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天才(変態)が欲するモノ」(2011/10/20 (木) 08:50:12) の最新版変更点

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**第96話 天才(変態)が欲するモノ あれからどれくらいの時間がたっただろうか、レザードが用意したソフィアの術の取得は遅々として進まず、いたずらに時間だけが過ぎていた。 言われたように熱心に移送方陣の取得に取り組むソフィアだったがそもそも、レザードが扱う術と紋章術の形式が違う。 それを一から学ぼうと言うのにはたかが数時間では短すぎた。 現在レナスはこの観音堂の入り口で見張りを行っている。 時折レザードがソフィアを罵倒する声が聞こえてくるだけで静かな物だ。 そんな中レナスは焦っていた。既に参加者の1/3以上が死亡している中で、自分はまだ誰とも刃を交えていない。 戦い自体しないに越した事はないのだが、主催の言いなりになった人間を止めるつもりでいる自分が1度も戦闘を行っていないのはなんとも歯がゆい。 せめて何か情報が仕入れることができるかもしれないと思い、これから起きる惨劇で死に逝く者達の声に耳を傾けてみた。 レナスの意識が深い底まで落ちていく。 何の雑音も耳に入らなくなると、続けて彼女の耳に何者かの死の運命が届けられる。 「止まれ! これ以上近付くんじゃねぇ!」 息を切らした男の声が響いてきた。 「いいかっ、もう一度だけ言う! こんな真似はよせ! お前が守ろうとした奴も決してそんな事は望んじゃいない!」 「だまれっ! そんな事はなぁ、俺が一番知ってんだっ! けどな、俺にはもうこの方法しか残されてねぇんだっ! もう一度、共に同じ時間を生きたい…。その為には…あいつの望まないことだろうとなんだってしてやる!」 「ルー…フ……」 「お前には世話になった…だから、今だけは見逃してやるっ! 俺の考えが変わる前に消えろっ!」 2人の声を荒げたやり取りの後にカチャリと金属の止め具を外すような音が聞こえた。 「ク……、てめえ何のつもりだ!?」 「一先ず話をしようじゃねえか! 俺はお前を説得しに来ただけなんだ。 傷つける気なんざサラサラない。だったらこんなもんいらねえじゃねえか!!」 ジャリッと一歩踏みしめる音共に鋭い風切音が聞こえてきた。 「っつ!」 「言っただろ! これ以上近づくなってな…。次は外さねぇ…」 「…今ので確信したぜ。その気になったらお前は間違いなく俺を殺せてた。それが出来ないって事はお前はまだ迷ってる。 迷ってるならそんな事をするんじゃない。アリーシャって奴が、今お前にして欲しい事は自分のためにお前が苦しむ事じゃない。 それにお前がしようとしていることは今のお前のような思いをする奴を作るだけだ。 そんな事してでも守りたい存在がいることは理解できる。けれど、大事な誰かを失う苦しみを知ってるお前が…」 「うるせぇっ! だったらてめぇはわかんのか!? 大事な誰かを…この身を捧げてでも守りたいと思った奴を失った、俺の気持ちがっ!」 「わかるさ…。今までだって何人もの仲間を失ってきた。大勢の仲間を助けるために他の何人かを斬り捨てるような真似だってした。 その都度後悔もしたし苦しい思いもしてきた。だがな、俺はお前みたいにはならなかった。なっちゃいけねえんだっ! 残された俺たちができる事は、そいつのやろうとした事を引き継ぐ事だ。だから…ー…ス! 「くっそぉぉぉぉっ!!」 悲痛な叫びの後にドサリと大きな何かが倒れこむ音がした。 「畜生! 何で…何でなんだよ…。俺のことなんか放っておいてくれればこんな事には…」 聞こえてきた死に逝く者達の声はここで途絶えた。 (近いな…。1人が説得しようとしていたようだし、もしかしたら止められるかも知れない…。 参加者が早くも半数近くになってる現状でルシファーとの決戦での戦力は1人でも多い方がいい) そう考えるや否や二人の教室と化している、観音堂の1室に足を踏み入れた。 部屋を出る時とさして変化のない光景を見渡してから切り出した。 「少しいいか?」 もちろん話しかける相手は練習しているソフィアだ。 間違っても自分からレザードに話しかけるという事はしたくはない。 「どうしたんですか?」 熱心に見ていたレザードのテキストから目を離し、レナスの方に視線を向けるソフィア。 「もうすぐこの近くで誰かが殺される。私はそれを止めに行きたいのだが、お前を置いて行く訳にもいかない。すまないが付き合ってくれ」 「また誰かの声が聞こえたんですか?」 「ああ、誰かまではやはりわからなかったが、これ以上参加者が殺されるのは止めたいんだ」 それを聞くや否や身支度を始めるソフィア。レナスも手早く用意をし始めたその時。 「恐れ多くながら進言させていただきますが、無用なリスクは避けるべきかと…」 今まで黙っていたレザードが口を開いた。 「貴様の意見は聞いてなどいない。後をついて来るなら勝手だが、来る気が無いならここでお別れだ。 貴様のような危険人物を野放しにする事になるが、今の所害は少なそうだしな」 過去の事があるからだろう、未だにレザードと共に行動する事に抵抗のあるレナスは冷たく突き放すように言った。 「やれやれ」 そんな言葉を聞いて肩をすくめるレザード。きつい言葉を投げかけられてもどこか彼の表情が恍惚としているのはやはり彼が変態だからだろうか。 「行きましょうレナスさん。私もこれ以上罪のない人が死ぬのなんてイヤですから」 最早そんな二人のやり取りにはなれたソフィアはレナスを促しデイパックを背負うと、術の練習をしていた部屋を出た。 部屋に1人残されたレザードも荷物を背負おうと床に手を伸ばした時、彼はソフィアの術の残滓を感じた。 (あの女が言っていた紋章術と今この場に残った感覚とでは明らかに術式が違う…。 どちらかというと我々の魔法のそれに近い…。移送方陣の習得には程遠いが、一応成果はあるという事か? ということはやはり私の仮説どおりに個々の能力は主催に害を及ぼす物だけを使用できないように書き換えられているだけで、追加で何かを習得する事はできる可能性が高いな…。 現状ではこれ以上の事は出来そうにはないが、脱出の為の鍵には成り得るな…) 実験の成果が僅かながら出たことに確かな手応えを感じつつ、先に出た二人の後を追って観音堂を後にした。 (くそっ、いつまで追ってくるつもりだあの野郎) 役場を出てひたすら東の方角へ走ったルーファスだったが、未だにクリフは声を荒げて自分を追ってくる。 (流石に俺もこれ以上走れない。覚悟を決めて追っ払うしか…) 逃走を始めた時に自分の中を駆け巡った不安は未だに拭えないが、これ以上逃げ回る事は不可能と判断を下す。 ルーファスはその身を翻すと共に矢を構え、その矢先をクリフに向け叫んだ。 「止まれ! これ以上近付くんじゃねぇ!」 クリフは言われたとおりにその場に立ち止まると、ルーファスに向かって負けじと叫んだ。 「いいかっ、もう一度だけ言う! こんな真似はよせ! お前が守ろうとした奴も決してそんな事は望んじゃいない!」 「だまれっ! そんな事はなぁ、俺が一番知ってんだっ! けどな、俺にはもうこの方法しか残されてねぇんだっ! もう一度、共に同じ時間を生きたい…。その為にはあいつの望まないことだろうとなんだってしてやる!」 アリーシャと一緒にいた時間は、自分の生涯過ごしてきた時間の中ではほんの一瞬にも満たないような期間だ。 しかし、その僅かな時間の中で抱いたこの感情は、それまでのルーファスの人生の中で感じた事のない掛け替えのない物だった。 だからそれを奪った者も許せないし、もう一度手にする手段があるのならそれに縋ったりもする。 「ルーファス…」 当初の懸念どおりクリフの言い分を理性は正しいと納得し始めていた。 「お前には世話になった…だから、今だけは見逃してやるっ!俺の考えが変わる前に消えろっ!」 本当は撃てるかどうか自信はなかったが、これ以上クリフに説得を続けられたら自分が折れてしまうのではないかと思ったルーファスは苦し紛れに叫ぶ。 そんなルーファスの姿を見てクリフはその身に付けていたナックルを外し地面に放り捨てた。 金属同士がぶつかる耳障りな音が夜の空に響き渡る。 「クリフ、てめえ何のつもりだ!?」 「一先ず話をしようじゃねえか! 俺はお前を説得しに来ただけなんだ。 傷つける気なんざサラサラない。だったらこんなもんいらねえじゃねえか!」 和睦を求める者が武器を持ってたら信用なんてしてもらえないという事を言いたいのだろうか。 武器を捨てたクリフだったが放つ気迫に変わりはない。 真摯な瞳を真っ直ぐルーファスに向け一歩踏み出す。 気圧されたルーファスが一歩退くと共に、手を伝う汗で矢が滑ってしまった。 しっかりとクリフの額目掛けて照準していた弓を反射的に反らしてしまう。 「っつ!」 頬をかすめた矢が彼方へと飛んでいった。 「言っただろ! これ以上近付くなってな…。次は外さねぇ…」 言っている事とやっていることの違いにウンザリしつつも再び矢をつがえる。 「…今ので確信したぜ。その気になってたらお前は間違いなく俺を殺せてた。それが出来ないって事はお前はまだ迷ってる。 迷ってるならそんな事をするんじゃない。アリーシャって奴が、今お前にして欲しい事は自分のためにお前が苦しむ事じゃない。 それにお前がしようとしていることは今のお前のような思いをする奴を作るだけだ。 そんな事してでも守りたい存在がいることは理解できる。けれど、大事な誰かを失う苦しみを知ってるお前が…」 クリフの言っている事はもっともだ。ルーファス自身も理解はしている。 