「Misfortunes never come single」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

Misfortunes never come single」(2014/07/11 (金) 17:43:37) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

**第137話 Misfortunes never come single 放送がはじまる少し前、静まり返った住宅街には三人の少女の姿があった。 マリアは己の気持ちを奮い立たせようと必死に思考を巡らせていた。 二人の仲間、レナとプリシスは溢れる涙を拭うこともなく立ち尽くしている。 私まで耐えられなかったらこの子たちはどうなる? 命を懸けて私たちを助けてくれたクレスの気持ちはどうなる? まだ生き残っている仲間たちは? 彼らのためにも、死んでいった者たちのためにも、私がしっかりしなければ。 そう思えば思うほど胸が強く締め付けられ張り裂けそうになった。 けれどここで立ち止まっているわけにはいかない。 「放送までもう少し時間があるわ。それまで室内で待機していましょう」 マリアはそう言うと、早足で民家へと向かいだした。 そのあとをレナとプリシスがフラフラとした足取りで追う。 ところが 「あ…」 歩きだしてすぐに立ち止まった。 視界いっぱいに広がっているのは惨劇の爪痕。 血に濡れた民家の壁と地面と、クレスの腕と、ミランダの躯、そして頭。 ここで何が起こったのか知らない者が見ても、壮絶な戦いがあったことを容易に想像できるほど荒れ果てている。 それらを再び見たプリシスがとうとうその場に泣き崩れてしまった。 レナは顔を反らしている。 彼女たちの感情につられてはいけない、平常心を保たなければ── けれど何をすればいいのか。 再びマリアは歩き出しミランダの前に立つ。 そして腰布の裾を千切り、頭と体がもとの姿になるようにその布を巻き付けた。 その場で腕を組ませ目蓋を閉じ安らかに眠れるよう少しだけ祈りを捧げる。 「ごめんなさい…いまの私にはこれくらいしか出来ることがないの…」 そう告げたあと、今度は残りの布でクレスの腕を包みミランダの側に置いた。 本当なら墓を作りたいところだが、あいにくそんな時間はない。 花の一つも添えたいところだが周囲にはそれすら見当たらない。 いつの間にかレナとプリシスもマリアの背後へ来て一緒に祈りを捧げていた。 いまいち、元いた家に入る気がしない。 そう思い近所にある別の民家へと足を進めた。 気が滅入っている彼女はいつもより思考がうまく働いていなかった。 だから忘れていた。そして気付かなかった。 平常時なら決してありえないミスをおかしてしまったことに。 * * * * * * 弔いをしたことでさっきより少し落ち着いた三人は、立ち入った民家のリビングで放送がはじまるのを待機していた。 静寂に覆われた空間は緊張感を高めると同時に戦闘が終わったという安心感を彼女たちに与えた。 そんなつかの間の平穏を打ち砕くかのように放送が始まった。 死亡者名と禁止エリアが淡々と読み上げられていく。 それは三人にとって、特にマリアにとっては非常に残酷で絶望の淵から叩き落とされたといっても過言ではなかった。 内容がうまく頭に入ってこない。 俯いたまま顔も上げず、声も立てず、それでもどうにか聞き漏らすまいと必死にペンを握る しかし頭の中を駆け巡る様々な思考によって現実から引き離されるような感覚を覚える。 クリフ・フィッター。マリアを引き取り育ててくれた一人であり、ミラージュが母なら彼は父のような存在であった。 強引ながらも年長者として皆を引っ張っていく人物で、ミラージュとのコンビはよく息が合っていた。 クォークのリーダーをマリアに引き継がせてからは、そのいい加減な性格で奔放に活動する一方、真面目に考え込んでしまうマリアを心理的にサポートしてくれていた。 そんなクリフがミラージュに次いで命を落としていたとは。 アルベル・ノックス。共にルシファーと戦ったかつての仲間。 レナとプリシスが平瀬村にくる前、少しの間だが共に行動していたと聞いた。 殺しあいに乗っていないことを聞いた時は安心した。 性格はひねくれていて扱いやすくからかい甲斐のある人物だが剣の腕が立つ。 合流できたらたのもしい存在だと思っていたが、そんな彼もいない。 ミランダとクレス。名前が呼ばれることで彼らの死が事実であることを改めて認識する。 クレスに関しては敵を道連れにその場から姿を消したため、直接死を確認したわけではなかった。 彼は息も絶え絶えだというのに笑顔を見せてきた。 もしかしたら何か偶然が重なって助かるのでは、と心の隅で生きていることも期待していた。 しかし「助からない」と言葉にした通りそれは叶わなかった。 そしてもう一人。直接会ってはいないが引っかかる名前が。 レオン・D・S・ゲーステ。レオン博士。 