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**第120話 Stairway To Heaven(後編) 「ドラゴンオーブをこちらへ」 レザードのその言葉で、ソフィアは固まった。 ソフィアはレザードと再会してから今まで、ルーファスの言葉に従い、彼女なりにレザードに気を許さないでいるつもりだった。 だがルーファスからは、具体的にどのようにオーブを護れば良いか、までは聞いていない。 今のようにレザードから直接ドラゴンオーブを求められてしまっている状況では、一体どうすれば良いのだろうか? ルーファスの遺言なのだ。正直にオーブの存在を話して渡す訳にもいかない。 レザードは信用出来ないとは言え仲間なのだ。戦って済ませる訳にもいかない。 オーブを護る為には、レザードを騙すしかないだろう。ソフィアはそう考えた。 しかし、騙すと言ってもどうやって? つい最近まではただの女子高生に過ぎなかったソフィアには、騙し合いや駆け引きの経験などは全くと言って良い程無い。 そのような経験は、精々がフェイト相手にしてきたくらいである。 それも、最後には必ずフェイトが折れてくれる、ソフィアのいう事を聞いてくれる、という暗黙のルール付きで。 とてもではないが、フェイト以外の人物を相手取ってその舞台に立てる能力はソフィアには無かった。 「どうしたんだよ、ソフィア?」 固まってるソフィアを怪訝に思ったのか、チェスターが声を掛ける。 レザードは変わらず、微笑みながら手を差し出している。 そう、何も言わなくても怪しまれるのだ。早く何か答えなくてはならない。 そうして、ソフィアが出した結論は、 「……持ってません」 ただ、白を切る事だった。そのくらいしか、思いつかなかった。 「持っていない?フッ、では何故バッグをそのように大切そうに抱え込んでいる?」 「!?」 指摘されて、ソフィアは思わず自分の持つデイパックを見る。そこで初めて気が付いた。 確かに先程まではただ手に持っていただけの筈のデイパックを、今はしっかりと抱え込んでいた。 レザードからオーブを渡すように言われた時、無意識にオーブの入っている自分のデイパックを抱え込んでしまったようだ。 ドラゴンオーブを護ろうとする想いが強かった故の行動だったのだろう。が、この場合は完全に裏目に出ていた。 「こ、これは――」「なっ……何だ!?」 どうにか取り繕おうとしたその時、聞こえてきたチェスターの小さな悲鳴。 ソフィアが顔を起こすと、何故かレザードが居た筈の位置にはボーマンが居た。驚いたような表情でこちらを見ている。 (え、何で?!レザードさんは――) ソフィアが戸惑ったその時、 「余計な手間をかけさせないで頂きたいものだが」 「ッ?!きゃあッ!」 気付かぬ内にソフィアのすぐ隣に居たレザードがデイパックを強引に奪い取った。 「レザード!てめえ何してんだよ!!」 そのレザードの行動に怒りを見せるチェスターがレザードに突っ掛かろうとしたが、 ボーマンが止めに入り、チェスターの身体を両手で抑えた。 「落ち着けってチェスター!レザードにも何か考えが有っての事だろ?」 「何言ってんだボーマンさん!  何だかよく分からねえ魔術まで使って荷物をひったくるなんて絶対おかしいだろ!」 「いや、それはな――」 チェスターの知る所ではないが、レザードは特に魔術を使った訳ではない。 ただ、ソフィアが下を向いた瞬間、『転換の杖』を使用してチェスターとソフィアの位置を入れ替え、 ソフィアを自分の隣に移動させただけであった。そして2人が戸惑っている隙にデイパックを奪い取ったのだ。 レザードは、もめているボーマンとチェスターを完全に無視してソフィアのデイパックを開き、 当然のように中からドラゴンオーブを取り出した。 取り出されたオーブは只の水晶玉のようだったが、レザードが手をかざした途端、 ルーファスがソフィアにそれを託した時と同じように、いや、その時以上に、燃え盛るような深紅の輝きに包まれる。 一瞬、その場に居た全員がオーブの輝きと、その尋常ならざる魔力に心を奪われた。 「これは……」 「何だ……!?……この紋章力は……?」 「……きれい……」 「フフフ。どうやらオーブに異常は無いようだな。これさえあれば……」 レザードは1人、満足そうに微笑む。 その表情を見たソフィアはハッと我に返り、目を見開いた。 ――絶対にアイツに心を開くな。アイツは危険だ―― 再びソフィアの頭に響くルーファスの声。ソフィアはルーファスの真意をようやく理解出来た気がした。 ドラゴンオーブの輝きが照らし出しているレザードの微笑の上には、その輝きによって生み出される影が揺らめいている。 ソフィアには、それがまるでレザードの邪悪さが揺らめいているように見えた。レザードの本質が浮かび上がっているように見えた。 (この人は……危険……ッ!!) ルーファスの意思に突き動かされるかのように、ソフィアは叫んだ。 「か、返して下さい!それは私が護らなくちゃいけないんです!」 「返せだと?何か勘違いをしているようだな。このドラゴンオーブは元々私の持ち物なのだぞ?」 「……え!?」 「ルーファスが私の荷物から――」「レザードッ!!」 ボーマンの身体を突き飛ばすように押して、チェスターはソフィアの前に出てきた。 レザードは彼の方を向き、呆れたような素振を見せる。 「おやおや……人の話に割って入るとは随分不躾な方ですね?」 「ふざけてんじゃねえ!ソフィアから奪った荷物を今すぐ返しやがれ!」 今にも弓を構えだしそうなチェスターに、レザードは「やれやれ」と首を振る。 「仕方有りませんね。ボーマン、こちらへ」 「あん?……何だよ?」 ボーマンがレザードの方へと移動すると、 「ソフィア。しっかりと受け取って下さいよ?」 レザードはソフィアの頭上に向かいデイパックを放り投げた。 「あ!」 ソフィア、チェスター、ボーマンまでもが思わずデイパックを目で追った。 デイパックはソフィアの頭上を越える軌道を取っていた。それを見ていた為、彼等は誰1人として気付かない。 レザードの足元で方陣が描き始められた事に。 方陣が光り輝き始めた。そして、レザードは方陣の中で、言った。 「2人共、平瀬村は危険である可能性は高い。くれぐれも注意して下さい。  それでは後程、鎌石村でお会いしましょう」 突然レザードの方向から輝きだした光に振り向いたチェスターとソフィアは見た。 レザード、ボーマン、レナスが光の中へ姿を消していく瞬間を。 「何だ!?おい、レザードォ!!」 「これ……!」 チェスターとソフィアが叫ぶが、既に遅い。 光が消えた時、レザード達3人の姿もまた、消えていた。 ☆  ★  ☆ (間に合わなかった……くそぉ!) 左手に握る首輪探知機を睨み、クロードは悔しそうに顔を歪めた。 アシュトンの目指す方向を探知機で確認した時、確かに2つの光点が存在していた。 これがアシュトンの言う2人組のマーダーなのだとクロードは判断し、 彼等との正確な距離を測る為に探知機の探知範囲を最も縮小して進んでいたのだが、 しばらく歩き、もう一度探知機を確認してみた時の事。 このエリアの北西寄りに有った2つの光点がこのマーダー組に近付いており、ついには接触してしまったのだ。 それを見たクロードはアシュトンに首輪探知機の事を伝え、慌てて走り出した。 ギョロとウルルンを消滅させるような危険な相手と接触しては、どう考えても殺される。 一番近くに居るのは自分達だ。助けられるのは自分達しかいない。彼等を助けなくては。 そう考え、走り出したのだ。 だが、現実は非情である、とでも言おうか。 クロード達が走り出してからしばらく後に、4つまとまっていた光点の内の2つが消え去ってしまった。 光点が消える……それはすなわち、その光点の人物の“死”だ。 (こいつらは……。アシュトンの敵討ちを止めていられる状況じゃなさそうだ。この2人は絶対に倒さなくちゃならない!) モニター越しに、とは言え、殺人を見せつけられたクロードは自らの正義感を奮い立たせた。 ギョロとウルルンを消滅させ、新たに犠牲者を増やしたマーダー組。 放置しておけば殺戮、惨劇は繰り返されるばかりだろう。今ここで倒さなくてはならない。 「ん……動いた!こいつら移動を始めたぞ!これは……僕らの方向だ!」 光点はクロード達の方向に向かって移動を始めている。 「こっちに来るんだったら……」「クロード!その機械ちょっと貸して!」 「え?わっ!」 アシュトンはクロードから、半ばひったくるようにして探知機を奪い取った。 (いてて……何だよ乱暴だな……  でも、この2人組がこっちに来るのは好都合だ!これなら先回りして待ち伏せ出来る!  まあ……ちょっと卑怯かもしれないけど、仕方ないよな……) 相手は凶悪な殺戮者達だが、アシュトンの話に寄れば1人は弓使い、1人は紋章術師だ。 この森の中で待ち伏せして至近距離から攻撃出来れば、クロード達は圧倒的有利に戦える筈。 己の作戦の姑息さには少々抵抗を感じるが、相手は危険な殺戮者達。 確実に倒さなくてはならないのだから手段を選んではいられないだろう。 「アシュトン。こいつらだけど……」 「うん……分かってるよ。クロード」 「え?」 「こいつら……逃がすもんか!!」 言うが早いか、アシュトンは探知機を持ったまま走り出してしまった。 「ええ!?ちょっ、待てよアシュトン!!こいつらには進路を先回りして待ち伏せて……おーい、話を聞けってぇ!!  ……駄目だ、興奮しすぎてる!今のアシュトンに細かい作戦考えさせるのは無理か!  ……ってまずい!そんな興奮してる時にその2人と鉢合わせたら……」 あれ程冷静さを失っているアシュトンがマーダーと再会したらどうなるか? 最悪の想像が頭を過(よぎ)り、クロードは思わず身震いをした。 アシュトンは疲労をまるで見せる事なく森を駆け抜けていく。 「待てよっ!アシュトン!!」 クロードもアシュトンを追いかけ始めた。だが、 (え!?は、速い!?) いつもだったら脚力はクロードの方が勝っている筈だったのだが、 今のアシュトンの足はクロードが知る以上に速く、気を抜けばすぐにでも彼を見失ってしまいそうだ。 (何でアシュトンがこんなに速いんだ!?……火事場の馬鹿力ってやつか!?) 今のアシュトンはギョロとウルルンの仇の光点を見た事で怒りを爆発させており、疲労を忘れている。 確かにそれは、『火事場の馬鹿力』と呼ばれる人間の底力に通じるものが有った。 だが、アシュトンの速力上昇の理由は、その精神的な理由だけではない。 最も大きな理由は、ギョロとウルルンが居なくなった事実そのものに有った。 背中に取り付く2匹の龍が消え去ったという身体的、物理的な事実。 皮肉な事に、親友を失った事が、アシュトンにかつての冒険には無い身軽さをもたらしていたのだ。 