しかし、クリフの言うとおりにするという事はアリーシャとの再会を諦めねばならないという事。 彼にはその行為がアリーシャの事を忘れる事と同位に思えて仕方がなかった。 理解出来ても感情がそれを受け入れるのを拒む。ルーファスはクリフの説得を阻むべく声をあげる。 「うるせぇっ! だったらてめぇはわかんのか!? 大事な誰かを…。この身を捧げてでも守りたいと思った奴を失った俺の気持ちがっ!」 きっとこいつにはわからない。俺の気持ちが。 もうどうしたらいいのかすらわからないこの苦しみを。 ルーファスの問いかけにクリフは逡巡することなく応えた。 「わかるさ…。今までだって何人もの仲間を失ってきた。大勢の仲間を助けるために他の何人かを斬り捨てるような真似だってした。 その都度後悔もしたし苦しい思いもしてきた。だがな、俺はお前みたいにはならなかった。なっちゃいけねえんだっ! 残された俺たちができる事は、そいつのやろうとした事を引き継ぐ事だ! だからルーファス!」 更に一歩前に出てルーファスに手を差し伸べるクリフ。 錯乱状態に陥ったルーファスがとうとう構えた矢をクリフ目掛けて放とうとした。 「待って!」 そんなルーファスを遮るように澄んだ声が響き渡る。 その声はクリフ、ルーファス共に知っている人物ソフィアの声だった。 「ソフィア…」 「嬢ちゃん!」 突然現れた少女に目を向ける二人。よっぽど急いできたのだろう、体を前屈みにし、側の木に手を掛けて肩で息をしている。 やや遅れて、同行者の2人も暗がりの中から現れた。 「ルーファスさん。辞めてください! 事情はわかります。さっきの放送で呼ばれた人の中にいましたよね? 貴方の大切な人が…。きっとそれでこんな事を…。でもアリーシャさんはこんな事を望んじゃいないはずです!」 「うるせぇ! どいつもこいつも似たような事言いやがって! それでも…あいつを生き返す為にはこれしかないんだよ!」 構えた矢をソフィアに向けるルーファス。 1度はその身を挺して危機を救った少女に対して弓を向けてしまう程、彼の頭は混乱していた。 それを見てレナスはすぐさまにルーファスの前に剣を構えて立ちはだかる。 「言ったはずだ。次に会った時に考えを改めてなかったら刃を向けるとな! 貴様はまだ迷っているようだが、その矢を放った時はわかっているだろうな?」 睨みあうレナスとルーファスの間に更にもう1人割り込んできた。 「ヴァルキュリアよ。ここは私に任せていただけないでしょうか?」 「レザード? どういう風の吹き回しだ?」 「なぁに、主催との決戦に必要な戦力は多い方がいいですからね。それに用は彼が言ってる人物を生き返らせれば良いのでしょう?」 メガネの縁を押し上げ位置を直すとレザードはルーファスの方に振り返った。 「なんだ? てめえは?」 ルーファスは突如目の前に躍り出た不審な男に矢を向ける。 見たことのない奴だが、どうにも胡散臭い奴だ。 「お初にお目にかかります。我が名はレザード・ヴァレス。しがない錬金術師です。それと少々の魔術を嗜んでおりまして」 レザードはどこか芝居がかった様子で話し始めた。 「だからなんだってんだよ?」 ルーファスは殺意を向ける相手がコロコロと変わったことで、一時的な錯乱状態から解放されていた。 それと同時にルーファスはどこかレザードの話す事に惹きつけられ始めていた。 最早そんなルーファスの声には敵意は込められていない。 「単刀直入に言いましょう。貴方の願いを叶える手段を私は知っています」 ルーファスの様子を見て満足そうな笑みを浮かべつつ続けるレザード。 「!」 唐突にレザードから衝撃的な一言を聞いたルーファスの表情は驚きを隠せない。 「見た所貴方はミッドガルドの住人ですね? 私には判ります。 そして、ここにいるソフィアと違って私と同じ世界の住人という事は、元の世界に戻れば私の知識が活かせるという事です。 私達の世界では反魂の法という儀式がありまして、他の者の命を捧げる事で望んだ者を復活させる事ができるという術ですが、ご存知ありませんか? 私はその術の詳しいやり方を存じ上げています」 そう、その秘術さえ使えば人の蘇生は叶う。だがそれには代償がある。 「レザード! 貴様! 私がその様な行為を見逃すとでも思っているのか!? そもそもその術に用いるのに代償とする魂はどうするつもりだ?」 過去に自分もその秘術を用いてエインフェリアを迎えた事があったが、対価とする魂をレザードに集めさせたら碌な事にはならないと思ったレナスは当然反論した。 「その魂はこの会の主催の物でも構わないのではないでしょうか? どうせ貴方はこのような行いをした主催に対して慈悲はかけないのでしょう? 魂まで滅するのなら、この方が望む人物の蘇生に使った方が有意義だと私は思いますがね」 よもや、レザードの口からこのような言葉が出るとは思っていなかったレナスは口を噤んでしまった。 代わりにルーファスが声を荒げてレザードに問いかける。 「おいっ! 本当にアリーシャを生き返らせる事ができるのか!?」 今にも掴みかからんばかりの勢いだ。 「今は不可能ですが。ミッドガルドに戻ることが出来れば可能です。 だからどうでしょう? 武器を納めて我々と共に戦いませんか? そもそもその方が死んだのは主催が原因ですし、彼を倒す事で貴方の望みも叶う。我々としても戦力は多い方がいい。 それに優勝してその方の蘇生を依頼したところで復活できる可能性は高くありませんしね。 だったら、蘇生方法を知っている私達についておいた方が賢い選択だと思いますが?」 興奮した様子のルーファスを宥める様に落ち着いた声色でレザードはルーファスに語りかけた。 それを聞いてとうとうルーファスは武器を取り落とした。 「アリーシャを生き返す事が出来るんだな…」 そうつぶやくと彼はその場に泣き崩れた。 緊迫していた空気が晴れた。この殺し合いに心を乱した青年を見事説得し、凶行に走る前に止める事が出来たのだ。 涙を流し最良の策を見出した事を喜ぶルーファス。 相棒と自分の勘を信じ最後までルーファスを正しき道に戻そうと尽力したクリフ。 漸く救える命を救えた事に満足そうな笑顔を浮かべるソフィア。 主催に反旗を翻したものとして成果を挙げることができたレナス。 一仕事終えやれやれといった様子で肩をすくめるレザード。 この場にいる全員が晴れやかな顔をしている。 この場に生まれた新たな結束。 この絶望の島の中に生まれた小さくとも確かな希望の灯火。 ソフィアはそれを感じていた。 まだ再開できない幼馴染や、かつての仲間達。 外せるかもわからない爆弾付きの首輪。 どこにいるかすらわからないルシファー。 懸念材料は多い。 だが、それがなんだというのだ。きっと自分達みたいな集団がこの島の各地にも出来てるに違いない。 そんな皆が力を合わせればきっと不可能だって可能にできる。 そう思った矢先の事だった。 樹上より舞い降りる黒い影。 その影は真っ直ぐルーファスに落ちると彼の胸に手にする剣を突き立て彼を血溜まりに沈めた。 「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 少女の悲痛な叫びが全てを飲み込むような漆黒の空に吸い込まれていった。 突如として飛来した絶望を呼ぶ黒い影。 藤林すずである。 時間は遡る。 潜伏先の民家より出る時に見つけた置手紙らしき物。 その手紙の文字は読めなかったが、落ち合う場所を示したものであろうと推理し、ならばと目印になりそうな施設内を捜索していた丁度その時である。 なにやら外から大声で喚いている声が聞こえてきた。 何かのワナかと思い警戒しながら外を観察すると、そこには2人の長身の男が追いかけっこをしていた。 (まったく…。あれではこの暗闇の中でも自分の居場所を教えているようなものじゃないか) だが、それは今の自分にとって好都合である。 音もなくその2人を追跡するすず。 最初は金髪の方が殺しに乗った人間で、追われている緑の長髪の方がルシファーの意に反して、殺し合いを拒んだ人物だと思った。 だが、大声でやり合っている2人の会話の内容から判断するなら真逆だった。 追っている側が非殺し合い派で、追われている側が殺し合い推奨派らしい。 (どういった経緯でこんな事に…? いや、関係ない。今の私は獲物を探していて、そして目の前にその獲物が現れた。それだけ…) いつからだろうか? 今の様に獲物の内情などを考えるようになったのは。 里ではそのようなことを考える事は間違っていると教えられたのに。 標的を発見し次第隙を見て音もなく殺す。それだけを叩き込まれてきた。 そうだ、私の技はあの時みたいに誰かを守ったりするものなんかじゃない。 自分の身は自分で守り、1人でも多くの攻撃目標を駆逐する為の物だったはずだ。 追跡を始めてかなりの時間が経過したところで変化が起きた。追われてた側が武器を手に追跡者に振り向いたのだ。 ここですずはどちらを最初の獲物にするかを決めることにした。 (金髪の方はいつ攻撃されるか警戒している。 その意識の大部分を正面の矢にむけてはいるけど、僅かながらに奇襲が失敗する危険性がある。 対する緑の方は武器の先に意識を集中しているみたい。 まぁ、無理もないか、武器の性質上そうせざるを得ないものだから…。ならば) 第一目標を緑の長髪にする。 木々を音も無く飛び移り彼が背にしている木の上に位置を取る。 こちらに気付いた様子は全くない。 仕掛けるタイミングをうかがう。 だがここで更に状況に変化が訪れた。別方角から少女が仲間を引き連れて登場したのだ。 どうやらこの者達も緑の男の説得をするつもりらしい。 だがそんな事今の彼女にはどうでもよかった。 (5人。殺れるの? 