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**第19話 どっちが化け物? 「大きいわね」 ネーデ人の女性チサト・マディソンは目の前にいるなんとも大きな亜人に度肝を抜かれた。 その亜人はゆうに3メートルはあろうかという大きさである。 チサトはため息をつく。人相学を習っていないけれど、絶対に分かることがある。 凶悪そうな顔つきを見るかぎり、けっして友好的とは思えない。 (こんな、巨大な化け物が参加しているなんて予想外だったわ。まあ、十賢者も化け物じみてるけどね) それでも、半ばあきらめ気味で聞いてみる。 「あなたは、殺し合いに乗っているの?」 亜人が黙っているので、チサトは言葉が理解できないかと思ったが。 「モチロンだ」 と答えた。 一番最初にあった奴がこんな奴で最悪だわと、チサトは己の不運を嘆いた。 どうにかして、主催者ルシファーと戦ってくれる方向に持っていけないのかと考える。 自分の直感だが、この亜人はプライドが高そうに感じた。自分の記者魂がそう心に訴えかける。 プライドを燻ってみるか。 「ねえ、あなたはルシファーと名乗る人間に従うつもりなの?」 亜人は嫌な事を聞かれたのか、少し黙った後に答える。 「ニンゲンのサシズを ウケルのは ハラダタシイが 我らブラッドオークが  ドノ種族ヨリも スグレテイルコトを 証明スルイイキカイだ」 チサトはしめたと思う。さらに煽る。 「それでも、人間のいうこと聞くんだね?最後まで生き残っても優れてると思わないなあ。  結局のところルシファーに従っているんだし、恥ずかしくない?」 そう言うと、亜人は突然、雄たけびをあげ、怒り出した。 チサトはいきなりの態度の変わりようにおどろく。 「ヴゴォォォォーーーー!! ソンナコト ワカッテオル だが  クビワが ツイテイル以上 ドウニモナラン ダカラ貴様を コロス」 亜人は怒りながら、こちらに向かってくる。 チサトはちょっと待ってと声を張り上げ、ある提案をする。その言葉に亜人は足を止めた。 「それならさ、私と一緒に首輪を外す方法を探さないかしら。私の知り合いに、  適任の人が二人ほどいるのよ。だから一緒に手を組まない?」 そう手を差し出す。 亜人は腕を組み、考え始めた。 亜人が考えている間、チサトは天に自分の味方になってくれるようにと祈っていた。 が、無常にも、期待どおりにはいかなかった。 「コトワル」 チサトの心の中で何かが音を出して崩れだした。 「貴様とて ニンゲンで アル以上 シタガウキハナイ」 チサトは今までの苦労は何だったのと、今にも泣きたい気分になった。 だが、亜人はまだ続ける。 「ダガ 我がブラッドオークには ホウ ナドはナイが タッタヒトツダケ  掟がアル『強き者に従え』ソレダケダ 俺を シタガイ サセタイナラ 俺に カツコトだ」 そう言い終えると、咆哮をあげる。それが開戦の合図となった。 チサトは自分の努力もむなしく、結局戦うことになって虚しくなった。 けれども、相手に勝てれば、仲間になってくれるところまで、引っ張れたのが唯一の救いだ。 その前に、 「ねえ、約束して。私が勝ったら私と一緒にルシファーと戦ってちょうだい。  後、私とあなたじゃ。体格に差があるから、あなたを地面に倒したら勝ちにしてくれない?」 と、前約束を取り付ける。 亜人は余裕があるのか、いいだろうと言う。 チサトはこれでかなり同等の立場にもってこれたと心の中でガッツポーズをとる。 チサトは相手と間合いを取り、分析する。 見た目で判断するなら、完全な格闘タイプであろう。紋章術等などの特殊な技は使えるとは思えない。 武器は持っていないが、奴の巨大な拳を一撃でも受けたら、致命傷は免れない。 (やれやれ、これは大変だわ) 自分がボロ雑巾のように吹っ飛ばされるところを想像すると身震いする。 この身長差だと、腹に攻撃を当てるだけで精一杯である。 だからチサトは足を重点的に攻めることにした。そうすれば、相手は倒れてくれるだろう。 チサトはじりじりと相手の距離を詰める。相手は腕が長いので、自分から遠い間合いから攻撃してくるはずだ。 だから相手が攻撃したときが、私のチャンスである。そのときにカウンター攻撃にはいる。 そして、ある地点まで間合いを詰めたとき、予想どおり拳を振り落としてきた。 