「アシュ……あッ!」 再び叫ぼうとしてクロードは思い出した。マーダーの2人組との距離はそう遠くはない事を。 叫びながらアシュトンを追いかけていたら、2人組にも声が届いてしまうかもしれない。 こちらの存在、居場所を伝える事となってしまえばますます危険だ。 (くそっ!でもアシュトンを止めないとやっぱり危険だし……とにかく追いつかないと!  こういう暴走を僕が止めないといけないっていうのに……ッ!) アシュトンを護る為に。そして暴走を止める為に。 クロードは全力でアシュトンの後を追った。 ☆  ★  ☆ 辺りにはまるで人気も無く、不気味な程に静かな場所で、突如光り輝く方陣が地面に展開され、3人の人間が出現した。 「……何だ?!チェスター?何処行った?」 光が消えた時、チェスター、ソフィアの姿もまた、消えていた。 そう考えたボーマンは、思わずチェスターを探した。だが、彼等の姿は何処にも見られない。 (……何処行ったんだ?) ボーマンはこの現象の元凶である筈のレザードを振り向いた。 「レザード、何したんだ?殺した……んじゃねえよな?」 「殺してなどいませんよ。彼等にはまだ利用価値は有るのでね」 「じゃあ、あいつらは何処に行ったんだよ?」 「まだ先程の場所に居りますよ?移動したのは我々の方です」 「あん?」 レザードはボーマンの背後を指差して言った。 「見覚えが有るでしょう?」 ボーマンはレザードの指している先を見た。 そこには、凍結が解除されている事以外は先程同様の姿をしているクリフの死体が横たわっていた。 「おっ!?……クリフ……!?」 「ええ。ここは貴方とクリフの戦っていた場所です」 ボーマンは周囲を見渡した。 レザードの言う通り、確かにそこは先程までクリフと戦っていた場所だった。 (……こんなところまで一瞬で移動出来るのか……  さっきの話じゃ死んだ奴を生き返らせたり……こいつ、何でもアリだな……) ボーマンは改めてレザードの能力に舌を巻いた。 「でも何でこんなとこ来たんだ?忘れ物した……とか言わねえよな?」 「…………いえ、実は1つ試しておきたい事が有りまして」 「試したい事?」 「ええ。貴方にも確認して頂きたい事です。  まあ大して時間は掛かりません。その間、休んでいて下さって結構ですよ?」 「……そうか?……じゃあそうさせてもらうわ」 ボーマンは適当な樹の側で座り込み、寄りかかった。 レザードの様子を窺うと、彼はクリフの死体の側で屈み込んでいた。 何をしているのか気にはなるが、ボーマンには今の内にやるべき事が有る。 (何してやがるんだか知らねえが……俺はアイテムの確認をしとかねえとな) そう、これまで時間が無くて出来なかったが、ようやくクリフの支給品を確認する事が出来るのだ。 先程はとりあえず中身を詰め替えただけだったので、 自分がどのようなアイテムを持っているのか、ボーマンは把握していなかった。 (さてと、ミスリルガーター以外には何が入ってんだ?) ボーマンはデイパックを開き、中身を出した。 (まずは……剣が、2種類……こっちの小剣はアシュトンが使ってた事も有った気がするな。  まあ俺には必要無いし、どっちの剣もトレード用だな。レザードの仲間と何か交換出来るかもしれねえ。  他には……これは爆弾か?ボム系は色んな種類有るからな。説明書は……っと。  なになに?……障害物を消し去る爆弾?人体には影響無いって……また特殊な爆弾だな。  まあ何かには使えるだろうが……微妙だな。  後は……おっ!!こいつはもしかして……やっぱりサイレンスカードか!) クリフの持っていたアイテムの中には、現状のボーマンにとって最も重要なアイテムが有った。 すなわち、レザードへの対抗手段と成り得るだけのアイテムだ。 サイレンスカードは強制的に呪紋を詠唱不能にするアイテム。魔術師のレザードには最大級に有効なアイテムとなる。 (こいつが有ればチェスターやアシュトンが居なくてもレザードに勝てるじゃねえか!) いくら何でも術の使えないレザードに負ける事は無い筈だ 新たに芽生えたレザードへの勝機に、ボーマンの胸は高鳴っていた。 (……ま、そうは言っても今すぐ仕掛ける必要は無いな。  こいつの性格からすりゃあ、用済みになった時点で俺を殺そうとするんだろうが、  ソフィアが生きてる限りは俺との取引を破棄にはしないだろ。それまでは精々利用させてもらうぜ!) 一時はどうなる事かと考えたが、レザードに対する保険は出来た。 自らの優位性を確信したボーマンは、その高揚感からか、ふとレザードを見た。 「なッ!?何だとぉ!?」 そして、度肝を抜かれた。 レザードの前には、確かに胸に風穴の開いているクリフが幽鬼のように立っていたのだ。 ☆ (ヴァルキュリアとソフィアは分断させた。今は、とりあえずそれで良い。  ……念の為、ブラムスとの合流後には、彼にも平瀬村に向かって頂くとしようか。  ブラムス程の者をソフィアの護衛に向かわせたのならば、  ヴァルキュリアも覚醒した後にソフィアを助けに行こうとは考えないだろう。  今は……それで良い……今は……) レザードがソフィアを殺さなかった事に難しい理由は無い。 ただ単純に、マリア・トレイターの居場所を突き止める事、そして合流する事を優先しただけだ。 マリア・トレイターの能力『アルティネイション』は、この世界の物質の性質を『改変』出来るという。 つまり、この忌々しい首輪を最も簡単に無効化出来る可能性を持つ人物なのだ。 レザードにとってもそのような人物は重要である。出来るだけ効率よく仲間にしたい。 そのマリアを仲間にする為には元々の知り合いであるソフィアは都合が良く、 今は殺すよりも利用した方が良い。レザードはそう考えた。 勿論この島に連れて来られている以上はマリアも能力に制限を掛けられている筈。普通に考えれば首輪の改変など不可能だろう。 だが、ドラゴンオーブの魔力ならばどうか。 オーブはこの島での制限すら無効にし、レザードに移送方陣を使わせた。 更には、本来ならばレザード1人では使用すら出来ない換魂の法をも使わせた。 ならば、マリア・トレイターにドラゴンオーブを持たせれば、 首輪はおろか参加者に掛けられている能力制限だろうと『改変』する事は可能の筈。 ドラゴンオーブの力を体感しているレザードは、そう踏んでいた。 そしてレザードがこの場所で試しておきたかった事。 それは『ドラゴンオーブを利用した屍霊術がどれ程の効力を発揮出来るか』だった。 前述の通り、オーブはレザードに移送方陣、換魂の法を使わせた。 それ程の力を持つドラゴンオーブを利用して屍霊術を発動すれば、一体どれ程の効力が有るのか? レザードの普段の屍霊術を上回るのは当然として、その死体の能力をどこまで引き出せるのか? 生前以上の能力は出せるのか?肉体の強度は上がるのか?精神力が枯渇する事も無くなるのではないか? 屍霊術で操る死体にブラッディアーマーを着せたらどうなるのか?様々な期待が持てる。 結果次第では、脱出の為の最重要人物であるフェイト、マリア、ソフィアの3名は死んでいても構わない。 いや、寧ろ殺害する方が相応しいかもしれない。 能力を制限されている今の状態よりも、屍霊術で操る方が能力を引き出せるのだとしたら、 彼等を生かしておく理由は何も無いのだから。 例えレザードの期待通りの効果が出ないとしても、最低でもルシファーに対しての戦力的な問題は解決する。 この島にある全ての死体がこちら側の戦力となるのだから。 そう、屍霊術を試しておく事は、脱出の為の保険でもあり、ルシファーへの対抗手段でも有るのだ。 1つ問題が有るとすれば、屍霊術に対して難色を示すであろうレナスの存在だが、 ルシファーを倒すという大義名分は有る。説得も難しくは無いだろう。 「さて、ボーマン。貴方は生前のクリフと直接戦っている、極めて貴重な人物です」 「おい、ちょっと待て!まさかてめえ……そいつと戦えってんじゃねえだろうな!?」 「……なるほど、そのような展開も面白そうですが……戦ってみたいですか?」 「冗談じゃねえ!嫌に決まってるだろうが!!」 「ふっ、そうでしょうね。まあ、貴方に戦って頂こうとは考えていませんよ。  今からこのクリフを操り、辺りの樹々に攻撃を仕掛けます。  彼の能力が生前と比べてどの程度変化しているか、その判断をして頂きたい」 ボーマンは1つ溜息を吐くと少々呆れ気味に言った。 「……お前さん本当に何でもアリだな……」 「何か?」 「いや、何でもねえ」 「……まあ良いでしょう。それではいきますよ」 レザードはそう言い、ルシファーを倒す為の、この島を脱出する為の実験を開始する。 とても合理的に。とてもえげつない方法で。 【D-05/黎明】 【レザード・ヴァレス】[MP残量:5%] [状態:精神力を使用した事による疲労(やや大)] [装備:サーペントトゥース@SO2、天使の唇@VP、大いなる経典@VP2] [道具:ブラッディーアーマー@SO2、合成素材×2、ダーククリスタル、スプラッシュスター@SO3、ドラゴンオーブ、アントラー・ソード、転換の杖@VP、エルブンボウ(矢×40本)、レナス人形フルカラー@VP2、神槍パラダイム、ダブった魔剣グラム@RS、荷物一式×5] [行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る] [思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える] [思考2:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない] [思考3:ドラゴンオーブを利用した屍霊術の限界を調べる] [思考4:屍霊術の効力次第ではフェイト、マリア、ソフィアの3人は殺害した方が良い] [思考5:ボーマンを利用し、いずれは足手纏いのソフィアを殺害したい] [思考6:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考7:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す] [思考8:首輪をどうにかしたい] [備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません] [備考2:クリフの持っていたアイテムは把握してません] 【ボーマン・ジーン】[MP残量:10%] [状態:全身に打身や打撲 上半身に軽度の火傷 フェイトアーマーの効果により徐々に体力と怪我は回復中] [装備:エンプレシア@SO2、フェイトアーマー@RS] [道具:サイレンスカード×2、メルーファ、調合セット一式@SO2、バニッシュボム×5、ミスリルガーター@SO3、七色の飴玉×2@VP、エターナルソード@TOP、首輪×1、荷物一式×5] [行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還] [思考1:完全に殺しを行う事を決意。