろうか? FD人が創りだした空間なら、ルシファーは自由に干渉できるし、調整、処理もしやすいだろう。 よって推測される会場は、『エターナルスフィア内のどこか』もしくは『このゲームの為に新たに創りだした空間』のどちらかだが…。 ここが『エターナルスフィア』のどこかだとしたら…。 フェイトには一箇所思い当たる場所があった。 空を見上げると、太陽が一つ。 この島に来たのが朝の6時だったが、その時太陽は東に位置していた。 12時の放送の時は丁度真上。 そして今、沈みかけた太陽は西の方へ位置しており、辺りは少しだが暗くなり始めている。 そう、この時間の進み方はフェイトが住んでいた「地球」と全く同じなのだ。 勿論広い宇宙、地球と似たような星があってもおかしくは無いのだが 全く同じ、という星はそうそう無いだろう。 少なくとも、地球を意識して創られた星である可能性が高い。 いずれにせよ、この会場はルシファーにとっては自由に操作できる箱庭のような物だ。 盗聴、盗撮。どんな方法で自分達を監視しているのかは分からない。 自分達の目を通して監視している可能性だってある。 だからこそこういった情報は、少なくとも確証が得られるまでは極力口にしない方がいい。 ならば、この会場から脱出するにはどうしたらいいか。 鍵となるのはソフィアの空間を繋ぐ能力「コネクション」だ。 ただこの能力は特定の場所…エターナルスフィア内ならば「タイムゲート」でしか発動しない。 しかしルシファーがこの島に干渉している以上、絶対にどこかにFD世界、もしくはルシファーのいる場所とのリンクがある筈。 それさえ発見することが出来れば、コネクションの能力を発動する事も可能だろう。 ここで問題になるのが、ルシファーが言っていた「能力制限」。 特に一度はルシファーを倒した要因である自分とマリア、それにソフィアの能力には徹底して制限をかけているはず。 例えリンクを発見しても、この制限を何とかしない限り脱出できる可能性は低い。 となると、この制限をかけている原因を突きとめ、さらに解除する必要がある。 制限をかける方法として、今の所考えついたのは二つ。 一つ目は、参加者に付けられたこの『首輪』に能力制限の力がある場合。 二つ目は、予め自分達をプログラムして能力を制限してある場合。 前者なら首輪を外すことで解除可能だが、後者だとするとかなり厳しい事になる。 こうなると外部からの操作が無い限り、能力制限を解除する方法が思いつかない。 勿論外部と連絡を取る手段など皆無。 それに、最もそれを期待できる人物であるブレアは自分達と一緒にこの島に連れてこられているのだ。 だが、ブレアがゲームに参加しているという事がフェイトには引っかかった。 彼女はルシファーの妹だ。 いくらなんでも、実の妹をこんな殺し合いに放り込むだろうか? 仮にそこまで憎んでいたとしても、彼女をこの殺し合いに参加させるのはあまりにリスクが大きすぎる。 彼女の性格からして積極的にゲームに乗って参加者を殺そうとするとは考えにくい。 そうなるとスフィア社の知識や技術を持つ彼女は、ゲームを失敗させる驚異にしかなりえないのだ。 それなのに、何故? 一つだけ心当たりがある。 これもまだ推測の域を出ないが、もしルシファーが『ブレア』をこのゲームに参加させるなら…。 確実に殺し合いに乗り、ゲームを成功させようとする『ブレア』を参加させるなら…。 フェイトがそこまで考えた時だった。 …チリンチリン どこからかベルを鳴らすような音が聞こえてくる。 「む、何だ?」 エルネストとクラースもベルの音に気付いて立ち上がった。 武器を持ち、警戒しながら音がする方を睨む。 …チリンチリン さらに近づいてくるベルの音。どうやら何かが道沿いに進んでいるようだ。 「俺が様子を見てこよう。クラース、すまないがこの剣を借りるぞ」 そう言ってエルネストは道へと向かっていった。 【D-2/夕方】 【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:100%] [状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)] [装備:鉄パイプ-R1@SO3] [道具:荷物一式] [行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える] [思考1:クラース、エルネストと共に鎌石村へ] [思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す] [思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない] [現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中] [備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)] 