闘いの前の情報交換で、首輪解析の主導を握っていたのは彼だと聞いていた。 プリシスも頭脳明晰ではあるが機械専門である。 対してレオンは紋章術のスペシャリストだ。彼しか持たない情報もあったのではないか。 また彼はアルベルとともに行動しているのだと。 強力な剣士と紋章術師。多少傷を負っていてもそう簡単に負けるとは思えない。 危険視している人物たちが手を組んだと考えるのが自然ではあるが、もう一つの可能性も拭いきれない。 もしかして――これは考えたくないのだが――私の知らない、それもかなり強いマーダーがいる? どちらにしても遭遇したら今の私たちで対抗できるとは思えない。 カチャン 静まりかえった部屋にペンが落ちる音で突如現実に引き戻された。 それを拾うことすら思いつかない様子でしばらく落下したペンを見つめたのち、ようやく放送が終わっていることに気付き、言葉を紡ぐ。 「…これからの行動について、もう一度確認しましょう」 それは普段の彼女からは想像できないような、弱々しく泣きそうな声だった。 それでもマリアは感情を抑えるように、淡々と話を進めていく。 これから先、誰も欠かさないためには慎重にひとつずつ作戦を練り直す必要がある。 場合によっては最悪の事態にもなりえるだろう。 それを避けるためにも入念に意思疎通をしておくべきだと判断したのだ。 それなのに彼女たちの誰も気付かなかった。 その家には「四人」いた。 * * * * * * 住宅へ潜入したブレアは急いで室内を見渡し、使えるものがないかを確認する。 傷は大したことないのだが、気付いた時には荷物一式すべて、水すらも持ち合わせていなかった。 外での戦闘の火種がいつこちらにも飛んでくるか分からない。 せめて護身用に何かあればいいのだが、と箪笥や押し入れも開けてみるがこれといって役立ちそうなものはなかった。 「これだけでもないよりはマシね」 電話台の上に放置されていたペンとメモ用紙を手に取ると、外の様子を伺うために階段を上った。 戦闘はまだ続いている。思った通り、立ち上る煙も紋章術の光もここからだとよく見えた。 このままお互いに潰しあってくれたら楽だわ、などと考えていると、突如閃光が目を刺激する。 思わず目を閉じて数秒、再び目を見開いた時には戦場から二人消えていた。 「自爆技だったのかしら…」 それでもまだ戦闘は続いている。 爆音とともに民家の一角が破壊される。もし忍び込む家を間違っていたら巻き込まれていただろう。 瓦礫の山と化したその場所から離れていく赤い鎧を確認して暫くしたころ、辺りには再び静けさが漂いだした。 本当なら放送が終わったら即家を出るつもりだった。 しかし窓から確認できた三人組は、よりにもよって今まさに自分が潜伏している家へと向かってきていた。 まさか自分の存在が気付かれたのか、それとも偶然だろうか。 直接戦闘はできるだけ避けたいが、万が一ということもありえる。 相手が戦闘で消耗しているとはいえ、負けなくとも苦戦することは確実だ。 さてどうするか。しばらく自分の存在を知らせないようにするしかないだろう。 姿を見せるのは相手のスタンスを知ってからでも遅くはない。 ブレアはペンとメモ用紙を再び手に取ると、音を立てないようにそっと、声が聞こえるだろう位置まで移動した。 放送が終わる頃、ペンが落ちる音がして思わず体が反応する。 一瞬血の気が引いたがどうやら自分が立てた音ではないらしく、ひとまず胸を撫で下ろした。 そして 『…これからの行動について、もう一度確認しましょう』 これだ。ここからが重要だ。 もし彼女たちがマーダーであれば今戦うのはまずい。そのまま暫く潜伏していよう。 違うのであれば接触を試みよう。うまく立ち回れば保身もできるし、もしかしたら武器も手に入るかもしれない。 運の良いことに彼女たちのうちの一人は顔見知りである。 自分を「本物のブレア」だと確信を持たせることができたらあとは難しいことはない。 それから――― 【F-01/朝】 【マリア・トレイター】[MP残量:60%] [状態:電撃による軽い火傷 右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘にやや難有 仲間達の死に対するショック 腰のクロス無し] [装備:無し] [道具:荷物一式] [行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる] [思考1:これからのことをもっと慎重に考えなければ] [思考2:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)を憎悪] [思考3:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つが、正直期待はしていない] [思考4:鎌石村方面に向かう?] [思考5:ブレアを確保したい] ※高い確率でブレアは偽者だと考えています。 