チサトは思った以上の攻撃スピードに内心戸惑ったが、その攻撃をぎりぎりでかわす。 「約束は守ってもらうわよ」 チサト一気に自分の間合いに入り、左足を軸に右足で相手の左ひざに蹴りを入れる。 ひざに蹴りがヒットし、そのまま蹴りの連打に移るつもりだったが、 バックステップを踏み、相手の間合いから離れる。 (予想外だわ、なんて硬さなの) 奴を蹴ったときの感触。まるでゴムタイヤのようだった。 あのまま、蹴り続けても相手をこかす前に攻撃を受けてしまうだろう。 それに、最初の拳のスピードすらぎりぎりで避けるのが、いっぱいいっぱいなのに、あの間合いだと確実である。 「サッキの イセイは ドウシタ コンナコウゲキ デハ 俺は タオセンゾ」 「あーら、戦いはこれからじゃない。せっかちな男は嫌われるわよ」 と、強がりは言うものの、相手の攻撃を避けつつ、確実にダメージを入れるのはとても骨が折れる。 自分には紋章術のような技もないし、どうしよう。 そう思い悩んでいると、亜人は横に振り向き傍らにあった木を掴み、雄たけびを上げる。 「ヴガァァァーーーーーーー!!」 チサトにそんなまさかと悪寒が走る。 すると、みるみるうちに木が上へ上へと持ち上げられ、すっぽりと抜けた。 こんな簡単に抜けるものかと思うほどあっさりと抜けた。 チサトの心臓が高鳴る。 規格外 このパワーは規格外だ。 あまりの光景にチサトは怯むが、すぐに気を戻す。 刹那、亜人は脇に木を挟み、そのまま腰をきり、薙ぐ。 チサトは考える間もなく、一瞬の判断でその場にしゃがむ。髪の毛がすうっと擦れる音が聞こえた。 (やっばー、運良く、避けられたが、今度はどうなるか判らないわ) とにかく、相手の間合いに入らないようにすぐに大きく距離をとった。 相手は第二打を喰らわそうと構えながらじりじりと近づいてくる。 (こうなったら、袖が破れるからあんまりやりたくないが、あの技しかないわね。  ……もって2分ってとこだけど、十分だわ。神宮流体術の真髄をこの目に見せてやるわ) チサトは目を閉じる。 亜人はチサトが目を閉じたので、戦うのをあきらめたと思ったのか笑みを浮かべる。 「ドウシタ ニンゲン モウ アキラメタか」 呼吸を整え、心を無にする。 相手の言葉が聞こえる。 風が鳴る音が聞こえる。 草木が揺れる音が聞こえる。 自分の心臓の音が聞こえる。 自分の血液が流れる音が聞こえる。 そして両腕に流れる血液に気を注ぎ、気を練る。 チサトの腕の筋肉が隆起する。 それはまるで鋼鉄――――剛の塊。 「さーて、やりましょうか。戦いを」 チサトは全力で亜人の元へと駆ける。 亜人は突然のチサトの変貌と自分に向かってくる早さに驚きつつも木を薙ぐ。 チサトに振り切った木が直撃しようとする。だが、チサトはものすごい速さのそれを両手で押さえる。 その反動で足元が1メートル後ずさり、地面に跡が残る。 亜人は何が起こったんだという顔でチサトを見た。 さすがに亜人も真っ向から木を止めたことに驚愕の色は隠せないようだ。 「後悔するなら今のうちよ」 と、いうと、相手の足もとに踏み込み、先ほど同じ左ひざを突く。 それは前とは比べようもないほど重い一撃。その威力はまさに一閃のごとく。 亜人は叫び声をあげ、左足を地面に着き、ひざまずく。そこに胴体が露になる。 チサトは拳を構える。 「神宮流奥義」 亜人はちょっと待てと手を前にで出す。 が――――時はすでに遅し。 「神 宮 千 烈 拳」 亜人に無数の拳の嵐を浴びせる。 腹、肩、顎、顔など上半身すべての部位に猛打を浴びせる。 亜人の巨躯が3メートル彼方へ吹っ飛ぶ。 そのとき、チサトは気づく。 (しまった!やりすぎたわ、地面に倒すだけだったのに……) 亜人は倒れたまま、起き上がらない。 あれぐらいタフな体をしているから死にはしないと思うが、少し心配になってきた。 チサトは亜人のところへと近づく。 が、その途中で膨れ上がった腕がしぼみ、体が急に重くなる。 (反動!?まだ、1分弱しか時間はたっていないのに。これがルシファーの言う制限ってやつなの) ふらふらとなった体を無理やり奮い起こし、亜人のところまで歩く。 そこにたどり着くと同時に、亜人の生死を確認する。 上半身が傷だらけだが命に別状はないようだ。 自分でやったとはいえ、ぼこぼこに歪んだ顔を見ると、とても痛々しい。 (こいつの目が覚めるまでここで待機しておくか。休憩しないと私も動けないしね) チサトは回復の足しにならないかと亜人のパックから支給品を勝手に覗く。 中には盾、鎧とペットボトル二本があった。回復とは程遠い物があり、チサトは残念に思いつつ説明書を読む。 しかし、説明書を読むと自分に適した物があった。 それは自然治癒力を向上させる鎧である。でも、なぜかヅラ付きであった。 チサトはその鎧もといコスプレのような服を着るのに抵抗があったが、 疲労を回復したいのと服の袖がビリビリなった今、やむなくそれに着替える。 しかも、ヅラを付けないと治癒効果は発動しないらしく、それもしかたなく付ける。 チサトは木に腰掛け亜人が起きるのを待った。 ガルヴァドスが起きるころには時間は午前へと移り変わった。 【E-6/朝】 【チサト・マディソン】[MP残量:20%] [状態:全身に筋肉痛、疲労大] [装備:フェイトアーマー@RS・パラライチェック@SO2] [道具:七色の飴玉×3@VP・荷物一式] [行動方針:主催者打倒、首輪をどうにかするために味方を集める] [思考1:亜人が目覚めるのを待つ] [思考2:仲間を探す(レオン・プリシス優先)] [現在位置:道の先端] 【ガルヴァドス】[MP残量:100%] [状態:気絶、左ひざに大打撲、上半身に無数の大打撲] [装備:なし] [道具:パラスアテネ@SO2・ガソリン入りペットボトル×2・荷物一式] [行動方針:最後まで生き残る?強き者に従う] [思考1:???] [現在位置:道の先端] ※ガソリンは合計で4リットルあります。 【残り57人】 ---- [[第18話>私の名はクラース、お前は狙われている!]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第20話>止まらない受難]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |―|チサト|[[第63話>光の勇者の不幸(受難編)]]| |―|ガルヴァドス|[[第63話>光の勇者の不幸(受難編)]]|
**第19話 どっちが化け物? 「大きいわね」 ネーデ人の女性チサト・マディソンは目の前にいるなんとも大きな亜人に度肝を抜かれた。 その亜人はゆうに3メートルはあろうかという大きさである。 チサトはため息をつく。人相学を習っていないけれど、絶対に分かることがある。 凶悪そうな顔つきを見るかぎり、けっして友好的とは思えない。 (こんな、巨大な化け物が参加しているなんて予想外だったわ。まあ、十賢者も化け物じみてるけどね) それでも、半ばあきらめ気味で聞いてみる。 「あなたは、殺し合いに乗っているの?」 亜人が黙っているので、チサトは言葉が理解できないかと思ったが。 「モチロンだ」 と答えた。 一番最初にあった奴がこんな奴で最悪だわと、チサトは己の不運を嘆いた。 どうにかして、主催者ルシファーと戦ってくれる方向に持っていけないのかと考える。 自分の直感だが、この亜人はプライドが高そうに感じた。自分の記者魂がそう心に訴えかける。 プライドを燻ってみるか。 「ねえ、あなたはルシファーと名乗る人間に従うつもりなの?」 亜人は嫌な事を聞かれたのか、少し黙った後に答える。 「ニンゲンのサシズを ウケルのは ハラダタシイが 我らブラッドオークが  ドノ種族ヨリも スグレテイルコトを 証明スルイイキカイだ」 チサトはしめたと思う。さらに煽る。 「それでも、人間のいうこと聞くんだね?最後まで生き残っても優れてると思わないなあ。  結局のところルシファーに従っているんだし、恥ずかしくない?」 そう言うと、亜人は突然、雄たけびをあげ、怒り出した。 チサトはいきなりの態度の変わりようにおどろく。 「ヴゴォォォォーーーー!! ソンナコト ワカッテオル だが  クビワが ツイテイル以上 ドウニモナラン ダカラ貴様を コロス」 亜人は怒りながら、こちらに向かってくる。 チサトはちょっと待ってと声を張り上げ、ある提案をする。その言葉に亜人は足を止めた。 「それならさ、私と一緒に首輪を外す方法を探さないかしら。私の知り合いに、  適任の人が二人ほどいるのよ。だから一緒に手を組まない?」 そう手を差し出す。 亜人は腕を組み、考え始めた。 