もう躊躇はしない] [思考2:とりあえずレザードと一緒に行動。取引を行うか破棄するかは成り行き次第] [思考3:安全な寝床および調合に使える薬草を探してみる] [備考1:調合用薬草は使いきりました] [備考2:アシュトンには自分がマーダーであるとバレていないと思っています] [備考3:ガソリン塗れの衣類は焼けています。再び引火する可能性の有無は後の書き手さん次第で] [備考4:クリフの持っていたアイテムを把握しました] [備考5:ミニサイズの破砕弾が1つあります] 【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:45%] [状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中] [装備:連弓ダブルクロス(矢×27本)@VP2] [道具:なし] [行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する] [思考1:???] [思考2:ルシオの保護] [思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)] [思考4:4回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:協力してくれる人物を探す] [思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す] [備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます] [備考2:ルーファスの意識はほとんどありません] [備考3:後7~8時間以内にレナスの意識で目を覚まします] 【現在位置:D-05北西部】 ☆  ★  ☆ 弓の心得を持つ者の第六感、いや、五感の全神経だろうか。 (何だ?何か……嫌な感じだ!) 平瀬村へ向かう途中の森の中。 チェスターは前方に何かを感じ取り、これまでレザードへの愚痴ばかりをこぼしていた口を閉じて立ち止まった。 「ソフィア、待ってくれ!……何か聞こえないか?」 「え?………………いえ、特に何も……」 「……いや、聞こえる!」 チェスターは目を閉じて感覚を聴覚に集中させた。 風が立てている夜の森の葉擦れに混じり、それと似て非なる音、落ち葉を掻き分けるような音が聞こえてくる。 その音は、徐々に大きくなってきていた。 「……足音だ!……速いぞ!誰かがこっちに走ってくる!」 「ほ、本当ですか!」 「ああ!」 チェスターは神弓シルヴァンボウを、ソフィアはクラップロッドをそれぞれ構えた。 「……またボーマンさんだったり……」 「そうだと良いけどな」 …………カサカサカサカサ―― 足音はソフィアにも聞こえる程に大きくなり、真っ直ぐにこちらに近付いてきている。 (何だ?まるで俺達の位置が分かってるみたいじゃ……) 唐突に足音が止まった。 (こっちに気付いたのか?……声を掛けるべき……こ、これは?!) 「チェ、チェスターさん!これ!」 チェスターとソフィアは驚愕した。 いつの間にか自分達の周囲に木の葉がビッシリと舞い上げられているのだ。 「これは!アシュ――」「リーフ・スラッシュ!!」 唐突に現れた凄まじい殺気。咄嗟に気配の方向にシルヴァンボウを構えた。 ほぼ同時にチェスターの腕に訪れる衝撃と派手に響く金属音。 並みの弓ならば簡単に切断されていたであろう衝撃に、思わず弓を手から放しそうになる。 チェスターが、ヤバい!、と思う間も無く、アシュトンは次の動作に入っていた。 アシュトンの剣が降り下ろされる直前、 「させないんだから!」 ソフィアのクラップロッドが回転しつつ飛んでいく。 アシュトンは「ちっ!」と舌打ちをしながらそれをガード。 その隙にチェスターは転がるようにしてアシュトンから距離を取り、 ソフィアはブーメランのように戻ってきたクラップロッドをキャッチしてチェスターの横に駆け寄った。 「随分と早いお帰りじゃねえかよ、アシュトン!」 「……2人の仇だ……今度こそ死んでもらうよ!」 「勝手な事を言ってんじゃ…………!?」 アシュトンの足音が聞こえてきた方向で、何かが光っているのが視界に入った。 いや、『光っている』という表現は適切ではない。『燃えている』のだ。 火の玉が数発、こちらの方向へ飛んできていた。 ☆  ★  ☆ どのくらい走ってきたのか、クロード自身にも良く分からない。 アシュトンの走っている気配は感じてはいたが、クロードは完全にアシュトンの姿を見失っていた。 (くそっ!……全然追いつけない!アシュトンがこんな力を出す程激昂するなんて……  僕が追いつかなきゃアシュトンが危険だって言うのに……  ん?金属音!しまった!もうアシュトンが……また金属音だ。……戦いが始まっているんだ!  まずい!まだ距離が遠い!……今聞こえてきたのは……あっちの方だよな?どうにか援護しないと!) クロードは金属音のした方向の見当を付けると、右手に炎の闘気を溜め、 (バースト・ナックル!これで……いけぇ!) 思い切りその方向へ投げつけた。 バースト・ナックルは数発に分裂し、地面に着弾。 そしてアシュトンと、他の2人の姿を照らし出す。やはり戦いは始まっていたのだ。 「見えた!これなら――」 ☆  ★  ☆ 「な、何だ!?」 突如飛んできた火の玉は、チェスター達が避けるまでもなく、2人には当たらない軌道だった。 アシュトンが何かをしたのか?チェスターがそう思うも、アシュトンも驚いた様子でその火の玉を凝視している。 ドンッ! ドンッ! ドンッ! 火の玉は全て地面に着弾して落ち葉を焦がし、周囲を明るく照らし始めた。 (誰だ!?) チェスターがそう考えた次の瞬間、 「ソードッ・ボンバーーーッ!!!」 たった今飛来した火の玉とは比べ物にならない程の大きさの、巨大な火球が飛んできた。 一瞬チェスターの身体が硬直する。 恐怖で?いや違う。チェスター自身も気付いていないが、それは歓喜に近いと言える感情だった。 この火球は知っている。決して忘れる事はない。 捜し求めていた男。今の位置からは死角に居るその男の姿を、チェスターは火球の後ろにはっきりと見ていた。 (この技は!あの野郎のッ!アシュトン!てめえ……やっぱりあの野郎と組んでやがったのか!  そんな奴を俺は一瞬でも仲間だと……アーチェを殺した奴等を仲間だと……ふっざけやがってぇぇぇぇ!!!) 「チェスターさん!?」 「……ッ!」 ソフィアからの呼び掛けで呆けていた自分に気が付いた。既にソフィアは火球の軌道の外へ退避している。 「うおぉ!」 迫り来る火球を何とかギリギリでソフィアの方向へと避けると、 チェスターは立ち上がり様、火球の飛来してきた方向へと向き、 「クロォォォーーードォォォォォォォォォォーーー!!!!!」 腹の底から湧き上がる激情を絶叫に変えた。 ☆  ★  ☆ 「クロォォォーーードォォォォォォォォォォーーー!!!!!」 何?!相手は僕を知っているのか? いや、この声……ここに来てから確かに聞いた事がある! 確か……チサトさん……そうだ、チサトさんと会った時に跳び出してきた彼の声じゃないか! ……え?何だって?!そんな馬鹿な!彼が殺戮者だって?! 彼は僕を殺し合いに乗っていたと誤解してたから攻撃してきたはずだろ!? それが何でアシュトンを攻撃したんだ?何でさっきの2人を殺したんだ?そんなのおかしいじゃ……まてよ? 『――お前があの娘を!あの娘を焼き殺した!そこのアイツみたいに!!――』 そうだ、彼はそう言っていた。僕が誰かを焼き殺したと誤解して問答無用で殴りかかって来たんだ。 まさか…………アシュトンも同じ誤解を受けて?……ギョロ!?炎を吐けるギョロが居たから……? じゃあさっきの2人を殺したのも……誤解で?そんな……冗談だろ?そんな事で……人を殺したのか? そんな事でギョロとウルルンが殺されたのか? 誤解なんかで……あいつの勘違いなんかでギョロとウルルンが殺されたのか……? あいつが跳びかかってきたから……僕はチサトさんに誤解された…… あいつの思い込みのせいで……僕はチサトさんを護れなかった…… あいつの自己満足の為に、僕達は振り回されているっていうのか? あいつの正義の為に、他の誰かが命を危険に晒されなくちゃいけないのか? そんなのって……無いだろ……何なんだよ、あいつは…… ……いくらなんでも……許せない!あいつは……ここで止めなくちゃ! 【D-05/黎明】 【クロード・C・ケニー】[MP残量:80%] [状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)、背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)] [装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP] [道具:昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)] [行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す] [思考1:アシュトンと戦っているやつらを無力化する。