今の疲労状態で…) 優勝を狙っているのでここで無理をしても仕方が無いが、獲物を前にして後退するなど里の掟に反する事になる。 (1人なら奇襲で確実に…。後は他の奴の出方次第) 素早く状況の変化に対応した判断を下し、改めて様子を見る。 説得は佳境に差し掛かっていた。 見事に眼鏡の男が標的にしていた緑の男を言いくるめたみたいだ。 その場に崩れ落ちる獲物。 (今!) 身を隠していた木より剣を構え急降下。 こちらにがら空きの背を向けている標的の左胸―――即ち心臓目掛け突き下ろす。 (まずは1人…) ここで自らの武勲に酔いしれる様では3流以下である。 すぐさま次の標的を捜し求めるすずのいや殺戮者の目。 その目が捕らえたのは様々な反応を見せる獲物たち。 今にもこちらに殴りかからんとする激昂した金髪。 剣を抜き臨戦態勢をとる浅葱色の鎧を纏った銀髪の女性。 素早く後衛の位置に引き下がると、何やら魔法陣のような物を大気に浮かび上がらせている眼鏡。 (流石この時間まで生き延びている猛者といった所か、この奇襲に怯むような弱者は生き残っていない) となれば退くかと判断しようとしたその時。 「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 少女(すずよりは明らかに年上だが)が悲鳴をあげその場に崩れ落ちた。 (第2目標補足) 既に1人目を殺した剣は貫いた体から抜いて構えている。 隙をさらした少女まで自分なら1回の跳躍でいける距離だ。 殺気を込め両足に力を込める。 だがこちらの狙いを察したのか騎士風の女がその進路上に立ちはだかった。 金髪の大男は捨てた武器を拾うことなく、怒りの咆哮をあげながら直接殴りにこちらに来ていた。 (やはり出し惜しみせずにブラッディーアーマーをつければよかったか…) 自分の判断ミスに舌打ちを入れようとした時すずは気づいた。 (いや、この状況使える。戦闘続行) 怒りに任せ直線的な攻撃しか仕掛けてこない大男。 少女を守るため積極的な攻撃を仕掛けてこない騎士。 自分が少女を執拗に狙えば、魔法で狙われる危険性も減る。 ピンポイントに狙うにも広域魔法でなぎ払うにしてもこう仲間と密集されては両方出来ないはず。 それに今の時間も場所も自分に味方していた。 時間は夜中。 月明かりはあるとはいえここは森林地帯の中余計に暗い。 こういった場所での戦闘は我ら忍びの得意とする場所。 前後左右だけでなく木々を跳び回り三次元的要素も取り入れ攻め立てる。 (くっ、この少女強い!) レナスは素直に少女の腕に舌を巻いた。 当然1対1なら遅れをとる事はないが、状況がそうさせてくれない。 完全に戦意喪失したソフィアをかばいつつ戦うには厳しい相手だ。 それに少女の戦闘スタイルも苦戦の原因だ。 常に動き回り急所目掛け鋭い一撃をヒットアンドアウェイで繰り返してくる。 ソフィアを執拗に狙っているが、隙見せればこちらにも仕掛けてくる。 何度目かになろうかのソフィア目掛けての斬撃を受け止める。 一瞬止まった少女目掛けてクリフと呼ばれた男が殴りかかる。 だが、当然のようにその拳は空を切る。 (あんな闇雲な攻撃では当たらん。見た感じ本来はもっと上手い戦い方をしそうだがあいにく今は怒りに我を忘れているようだ) レザードからの援護の魔法もこう動き回られては期待できない。 (レザードの力を宛てにするとは私も焼きが回ったか…) そんな事を考えていたら今度は自分が狙われた。 あわやという所で、手にした剣を盾にする。 体重をかけて剣を振り払う。 (体重や単純な腕力だけならこちらに分があるが) レナスは焦り始めていた。 (結局1人救っても1人犠牲にしてしまった…。いや、このままでは犠牲者が増えかねない) 何か自分もこの殺し合いを止めるためにできる事をと思っての行動だったが、結局は数だけの計算なら±0であり、更に仲間まで危険な目に遭わせてしまっているのだ。 そんな思考がレナス自信の剣も鈍らせていた。 (あれ…? おかしいな何で俺は倒れてんだ?) うつ伏せに倒れたままの状態で頭だけ上げると、そこには小柄な少女がまさに縦横無尽に跳び回りソフィア達に牙を剥いていた。 (やべぇ…助けねえと…) 立ち上がろうとしたが全く力がはいらない。 それどころか体を動かすだけで、いや呼吸をするだけで左胸から発する激痛が全身を駆け巡る。 体が濡れている。しかもなんか生温かい。 地面に広がる血の池を見てルーファスは漸く自分の身になにが起こったか理解した。 (そうか…俺はあのチビに…わりい、みんな俺はもうダメみたいだ…。最後まで迷惑かけちまったな…) そんな事を思いながら戦闘の光景をぼんやり眺める。 よく見ると仕掛けてきた少女はソフィアを執拗に狙っているようだった。 (くっ、ソフィア…) 彼女の名前を胸の中で呼んだのと、ルーファスが落とした弓矢を拾い上げ木にもたれかかるように立ち上がるのは同時だった。 (そうだ…俺はまだ死んじゃいねぇ! だったらまだ…いや、今度こそ誰かを護れる!) さっきは動くだけで激痛が走ったのに何事だろうか? 心に湧きあがった闘志のおかげか、立ち上がる事ができた。 (なんだよあいつら…押されてんじゃねえか) 理由はなんとなくわかる。 戦意喪失のソフィアに、それを守るので手一杯のレナス。 怒りで我を失ってるクリフに、魔法ができるといったレザードもあの混戦では味方を巻き込みかねない。 完全に怯えてうずくまるソフィアを見つめる。 (アリーシャは護れなかったけど…せめてソフィアだけでも…! 護ろうとした女の子を1人も護れないなんてヘタレもいいとこだしな…) 弓を構える。想像を絶する激痛がルーファスの体を駆け巡った。 途切れそうになる意識をなんとか執念で繋ぎとめる。 (あぁ…何やってんだか…俺は…。こんなことしても俺はもう助からない。 こんな激痛に耐えてまでやることか? このまま目を閉じればアリーシャのとこまで逝けるってのに…) それでも彼は構えを解かない。 引き絞る弓の弦を焼けるような痛みに耐えながら維持し続ける。 鏃が向かう先には常に襲撃者の少女がいた。 満身創痍の今の状態では呼吸が不規則に乱れる。 それに応じて照準が僅かにぶれた。 失った血の多さからか、視界も時折ぼやける。 そんな状態で敵味方共に動き回っている戦場へ敵だけを射抜く矢を放つのは不可能だ。 だが、ルーファスはそうは思わなかった。 極限まで高められた集中力と、今まで幾千幾万もの矢を放ってきた経験から標的を射抜くための軌跡が完璧に見えていた。 突如として横風が吹き始める。 しかし今の彼には何の障害にすらならない。 矢が受ける風の影響。それによる着弾点のズレすら見えている。 僅かに左へと照準を修正。 そして、矢羽を持つ手の力を緩める。 限界まで張り詰められていた弦が戒めを解かれる。 それと共に打ち出された矢はまさしくルーファスが思い描いた軌道に乗って駆け抜けた。 標的の右肩に突き刺さるルーファスの一撃。 当然必殺の一撃のつもりだったが、ルーファスの殺気を敏感に感じ取ったすずは、済んでの所で身を捻り致命傷を避けることが出来たのだ。 戦場の動きが完璧に止まる。 全員がルーファスの方を見つめ驚愕の表情を浮かべている。 ただ1人襲撃者である少女を除いて。 その一瞬の静止した時を利用し彼女は撤退をしようとしていた。 (おいおい…なにを驚いてんだよ? それよりそいつが逃げちまうだろうが…。まぁ、いいか…) 「後は俺に任せな」 残された命を燃やし今度こそ必殺の一撃をあの敵にぶつける。 構えた弓に矢の代わりに無数の眩い光が装填される。 解き放たれた光の矢はそれぞれがまるで意思を持つかのように様々な軌道を取りながら少女に迫る。 的確に人体の急所目掛けて伸びるそれを少女は驚異的な反応でなんとか避けていた。 しかし、致命傷を避けるので精一杯。肩や二の腕、太腿が貫かれる。 「奥義っ!」 無数の光が再度ルーファスの手に集う。 その輝きは混ざり合い巨大な光の矢を形作る。 「アスタニッシュグリッツ!」 闇を切り裂く流星の如き光の槍は少女の体に大穴を穿つと、彼方へと飛び去っていた。 「ま、俺にかかりゃ…こんな…もん…さ…」 (漸く…護れたぜ…。アリーシャ…今逝く…) 満足そうな表情を浮かべながら彼の意識は虚無の世界へと旅立った。 「ルーファスさんっ!」 ソフィアが真っ先に駆け寄ると、操り糸が切れた人形のように崩れ落ちたルーファスを抱きかかえた。 「ルーファスさんっ! 目をっ目を開けて!」 懸命に彼の亡骸を揺さぶるソフィア。 「ソフィア…」 沈痛な面持ちでソフィアを見つめるレナス。 「くっそぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 やり場のない怒りを近くの巨木にぶつけてその木をへし折るクリフ。 「ソフィア。無駄です。その方は既に死んでいます」 意外にもソフィアに最初に声を掛けたのはレザードだった。 ソフィアは突きつけられた事実を否定するかのように頭を振る。 もう手遅れだというのに彼の傷口に癒しの紋章術『ヒーリング』を施す。 「傷は塞ぎました…。だから、起きて下さい…。起きてよ…ルーファスさん! お願いだから…」 嗚咽混じりの声でルーファスに語りかけるが当然のように返事はない。 「いい加減にしないかっ!!」 暗がりの森の中にレザードの叱責が木霊した。 「貴様の気持ちはわからんでもないが、こんな事で取り乱しても主催の思う壺だぞっ! しかも貴重な魔力も無駄遣いするとは…いつ敵が襲ってくるかもわからぬこの状況でいざという時どうするつもりだ!? このザマでは次は貴様の番だ! だがそれでは困るのだよ、対主催の鍵となるかも知れん貴様に死なれてはな!」 レザードのセリフに怒りを露にして反論するソフィア。 