亜人が考えている間、チサトは天に自分の味方になってくれるようにと祈っていた。 が、無常にも、期待どおりにはいかなかった。 「コトワル」 チサトの心の中で何かが音を出して崩れだした。 「貴様とて ニンゲンで アル以上 シタガウキハナイ」 チサトは今までの苦労は何だったのと、今にも泣きたい気分になった。 だが、亜人はまだ続ける。 「ダガ 我がブラッドオークには ホウ ナドはナイが タッタヒトツダケ  掟がアル『強き者に従え』ソレダケダ 俺を シタガイ サセタイナラ 俺に カツコトだ」 そう言い終えると、咆哮をあげる。それが開戦の合図となった。 チサトは自分の努力もむなしく、結局戦うことになって虚しくなった。 けれども、相手に勝てれば、仲間になってくれるところまで、引っ張れたのが唯一の救いだ。 その前に、 「ねえ、約束して。私が勝ったら私と一緒にルシファーと戦ってちょうだい。  後、私とあなたじゃ。体格に差があるから、あなたを地面に倒したら勝ちにしてくれない?」 と、前約束を取り付ける。 亜人は余裕があるのか、いいだろうと言う。 チサトはこれでかなり同等の立場にもってこれたと心の中でガッツポーズをとる。 チサトは相手と間合いを取り、分析する。 見た目で判断するなら、完全な格闘タイプであろう。紋章術等などの特殊な技は使えるとは思えない。 武器は持っていないが、奴の巨大な拳を一撃でも受けたら、致命傷は免れない。 (やれやれ、これは大変だわ) 自分がボロ雑巾のように吹っ飛ばされるところを想像すると身震いする。 この身長差だと、腹に攻撃を当てるだけで精一杯である。 だからチサトは足を重点的に攻めることにした。そうすれば、相手は倒れてくれるだろう。 チサトはじりじりと相手の距離を詰める。相手は腕が長いので、自分から遠い間合いから攻撃してくるはずだ。 だから相手が攻撃したときが、私のチャンスである。そのときにカウンター攻撃にはいる。 そして、ある地点まで間合いを詰めたとき、予想どおり拳を振り落としてきた。 チサトは思った以上の攻撃スピードに内心戸惑ったが、その攻撃をぎりぎりでかわす。 「約束は守ってもらうわよ」 チサト一気に自分の間合いに入り、左足を軸に右足で相手の左ひざに蹴りを入れる。 ひざに蹴りがヒットし、そのまま蹴りの連打に移るつもりだったが、 バックステップを踏み、相手の間合いから離れる。 (予想外だわ、なんて硬さなの) 奴を蹴ったときの感触。まるでゴムタイヤのようだった。 あのまま、蹴り続けても相手をこかす前に攻撃を受けてしまうだろう。 それに、最初の拳のスピードすらぎりぎりで避けるのが、いっぱいいっぱいなのに、あの間合いだと確実である。 「サッキの イセイは ドウシタ コンナコウゲキ デハ 俺は タオセンゾ」 「あーら、戦いはこれからじゃない。せっかちな男は嫌われるわよ」 と、強がりは言うものの、相手の攻撃を避けつつ、確実にダメージを入れるのはとても骨が折れる。 自分には紋章術のような技もないし、どうしよう。 そう思い悩んでいると、亜人は横に振り向き傍らにあった木を掴み、雄たけびを上げる。 「ヴガァァァーーーーーーー!!」 チサトにそんなまさかと悪寒が走る。 すると、みるみるうちに木が上へ上へと持ち上げられ、すっぽりと抜けた。 こんな簡単に抜けるものかと思うほどあっさりと抜けた。 チサトの心臓が高鳴る。 規格外 このパワーは規格外だ。 あまりの光景にチサトは怯むが、すぐに気を戻す。 刹那、亜人は脇に木を挟み、そのまま腰をきり、薙ぐ。 チサトは考える間もなく、一瞬の判断でその場にしゃがむ。髪の毛がすうっと擦れる音が聞こえた。 (やっばー、運良く、避けられたが、今度はどうなるか判らないわ) とにかく、相手の間合いに入らないようにすぐに大きく距離をとった。 相手は第二打を喰らわそうと構えながらじりじりと近づいてくる。 (こうなったら、袖が破れるからあんまりやりたくないが、あの技しかないわね。  ……もって2分ってとこだけど、十分だわ。神宮流体術の真髄をこの目に見せてやるわ) チサトは目を閉じる。 亜人はチサトが目を閉じたので、戦うのをあきらめたと思ったのか笑みを浮かべる。 「ドウシタ ニンゲン モウ アキラメタか」 呼吸を整え、心を無にする。 相手の言葉が聞こえる。 