【クラース・F・レスター】[MP残量:100%] [状態:正常] [装備:無し] [道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式] [行動方針:生き残る(手段は選ばない)] [思考1:エルネスト、フェイトと共に鎌石村へ] [思考2:ゲームから脱出する方法を探す] [思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ] [思考4:フェイトを何処かで切り捨てる?] [思考5:鎌石村で医療品捜索] [現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中] 【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%] [状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)] [装備:シウススペシャル@SO1] [道具:スケベほん@TOP、荷物一式] [行動方針:打倒主催者] [思考1:ベルの音のする方へ向かう] [思考2:クラース、フェイトと共に鎌石村へ] [思考3:仲間と合流] [思考4:炎のモンスターを警戒] [思考5:鎌石村で医療品捜索] [現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中] ※ベルの音はロキの自転車です 【残り36人】 ---- [[第78話>続・美女と野獣と変態と]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第80話>ある昼下がりの賢者]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|フェイト|―| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|クラース|―| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|エルネスト|―| |[[第68話>ロキおにーさんのわくわくやがいじっけん]]|ロキ|―|
**第79話 力が無ければ頭を使え! 鎌石村を目指すエルネスト、クラース、フェイトだったがその歩みは遅い。 足を怪我しているフェイトを残りの二人で交代しながら背負っているので仕方がないが、 背負われたフェイトは歯痒い思いだった。 どうせならこんなおっさん連中じゃなく美女に背負われたかった…という訳ではなく。 自分が完全に足手まといになっている事についてだ。 主催者ルシファーと最も深い因縁があり、さらに戦闘経験もある自分は 本来率先して主催者打倒の為に行動しなければならない立場だ。 それがこの様。戦うことはおろか、歩くこともままならない。 既に数人の知り合いが犠牲になっている中、 何も出来ず、エルネストやクラースに負担をかけっぱなしになっている事が申し訳なかった。 平瀬村から随分と歩いてきた。 交代しながらフェイトを背負ってきた二人にもさすがに疲れの色が見えてくる。 「すまない、ここで休憩にしないか?」 現在フェイトを背負っていたクラースがついに力尽きてしまったようだ。汗を流しながら、ゼイゼイと息を切らしている。 「何だクラース、もうバテたか?全くそれで俺より若いのかよ?」 「そういうお前こそ、両目だけでなく額の目からも疲労が訴えられてるようだが?」 「いえ、ここで休憩にしましょう」 意地を張る中年二人をフェイトが制した。 「フェイト、さっきも言ったが俺達に気を使う必要はないんだぞ?」 「大丈夫です。もう自分でも歩けると思いますし…さっきの話の続きもしたいですから」 先程の話…簡単な情報交換の後フェイトから聞かされた、主催者ルシファーについての情報。 この宇宙はエターナルスフィアと呼ばれる『人工』の世界であり、それを作ったのがルシファーというあの男。 先程はこれらの説明、さらにルシファーがそのエターナルスフィアに対して行った所業などを聞いた。 そしてその話を聞いた時から、エルネストには引っかかる箇所があった。 「少し質問があるんだが、いいだろうか?」 「何でしょうか?」 「ルシファーはエクスキューショナーという怪物を送り込んで、宇宙を滅茶苦茶にしたらしいな? だが俺はそんな事件を聞いた事が無い。それほどの出来事を知らないという事は無いと思うんだが…」 聞けばエクスキューショナーは多くの宇宙基地、そして地球をも破壊してしまったらしい。 歴史に残る大惨事だったと言えるだろう。 しかしエルネストはエクスキューショナーなんて見たこと聞いたことも無い。 まして知り合いも多く住んでいる地球までも襲われているなど寝耳に水だ。 だからといってフェイトがデタラメを言ってるようにも聞こえない。 「ああ、それは知らなくて当然だと思います」 フェイトはしれっと答える。 「エルネストさん、今は宇宙歴何年ですか?」 「宇宙歴?確か366年の筈だ。それがどうした?」 「エクスキューショナーが現れるのは、宇宙歴772年。エルネストさんの時代から、推定400年後の話です」 「よ、400年後だと!?」 仰天するエルネスト。 「馬鹿な!それなら、何故君は400年後の事実を知っているというんだ?」 「僕がその時代の人間だからです。僕が生まれたのは753年ですから」 「…つまり、お前達二人は、それぞれ異なる時代の人物だと?」 今まで黙っていたクラースが問いかけた。 「恐らくそういう事でしょう。生きている場所は同じですが、生きていた時代は違う。 