「こんな事? こんな事ですか!? 貴方にとっては些細な事かもしれない…。また目の前で誰かが死んだだけの事かもしれないっ! でもこの人は、ルーファスさんは私の事を何度も助けてくれた人なんですっ!」 「そうだ。貴様はまたこの男に守られた。それは貴様が自分の身すら守れぬほど弱いからだ。そして、貴様はこれからも誰かに守られる。 その誰かを犠牲にしてなっ!! ソフィアよ、心を強くしなさい。魔法の強さは即ち精神の強さ。 この者の死を乗り越える様な心の強さが己を守る力に、そして誰かを救う力になるのです」 (レザードの奴…。言葉はきついがソフィアを立ち直らせようと?) 流石のレナスも面を食らった。まさかレザードが他者を思いやるような行動に出るとは。 ソフィアはとうとう黙り込んでしまった。 レザードはレナスの側に寄るとソフィアに聞こえない様にレナスに囁いた。 「彼女へのフォローをお願いします。私はソフィアの見えない所でこの方の遺体を弔おうと思います。 まだ彼女はこの方との別れに耐えられそうにありませんからね」 レナスは感動すら覚えた。あのレザードがこんなセリフを口にするなんて。 「わかった。ソフィアの事は任せろ。彼の遺体の方は頼んだぞ」 「はい…心得ています」 レナスはまだ涙を流してるソフィアを伴って離れていった。 「貴方も彼女の側に」 続けてクリフも促す。 「アンタはどうするんだ?」 漸く怒りが収まり始めたクリフが応える。 「この方の遺体を弔おうと思います」 「だったら俺も」 「いえ…。貴方はソフィアの友人なのでしょう? なら、彼女を慰めてあげて下さい。これからの心構えは私の方で彼女に諭したつもりです。 ですが、あのような少女にこの別れはきついでしょう。支えてあげて下さい」 クリフの申し出をやんわりと断るレザード。彼をよく知るものがいたら鳥肌モノのセリフを吐く。 「わかった」 言われたとおりクリフもレナスとソフィアが消えた暗がりへと消えていった。 そんなクリフの様子を見てレザードが口元を歪めた事に気付く者はこの場にはいなかった。 ルーファスを抱きかかえるとレナスたちが消えていった方向とは間逆の方へと歩き出すレザード。 (流石に我ながら歯が浮くような事を言ったものだ。しかし単純な奴らだ。まぁ、私の思惑に気付く者がいるとは思えんがな) 十分遺体を運んだところで地面に下ろす。 『バーンストーム』 その傍らの地面に大穴を空けその穴にルーファスの遺体を降ろす。 「汝 美の祝福賜らば 我その至宝 紫苑の鎖に繋ぎ止めん」 おもむろに大魔法の詠唱を始めたレザードは 『アブソリュート・ゼロ』 作り出した絶対零度の氷柱にルーファスの遺体を閉じ込めた。 (この器には腐敗してもらっては困るからな) 雲の隙間から降り注ぐ月明かりが氷柱を美しく照らす。 (フフフ…。まさかハーフエルフと引き合わせてくれるなんて…。やはり貴方は最高ですよレナス・ヴァルキュリア。 彼が刺された時は肝を冷やしましたが、傷も最小限に留まり、その傷もあの小娘が塞いでくれましたしね。 災い転じて福となすといったところでしょうか? 主神オーディンの魂の器であるハーフエルフ。彼の体を使えば私はヴァルキュリアと同格の存在となれる。すなわち、成長する事ができる神へと! それに私の仮説が正しければ、この場でかけられている能力の変更は個人レベル。 彼の体に私の魂を入れることが出来れば今私が使えない術も使用可能となる可能性が高い。 肉体の能力もオーディンと匹敵するものになり主催を倒す事も可能でしょう。 現在の私1人の力では輪魂の呪を行う事は難しいですが、ブラムスや強力な魔導師の力を使えばあるいは…。 まぁ、首輪があるうちは術を行使しても爆破される恐れがあって出来ないわけですがね。 だが確実に手札は揃いつつある。フフフ…、レナス貴方をこの手にすることができる日もそう遠くはないのかもしれませんね) &color(red){【ルーファス死亡】} &color(red){【すず死亡】} &color(red){【残り29人】} ※ルーファスの遺体は傷を塞いだ上で氷漬けにし、D-5とD-4の境目(D-5側)に掘った穴に埋めてあります。 ※すずの荷物は遺体のすぐ側に放置。回収するかどうかは次の方に任せます。 【D-5/夜中】 【レザード・ヴァレス】[MP残量:70%] [状態:正常] [装備:天使の唇@VP+大いなる経典@VP2] [道具:神槍パラダイム@RS・アップルグミ×2@TOP・エルブンボウ@TOP・レナス人形フルカラー@VP2 連弓ダブルクロス@VP2・矢×27本・荷物一式×4分(ルーファスの所持していた荷物を2つのバックに入れて持ち運んでます)] [行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る] [思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える] [思考2:その一端として、非常に不本意だが、ソフィアに移送方陣を修得させてやる] [思考3:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない] [思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す] [思考6:輪魂の呪を行い成長する神になる] [思考7:首輪をどうにかしたい] [備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません] [備考2:レザード1人では輪魂の呪は出来ません。協力してくれる魔術師が必要です] [現在地:D-5とD-4の境目(D-5側)] 【ソフィア・エスティード】[MP残量:80%] [状態:ルーファスを目の前で殺された事による精神的ショック状態] [装備:クラップロッド@SO2、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3] [道具:レザードのメモ、荷物一式] [行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める] [思考1:フェイトに会いたい] [思考2:レザードの指示に従い魔法(移送方陣)を修得する] [思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考4:自分の知り合いを探す] [思考5:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい] [現在地:D-5西部] ※レザードのメモには移送方陣についての詳細が書かれていますが、これを読めば移送方陣が修得出来るという訳ではありません。 【レナス・ヴァルキュリア】[MP残量:100%] [状態:戦闘によりやや疲労+何も出来ない自分に対する自責の念] [装備:魔剣グラム@VP] [道具:ダブった魔剣グラム@RS、合成素材×2(ダーククリスタル、スプラッシュスター)@SO3、荷物一式] [行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する] [思考1:ルシオの保護] [思考2:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)] [思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考4:協力してくれる人物を探す] [思考5:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す] [思考6:レザードを若干見直した] [思考7:ソフィアを励ます] [現在地:D-5西部] 【クリフ・フィッター】[MP残量:70%] [状態:戦闘と走り回ったことによる疲労] [装備:ミスリルガーター@SO3・閃光手榴弾@現実・サイレンスカード×2@SO2] [道具:ドラゴンオーブ・エターナルソード・メルーファ@SO2・バニッシュボム×5@SO3・フレイの首輪・荷物一式×3] [行動方針:首輪を解除してルシファーを倒す] [思考1:ソフィアを励ます] [思考2:脱出の手段を見つける] [思考3:仲間を集める(マリア、フェイト優先)] [思考4:首輪は調べられたら調べる] [思考5:役場へ戻る] [現在位置:D-5西部] ---- [[第95話>カタストロフィーは想いとは裏腹に]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第97話>不協和音]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第89話>名選手名コーチにあらず]]|レザード|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第89話>名選手名コーチにあらず]]|ソフィア|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第89話>名選手名コーチにあらず]]|レナス|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第88話>Partner]]|クリフ|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第88話>Partner]]|COLOR(red):ルーファス|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第77話>待ち合わせ]]|COLOR(red):すず|―|