【レナ・ランフォード】[MP残量:5%] [状態:仲間達の死に対する悲しみ(ただし、仲間達のためにも立ち止まったりはしないという意思はある)、     精神的疲労極大、ミランダが死んだ事に対するショック、その後首輪を手に入れるため彼女に行った仕打ちに対する罪悪感] [装備:魔眼のピアス(左耳)@RS] [道具:首輪、荷物一式] [行動方針:多くの人と協力しこの島から脱出をする。ルシファーを倒す] [思考1:…………] [思考2:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)を警戒] [思考3:鎌石村方面に向かう?] [思考4:レオンの掲示した物(結晶体×4、結晶体の起動キー)を探す] [思考5:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考6:アシュトンを説得したい] [思考7:エルネストに会ったらピアス(魔眼のピアス)を渡し、何があったかを話す] 【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%] [状態:かつての仲間達がゲームに乗った事に対するショック(また更に大きく)、仲間達の死に対する悲しみ] [装備:マグナムパンチ@SO2、盗賊てぶくろ@SO2] [道具:無人君制御用端末@SO2?、ドレメラ工具セット@SO3、解体した首輪の部品(爆薬を消費。結晶体は鷹野神社の台座に嵌まっています)、     メモに書いた首輪の図面、結晶体について分析したメモ荷物一式] [行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを倒す] [思考1:…………] [思考2:鎌石村方面に向かう?] [思考3:レオンの掲示した物(結晶体×4、結晶体の起動キー)を探す] [思考4:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考5:クラースという人物も考古学の知識がありそうなので優先して探してみる] [備考1:制御ユニットをハッキングする装置は完成しています] [現在位置:平瀬村(中島家付近)の民家1階] 【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%] [状態:腹部の打撲 顔や手足に軽いすり傷] [装備:無し] [道具:ペン、メモ用紙] [行動方針:参加者に出来る限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい] [思考1:マリア達の行動方針を盗み聞きする] [思考2:レザードがマーダーだと広める] [思考3:無差別な殺害はせずに、集団に入り込み内部崩壊や気持ちが揺れてる人間の後押しに重点を置き行動] [思考4:レナの死をクロードが知った場合クロードをマーダーに仕立て上げる(その場にいたら)] [備考1:ブレアに思考をある程度コントロールされています] [現在位置:平瀬村(中島家付近)の民家2階] ※1階にいる3人はいずれも2階にIMITATIVEブレアが潜んでいることに気付いていません。 ※魔眼のピアスは、レナの精神的疲労による効果範囲の縮小と、ブレアに攻撃の意志がないことから発動していません。 ※ミランダの遺体は平瀬村の民家(中島家)周辺に仰向けで寝かせてあります。  クレスの腕は布に包んだ状態でその脇に置いてあります。 ※中島家周辺に落ちているアイテムを回収したかどうかは後の書き手さんにお任せします。  もし回収していなければ各場所に次のものがあります。 平瀬村の民家B外 『スターフレア』で被害を受けていない一角(道幅が狭い) パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔50/100〕@SO3 セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔50/100〕@SO2 万能包丁@SO2 平瀬村の民家B外『スターフレア』でほぼ更地になった一帯 護身刀“竜穿”@SO3 壊れたサイキックガン(フェイズガンの形に改造):エネルギー残量〔10〕[100/100]@SO2 カラーバット@現実 【残り16人+α】 ---- [[第136話>Justice In The Barrel]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第138話>夢の迷い道で]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|マリア|[[第142話>爆発型アイドル]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|レナ|[[第142話>爆発型アイドル]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|プリシス|[[第142話>爆発型アイドル]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|IMITATIVEブレア|[[第140話>転]]| ----
**第137話 Misfortunes never come single 放送がはじまる少し前、静まり返った住宅街には三人の少女の姿があった。 