殺す気は無い] [思考2:アシュトンと共に行動] [思考3:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する] [思考4:レザードを倒す その為の仲間も集めたい] [思考5:ブレア、ロキとも鎌石村で合流] [備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません] [備考2:チェスターの事は、『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しました] 【アシュトン・アンカース】[MP残量:60%(最大130%)] [状態:疲労中、激しい怒り、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲・ギョロ、ウルルン消滅(但し、その分身軽になった)] [装備:アヴクール@RS、ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3] [道具:無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪探知機@BR、首輪×3、荷物一式×2] [行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる] [思考1:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ] [思考2:プリシスのためになると思う事を最優先で行う] [思考3:ボーマンを利用して首輪を集める] [思考4:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい] [備考1:ギョロとウルルンを殺された怒りが原因で一時的に思考1しか考えられなくなっています] 【ソフィア・エスティード】[MP残量:15%] [状態:疲労中 ドラゴンオーブを護れなかった事に対するショック] [装備:クラップロッド、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3、ミュリンの指輪のネックレス@VP2] [道具:魔剣グラム@VP、レザードのメモ、荷物一式] [行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める] [思考1:アシュトン、クロードを倒す] [思考2:平瀬村へマリアを探しに行く] [思考3:フェイトを探す] [思考4:マリアと合流後、鎌石村に向かいブラムス、レザードと合流] [思考5:自分の知り合いを探す] [思考6:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい] [思考7:レザードを警戒] [備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています] 【チェスター・バークライト】[MP残量:55%] [状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)] [装備:光弓シルヴァン・ボウ(矢×15本)@VP、パラライチェック@SO2] [道具:レーザーウェポン@SO3、アーチェのホウキ@TOP、チサトのメモ、荷物一式] [行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)] [思考1:クロード!殺してやる!] [思考2:アシュトンを倒す] [思考3:平瀬村へ向かい、マリア、クレスと合流。その後鎌石村へ] [思考4:レザードを警戒] [備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません] [備考2:クレスに対して感じていた蟠(わだかま)りは無くなりました] 【現在位置:D-05南部】 ☆  ★  ☆ 血痕を追跡して辿り着いた終点で、 何かを確認するように歩き回るブラムスに抱えられながら、フェイトはこの場所を見下ろしていた。 その場所は酷く荒れ果てており、恐ろしく激しい戦闘が行われた事は一目瞭然だった。 しかし、そこには既に誰も居ない。誰かの死体すらも無い。 有る物と言えば、あちらこちらに飛散している血痕と、散らばっている矢くらいのもの。 手掛かりはここで尽きてしまったようだ。 「さっきの少女はここで……こんな戦闘に巻き込まれたって言うのか……?」 「……クン……クン…………いや、『巻き込まれた』のではない。  あの娘……ここで数人を相手取って戦っていたようだ。その痕跡が残っている」 フェイトはその言葉に驚き、勢いよくブラムスを見上げた。 「何を言ってるんですか!?あんな子にそんな事出来るわけが無いですよ!」 ブラムスは頭を振り、 「具体的にどの様な事が起きたのかまでは判らぬが、  この場に残る娘の血痕から動きを分析すれば、あの娘が只の人間ではない事は分かる。  ……おそらくは我やレナスに匹敵する実力の持ち主であろう」 そう明言した。 獲物を追跡する為に備えられている不死者の本能。 血液の臭いで人物の区別がつけられるブラムスならではの洞察だ。 「そんな馬鹿な!……あんな子が?どう見たってただの女の子だったのに……」 「……フェイト。気付かぬか?『あの娘は我やレナス同等の力を持つ』……我はそう言ったのだ」 「はい……?あっ!」 少し遅れてフェイトは気付いた。 「それじゃまさか……ここで戦っていたのがレナスさんやソフィア達……?」 「然様(さよう)」 何故かヅラがキラリと輝いた……フェイトはそんな錯覚を起こす。 「レナスに匹敵する実力者が其処彼処(そこかしこ)に沸いて出てくるとは考え難い。  レナスはここであの娘と戦い、そして命を落とした。  だが、レナスもただで殺された訳ではなく、敵にもそれ相応の深手を負わせ、相打ちに持ち込んだのだ。  それならばレナスが殺されているにも関わらず、レザードやソフィアが未だ生存している事に説明はつく」 その激闘の結果がこの荒野という事だろうか。 フェイトは先程のブラムスとミカエルの戦闘と戦闘後の状況を思い出し、そして納得する。 ブラムスクラスの強者同士が戦えば、その戦闘地域周辺がただでは済みようが無い事は経験済みだ。 「だったら……ソフィアは無事なんですね!」 少なくとも『レナスを殺した危険人物がソフィアを追っている』という事は無いのだ。 だが、ブラムスは再び頭を振った。 「いや、あの娘がここから立ち去った後、この場では更に別の戦闘が行われている。  飛散している血液の鮮度で分かるのだ。  ソフィアがその時に居合わせていたのなら、安全と決め付けるのは早計であろう」 「そ、そんな!」 「兎にも角にも、最早この場には誰も居らぬ。ならば追跡を続けねばなるまい」 そう言いブラムスは再び辺りの血痕を確認し始めた。 「どれがソフィアの血痕か分かるんですか!?」 「我はソフィアの血液を知らぬ故、判別は出来ぬが……」 ブラムスの見たところ、この場所から移動している血痕は先程の少女の物を除けば3グループ有った。 1グループはここから北の方向へと向かっている2種類の血痕。 1グループはここから南西の方向へと向かっている1種類の血痕。 そして、正確には『移動している血痕』ではないが、 血を流しながらも一箇所に留まっていたような血痕の残る場所から南の方向へと向かっている数人分の足跡と、 何かを引きずっているような痕跡。 このどれかにソフィアは必ず居る筈なのだ。 ブラムスは少しの間思案して、口を開いた。 「追跡すべきは――」 【D-05/黎明】 【ブラムス】[MP残量:90%] [状態:キュアブラムスに華麗に変身。本人はこの上なく真剣にコスプレを敢行中] [装備:波平のヅラ@現実世界(何故か損傷一つ無い)、トライエンプレム@SOシリーズ、魔法少女コスチューム@沖木島] [道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2、和式の棺桶、袈裟(あちこちが焼け焦げている)、仏像の仮面@沖木島、荷物一式×2] [行動方針:自らの居城に帰る(成功率が高ければ手段は問わない)] [思考1:追跡する血痕、痕跡を選ぶ] [思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す] [思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける] [思考4:フレイ、レナスを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)] [思考5:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流] [血痕、痕跡について] ブラムスの見つけた血痕、痕跡の内、 ・北に向かっているのはボーマンとクリフのものです。  基本的には、辿れば禁止エリアを経由して、クリフの死体の有る地点に到着します。 ・南西に向かっているのはアシュトンのものです。  基本的には、辿ればこの地点からは遠回りになりますが、D-05南西部を経由してアシュトンの所に到着します。 ・南に向かっているのはルーファスの身体を引きずっていった痕跡です。  辿っても森の中の数十m先で引きずる痕跡は消えています。  この痕跡を辿ってチェスター、ソフィアの後を辿れるかどうかは後の書き手さん次第で。 勿論何かのきっかけで、それ以外の行動を取る事も有り得ます。 【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:95%] [状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)、お姫様だっこ(されている)] [装備:鉄パイプ-R1@SO3] [道具:ストライクアクスの欠片、デッキブラシ@TOP、ソフィアのメモ、首輪×1、荷物一式] [行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える] [思考1:ソフィアと合流したい!] [思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す] [思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない] [思考4:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流] [備考1:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)] 【現在位置:D-05東部】 【残り21人+α】 ---- [[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第121話(前編)>夢は終わらない(ただし悪夢)(前編)]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|フェイト|[[第126話(前編)>王子様はホウキに乗ってやってくる?]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|ブラムス|[[第126話(前編)>王子様はホウキに乗ってやってくる?]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|ボーマン|―| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|レザード|―| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|レナス@ルーファス|―| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|チェスター|[[第123話>恨みと怒りのメビウス]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|ソフィア|[[第123話>恨みと怒りのメビウス]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|クロード|[[第123話>恨みと怒りのメビウス]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|アシュトン|[[第123話>恨みと怒りのメビウス]]|