**第96話 天才(変態)が欲するモノ あれからどれくらいの時間がたっただろうか、レザードが用意したソフィアの術の取得は遅々として進まず、いたずらに時間だけが過ぎていた。 言われたように熱心に移送方陣の取得に取り組むソフィアだったがそもそも、レザードが扱う術と紋章術の形式が違う。 それを一から学ぼうと言うのにはたかが数時間では短すぎた。 現在レナスはこの観音堂の入り口で見張りを行っている。 時折レザードがソフィアを罵倒する声が聞こえてくるだけで静かな物だ。 そんな中レナスは焦っていた。既に参加者の1/3以上が死亡している中で、自分はまだ誰とも刃を交えていない。 戦い自体しないに越した事はないのだが、主催の言いなりになった人間を止めるつもりでいる自分が1度も戦闘を行っていないのはなんとも歯がゆい。 せめて何か情報が仕入れることができるかもしれないと思い、これから起きる惨劇で死に逝く者達の声に耳を傾けてみた。 レナスの意識が深い底まで落ちていく。 何の雑音も耳に入らなくなると、続けて彼女の耳に何者かの死の運命が届けられる。 「止まれ! これ以上近付くんじゃねぇ!」 息を切らした男の声が響いてきた。 「いいかっ、もう一度だけ言う! こんな真似はよせ! お前が守ろうとした奴も決してそんな事は望んじゃいない!」 「だまれっ! そんな事はなぁ、俺が一番知ってんだっ! けどな、俺にはもうこの方法しか残されてねぇんだっ! もう一度、共に同じ時間を生きたい…。その為には…あいつの望まないことだろうとなんだってしてやる!」 「ルー…フ……」 「お前には世話になった…だから、今だけは見逃してやるっ! 俺の考えが変わる前に消えろっ!」 2人の声を荒げたやり取りの後にカチャリと金属の止め具を外すような音が聞こえた。 「ク……、てめえ何のつもりだ!?」 「一先ず話をしようじゃねえか! 俺はお前を説得しに来ただけなんだ。 傷つける気なんざサラサラない。だったらこんなもんいらねえじゃねえか!!」 ジャリッと一歩踏みしめる音共に鋭い風切音が聞こえてきた。 「っつ!」 「言っただろ! これ以上近づくなってな…。次は外さねぇ…」 「…今ので確信したぜ。その気になったらお前は間違いなく俺を殺せてた。それが出来ないって事はお前はまだ迷ってる。 迷ってるならそんな事をするんじゃない。アリーシャって奴が、今お前にして欲しい事は自分のためにお前が苦しむ事じゃない。 それにお前がしようとしていることは今のお前のような思いをする奴を作るだけだ。 そんな事してでも守りたい存在がいることは理解できる。けれど、大事な誰かを失う苦しみを知ってるお前が…」 「うるせぇっ! だったらてめぇはわかんのか!? 大事な誰かを…この身を捧げてでも守りたいと思った奴を失った、俺の気持ちがっ!」 「わかるさ…。今までだって何人もの仲間を失ってきた。大勢の仲間を助けるために他の何人かを斬り捨てるような真似だってした。 その都度後悔もしたし苦しい思いもしてきた。だがな、俺はお前みたいにはならなかった。なっちゃいけねえんだっ! 残された俺たちができる事は、そいつのやろうとした事を引き継ぐ事だ。だから…ー…ス! 「くっそぉぉぉぉっ!!」 悲痛な叫びの後にドサリと大きな何かが倒れこむ音がした。 「畜生! 何で…何でなんだよ…。俺のことなんか放っておいてくれればこんな事には…」 聞こえてきた死に逝く者達の声はここで途絶えた。 (近いな…。1人が説得しようとしていたようだし、もしかしたら止められるかも知れない…。 参加者が早くも半数近くになってる現状でルシファーとの決戦での戦力は1人でも多い方がいい) そう考えるや否や二人の教室と化している、観音堂の1室に足を踏み入れた。 部屋を出る時とさして変化のない光景を見渡してから切り出した。 「少しいいか?」 もちろん話しかける相手は練習しているソフィアだ。 間違っても自分からレザードに話しかけるという事はしたくはない。 「どうしたんですか?」 熱心に見ていたレザードのテキストから目を離し、レナスの方に視線を向けるソフィア。 「もうすぐこの近くで誰かが殺される。私はそれを止めに行きたいのだが、お前を置いて行く訳にもいかない。すまないが付き合ってくれ」 「また誰かの声が聞こえたんですか?」 「ああ、誰かまではやはりわからなかったが、これ以上参加者が殺されるのは止めたいんだ」 それを聞くや否や身支度を始めるソフィア。レナスも手早く用意をし始めたその時。 「恐れ多くながら進言させていただきますが、無用なリスクは避けるべきかと…」 今まで黙っていたレザードが口を開いた。 「貴様の意見は聞いてなどいない。後をついて来るなら勝手だが、来る気が無いならここでお別れだ。 貴様のような危険人物を野放しにする事になるが、今の所害は少なそうだしな」 過去の事があるからだろう、未だにレザードと共に行動する事に抵抗のあるレナスは冷たく突き放すように言った。 「やれやれ」 そんな言葉を聞いて肩をすくめるレザード。きつい言葉を投げかけられてもどこか彼の表情が恍惚としているのはやはり彼が変態だからだろうか。 「行きましょうレナスさん。私もこれ以上罪のない人が死ぬのなんてイヤですから」 最早そんな二人のやり取りにはなれたソフィアはレナスを促しデイパックを背負うと、術の練習をしていた部屋を出た。 部屋に1人残されたレザードも荷物を背負おうと床に手を伸ばした時、彼はソフィアの術の残滓を感じた。 (あの女が言っていた紋章術と今この場に残った感覚とでは明らかに術式が違う…。 どちらかというと我々の魔法のそれに近い…。移送方陣の習得には程遠いが、一応成果はあるという事か? ということはやはり私の仮説どおりに個々の能力は主催に害を及ぼす物だけを使用できないように書き換えられているだけで、追加で何かを習得する事はできる可能性が高いな…。 現状ではこれ以上の事は出来そうにはないが、脱出の為の鍵には成り得るな…) 実験の成果が僅かながら出たことに確かな手応えを感じつつ、先に出た二人の後を追って観音堂を後にした。 (くそっ、いつまで追ってくるつもりだあの野郎) 役場を出てひたすら東の方角へ走ったルーファスだったが、未だにクリフは声を荒げて自分を追ってくる。 (流石に俺もこれ以上走れない。覚悟を決めて追っ払うしか…) 逃走を始めた時に自分の中を駆け巡った不安は未だに拭えないが、これ以上逃げ回る事は不可能と判断を下す。 ルーファスはその身を翻すと共に矢を構え、その矢先をクリフに向け叫んだ。 「止まれ! これ以上近付くんじゃねぇ!」 クリフは言われたとおりにその場に立ち止まると、ルーファスに向かって負けじと叫んだ。 「いいかっ、もう一度だけ言う! こんな真似はよせ! お前が守ろうとした奴も決してそんな事は望んじゃいない!」 「だまれっ! そんな事はなぁ、俺が一番知ってんだっ! けどな、俺にはもうこの方法しか残されてねぇんだっ! もう一度、共に同じ時間を生きたい…。その為にはあいつの望まないことだろうとなんだってしてやる!」 アリーシャと一緒にいた時間は、自分の生涯過ごしてきた時間の中ではほんの一瞬にも満たないような期間だ。 しかし、その僅かな時間の中で抱いたこの感情は、それまでのルーファスの人生の中で感じた事のない掛け替えのない物だった。 だからそれを奪った者も許せないし、もう一度手にする手段があるのならそれに縋ったりもする。 「ルーファス…」 当初の懸念どおりクリフの言い分を理性は正しいと納得し始めていた。 「お前には世話になった…だから、今だけは見逃してやるっ!俺の考えが変わる前に消えろっ!」 本当は撃てるかどうか自信はなかったが、これ以上クリフに説得を続けられたら自分が折れてしまうのではないかと思ったルーファスは苦し紛れに叫ぶ。 そんなルーファスの姿を見てクリフはその身に付けていたナックルを外し地面に放り捨てた。 金属同士がぶつかる耳障りな音が夜の空に響き渡る。 「クリフ、てめえ何のつもりだ!?」 「一先ず話をしようじゃねえか! 俺はお前を説得しに来ただけなんだ。 傷つける気なんざサラサラない。だったらこんなもんいらねえじゃねえか!」 和睦を求める者が武器を持ってたら信用なんてしてもらえないという事を言いたいのだろうか。 武器を捨てたクリフだったが放つ気迫に変わりはない。 真摯な瞳を真っ直ぐルーファスに向け一歩踏み出す。 気圧されたルーファスが一歩退くと共に、手を伝う汗で矢が滑ってしまった。 しっかりとクリフの額目掛けて照準していた弓を反射的に反らしてしまう。 「っつ!」 頬をかすめた矢が彼方へと飛んでいった。 「言っただろ! これ以上近付くなってな…。次は外さねぇ…」 言っている事とやっていることの違いにウンザリしつつも再び矢をつがえる。 「…今ので確信したぜ。その気になってたらお前は間違いなく俺を殺せてた。それが出来ないって事はお前はまだ迷ってる。 迷ってるならそんな事をするんじゃない。アリーシャって奴が、今お前にして欲しい事は自分のためにお前が苦しむ事じゃない。 それにお前がしようとしていることは今のお前のような思いをする奴を作るだけだ。 そんな事してでも守りたい存在がいることは理解できる。けれど、大事な誰かを失う苦しみを知ってるお前が…」 クリフの言っている事はもっともだ。ルーファス自身も理解はしている。 しかし、クリフの言うとおりにするという事はアリーシャとの再会を諦めねばならないという事。 彼にはその行為がアリーシャの事を忘れる事と同位に思えて仕方がなかった。 理解出来ても感情がそれを受け入れるのを拒む。