風が鳴る音が聞こえる。 草木が揺れる音が聞こえる。 自分の心臓の音が聞こえる。 自分の血液が流れる音が聞こえる。 そして両腕に流れる血液に気を注ぎ、気を練る。 チサトの腕の筋肉が隆起する。 それはまるで鋼鉄――――剛の塊。 「さーて、やりましょうか。戦いを」 チサトは全力で亜人の元へと駆ける。 亜人は突然のチサトの変貌と自分に向かってくる早さに驚きつつも木を薙ぐ。 チサトに振り切った木が直撃しようとする。だが、チサトはものすごい速さのそれを両手で押さえる。 その反動で足元が1メートル後ずさり、地面に跡が残る。 亜人は何が起こったんだという顔でチサトを見た。 さすがに亜人も真っ向から木を止めたことに驚愕の色は隠せないようだ。 「後悔するなら今のうちよ」 と、いうと、相手の足もとに踏み込み、先ほど同じ左ひざを突く。 それは前とは比べようもないほど重い一撃。その威力はまさに一閃のごとく。 亜人は叫び声をあげ、左足を地面に着き、ひざまずく。そこに胴体が露になる。 チサトは拳を構える。 「神宮流奥義」 亜人はちょっと待てと手を前にで出す。 が――――時はすでに遅し。 「神 宮 千 烈 拳」 亜人に無数の拳の嵐を浴びせる。 腹、肩、顎、顔など上半身すべての部位に猛打を浴びせる。 亜人の巨躯が3メートル彼方へ吹っ飛ぶ。 そのとき、チサトは気づく。 (しまった!やりすぎたわ、地面に倒すだけだったのに……) 亜人は倒れたまま、起き上がらない。 あれぐらいタフな体をしているから死にはしないと思うが、少し心配になってきた。 チサトは亜人のところへと近づく。 が、その途中で膨れ上がった腕がしぼみ、体が急に重くなる。 (反動!?まだ、1分弱しか時間はたっていないのに。これがルシファーの言う制限ってやつなの) ふらふらとなった体を無理やり奮い起こし、亜人のところまで歩く。 そこにたどり着くと同時に、亜人の生死を確認する。 上半身が傷だらけだが命に別状はないようだ。 自分でやったとはいえ、ぼこぼこに歪んだ顔を見ると、とても痛々しい。 (こいつの目が覚めるまでここで待機しておくか。休憩しないと私も動けないしね) チサトは回復の足しにならないかと亜人のパックから支給品を勝手に覗く。 中には盾、鎧とペットボトル二本があった。回復とは程遠い物があり、チサトは残念に思いつつ説明書を読む。 しかし、説明書を読むと自分に適した物があった。 それは自然治癒力を向上させる鎧である。でも、なぜかヅラ付きであった。 チサトはその鎧もといコスプレのような服を着るのに抵抗があったが、 疲労を回復したいのと服の袖がビリビリなった今、やむなくそれに着替える。 しかも、ヅラを付けないと治癒効果は発動しないらしく、それもしかたなく付ける。 チサトは木に腰掛け亜人が起きるのを待った。 ガルヴァドスが起きるころには時間は午前へと移り変わった。 【E-6/朝】 【チサト・マディソン】[MP残量:20%] [状態:全身に筋肉痛、疲労大] [装備:フェイトアーマー@RS・パラライチェック@SO2] [道具:七色の飴玉×3@VP・荷物一式] [行動方針:主催者打倒、首輪をどうにかするために味方を集める] [思考1:亜人が目覚めるのを待つ] [思考2:仲間を探す(レオン・プリシス優先)] [現在位置:道の先端] 【ガルヴァドス】[MP残量:100%] [状態:気絶、左ひざに大打撲、上半身に無数の大打撲] [装備:なし] [道具:パラスアテネ@SO2・ガソリン入りペットボトル×2・荷物一式] [行動方針:最後まで生き残る?強き者に従う] [思考1:???] [現在位置:道の先端] ※ガソリンは合計で4リットルあります。 【残り57人】 ---- [[第18話>私の名はクラース、お前は狙われている!]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第20話>止まらない受難]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |―|チサト|[[第63話>光の勇者の不幸(受難編)]]| |―|ガルヴァドス|[[第63話>光の勇者の不幸(受難編)]]|

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