**第120話 Stairway To Heaven(後編) 「ドラゴンオーブをこちらへ」 レザードのその言葉で、ソフィアは固まった。 ソフィアはレザードと再会してから今まで、ルーファスの言葉に従い、彼女なりにレザードに気を許さないでいるつもりだった。 だがルーファスからは、具体的にどのようにオーブを護れば良いか、までは聞いていない。 今のようにレザードから直接ドラゴンオーブを求められてしまっている状況では、一体どうすれば良いのだろうか? ルーファスの遺言なのだ。正直にオーブの存在を話して渡す訳にもいかない。 レザードは信用出来ないとは言え仲間なのだ。戦って済ませる訳にもいかない。 オーブを護る為には、レザードを騙すしかないだろう。ソフィアはそう考えた。 しかし、騙すと言ってもどうやって? つい最近まではただの女子高生に過ぎなかったソフィアには、騙し合いや駆け引きの経験などは全くと言って良い程無い。 そのような経験は、精々がフェイト相手にしてきたくらいである。 それも、最後には必ずフェイトが折れてくれる、ソフィアのいう事を聞いてくれる、という暗黙のルール付きで。 とてもではないが、フェイト以外の人物を相手取ってその舞台に立てる能力はソフィアには無かった。 「どうしたんだよ、ソフィア?」 固まってるソフィアを怪訝に思ったのか、チェスターが声を掛ける。 レザードは変わらず、微笑みながら手を差し出している。 そう、何も言わなくても怪しまれるのだ。早く何か答えなくてはならない。 そうして、ソフィアが出した結論は、 「……持ってません」 ただ、白を切る事だった。そのくらいしか、思いつかなかった。 「持っていない?フッ、では何故バッグをそのように大切そうに抱え込んでいる?」 「!?」 指摘されて、ソフィアは思わず自分の持つデイパックを見る。そこで初めて気が付いた。 確かに先程まではただ手に持っていただけの筈のデイパックを、今はしっかりと抱え込んでいた。 レザードからオーブを渡すように言われた時、無意識にオーブの入っている自分のデイパックを抱え込んでしまったようだ。 ドラゴンオーブを護ろうとする想いが強かった故の行動だったのだろう。が、この場合は完全に裏目に出ていた。 「こ、これは――」「なっ……何だ!?」 どうにか取り繕おうとしたその時、聞こえてきたチェスターの小さな悲鳴。 ソフィアが顔を起こすと、何故かレザードが居た筈の位置にはボーマンが居た。驚いたような表情でこちらを見ている。 (え、何で?!レザードさんは――) ソフィアが戸惑ったその時、 「余計な手間をかけさせないで頂きたいものだが」 「ッ?!きゃあッ!」 気付かぬ内にソフィアのすぐ隣に居たレザードがデイパックを強引に奪い取った。 「レザード!てめえ何してんだよ!!」 そのレザードの行動に怒りを見せるチェスターがレザードに突っ掛かろうとしたが、 ボーマンが止めに入り、チェスターの身体を両手で抑えた。 「落ち着けってチェスター!レザードにも何か考えが有っての事だろ?」 「何言ってんだボーマンさん!  何だかよく分からねえ魔術まで使って荷物をひったくるなんて絶対おかしいだろ!」 「いや、それはな――」 チェスターの知る所ではないが、レザードは特に魔術を使った訳ではない。 ただ、ソフィアが下を向いた瞬間、『転換の杖』を使用してチェスターとソフィアの位置を入れ替え、 ソフィアを自分の隣に移動させただけであった。そして2人が戸惑っている隙にデイパックを奪い取ったのだ。 レザードは、もめているボーマンとチェスターを完全に無視してソフィアのデイパックを開き、 当然のように中からドラゴンオーブを取り出した。 取り出されたオーブは只の水晶玉のようだったが、レザードが手をかざした途端、 ルーファスがソフィアにそれを託した時と同じように、いや、その時以上に、燃え盛るような深紅の輝きに包まれる。 一瞬、その場に居た全員がオーブの輝きと、その尋常ならざる魔力に心を奪われた。 「これは……」 「何だ……!?……この紋章力は……?」 「……きれい……」 「フフフ。どうやらオーブに異常は無いようだな。これさえあれば……」 レザードは1人、満足そうに微笑む。 その表情を見たソフィアはハッと我に返り、目を見開いた。 ――絶対にアイツに心を開くな。アイツは危険だ―― 再びソフィアの頭に響くルーファスの声。ソフィアはルーファスの真意をようやく理解出来た気がした。 ドラゴンオーブの輝きが照らし出しているレザードの微笑の上には、その輝きによって生み出される影が揺らめいている。 ソフィアには、それがまるでレザードの邪悪さが揺らめいているように見えた。レザードの本質が浮かび上がっているように見えた。 (この人は……危険……ッ!!) ルーファスの意思に突き動かされるかのように、ソフィアは叫んだ。 「か、返して下さい!それは私が護らなくちゃいけないんです!」 「返せだと?何か勘違いをしているようだな。このドラゴンオーブは元々私の持ち物なのだぞ?」 「……え!?」 「ルーファスが私の荷物から――」「レザードッ!!」 ボーマンの身体を突き飛ばすように押して、チェスターはソフィアの前に出てきた。 レザードは彼の方を向き、呆れたような素振を見せる。 「おやおや……人の話に割って入るとは随分不躾な方ですね?」 「ふざけてんじゃねえ!ソフィアから奪った荷物を今すぐ返しやがれ!」 今にも弓を構えだしそうなチェスターに、レザードは「やれやれ」と首を振る。 「仕方有りませんね。ボーマン、こちらへ」 「あん?……何だよ?」 ボーマンがレザードの方へと移動すると、 「ソフィア。しっかりと受け取って下さいよ?」 レザードはソフィアの頭上に向かいデイパックを放り投げた。 「あ!」 ソフィア、チェスター、ボーマンまでもが思わずデイパックを目で追った。 デイパックはソフィアの頭上を越える軌道を取っていた。それを見ていた為、彼等は誰1人として気付かない。 レザードの足元で方陣が描き始められた事に。 方陣が光り輝き始めた。そして、レザードは方陣の中で、言った。 「2人共、平瀬村は危険である可能性は高い。くれぐれも注意して下さい。  それでは後程、鎌石村でお会いしましょう」 突然レザードの方向から輝きだした光に振り向いたチェスターとソフィアは見た。 レザード、ボーマン、レナスが光の中へ姿を消していく瞬間を。 「何だ!?おい、レザードォ!!」 「これ……!」 チェスターとソフィアが叫ぶが、既に遅い。 光が消えた時、レザード達3人の姿もまた、消えていた。 ☆  ★  ☆ (間に合わなかった……くそぉ!) 左手に握る首輪探知機を睨み、クロードは悔しそうに顔を歪めた。 アシュトンの目指す方向を探知機で確認した時、確かに2つの光点が存在していた。 これがアシュトンの言う2人組のマーダーなのだとクロードは判断し、 彼等との正確な距離を測る為に探知機の探知範囲を最も縮小して進んでいたのだが、 しばらく歩き、もう一度探知機を確認してみた時の事。 このエリアの北西寄りに有った2つの光点がこのマーダー組に近付いており、ついには接触してしまったのだ。 それを見たクロードはアシュトンに首輪探知機の事を伝え、慌てて走り出した。 ギョロとウルルンを消滅させるような危険な相手と接触しては、どう考えても殺される。 一番近くに居るのは自分達だ。助けられるのは自分達しかいない。彼等を助けなくては。 そう考え、走り出したのだ。 だが、現実は非情である、とでも言おうか。 クロード達が走り出してからしばらく後に、4つまとまっていた光点の内の2つが消え去ってしまった。 光点が消える……それはすなわち、その光点の人物の“死”だ。 (こいつらは……。アシュトンの敵討ちを止めていられる状況じゃなさそうだ。この2人は絶対に倒さなくちゃならない!) モニター越しに、とは言え、殺人を見せつけられたクロードは自らの正義感を奮い立たせた。 ギョロとウルルンを消滅させ、新たに犠牲者を増やしたマーダー組。 放置しておけば殺戮、惨劇は繰り返されるばかりだろう。今ここで倒さなくてはならない。 「ん……動いた!こいつら移動を始めたぞ!これは……僕らの方向だ!」 光点はクロード達の方向に向かって移動を始めている。 「こっちに来るんだったら……」「クロード!その機械ちょっと貸して!」 「え?わっ!」 アシュトンはクロードから、半ばひったくるようにして探知機を奪い取った。 (いてて……何だよ乱暴だな……  でも、この2人組がこっちに来るのは好都合だ!これなら先回りして待ち伏せ出来る!  まあ……ちょっと卑怯かもしれないけど、仕方ないよな……) 相手は凶悪な殺戮者達だが、アシュトンの話に寄れば1人は弓使い、1人は紋章術師だ。 この森の中で待ち伏せして至近距離から攻撃出来れば、クロード達は圧倒的有利に戦える筈。 己の作戦の姑息さには少々抵抗を感じるが、相手は危険な殺戮者達。 確実に倒さなくてはならないのだから手段を選んではいられないだろう。 「アシュトン。こいつらだけど……」 「うん……分かってるよ。クロード」 「え?」 「こいつら……逃がすもんか!!」 言うが早いか、アシュトンは探知機を持ったまま走り出してしまった。 「ええ!?ちょっ、待てよアシュトン!!こいつらには進路を先回りして待ち伏せて……おーい、話を聞けってぇ!!  ……駄目だ、興奮しすぎてる!今のアシュトンに細かい作戦考えさせるのは無理か!  ……ってまずい!そんな興奮してる時にその2人と鉢合わせたら……」 あれ程冷静さを失っているアシュトンがマーダーと再会したらどうなるか? 最悪の想像が頭を過(よぎ)り、クロードは思わず身震いをした。 アシュトンは疲労をまるで見せる事なく森を駆け抜けていく。 「待てよっ!アシュトン!!」 クロードもアシュトンを追いかけ始めた。だが、 (え!?は、速い!?) いつもだったら脚力はクロードの方が勝っている筈だったのだが、 今のアシュトンの足はクロードが知る以上に速く、気を抜けばすぐにでも彼を見失ってしまいそうだ。 (何でアシュトンがこんなに速いんだ!?……火事場の馬鹿力ってやつか!?) 今のアシュトンはギョロとウルルンの仇の光点を見た事で怒りを爆発させており、疲労を忘れている。 確かにそれは、『火事場の馬鹿力』と呼ばれる人間の底力に通じるものが有った。 だが、アシュトンの速力上昇の理由は、その精神的な理由だけではない。 最も大きな理由は、ギョロとウルルンが居なくなった事実そのものに有った。 背中に取り付く2匹の龍が消え去ったという身体的、物理的な事実。 皮肉な事に、親友を失った事が、アシュトンにかつての冒険には無い身軽さをもたらしていたのだ。 「アシュ……あッ!」 再び叫ぼうとしてクロードは思い出した。マーダーの2人組との距離はそう遠くはない事を。 叫びながらアシュトンを追いかけていたら、2人組にも声が届いてしまうかもしれない。 こちらの存在、居場所を伝える事となってしまえばますます危険だ。 (くそっ!でもアシュトンを止めないとやっぱり危険だし……とにかく追いつかないと!  こういう暴走を僕が止めないといけないっていうのに……ッ!) アシュトンを護る為に。そして暴走を止める為に。 クロードは全力でアシュトンの後を追った。 ☆  ★  ☆ 辺りにはまるで人気も無く、不気味な程に静かな場所で、突如光り輝く方陣が地面に展開され、3人の人間が出現した。 「……何だ?!チェスター?何処行った?」 光が消えた時、チェスター、ソフィアの姿もまた、消えていた。 そう考えたボーマンは、思わずチェスターを探した。だが、彼等の姿は何処にも見られない。 (……何処行ったんだ?) ボーマンはこの現象の元凶である筈のレザードを振り向いた。 「レザード、何したんだ?殺した……んじゃねえよな?」 「殺してなどいませんよ。彼等にはまだ利用価値は有るのでね」 「じゃあ、あいつらは何処に行ったんだよ?」 「まだ先程の場所に居りますよ?移動したのは我々の方です」 「あん?」 レザードはボーマンの背後を指差して言った。 「見覚えが有るでしょう?」 ボーマンはレザードの指している先を見た。 そこには、凍結が解除されている事以外は先程同様の姿をしているクリフの死体が横たわっていた。 「おっ!?……クリフ……!?」 「ええ。ここは貴方とクリフの戦っていた場所です」 ボーマンは周囲を見渡した。 レザードの言う通り、確かにそこは先程までクリフと戦っていた場所だった。 (……こんなところまで一瞬で移動出来るのか……  さっきの話じゃ死んだ奴を生き返らせたり……こいつ、何でもアリだな……) ボーマンは改めてレザードの能力に舌を巻いた。 「でも何でこんなとこ来たんだ?忘れ物した……とか言わねえよな?」 「…………いえ、実は1つ試しておきたい事が有りまして」 「試したい事?」 「ええ。貴方にも確認して頂きたい事です。  まあ大して時間は掛かりません。その間、休んでいて下さって結構ですよ?」 「……そうか?……じゃあそうさせてもらうわ」 ボーマンは適当な樹の側で座り込み、寄りかかった。 レザードの様子を窺うと、彼はクリフの死体の側で屈み込んでいた。 何をしているのか気にはなるが、ボーマンには今の内にやるべき事が有る。 (何してやがるんだか知らねえが……俺はアイテムの確認をしとかねえとな) そう、これまで時間が無くて出来なかったが、ようやくクリフの支給品を確認する事が出来るのだ。 先程はとりあえず中身を詰め替えただけだったので、 自分がどのようなアイテムを持っているのか、ボーマンは把握していなかった。 (さてと、ミスリルガーター以外には何が入ってんだ?) ボーマンはデイパックを開き、中身を出した。 (まずは……剣が、2種類……こっちの小剣はアシュトンが使ってた事も有った気がするな。  まあ俺には必要無いし、どっちの剣もトレード用だな。レザードの仲間と何か交換出来るかもしれねえ。  他には……これは爆弾か?ボム系は色んな種類有るからな。説明書は……っと。  なになに?……障害物を消し去る爆弾?人体には影響無いって……また特殊な爆弾だな。  まあ何かには使えるだろうが……微妙だな。  後は……おっ!!こいつはもしかして……やっぱりサイレンスカードか!) クリフの持っていたアイテムの中には、現状のボーマンにとって最も重要なアイテムが有った。 すなわち、レザードへの対抗手段と成り得るだけのアイテムだ。 サイレンスカードは強制的に呪紋を詠唱不能にするアイテム。魔術師のレザードには最大級に有効なアイテムとなる。 (こいつが有ればチェスターやアシュトンが居なくてもレザードに勝てるじゃねえか!) いくら何でも術の使えないレザードに負ける事は無い筈だ 新たに芽生えたレザードへの勝機に、ボーマンの胸は高鳴っていた。 (……ま、そうは言っても今すぐ仕掛ける必要は無いな。  こいつの性格からすりゃあ、用済みになった時点で俺を殺そうとするんだろうが、  ソフィアが生きてる限りは俺との取引を破棄にはしないだろ。それまでは精々利用させてもらうぜ!) 一時はどうなる事かと考えたが、レザードに対する保険は出来た。 自らの優位性を確信したボーマンは、その高揚感からか、ふとレザードを見た。 「なッ!?何だとぉ!?」 そして、度肝を抜かれた。 レザードの前には、確かに胸に風穴の開いているクリフが幽鬼のように立っていたのだ。 ☆ (ヴァルキュリアとソフィアは分断させた。今は、とりあえずそれで良い。  ……念の為、ブラムスとの合流後には、彼にも平瀬村に向かって頂くとしようか。  ブラムス程の者をソフィアの護衛に向かわせたのならば、  ヴァルキュリアも覚醒した後にソフィアを助けに行こうとは考えないだろう。  今は……それで良い……今は……) レザードがソフィアを殺さなかった事に難しい理由は無い。 ただ単純に、マリア・トレイターの居場所を突き止める事、そして合流する事を優先しただけだ。 マリア・トレイターの能力『アルティネイション』は、この世界の物質の性質を『改変』出来るという。 つまり、この忌々しい首輪を最も簡単に無効化出来る可能性を持つ人物なのだ。 レザードにとってもそのような人物は重要である。出来るだけ効率よく仲間にしたい。 そのマリアを仲間にする為には元々の知り合いであるソフィアは都合が良く、 今は殺すよりも利用した方が良い。レザードはそう考えた。 勿論この島に連れて来られている以上はマリアも能力に制限を掛けられている筈。普通に考えれば首輪の改変など不可能だろう。 だが、ドラゴンオーブの魔力ならばどうか。 オーブはこの島での制限すら無効にし、レザードに移送方陣を使わせた。 更には、本来ならばレザード1人では使用すら出来ない換魂の法をも使わせた。 ならば、マリア・トレイターにドラゴンオーブを持たせれば、 首輪はおろか参加者に掛けられている能力制限だろうと『改変』する事は可能の筈。 ドラゴンオーブの力を体感しているレザードは、そう踏んでいた。 そしてレザードがこの場所で試しておきたかった事。 それは『ドラゴンオーブを利用した屍霊術がどれ程の効力を発揮出来るか』だった。 前述の通り、オーブはレザードに移送方陣、換魂の法を使わせた。 それ程の力を持つドラゴンオーブを利用して屍霊術を発動すれば、一体どれ程の効力が有るのか? レザードの普段の屍霊術を上回るのは当然として、その死体の能力をどこまで引き出せるのか? 生前以上の能力は出せるのか?肉体の強度は上がるのか?精神力が枯渇する事も無くなるのではないか? 屍霊術で操る死体にブラッディアーマーを着せたらどうなるのか?様々な期待が持てる。 結果次第では、脱出の為の最重要人物であるフェイト、マリア、ソフィアの3名は死んでいても構わない。 いや、寧ろ殺害する方が相応しいかもしれない。 能力を制限されている今の状態よりも、屍霊術で操る方が能力を引き出せるのだとしたら、 彼等を生かしておく理由は何も無いのだから。 例えレザードの期待通りの効果が出ないとしても、最低でもルシファーに対しての戦力的な問題は解決する。 この島にある全ての死体がこちら側の戦力となるのだから。 そう、屍霊術を試しておく事は、脱出の為の保険でもあり、ルシファーへの対抗手段でも有るのだ。 1つ問題が有るとすれば、屍霊術に対して難色を示すであろうレナスの存在だが、 ルシファーを倒すという大義名分は有る。説得も難しくは無いだろう。 「さて、ボーマン。貴方は生前のクリフと直接戦っている、極めて貴重な人物です」 「おい、ちょっと待て!まさかてめえ……そいつと戦えってんじゃねえだろうな!?」 「……なるほど、そのような展開も面白そうですが……戦ってみたいですか?」 「冗談じゃねえ!嫌に決まってるだろうが!!」 「ふっ、そうでしょうね。まあ、貴方に戦って頂こうとは考えていませんよ。  今からこのクリフを操り、辺りの樹々に攻撃を仕掛けます。  彼の能力が生前と比べてどの程度変化しているか、その判断をして頂きたい」 ボーマンは1つ溜息を吐くと少々呆れ気味に言った。 「……お前さん本当に何でもアリだな……」 「何か?」 「いや、何でもねえ」 「……まあ良いでしょう。それではいきますよ」 レザードはそう言い、ルシファーを倒す為の、この島を脱出する為の実験を開始する。 とても合理的に。とてもえげつない方法で。 【D-05/黎明】 【レザード・ヴァレス】[MP残量:5%] [状態:精神力を使用した事による疲労(やや大)] [装備:サーペントトゥース@SO2、天使の唇@VP、大いなる経典@VP2] [道具:ブラッディーアーマー@SO2、合成素材×2、ダーククリスタル、スプラッシュスター@SO3、ドラゴンオーブ、アントラー・ソード、転換の杖@VP、エルブンボウ(矢×40本)、レナス人形フルカラー@VP2、神槍パラダイム、ダブった魔剣グラム@RS、荷物一式×5] [行動方針:愛しのヴァルキュリアと共に生き残る] [思考1:愛しのヴァルキュリアと、二人で一緒に生還できる方法を考える] [思考2:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない] [思考3:ドラゴンオーブを利用した屍霊術の限界を調べる] [思考4:屍霊術の効力次第ではフェイト、マリア、ソフィアの3人は殺害した方が良い] [思考5:ボーマンを利用し、いずれは足手纏いのソフィアを殺害したい] [思考6:四回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考7:ブレアを警戒。ブレアとまた会ったら主催や殺し合いについての情報を聞き出す] [思考8:首輪をどうにかしたい] [備考1:ブレアがマーダーだとは気付いていますが、ジョーカーだとまでは気付いていません] [備考2:クリフの持っていたアイテムは把握してません] 【ボーマン・ジーン】[MP残量:10%] [状態:全身に打身や打撲 上半身に軽度の火傷 フェイトアーマーの効果により徐々に体力と怪我は回復中] [装備:エンプレシア@SO2、フェイトアーマー@RS] [道具:サイレンスカード×2、メルーファ、調合セット一式@SO2、バニッシュボム×5、ミスリルガーター@SO3、七色の飴玉×2@VP、エターナルソード@TOP、首輪×1、荷物一式×5] [行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還] [思考1:完全に殺しを行う事を決意。もう躊躇はしない] [思考2:とりあえずレザードと一緒に行動。取引を行うか破棄するかは成り行き次第] [思考3:安全な寝床および調合に使える薬草を探してみる] [備考1:調合用薬草は使いきりました] [備考2:アシュトンには自分がマーダーであるとバレていないと思っています] [備考3:ガソリン塗れの衣類は焼けています。再び引火する可能性の有無は後の書き手さん次第で] [備考4:クリフの持っていたアイテムを把握しました] [備考5:ミニサイズの破砕弾が1つあります] 【レナス・ヴァルキュリア@ルーファス】[MP残量:45%] [状態:ルーファスの身体、気絶、疲労中] [装備:連弓ダブルクロス(矢×27本)@VP2] [道具:なし] [行動方針:大切な人達と自分の世界に還るために行動する] [思考1:???] [思考2:ルシオの保護] [思考3:ソフィア、クリフ、レザードと共に行動(但しレザードは警戒)] [思考4:4回目の放送までには鎌石村に向かい、ブラムスと合流] [思考5:協力してくれる人物を探す] [思考6:できる限り殺し合いは避ける。ただ相手がゲームに乗っているようなら殺す] [備考1:ルーファスの記憶と技術を少し、引き継いでいます] [備考2:ルーファスの意識はほとんどありません] [備考3:後7~8時間以内にレナスの意識で目を覚まします] 【現在位置:D-05北西部】 ☆  ★  ☆ 弓の心得を持つ者の第六感、いや、五感の全神経だろうか。 (何だ?何か……嫌な感じだ!) 平瀬村へ向かう途中の森の中。 チェスターは前方に何かを感じ取り、これまでレザードへの愚痴ばかりをこぼしていた口を閉じて立ち止まった。 「ソフィア、待ってくれ!……何か聞こえないか?」 「え?………………いえ、特に何も……」 「……いや、聞こえる!」 チェスターは目を閉じて感覚を聴覚に集中させた。 風が立てている夜の森の葉擦れに混じり、それと似て非なる音、落ち葉を掻き分けるような音が聞こえてくる。 その音は、徐々に大きくなってきていた。 「……足音だ!……速いぞ!誰かがこっちに走ってくる!」 「ほ、本当ですか!」 「ああ!」 チェスターは神弓シルヴァンボウを、ソフィアはクラップロッドをそれぞれ構えた。 「……またボーマンさんだったり……」 「そうだと良いけどな」 …………カサカサカサカサ―― 足音はソフィアにも聞こえる程に大きくなり、真っ直ぐにこちらに近付いてきている。 (何だ?まるで俺達の位置が分かってるみたいじゃ……) 唐突に足音が止まった。 (こっちに気付いたのか?……声を掛けるべき……こ、これは?!) 「チェ、チェスターさん!これ!」 チェスターとソフィアは驚愕した。 いつの間にか自分達の周囲に木の葉がビッシリと舞い上げられているのだ。 「これは!アシュ――」「リーフ・スラッシュ!!」 唐突に現れた凄まじい殺気。咄嗟に気配の方向にシルヴァンボウを構えた。 ほぼ同時にチェスターの腕に訪れる衝撃と派手に響く金属音。 並みの弓ならば簡単に切断されていたであろう衝撃に、思わず弓を手から放しそうになる。 チェスターが、ヤバい!、と思う間も無く、アシュトンは次の動作に入っていた。 アシュトンの剣が降り下ろされる直前、 「させないんだから!」 ソフィアのクラップロッドが回転しつつ飛んでいく。 アシュトンは「ちっ!」と舌打ちをしながらそれをガード。 その隙にチェスターは転がるようにしてアシュトンから距離を取り、 ソフィアはブーメランのように戻ってきたクラップロッドをキャッチしてチェスターの横に駆け寄った。 「随分と早いお帰りじゃねえかよ、アシュトン!」 「……2人の仇だ……今度こそ死んでもらうよ!」 「勝手な事を言ってんじゃ…………!?」 アシュトンの足音が聞こえてきた方向で、何かが光っているのが視界に入った。 いや、『光っている』という表現は適切ではない。『燃えている』のだ。 火の玉が数発、こちらの方向へ飛んできていた。 ☆  ★  ☆ どのくらい走ってきたのか、クロード自身にも良く分からない。 アシュトンの走っている気配は感じてはいたが、クロードは完全にアシュトンの姿を見失っていた。 (くそっ!……全然追いつけない!アシュトンがこんな力を出す程激昂するなんて……  僕が追いつかなきゃアシュトンが危険だって言うのに……  ん?金属音!しまった!もうアシュトンが……また金属音だ。……戦いが始まっているんだ!  まずい!まだ距離が遠い!……今聞こえてきたのは……あっちの方だよな?どうにか援護しないと!) クロードは金属音のした方向の見当を付けると、右手に炎の闘気を溜め、 (バースト・ナックル!これで……いけぇ!) 思い切りその方向へ投げつけた。 バースト・ナックルは数発に分裂し、地面に着弾。 そしてアシュトンと、他の2人の姿を照らし出す。やはり戦いは始まっていたのだ。 「見えた!これなら――」 ☆  ★  ☆ 「な、何だ!?」 突如飛んできた火の玉は、チェスター達が避けるまでもなく、2人には当たらない軌道だった。 アシュトンが何かをしたのか?チェスターがそう思うも、アシュトンも驚いた様子でその火の玉を凝視している。 ドンッ! ドンッ! ドンッ! 火の玉は全て地面に着弾して落ち葉を焦がし、周囲を明るく照らし始めた。 (誰だ!?) チェスターがそう考えた次の瞬間、 「ソードッ・ボンバーーーッ!!!」 たった今飛来した火の玉とは比べ物にならない程の大きさの、巨大な火球が飛んできた。 一瞬チェスターの身体が硬直する。 恐怖で?いや違う。チェスター自身も気付いていないが、それは歓喜に近いと言える感情だった。 この火球は知っている。決して忘れる事はない。 捜し求めていた男。今の位置からは死角に居るその男の姿を、チェスターは火球の後ろにはっきりと見ていた。 (この技は!あの野郎のッ!アシュトン!てめえ……やっぱりあの野郎と組んでやがったのか!  そんな奴を俺は一瞬でも仲間だと……アーチェを殺した奴等を仲間だと……ふっざけやがってぇぇぇぇ!!!) 「チェスターさん!?」 「……ッ!」 ソフィアからの呼び掛けで呆けていた自分に気が付いた。既にソフィアは火球の軌道の外へ退避している。 「うおぉ!」 迫り来る火球を何とかギリギリでソフィアの方向へと避けると、 チェスターは立ち上がり様、火球の飛来してきた方向へと向き、 「クロォォォーーードォォォォォォォォォォーーー!!!!!」 腹の底から湧き上がる激情を絶叫に変えた。 ☆  ★  ☆ 「クロォォォーーードォォォォォォォォォォーーー!!!!!」 何?!相手は僕を知っているのか? いや、この声……ここに来てから確かに聞いた事がある! 確か……チサトさん……そうだ、チサトさんと会った時に跳び出してきた彼の声じゃないか! ……え?何だって?!そんな馬鹿な!彼が殺戮者だって?! 彼は僕を殺し合いに乗っていたと誤解してたから攻撃してきたはずだろ!? それが何でアシュトンを攻撃したんだ?何でさっきの2人を殺したんだ?そんなのおかしいじゃ……まてよ? 『――お前があの娘を!あの娘を焼き殺した!そこのアイツみたいに!!――』 そうだ、彼はそう言っていた。僕が誰かを焼き殺したと誤解して問答無用で殴りかかって来たんだ。 まさか…………アシュトンも同じ誤解を受けて?……ギョロ!?炎を吐けるギョロが居たから……? じゃあさっきの2人を殺したのも……誤解で?そんな……冗談だろ?そんな事で……人を殺したのか? そんな事でギョロとウルルンが殺されたのか? 誤解なんかで……あいつの勘違いなんかでギョロとウルルンが殺されたのか……? あいつが跳びかかってきたから……僕はチサトさんに誤解された…… あいつの思い込みのせいで……僕はチサトさんを護れなかった…… あいつの自己満足の為に、僕達は振り回されているっていうのか? あいつの正義の為に、他の誰かが命を危険に晒されなくちゃいけないのか? そんなのって……無いだろ……何なんだよ、あいつは…… ……いくらなんでも……許せない!あいつは……ここで止めなくちゃ! 【D-05/黎明】 【クロード・C・ケニー】[MP残量:80%] [状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)、背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)] [装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP] [道具:昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)] [行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す] [思考1:アシュトンと戦っているやつらを無力化する。