ルーファスはクリフの説得を阻むべく声をあげる。 「うるせぇっ! だったらてめぇはわかんのか!? 大事な誰かを…。この身を捧げてでも守りたいと思った奴を失った俺の気持ちがっ!」 きっとこいつにはわからない。俺の気持ちが。 もうどうしたらいいのかすらわからないこの苦しみを。 ルーファスの問いかけにクリフは逡巡することなく応えた。 「わかるさ…。今までだって何人もの仲間を失ってきた。大勢の仲間を助けるために他の何人かを斬り捨てるような真似だってした。 その都度後悔もしたし苦しい思いもしてきた。だがな、俺はお前みたいにはならなかった。なっちゃいけねえんだっ! 残された俺たちができる事は、そいつのやろうとした事を引き継ぐ事だ! だからルーファス!」 更に一歩前に出てルーファスに手を差し伸べるクリフ。 錯乱状態に陥ったルーファスがとうとう構えた矢をクリフ目掛けて放とうとした。 「待って!」 そんなルーファスを遮るように澄んだ声が響き渡る。 その声はクリフ、ルーファス共に知っている人物ソフィアの声だった。 「ソフィア…」 「嬢ちゃん!」 突然現れた少女に目を向ける二人。よっぽど急いできたのだろう、体を前屈みにし、側の木に手を掛けて肩で息をしている。 やや遅れて、同行者の2人も暗がりの中から現れた。 「ルーファスさん。辞めてください! 事情はわかります。さっきの放送で呼ばれた人の中にいましたよね? 貴方の大切な人が…。きっとそれでこんな事を…。でもアリーシャさんはこんな事を望んじゃいないはずです!」 「うるせぇ! どいつもこいつも似たような事言いやがって! それでも…あいつを生き返す為にはこれしかないんだよ!」 構えた矢をソフィアに向けるルーファス。 1度はその身を挺して危機を救った少女に対して弓を向けてしまう程、彼の頭は混乱していた。 それを見てレナスはすぐさまにルーファスの前に剣を構えて立ちはだかる。 「言ったはずだ。次に会った時に考えを改めてなかったら刃を向けるとな! 貴様はまだ迷っているようだが、その矢を放った時はわかっているだろうな?」 睨みあうレナスとルーファスの間に更にもう1人割り込んできた。 「ヴァルキュリアよ。ここは私に任せていただけないでしょうか?」 「レザード? どういう風の吹き回しだ?」 「なぁに、主催との決戦に必要な戦力は多い方がいいですからね。それに用は彼が言ってる人物を生き返らせれば良いのでしょう?」 メガネの縁を押し上げ位置を直すとレザードはルーファスの方に振り返った。 「なんだ? てめえは?」 ルーファスは突如目の前に躍り出た不審な男に矢を向ける。 見たことのない奴だが、どうにも胡散臭い奴だ。 「お初にお目にかかります。我が名はレザード・ヴァレス。しがない錬金術師です。それと少々の魔術を嗜んでおりまして」 レザードはどこか芝居がかった様子で話し始めた。 「だからなんだってんだよ?」 ルーファスは殺意を向ける相手がコロコロと変わったことで、一時的な錯乱状態から解放されていた。 それと同時にルーファスはどこかレザードの話す事に惹きつけられ始めていた。 最早そんなルーファスの声には敵意は込められていない。 「単刀直入に言いましょう。貴方の願いを叶える手段を私は知っています」 ルーファスの様子を見て満足そうな笑みを浮かべつつ続けるレザード。 「!」 唐突にレザードから衝撃的な一言を聞いたルーファスの表情は驚きを隠せない。 「見た所貴方はミッドガルドの住人ですね? 私には判ります。 そして、ここにいるソフィアと違って私と同じ世界の住人という事は、元の世界に戻れば私の知識が活かせるという事です。 私達の世界では反魂の法という儀式がありまして、他の者の命を捧げる事で望んだ者を復活させる事ができるという術ですが、ご存知ありませんか? 私はその術の詳しいやり方を存じ上げています」 そう、その秘術さえ使えば人の蘇生は叶う。だがそれには代償がある。 「レザード! 貴様! 私がその様な行為を見逃すとでも思っているのか!? そもそもその術に用いるのに代償とする魂はどうするつもりだ?」 過去に自分もその秘術を用いてエインフェリアを迎えた事があったが、対価とする魂をレザードに集めさせたら碌な事にはならないと思ったレナスは当然反論した。 「その魂はこの会の主催の物でも構わないのではないでしょうか? どうせ貴方はこのような行いをした主催に対して慈悲はかけないのでしょう? 魂まで滅するのなら、この方が望む人物の蘇生に使った方が有意義だと私は思いますがね」 よもや、レザードの口からこのような言葉が出るとは思っていなかったレナスは口を噤んでしまった。 代わりにルーファスが声を荒げてレザードに問いかける。 「おいっ! 本当にアリーシャを生き返らせる事ができるのか!?」 今にも掴みかからんばかりの勢いだ。 「今は不可能ですが。ミッドガルドに戻ることが出来れば可能です。 だからどうでしょう? 武器を納めて我々と共に戦いませんか? そもそもその方が死んだのは主催が原因ですし、彼を倒す事で貴方の望みも叶う。我々としても戦力は多い方がいい。 それに優勝してその方の蘇生を依頼したところで復活できる可能性は高くありませんしね。 だったら、蘇生方法を知っている私達についておいた方が賢い選択だと思いますが?」 興奮した様子のルーファスを宥める様に落ち着いた声色でレザードはルーファスに語りかけた。 それを聞いてとうとうルーファスは武器を取り落とした。 「アリーシャを生き返す事が出来るんだな…」 そうつぶやくと彼はその場に泣き崩れた。 緊迫していた空気が晴れた。この殺し合いに心を乱した青年を見事説得し、凶行に走る前に止める事が出来たのだ。 涙を流し最良の策を見出した事を喜ぶルーファス。 相棒と自分の勘を信じ最後までルーファスを正しき道に戻そうと尽力したクリフ。 漸く救える命を救えた事に満足そうな笑顔を浮かべるソフィア。 主催に反旗を翻したものとして成果を挙げることができたレナス。 一仕事終えやれやれといった様子で肩をすくめるレザード。 この場にいる全員が晴れやかな顔をしている。 この場に生まれた新たな結束。 この絶望の島の中に生まれた小さくとも確かな希望の灯火。 ソフィアはそれを感じていた。 まだ再開できない幼馴染や、かつての仲間達。 外せるかもわからない爆弾付きの首輪。 どこにいるかすらわからないルシファー。 懸念材料は多い。 だが、それがなんだというのだ。きっと自分達みたいな集団がこの島の各地にも出来てるに違いない。 そんな皆が力を合わせればきっと不可能だって可能にできる。 そう思った矢先の事だった。 樹上より舞い降りる黒い影。 その影は真っ直ぐルーファスに落ちると彼の胸に手にする剣を突き立て彼を血溜まりに沈めた。 「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 少女の悲痛な叫びが全てを飲み込むような漆黒の空に吸い込まれていった。 突如として飛来した絶望を呼ぶ黒い影。 藤林すずである。 時間は遡る。 潜伏先の民家より出る時に見つけた置手紙らしき物。 その手紙の文字は読めなかったが、落ち合う場所を示したものであろうと推理し、ならばと目印になりそうな施設内を捜索していた丁度その時である。 なにやら外から大声で喚いている声が聞こえてきた。 何かのワナかと思い警戒しながら外を観察すると、そこには2人の長身の男が追いかけっこをしていた。 (まったく…。あれではこの暗闇の中でも自分の居場所を教えているようなものじゃないか) だが、それは今の自分にとって好都合である。 音もなくその2人を追跡するすず。 最初は金髪の方が殺しに乗った人間で、追われている緑の長髪の方がルシファーの意に反して、殺し合いを拒んだ人物だと思った。 だが、大声でやり合っている2人の会話の内容から判断するなら真逆だった。 追っている側が非殺し合い派で、追われている側が殺し合い推奨派らしい。 (どういった経緯でこんな事に…? いや、関係ない。今の私は獲物を探していて、そして目の前にその獲物が現れた。それだけ…) いつからだろうか? 今の様に獲物の内情などを考えるようになったのは。 里ではそのようなことを考える事は間違っていると教えられたのに。 標的を発見し次第隙を見て音もなく殺す。それだけを叩き込まれてきた。 そうだ、私の技はあの時みたいに誰かを守ったりするものなんかじゃない。 自分の身は自分で守り、1人でも多くの攻撃目標を駆逐する為の物だったはずだ。 追跡を始めてかなりの時間が経過したところで変化が起きた。追われてた側が武器を手に追跡者に振り向いたのだ。 ここですずはどちらを最初の獲物にするかを決めることにした。 (金髪の方はいつ攻撃されるか警戒している。 その意識の大部分を正面の矢にむけてはいるけど、僅かながらに奇襲が失敗する危険性がある。 対する緑の方は武器の先に意識を集中しているみたい。 まぁ、無理もないか、武器の性質上そうせざるを得ないものだから…。ならば) 第一目標を緑の長髪にする。 木々を音も無く飛び移り彼が背にしている木の上に位置を取る。 こちらに気付いた様子は全くない。 仕掛けるタイミングをうかがう。 だがここで更に状況に変化が訪れた。別方角から少女が仲間を引き連れて登場したのだ。 どうやらこの者達も緑の男の説得をするつもりらしい。 だがそんな事今の彼女にはどうでもよかった。 (5人。殺れるの? 今の疲労状態で…) 優勝を狙っているのでここで無理をしても仕方が無いが、獲物を前にして後退するなど里の掟に反する事になる。 (1人なら奇襲で確実に…。後は他の奴の出方次第) 素早く状況の変化に対応した判断を下し、改めて様子を見る。 