マリアは己の気持ちを奮い立たせようと必死に思考を巡らせていた。 二人の仲間、レナとプリシスは溢れる涙を拭うこともなく立ち尽くしている。 私まで耐えられなかったらこの子たちはどうなる? 命を懸けて私たちを助けてくれたクレスの気持ちはどうなる? まだ生き残っている仲間たちは? 彼らのためにも、死んでいった者たちのためにも、私がしっかりしなければ。 そう思えば思うほど胸が強く締め付けられ張り裂けそうになった。 けれどここで立ち止まっているわけにはいかない。 「放送までもう少し時間があるわ。それまで室内で待機していましょう」 マリアはそう言うと、早足で民家へと向かいだした。 そのあとをレナとプリシスがフラフラとした足取りで追う。 ところが 「あ…」 歩きだしてすぐに立ち止まった。 視界いっぱいに広がっているのは惨劇の爪痕。 血に濡れた民家の壁と地面と、クレスの腕と、ミランダの躯、そして頭。 ここで何が起こったのか知らない者が見ても、壮絶な戦いがあったことを容易に想像できるほど荒れ果てている。 それらを再び見たプリシスがとうとうその場に泣き崩れてしまった。 レナは顔を反らしている。 彼女たちの感情につられてはいけない、平常心を保たなければ── けれど何をすればいいのか。 再びマリアは歩き出しミランダの前に立つ。 そして腰布の裾を千切り、頭と体がもとの姿になるようにその布を巻き付けた。 その場で腕を組ませ目蓋を閉じ安らかに眠れるよう少しだけ祈りを捧げる。 「ごめんなさい…いまの私にはこれくらいしか出来ることがないの…」 そう告げたあと、今度は残りの布でクレスの腕を包みミランダの側に置いた。 本当なら墓を作りたいところだが、あいにくそんな時間はない。 花の一つも添えたいところだが周囲にはそれすら見当たらない。 いつの間にかレナとプリシスもマリアの背後へ来て一緒に祈りを捧げていた。 いまいち、元いた家に入る気がしない。 そう思い近所にある別の民家へと足を進めた。 気が滅入っている彼女はいつもより思考がうまく働いていなかった。 だから忘れていた。そして気付かなかった。 平常時なら決してありえないミスをおかしてしまったことに。 * * * * * * 弔いをしたことでさっきより少し落ち着いた三人は、立ち入った民家のリビングで放送がはじまるのを待機していた。 静寂に覆われた空間は緊張感を高めると同時に戦闘が終わったという安心感を彼女たちに与えた。 そんなつかの間の平穏を打ち砕くかのように放送が始まった。 死亡者名と禁止エリアが淡々と読み上げられていく。 それは三人にとって、特にマリアにとっては非常に残酷で絶望の淵から叩き落とされたといっても過言ではなかった。 内容がうまく頭に入ってこない。 俯いたまま顔も上げず、声も立てず、それでもどうにか聞き漏らすまいと必死にペンを握る しかし頭の中を駆け巡る様々な思考によって現実から引き離されるような感覚を覚える。 クリフ・フィッター。マリアを引き取り育ててくれた一人であり、ミラージュが母なら彼は父のような存在であった。 強引ながらも年長者として皆を引っ張っていく人物で、ミラージュとのコンビはよく息が合っていた。 クォークのリーダーをマリアに引き継がせてからは、そのいい加減な性格で奔放に活動する一方、真面目に考え込んでしまうマリアを心理的にサポートしてくれていた。 そんなクリフがミラージュに次いで命を落としていたとは。 アルベル・ノックス。共にルシファーと戦ったかつての仲間。 レナとプリシスが平瀬村にくる前、少しの間だが共に行動していたと聞いた。 殺しあいに乗っていないことを聞いた時は安心した。 性格はひねくれていて扱いやすくからかい甲斐のある人物だが剣の腕が立つ。 合流できたらたのもしい存在だと思っていたが、そんな彼もいない。 ミランダとクレス。名前が呼ばれることで彼らの死が事実であることを改めて認識する。 クレスに関しては敵を道連れにその場から姿を消したため、直接死を確認したわけではなかった。 彼は息も絶え絶えだというのに笑顔を見せてきた。 もしかしたら何か偶然が重なって助かるのでは、と心の隅で生きていることも期待していた。 しかし「助からない」と言葉にした通りそれは叶わなかった。 そしてもう一人。直接会ってはいないが引っかかる名前が。 レオン・D・S・ゲーステ。レオン博士。 闘いの前の情報交換で、首輪解析の主導を握っていたのは彼だと聞いていた。 プリシスも頭脳明晰ではあるが機械専門である。 