殺す気は無い] [思考2:アシュトンと共に行動] [思考3:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する] [思考4:レザードを倒す その為の仲間も集めたい] [思考5:ブレア、ロキとも鎌石村で合流] [備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません] [備考2:チェスターの事は、『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しました] 【アシュトン・アンカース】[MP残量:60%(最大130%)] [状態:疲労中、激しい怒り、体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲・ギョロ、ウルルン消滅(但し、その分身軽になった)] [装備:アヴクール@RS、ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3] [道具:無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪探知機@BR、首輪×3、荷物一式×2] [行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる] [思考1:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ] [思考2:プリシスのためになると思う事を最優先で行う] [思考3:ボーマンを利用して首輪を集める] [思考4:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい] [備考1:ギョロとウルルンを殺された怒りが原因で一時的に思考1しか考えられなくなっています] 【ソフィア・エスティード】[MP残量:15%] [状態:疲労中 ドラゴンオーブを護れなかった事に対するショック] [装備:クラップロッド、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3、ミュリンの指輪のネックレス@VP2] [道具:魔剣グラム@VP、レザードのメモ、荷物一式] [行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める] [思考1:アシュトン、クロードを倒す] [思考2:平瀬村へマリアを探しに行く] [思考3:フェイトを探す] [思考4:マリアと合流後、鎌石村に向かいブラムス、レザードと合流] [思考5:自分の知り合いを探す] [思考6:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい] [思考7:レザードを警戒] [備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています] 【チェスター・バークライト】[MP残量:55%] [状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)] [装備:光弓シルヴァン・ボウ(矢×15本)@VP、パラライチェック@SO2] [道具:レーザーウェポン@SO3、アーチェのホウキ@TOP、チサトのメモ、荷物一式] [行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)] [思考1:クロード!殺してやる!] [思考2:アシュトンを倒す] [思考3:平瀬村へ向かい、マリア、クレスと合流。その後鎌石村へ] [思考4:レザードを警戒] [備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません] [備考2:クレスに対して感じていた蟠(わだかま)りは無くなりました] 【現在位置:D-05南部】 ☆  ★  ☆ 血痕を追跡して辿り着いた終点で、 何かを確認するように歩き回るブラムスに抱えられながら、フェイトはこの場所を見下ろしていた。 その場所は酷く荒れ果てており、恐ろしく激しい戦闘が行われた事は一目瞭然だった。 しかし、そこには既に誰も居ない。誰かの死体すらも無い。 有る物と言えば、あちらこちらに飛散している血痕と、散らばっている矢くらいのもの。 手掛かりはここで尽きてしまったようだ。 「さっきの少女はここで……こんな戦闘に巻き込まれたって言うのか……?」 「……クン……クン…………いや、『巻き込まれた』のではない。  あの娘……ここで数人を相手取って戦っていたようだ。その痕跡が残っている」 フェイトはその言葉に驚き、勢いよくブラムスを見上げた。 「何を言ってるんですか!?あんな子にそんな事出来るわけが無いですよ!」 ブラムスは頭を振り、 「具体的にどの様な事が起きたのかまでは判らぬが、  この場に残る娘の血痕から動きを分析すれば、あの娘が只の人間ではない事は分かる。  ……おそらくは我やレナスに匹敵する実力の持ち主であろう」 そう明言した。 獲物を追跡する為に備えられている不死者の本能。 血液の臭いで人物の区別がつけられるブラムスならではの洞察だ。 「そんな馬鹿な!……あんな子が?どう見たってただの女の子だったのに……」 「……フェイト。気付かぬか?『あの娘は我やレナス同等の力を持つ』……我はそう言ったのだ」 「はい……?あっ!」 少し遅れてフェイトは気付いた。 「それじゃまさか……ここで戦っていたのがレナスさんやソフィア達……?」 「然様(さよう)」 何故かヅラがキラリと輝いた……フェイトはそんな錯覚を起こす。 「レナスに匹敵する実力者が其処彼処(そこかしこ)に沸いて出てくるとは考え難い。  レナスはここであの娘と戦い、そして命を落とした。  だが、レナスもただで殺された訳ではなく、敵にもそれ相応の深手を負わせ、相打ちに持ち込んだのだ。  それならばレナスが殺されているにも関わらず、レザードやソフィアが未だ生存している事に説明はつく」 その激闘の結果がこの荒野という事だろうか。 フェイトは先程のブラムスとミカエルの戦闘と戦闘後の状況を思い出し、そして納得する。 ブラムスクラスの強者同士が戦えば、その戦闘地域周辺がただでは済みようが無い事は経験済みだ。 「だったら……ソフィアは無事なんですね!」 少なくとも『レナスを殺した危険人物がソフィアを追っている』という事は無いのだ。 だが、ブラムスは再び頭を振った。 「いや、あの娘がここから立ち去った後、この場では更に別の戦闘が行われている。  飛散している血液の鮮度で分かるのだ。  ソフィアがその時に居合わせていたのなら、安全と決め付けるのは早計であろう」 「そ、そんな!」 「兎にも角にも、最早この場には誰も居らぬ。ならば追跡を続けねばなるまい」 そう言いブラムスは再び辺りの血痕を確認し始めた。 「どれがソフィアの血痕か分かるんですか!?」 「我はソフィアの血液を知らぬ故、判別は出来ぬが……」 ブラムスの見たところ、この場所から移動している血痕は先程の少女の物を除けば3グループ有った。 1グループはここから北の方向へと向かっている2種類の血痕。 1グループはここから南西の方向へと向かっている1種類の血痕。 そして、正確には『移動している血痕』ではないが、 血を流しながらも一箇所に留まっていたような血痕の残る場所から南の方向へと向かっている数人分の足跡と、 何かを引きずっているような痕跡。 このどれかにソフィアは必ず居る筈なのだ。 ブラムスは少しの間思案して、口を開いた。 「追跡すべきは――」 【D-05/黎明】 【ブラムス】[MP残量:90%] [状態:キュアブラムスに華麗に変身。本人はこの上なく真剣にコスプレを敢行中] [装備:波平のヅラ@現実世界(何故か損傷一つ無い)、トライエンプレム@SOシリーズ、魔法少女コスチューム@沖木島] [道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2、和式の棺桶、袈裟(あちこちが焼け焦げている)、仏像の仮面@沖木島、荷物一式×2] [行動方針:自らの居城に帰る(成功率が高ければ手段は問わない)] [思考1:追跡する血痕、痕跡を選ぶ] [思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す] [思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける] [思考4:フレイ、レナスを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)] [思考5:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流] [血痕、痕跡について] ブラムスの見つけた血痕、痕跡の内、 ・北に向かっているのはボーマンとクリフのものです。  基本的には、辿れば禁止エリアを経由して、クリフの死体の有る地点に到着します。 ・南西に向かっているのはアシュトンのものです。  基本的には、辿ればこの地点からは遠回りになりますが、D-05南西部を経由してアシュトンの所に到着します。 ・南に向かっているのはルーファスの身体を引きずっていった痕跡です。  辿っても森の中の数十m先で引きずる痕跡は消えています。  この痕跡を辿ってチェスター、ソフィアの後を辿れるかどうかは後の書き手さん次第で。 勿論何かのきっかけで、それ以外の行動を取る事も有り得ます。 【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:95%] [状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)、お姫様だっこ(されている)] [装備:鉄パイプ-R1@SO3] [道具:ストライクアクスの欠片、デッキブラシ@TOP、ソフィアのメモ、首輪×1、荷物一式] [行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える] [思考1:ソフィアと合流したい!] [思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す] [思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない] [思考4:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流] [備考1:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)] 【現在位置:D-05東部】 【残り21人+α】 ---- [[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第121話(前編)>夢は終わらない(ただし悪夢)(前編)]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|フェイト|[[第126話(前編)>王子様はホウキに乗ってやってくる?]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|ブラムス|[[第126話(前編)>王子様はホウキに乗ってやってくる?]]| |[[第120話(前編)>Stairway To Heaven(前編)]]|ボーマン|[[第127話>変態と不愉快な中年共]]| 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