説得は佳境に差し掛かっていた。 見事に眼鏡の男が標的にしていた緑の男を言いくるめたみたいだ。 その場に崩れ落ちる獲物。 (今!) 身を隠していた木より剣を構え急降下。 こちらにがら空きの背を向けている標的の左胸―――即ち心臓目掛け突き下ろす。 (まずは1人…) ここで自らの武勲に酔いしれる様では3流以下である。 すぐさま次の標的を捜し求めるすずのいや殺戮者の目。 その目が捕らえたのは様々な反応を見せる獲物たち。 今にもこちらに殴りかからんとする激昂した金髪。 剣を抜き臨戦態勢をとる浅葱色の鎧を纏った銀髪の女性。 素早く後衛の位置に引き下がると、何やら魔法陣のような物を大気に浮かび上がらせている眼鏡。 (流石この時間まで生き延びている猛者といった所か、この奇襲に怯むような弱者は生き残っていない) となれば退くかと判断しようとしたその時。 「いやああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」 少女(すずよりは明らかに年上だが)が悲鳴をあげその場に崩れ落ちた。 (第2目標補足) 既に1人目を殺した剣は貫いた体から抜いて構えている。 隙をさらした少女まで自分なら1回の跳躍でいける距離だ。 殺気を込め両足に力を込める。 だがこちらの狙いを察したのか騎士風の女がその進路上に立ちはだかった。 金髪の大男は捨てた武器を拾うことなく、怒りの咆哮をあげながら直接殴りにこちらに来ていた。 (やはり出し惜しみせずにブラッディーアーマーをつければよかったか…) 自分の判断ミスに舌打ちを入れようとした時すずは気づいた。 (いや、この状況使える。戦闘続行) 怒りに任せ直線的な攻撃しか仕掛けてこない大男。 少女を守るため積極的な攻撃を仕掛けてこない騎士。 自分が少女を執拗に狙えば、魔法で狙われる危険性も減る。 ピンポイントに狙うにも広域魔法でなぎ払うにしてもこう仲間と密集されては両方出来ないはず。 それに今の時間も場所も自分に味方していた。 時間は夜中。 月明かりはあるとはいえここは森林地帯の中余計に暗い。 こういった場所での戦闘は我ら忍びの得意とする場所。 前後左右だけでなく木々を跳び回り三次元的要素も取り入れ攻め立てる。 (くっ、この少女強い!) レナスは素直に少女の腕に舌を巻いた。 当然1対1なら遅れをとる事はないが、状況がそうさせてくれない。 完全に戦意喪失したソフィアをかばいつつ戦うには厳しい相手だ。 それに少女の戦闘スタイルも苦戦の原因だ。 常に動き回り急所目掛け鋭い一撃をヒットアンドアウェイで繰り返してくる。 ソフィアを執拗に狙っているが、隙見せればこちらにも仕掛けてくる。 何度目かになろうかのソフィア目掛けての斬撃を受け止める。 一瞬止まった少女目掛けてクリフと呼ばれた男が殴りかかる。 だが、当然のようにその拳は空を切る。 (あんな闇雲な攻撃では当たらん。見た感じ本来はもっと上手い戦い方をしそうだがあいにく今は怒りに我を忘れているようだ) レザードからの援護の魔法もこう動き回られては期待できない。 (レザードの力を宛てにするとは私も焼きが回ったか…) そんな事を考えていたら今度は自分が狙われた。 あわやという所で、手にした剣を盾にする。 体重をかけて剣を振り払う。 (体重や単純な腕力だけならこちらに分があるが) レナスは焦り始めていた。 (結局1人救っても1人犠牲にしてしまった…。いや、このままでは犠牲者が増えかねない) 何か自分もこの殺し合いを止めるためにできる事をと思っての行動だったが、結局は数だけの計算なら±0であり、更に仲間まで危険な目に遭わせてしまっているのだ。 そんな思考がレナス自信の剣も鈍らせていた。 (あれ…? おかしいな何で俺は倒れてんだ?) うつ伏せに倒れたままの状態で頭だけ上げると、そこには小柄な少女がまさに縦横無尽に跳び回りソフィア達に牙を剥いていた。 (やべぇ…助けねえと…) 立ち上がろうとしたが全く力がはいらない。 それどころか体を動かすだけで、いや呼吸をするだけで左胸から発する激痛が全身を駆け巡る。 体が濡れている。しかもなんか生温かい。 地面に広がる血の池を見てルーファスは漸く自分の身になにが起こったか理解した。 (そうか…俺はあのチビに…わりい、みんな俺はもうダメみたいだ…。最後まで迷惑かけちまったな…) そんな事を思いながら戦闘の光景をぼんやり眺める。 よく見ると仕掛けてきた少女はソフィアを執拗に狙っているようだった。 (くっ、ソフィア…) 彼女の名前を胸の中で呼んだのと、ルーファスが落とした弓矢を拾い上げ木にもたれかかるように立ち上がるのは同時だった。 (そうだ…俺はまだ死んじゃいねぇ! だったらまだ…いや、今度こそ誰かを護れる!) さっきは動くだけで激痛が走ったのに何事だろうか? 心に湧きあがった闘志のおかげか、立ち上がる事ができた。 (なんだよあいつら…押されてんじゃねえか) 理由はなんとなくわかる。 戦意喪失のソフィアに、それを守るので手一杯のレナス。 怒りで我を失ってるクリフに、魔法ができるといったレザードもあの混戦では味方を巻き込みかねない。 完全に怯えてうずくまるソフィアを見つめる。 (アリーシャは護れなかったけど…せめてソフィアだけでも…! 護ろうとした女の子を1人も護れないなんてヘタレもいいとこだしな…) 弓を構える。想像を絶する激痛がルーファスの体を駆け巡った。 途切れそうになる意識をなんとか執念で繋ぎとめる。 (あぁ…何やってんだか…俺は…。こんなことしても俺はもう助からない。 こんな激痛に耐えてまでやることか? このまま目を閉じればアリーシャのとこまで逝けるってのに…) それでも彼は構えを解かない。 引き絞る弓の弦を焼けるような痛みに耐えながら維持し続ける。 鏃が向かう先には常に襲撃者の少女がいた。 満身創痍の今の状態では呼吸が不規則に乱れる。 それに応じて照準が僅かにぶれた。 失った血の多さからか、視界も時折ぼやける。 そんな状態で敵味方共に動き回っている戦場へ敵だけを射抜く矢を放つのは不可能だ。 だが、ルーファスはそうは思わなかった。 極限まで高められた集中力と、今まで幾千幾万もの矢を放ってきた経験から標的を射抜くための軌跡が完璧に見えていた。 突如として横風が吹き始める。 しかし今の彼には何の障害にすらならない。 矢が受ける風の影響。それによる着弾点のズレすら見えている。 僅かに左へと照準を修正。 そして、矢羽を持つ手の力を緩める。 限界まで張り詰められていた弦が戒めを解かれる。 それと共に打ち出された矢はまさしくルーファスが思い描いた軌道に乗って駆け抜けた。 標的の右肩に突き刺さるルーファスの一撃。 当然必殺の一撃のつもりだったが、ルーファスの殺気を敏感に感じ取ったすずは、済んでの所で身を捻り致命傷を避けることが出来たのだ。 戦場の動きが完璧に止まる。 全員がルーファスの方を見つめ驚愕の表情を浮かべている。 ただ1人襲撃者である少女を除いて。 その一瞬の静止した時を利用し彼女は撤退をしようとしていた。 (おいおい…なにを驚いてんだよ? それよりそいつが逃げちまうだろうが…。まぁ、いいか…) 「後は俺に任せな」 残された命を燃やし今度こそ必殺の一撃をあの敵にぶつける。 構えた弓に矢の代わりに無数の眩い光が装填される。 解き放たれた光の矢はそれぞれがまるで意思を持つかのように様々な軌道を取りながら少女に迫る。 的確に人体の急所目掛けて伸びるそれを少女は驚異的な反応でなんとか避けていた。 しかし、致命傷を避けるので精一杯。肩や二の腕、太腿が貫かれる。 「奥義っ!」 無数の光が再度ルーファスの手に集う。 その輝きは混ざり合い巨大な光の矢を形作る。 「アスタニッシュグリッツ!」 闇を切り裂く流星の如き光の槍は少女の体に大穴を穿つと、彼方へと飛び去っていた。 「ま、俺にかかりゃ…こんな…もん…さ…」 (漸く…護れたぜ…。アリーシャ…今逝く…) 満足そうな表情を浮かべながら彼の意識は虚無の世界へと旅立った。 「ルーファスさんっ!」 ソフィアが真っ先に駆け寄ると、操り糸が切れた人形のように崩れ落ちたルーファスを抱きかかえた。 「ルーファスさんっ! 目をっ目を開けて!」 懸命に彼の亡骸を揺さぶるソフィア。 「ソフィア…」 沈痛な面持ちでソフィアを見つめるレナス。 「くっそぉぉぉぉぉぉぉっ!!」 やり場のない怒りを近くの巨木にぶつけてその木をへし折るクリフ。 「ソフィア。無駄です。その方は既に死んでいます」 意外にもソフィアに最初に声を掛けたのはレザードだった。 ソフィアは突きつけられた事実を否定するかのように頭を振る。 もう手遅れだというのに彼の傷口に癒しの紋章術『ヒーリング』を施す。 「傷は塞ぎました…。だから、起きて下さい…。起きてよ…ルーファスさん! お願いだから…」 嗚咽混じりの声でルーファスに語りかけるが当然のように返事はない。 「いい加減にしないかっ!!」 暗がりの森の中にレザードの叱責が木霊した。 「貴様の気持ちはわからんでもないが、こんな事で取り乱しても主催の思う壺だぞっ! しかも貴重な魔力も無駄遣いするとは…いつ敵が襲ってくるかもわからぬこの状況でいざという時どうするつもりだ!? このザマでは次は貴様の番だ! だがそれでは困るのだよ、対主催の鍵となるかも知れん貴様に死なれてはな!」 レザードのセリフに怒りを露にして反論するソフィア。 「こんな事? こんな事ですか!? 貴方にとっては些細な事かもしれない…。また目の前で誰かが死んだだけの事かもしれないっ! でもこの人は、ルーファスさんは私の事を何度も助けてくれた人なんですっ!」 「そうだ。貴様はまたこの男に守られた。それは貴様が自分の身すら守れぬほど弱いからだ。そして、貴様はこれからも誰かに守られる。 その誰かを犠牲にしてなっ!! ソフィアよ、心を強くしなさい。魔法の強さは即ち精神の強さ。 この者の死を乗り越える様な心の強さが己を守る力に、そして誰かを救う力になるのです」 (レザードの奴…。言葉はきついがソフィアを立ち直らせようと?) 流石のレナスも面を食らった。まさかレザードが他者を思いやるような行動に出るとは。 ソフィアはとうとう黙り込んでしまった。 レザードはレナスの側に寄るとソフィアに聞こえない様にレナスに囁いた。 「彼女へのフォローをお願いします。私はソフィアの見えない所でこの方の遺体を弔おうと思います。 まだ彼女はこの方との別れに耐えられそうにありませんからね」 レナスは感動すら覚えた。あのレザードがこんなセリフを口にするなんて。 「わかった。ソフィアの事は任せろ。彼の遺体の方は頼んだぞ」 「はい…心得ています」 レナスはまだ涙を流してるソフィアを伴って離れていった。 「貴方も彼女の側に」 続けてクリフも促す。 「アンタはどうするんだ?」 漸く怒りが収まり始めたクリフが応える。 「この方の遺体を弔おうと思います」 「だったら俺も」 「いえ…。貴方はソフィアの友人なのでしょう? なら、彼女を慰めてあげて下さい。これからの心構えは私の方で彼女に諭したつもりです。 ですが、あのような少女にこの別れはきついでしょう。支えてあげて下さい」 クリフの申し出をやんわりと断るレザード。彼をよく知るものがいたら鳥肌モノのセリフを吐く。 「わかった」 言われたとおりクリフもレナスとソフィアが消えた暗がりへと消えていった。 そんなクリフの様子を見てレザードが口元を歪めた事に気付く者はこの場にはいなかった。 ルーファスを抱きかかえるとレナスたちが消えていった方向とは間逆の方へと歩き出すレザード。 (流石に我ながら歯が浮くような事を言ったものだ。しかし単純な奴らだ。まぁ、私の思惑に気付く者がいるとは思えんがな) 十分遺体を運んだところで地面に下ろす。 『バーンストーム』 その傍らの地面に大穴を空けその穴にルーファスの遺体を降ろす。 「汝 美の祝福賜らば 我その至宝 紫苑の鎖に繋ぎ止めん」 おもむろに大魔法の詠唱を始めたレザードは 『アブソリュート・ゼロ』 作り出した絶対零度の氷柱にルーファスの遺体を閉じ込めた。 (この器には腐敗してもらっては困るからな) 雲の隙間から降り注ぐ月明かりが氷柱を美しく照らす。 (フフフ…。まさかハーフエルフと引き合わせてくれるなんて…。やはり貴方は最高ですよレナス・ヴァルキュリア。 彼が刺された時は肝を冷やしましたが、傷も最小限に留まり、その傷もあの小娘が塞いでくれましたしね。 災い転じて福となすといったところでしょうか? 主神オーディンの魂の器であるハーフエルフ。彼の体を使えば私はヴァルキュリアと同格の存在となれる。すなわち、成長する事ができる神へと! それに私の仮説が正しければ、この場でかけられている能力の変更は個人レベル。 彼の体に私の魂を入れることが出来れば今私が使えない術も使用可能となる可能性が高い。 肉体の能力もオーディンと匹敵するものになり主催を倒す事も可能でしょう。 現在の私1人の力では輪魂の呪を行う事は難しいですが、ブラムスや強力な魔導師の力を使えばあるいは…。 まぁ、首輪があるうちは術を行使しても爆破される恐れがあって出来ないわけですがね。 だが確実に手札は揃いつつある。フフフ…、レナス貴方をこの手にすることができる日もそう遠くはないのかもしれませんね) &color(red){【ルーファス死亡】} &color(red){【すず死亡】} &color(red){【残り29人】} ※ルーファスの遺体は傷を塞いだ上で氷漬けにし、D-5とD-4の境目(D-5側)に掘った穴に埋めてあります。 ※すずの荷物は遺体のすぐ側に放置。回収するかどうかは次の方に任せます。 【D-5/夜中】 【レザード・ヴァレス】[MP残量:70%] [状態:正常] [装備:天使の唇@VP+大いなる経典@VP2] [道具:神槍パラダイム@RS・アップルグミ×2@TOP・エルブンボウ@TOP・レナス人形フルカラー@VP2 連弓ダブルクロス@VP2・矢×27本・荷物一式×4分(ルーファスの所持していた荷物を2つのバックに入れて持ち運んでます)] [行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る] [思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える] [思考2:その一端として、非常に不本意だが、ソフィアに移送方陣を修得させてやる] [思考3:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない] [思考4:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す] [思考6:輪魂の呪を行い成長する神になる] [思考7:首輪をどうにかしたい] [備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません] [備考2:レザード1人では輪魂の呪は出来ません。協力してくれる魔術師が必要です] [現在地:D-5とD-4の境目(D-5側)] 【ソフィア・エスティード】[MP残量:80%] [状態:ルーファスを目の前で殺された事による精神的ショック状態] [装備:クラップロッド@SO2、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3] [道具:レザードのメモ、荷物一式] [行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める] [思考1:フェイトに会いたい] [思考2:レザードの指示に従い魔法(移送方陣)を修得する] [思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考4:自分の知り合いを探す] [思考5:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい] [現在地:D-5西部] ※レザードのメモには移送方陣についての詳細が書かれていますが、これを読めば移送方陣が修得出来るという訳ではありません。 【レナス・ヴァルキュリア】[MP残量:100%] [状態:戦闘によりやや疲労+何も出来ない自分に対する自責の念] [装備:魔剣グラム@VP] [道具:ダブった魔剣グラム@RS、合成素材×2(ダーククリスタル、スプラッシュスター)@SO3、荷物一式] [行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する] [思考1:ルシオの保護] [思考2:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)] [思考3:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考4:協力してくれる人物を探す] [思考5:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す] [思考6:レザードを若干見直した] [思考7:ソフィアを励ます] [現在地:D-5西部] 【クリフ・フィッター】[MP残量:70%] [状態:戦闘と走り回ったことによる疲労] [装備:ミスリルガーター@SO3・閃光手榴弾@現実・サイレンスカード×2@SO2] [道具:ドラゴンオーブ・エターナルソード・メルーファ@SO2・バニッシュボム×5@SO3・フレイの首輪・荷物一式×3] [行動方針:首輪を解除してルシファーを倒す] [思考1:ソフィアを励ます] [思考2:脱出の手段を見つける] [思考3:仲間を集める(マリア、フェイト優先)] [思考4:首輪は調べられたら調べる] [思考5:役場へ戻る] [現在位置:D-5西部] ---- [[第95話>カタストロフィーは想いとは裏腹に]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第97話>不協和音]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第89話>名選手名コーチにあらず]]|レザード|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第89話>名選手名コーチにあらず]]|ソフィア|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第89話>名選手名コーチにあらず]]|レナス|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第88話>Partner]]|クリフ|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第88話>Partner]]|COLOR(red):ルーファス|[[第103話>Start Up from Prolonged Darkness]]| |[[第77話>待ち合わせ]]|COLOR(red):すず|[[第118話>鎌石村大乱戦 第二幕 ~龍を屠る赤き一撃~(前編)]]|

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