対してレオンは紋章術のスペシャリストだ。彼しか持たない情報もあったのではないか。 また彼はアルベルとともに行動しているのだと。 強力な剣士と紋章術師。多少傷を負っていてもそう簡単に負けるとは思えない。 危険視している人物たちが手を組んだと考えるのが自然ではあるが、もう一つの可能性も拭いきれない。 もしかして――これは考えたくないのだが――私の知らない、それもかなり強いマーダーがいる? どちらにしても遭遇したら今の私たちで対抗できるとは思えない。 カチャン 静まりかえった部屋にペンが落ちる音で突如現実に引き戻された。 それを拾うことすら思いつかない様子でしばらく落下したペンを見つめたのち、ようやく放送が終わっていることに気付き、言葉を紡ぐ。 「…これからの行動について、もう一度確認しましょう」 それは普段の彼女からは想像できないような、弱々しく泣きそうな声だった。 それでもマリアは感情を抑えるように、淡々と話を進めていく。 これから先、誰も欠かさないためには慎重にひとつずつ作戦を練り直す必要がある。 場合によっては最悪の事態にもなりえるだろう。 それを避けるためにも入念に意思疎通をしておくべきだと判断したのだ。 それなのに彼女たちの誰も気付かなかった。 その家には「四人」いた。 * * * * * * 住宅へ潜入したブレアは急いで室内を見渡し、使えるものがないかを確認する。 傷は大したことないのだが、気付いた時には荷物一式すべて、水すらも持ち合わせていなかった。 外での戦闘の火種がいつこちらにも飛んでくるか分からない。 せめて護身用に何かあればいいのだが、と箪笥や押し入れも開けてみるがこれといって役立ちそうなものはなかった。 「これだけでもないよりはマシね」 電話台の上に放置されていたペンとメモ用紙を手に取ると、外の様子を伺うために階段を上った。 戦闘はまだ続いている。思った通り、立ち上る煙も紋章術の光もここからだとよく見えた。 このままお互いに潰しあってくれたら楽だわ、などと考えていると、突如閃光が目を刺激する。 思わず目を閉じて数秒、再び目を見開いた時には戦場から二人消えていた。 「自爆技だったのかしら…」 それでもまだ戦闘は続いている。 爆音とともに民家の一角が破壊される。もし忍び込む家を間違っていたら巻き込まれていただろう。 瓦礫の山と化したその場所から離れていく赤い鎧を確認して暫くしたころ、辺りには再び静けさが漂いだした。 本当なら放送が終わったら即家を出るつもりだった。 しかし窓から確認できた三人組は、よりにもよって今まさに自分が潜伏している家へと向かってきていた。 まさか自分の存在が気付かれたのか、それとも偶然だろうか。 直接戦闘はできるだけ避けたいが、万が一ということもありえる。 相手が戦闘で消耗しているとはいえ、負けなくとも苦戦することは確実だ。 さてどうするか。しばらく自分の存在を知らせないようにするしかないだろう。 姿を見せるのは相手のスタンスを知ってからでも遅くはない。 ブレアはペンとメモ用紙を再び手に取ると、音を立てないようにそっと、声が聞こえるだろう位置まで移動した。 放送が終わる頃、ペンが落ちる音がして思わず体が反応する。 一瞬血の気が引いたがどうやら自分が立てた音ではないらしく、ひとまず胸を撫で下ろした。 そして 『…これからの行動について、もう一度確認しましょう』 これだ。ここからが重要だ。 もし彼女たちがマーダーであれば今戦うのはまずい。そのまま暫く潜伏していよう。 違うのであれば接触を試みよう。うまく立ち回れば保身もできるし、もしかしたら武器も手に入るかもしれない。 運の良いことに彼女たちのうちの一人は顔見知りである。 自分を「本物のブレア」だと確信を持たせることができたらあとは難しいことはない。 それから――― 【F-01/朝】 【マリア・トレイター】[MP残量:60%] [状態:電撃による軽い火傷 右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘にやや難有 仲間達の死に対するショック 腰のクロス無し] [装備:無し] [道具:荷物一式] [行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる] [思考1:これからのことをもっと慎重に考えなければ] [思考2:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)を憎悪] [思考3:チェスターが仲間を連れて帰ってきてくれるのを待つが、正直期待はしていない] [思考4:鎌石村方面に向かう?] [思考5:ブレアを確保したい] ※高い確率でブレアは偽者だと考えています。 【レナ・ランフォード】[MP残量:5%] [状態:仲間達の死に対する悲しみ(ただし、仲間達のためにも立ち止まったりはしないという意思はある)、     精神的疲労極大、ミランダが死んだ事に対するショック、その後首輪を手に入れるため彼女に行った仕打ちに対する罪悪感] [装備:魔眼のピアス(左耳)@RS] [道具:首輪、荷物一式] [行動方針:多くの人と協力しこの島から脱出をする。