宇宙歴が分からない以上時代はハッキリしませんが、クラースさんも僕達と同じエターナルスフィアに存在する、どこかの未開惑星の住人だと考えられます」 「しかし…異なる時代から人間を連れてくるなど、そんな芸当が…」 エルネストはまだ全てに納得がいかないといった様子だ。 「有り得ない話では無いだろう。私の星にも、時空を移動する能力を持った者がいた。 創造主という程の存在ならば、そこから多数の人間を連れてくる事が出来てもおかしくない」 「そうですね。僕達の住んでいる宇宙はルシファーが作った物です。 あいつからすれば、ゲームのセーブデータをロードするような感覚でしょう」 確かにフェイトが言うルシファーの立場からすれば、不可能な芸当では無い。 倒したはずの十賢者を呼び出し、そしてルシフェルを瞬殺したあの力。 ルシファーが本当に創造主という存在ならば…。 「しかし君とその仲間はあいつと戦い、勝利したのだろう?どういう対処をしたんだ?」 次はクラースが疑問をぶつけた。 フェイトの話だけだと、ルシファーを倒すなんて事は絶望的に思える。 だがフェイトはそのルシファーと戦い、そして勝利を収めている。それならば何らかの対処法があったはずだ。 クラースの質問に対し、フェイトもルシファーとの戦いの顛末を語る。 マリアの持つ能力「アルティネイション」。 ソフィアの持つ能力「コネクション」。 自分自身が持つ能力「ディストラクション」。 そしてタイムゲートを通じ、FD空間へ向かい、繰り広げられたルシファーとの死闘。 「ならば、そのマリアとソフィアという人物と合流できれば脱出も可能という事か?」 「いや。ルシファーが一度負けたのなら、そういった能力の対処も当然行っているだろう。すんなり上手くいくとは思えないな」 「うーむ…」 考え込む中年二人。 (これは…想像以上に過酷な状況だな…) クラースの目的は生き残る事。脱出だろうと優勝だろうと、それこそ手段は問わない。 しかしフェイトの話を聞く以上、ルシファーに対抗するのはかなり苦しく感じる。 勿論クラース自身としても、ゲームに乗らず脱出できるならその方が良いのだが 今の状況を考えると、優勝を目指した方が現実的に思える。 最大の敵と考えていたダオスが既に死亡しているのだから、上手く立ち回れば優勝も不可能では無いだろう。 自分は何としてもミラルドの下へと帰らなければならないのだ。 (愛する女、ねえ…) 今、クレスはどうしているだろうか。 ふとクラースの頭の中に、仲間だった少年少女の顔が浮かぶ。 仲間の中でも人一倍正義感が強く、常に前を向いていたあの少年。 最愛の女性を失った彼は、この状況でも希望を捨てずにいられるのだろうか? エルネスト、クラースとの話を終えた後、フェイトもまた考え込んだ。 二人に話した事は、自分が考えていた全てでは無い。 だが確実とは言えず、さらに推測に過ぎない情報はまだ話すべきでは無いと判断したのだ。 まず、この『会場』は一体どんな空間に存在するのか。 FD空間で無い事は確かだろう。 本来エターナルスフィアの人物はFD空間には存在できない。 創造主であるルシファーならば自分達がFD空間に存在できるようにする事は可能だろうが、 エターナルスフィアの技術向上を恐れていた者が、わざわざそこの住人をFD空間に連れて来るだろうか? FD人が創りだした空間なら、ルシファーは自由に干渉できるし、調整、処理もしやすいだろう。 よって推測される会場は、『エターナルスフィア内のどこか』もしくは『このゲームの為に新たに創りだした空間』のどちらかだが…。 ここが『エターナルスフィア』のどこかだとしたら…。 フェイトには一箇所思い当たる場所があった。 空を見上げると、太陽が一つ。 この島に来たのが朝の6時だったが、その時太陽は東に位置していた。 12時の放送の時は丁度真上。 そして今、沈みかけた太陽は西の方へ位置しており、辺りは少しだが暗くなり始めている。 そう、この時間の進み方はフェイトが住んでいた「地球」と全く同じなのだ。 勿論広い宇宙、地球と似たような星があってもおかしくは無いのだが 全く同じ、という星はそうそう無いだろう。 少なくとも、地球を意識して創られた星である可能性が高い。 いずれにせよ、この会場はルシファーにとっては自由に操作できる箱庭のような物だ。 盗聴、盗撮。どんな方法で自分達を監視しているのかは分からない。 自分達の目を通して監視している可能性だってある。 だからこそこういった情報は、少なくとも確証が得られるまでは極力口にしない方がいい。 ならば、この会場から脱出するにはどうしたらいいか。 鍵となるのはソフィアの空間を繋ぐ能力「コネクション」だ。 ただこの能力は特定の場所…エターナルスフィア内ならば「タイムゲート」でしか発動しない。 しかしルシファーがこの島に干渉している以上、絶対にどこかにFD世界、もしくはルシファーのいる場所とのリンクがある筈。 それさえ発見することが出来れば、コネクションの能力を発動する事も可能だろう。 ここで問題になるのが、ルシファーが言っていた「能力制限」。 特に一度はルシファーを倒した要因である自分とマリア、それにソフィアの能力には徹底して制限をかけているはず。 例えリンクを発見しても、この制限を何とかしない限り脱出できる可能性は低い。 となると、この制限をかけている原因を突きとめ、さらに解除する必要がある。 制限をかける方法として、今の所考えついたのは二つ。 一つ目は、参加者に付けられたこの『首輪』に能力制限の力がある場合。 二つ目は、予め自分達をプログラムして能力を制限してある場合。 前者なら首輪を外すことで解除可能だが、後者だとするとかなり厳しい事になる。 こうなると外部からの操作が無い限り、能力制限を解除する方法が思いつかない。 勿論外部と連絡を取る手段など皆無。 それに、最もそれを期待できる人物であるブレアは自分達と一緒にこの島に連れてこられているのだ。 だが、ブレアがゲームに参加しているという事がフェイトには引っかかった。 彼女はルシファーの妹だ。 いくらなんでも、実の妹をこんな殺し合いに放り込むだろうか? 仮にそこまで憎んでいたとしても、彼女をこの殺し合いに参加させるのはあまりにリスクが大きすぎる。 彼女の性格からして積極的にゲームに乗って参加者を殺そうとするとは考えにくい。 そうなるとスフィア社の知識や技術を持つ彼女は、ゲームを失敗させる驚異にしかなりえないのだ。 それなのに、何故? 一つだけ心当たりがある。 これもまだ推測の域を出ないが、もしルシファーが『ブレア』をこのゲームに参加させるなら…。 確実に殺し合いに乗り、ゲームを成功させようとする『ブレア』を参加させるなら…。 フェイトがそこまで考えた時だった。 …チリンチリン どこからかベルを鳴らすような音が聞こえてくる。 「む、何だ?」 エルネストとクラースもベルの音に気付いて立ち上がった。 武器を持ち、警戒しながら音がする方を睨む。 …チリンチリン さらに近づいてくるベルの音。どうやら何かが道沿いに進んでいるようだ。 「俺が様子を見てこよう。クラース、すまないがこの剣を借りるぞ」 そう言ってエルネストは道へと向かっていった。 【D-2/夕方】 【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:100%] [状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)] [装備:鉄パイプ-R1@SO3] [道具:荷物一式] [行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える] [思考1:クラース、エルネストと共に鎌石村へ] [思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す] [思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない] [現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中] [備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)] 【クラース・F・レスター】[MP残量:100%] [状態:正常] [装備:無し] [道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式] [行動方針:生き残る(手段は選ばない)] [思考1:エルネスト、フェイトと共に鎌石村へ] [思考2:ゲームから脱出する方法を探す] [思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ] [思考4:フェイトを何処かで切り捨てる?] [思考5:鎌石村で医療品捜索] [現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中] 【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%] [状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)] [装備:シウススペシャル@SO1] [道具:スケベほん@TOP、荷物一式] [行動方針:打倒主催者] [思考1:ベルの音のする方へ向かう] [思考2:クラース、フェイトと共に鎌石村へ] [思考3:仲間と合流] [思考4:炎のモンスターを警戒] [思考5:鎌石村で医療品捜索] [現在位置:D-2北部、道から少し外れた森の中] ※ベルの音はロキの自転車です 【残り36人】 ---- [[第78話>続・美女と野獣と変態と]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第80話>ある昼下がりの賢者]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|フェイト|[[第100話>マッハ中年の葛藤]]| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|クラース|[[第100話>マッハ中年の葛藤]]| |[[第56話>掴んだ1つの希望と2つの絶望?]]|エルネスト|[[第100話>マッハ中年の葛藤]]| |[[第68話>ロキおにーさんのわくわくやがいじっけん]]|ロキ|[[第100話>マッハ中年の葛藤]]|

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