ルシファーを倒す] [思考1:…………] [思考2:侍男(洵)と茶髪の剣士(ルシオ)を警戒] [思考3:鎌石村方面に向かう?] [思考4:レオンの掲示した物(結晶体×4、結晶体の起動キー)を探す] [思考5:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考6:アシュトンを説得したい] [思考7:エルネストに会ったらピアス(魔眼のピアス)を渡し、何があったかを話す] 【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%] [状態:かつての仲間達がゲームに乗った事に対するショック(また更に大きく)、仲間達の死に対する悲しみ] [装備:マグナムパンチ@SO2、盗賊てぶくろ@SO2] [道具:無人君制御用端末@SO2?、ドレメラ工具セット@SO3、解体した首輪の部品(爆薬を消費。結晶体は鷹野神社の台座に嵌まっています)、     メモに書いた首輪の図面、結晶体について分析したメモ荷物一式] [行動方針:惨劇を生まないために、情報を集め首輪を解除。ルシファーを倒す] [思考1:…………] [思考2:鎌石村方面に向かう?] [思考3:レオンの掲示した物(結晶体×4、結晶体の起動キー)を探す] [思考4:自分達の仲間(エルネスト優先)を探す] [思考5:クラースという人物も考古学の知識がありそうなので優先して探してみる] [備考1:制御ユニットをハッキングする装置は完成しています] [現在位置:平瀬村(中島家付近)の民家1階] 【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%] [状態:腹部の打撲 顔や手足に軽いすり傷] [装備:無し] [道具:ペン、メモ用紙] [行動方針:参加者に出来る限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい] [思考1:マリア達の行動方針を盗み聞きする] [思考2:レザードがマーダーだと広める] [思考3:無差別な殺害はせずに、集団に入り込み内部崩壊や気持ちが揺れてる人間の後押しに重点を置き行動] [思考4:レナの死をクロードが知った場合クロードをマーダーに仕立て上げる(その場にいたら)] [備考1:ブレアに思考をある程度コントロールされています] [現在位置:平瀬村(中島家付近)の民家2階] ※1階にいる3人はいずれも2階にIMITATIVEブレアが潜んでいることに気付いていません。 ※魔眼のピアスは、レナの精神的疲労による効果範囲の縮小と、ブレアに攻撃の意志がないことから発動していません。 ※ミランダの遺体は平瀬村の民家(中島家)周辺に仰向けで寝かせてあります。  クレスの腕は布に包んだ状態でその脇に置いてあります。 ※中島家周辺に落ちているアイテムを回収したかどうかは後の書き手さんにお任せします。  もし回収していなければ各場所に次のものがあります。 平瀬村の民家B外 『スターフレア』で被害を受けていない一角(道幅が狭い) パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔50/100〕@SO3 セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔50/100〕@SO2 万能包丁@SO2 平瀬村の民家B外『スターフレア』でほぼ更地になった一帯 護身刀“竜穿”@SO3 壊れたサイキックガン(フェイズガンの形に改造):エネルギー残量〔10〕[100/100]@SO2 カラーバット@現実 【残り16人+α】 ---- [[第136話>Justice In The Barrel]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第138話>夢の迷い道で]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|マリア|[[第142話>爆発形アイドル]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|レナ|[[第142話>爆発形アイドル]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|プリシス|[[第142話>爆発形アイドル]]| |[[第136話>Justice In The Barrel]]|IMITATIVEブレア|[[第140話>転]]| ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: