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父の面影」(2008/02/23 (土) 12:17:32) の最新版変更点

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**第25話 父の面影 迂闊だった。 こういう時では冷静に行動するというのが重要だというのに。 だが現在の状況はクロードにとって冷静になれという方が無理があった。 気がついたらあの広間に連れてこられていて、殺し合いを要求されて。 おまけにあのルシファーとかいう主催者は、あれほど自分達が苦戦したルシフェルを簡単に殺してしまったのだ。 それでもこの島に降り立った時はまだ少しは冷静さが残っていた。 しかし名簿を見て、レナを始めとした仲間達の名前を確認した時はもう冷静に考えるなんて思考はどこかに吹っ飛んでしまった。 一刻も早く彼らと合流しなくては。 そう考えたクロードは支給品も確認せずに森の中を走り回った。 そして一人の男を発見して、躊躇う事もなく声をかけてしまう。 …それが迂闊だった。 その男は声をかけられるや否やいきなり剣を構えて襲い掛かってきたのである。 (くそっ、本当に迂闊だったよ…) 男から逃げながらクロードは自分の浅はかさを反省した。 あの男が殺し合いに乗っている可能性もあるって、普通に考えれば十分ありえる事だったのに。 さらに言うと、逃げるのに夢中になって近くの建物に逃げ込んでしまったのも迂闊だった。 案の定、クロードはあっという間に袋小路に追い込まれてしまう。 「しまった…」 男―ガウェインもすぐにやって来た。絶体絶命だ。 有無を言わさずガウェインは剣を振るう。クロードもかわそうとするが、狭い室内では上手く回避行動を取ることができなかった。 「ぐっ!」 右肩に衝撃が走る。続いて脇腹。その痛みの激しさにクロードは壁を背に尻をついてしまった。 ガウェインは止めを刺そうとゆっくりと歩みよって来る。 クロードは薄れ掛けた意識で目の前の男を見上げた。 実直そうな中年の男だ。少し父さんに似ているな、とクロードは思った。 外見が似ているわけではないのだが、内に秘める芯の強さや意思の強さ的なものを感じ、それが父…ロニキスを思わせた。 そう思った時、クロードの中に疑問が浮かんだ。 「貴方は…何故…こんな殺し合いに乗ってしまったんですか…?」 ガウェインに問いかける。クロードはガウェインの事をよく知らなかったが、彼がこんな殺し合いに簡単に従うような男には見えなかった。 それに何となくではあるが、ガウェインはまだ殺し合いに乗るか否かを迷ってるような気もした。 案の定、クロードの問いを聞いたガウェインの目は、先程より明らかに迷いが生まれている。 「己の…信念と…宿命の為だ」 少しの沈黙の後、ガウェインはそう答えた。 「信念と宿命…?」 「許せ」 迷いを断ち切るかの如く、ガウェインは一気に剣を振り下ろしてきた。 (ダメだ…かわせない…) 頭上から迫る斬撃を感じながらクロードは死を覚悟した。 ああ…僕はここで死ぬのか。 レナは大丈夫だろうか?僕が死んでも強く生きていってくれるだろうか。 レナだけじゃない。同じくこの島に連れて来られているセリーヌさん、アシュトン、プリシス、ボーマンさん達…。彼らも心配だ。 みんな、ごめん…。 会えなかった仲間達の事を考えながらクロードは目を閉じた。 クロード! (父さん!?) その瞬間、クロードの頭の中で父ロニキスの声が聞こえた気がした。 そうだ…僕は父さんの…ロニキス・J・ケニーの息子だ! 父さんならきっとこんな状況でも最後まで諦めないだろう。そして生き抜いて、仲間達を守ってみせるはずだ。 クロードの心に再び闘志が灯る。 痛みが激しい体に鞭を打ち、ガウェインの攻撃を体を横転させてぎりぎりの所でかわす。 その攻撃で背後の壁が崩れる。さらにクロードは倒れた体勢のままガウェインの足下に足払いをかけて彼を転倒させた。 「何…!」 その隙にクロードは倒れ込むように外へ脱出、何とか立ち上がって逃げようとする。 しかし立ち上がるのに手間取った間に既にガウェインは体勢を立て直していた。 そして逃げようとしたクロードの背中に一撃を浴びせる。 「がっ…!?」 苦痛に顔を歪め、クロードは再び地面に転がってしまった。 「…」 ガウェインは倒れて動かなくなったクロードを無言でみつめる。 そして決着をつけるべく、彼の首に剣を当てた。 迷うな、そう自分に言い聞かせながら―。 その時だった。 「やめろーっ!!」 剣を持った一人の青年が、叫びながらガウェインに向かって来た。 すかさず青年の方を向いて彼の剣を受け止める。そのまま二人は剣を重ねて対峙した。 だが青年の剣を見た時、ガウェインの顔色が変わる。 (…!この剣は!?) ガウェインは剣を弾くと、逃げるようにその場から走り去った。 「逃げた…?」 その場に取り残された青年ルシオは、少し拍子抜けしてしまった。 わずかに手合わせしただけだが、ガウェインの強さは明らかに自分より上だった。手には未だ痺れが残っている。 それなのになぜ彼は逃げたのだろう? 「って、そんな事を考えている場合じゃないな」 うつ伏せに倒れているクロードを様態を確認する。 脇腹と背中の傷は浅いし血もそれほど出ていない。だが右肩の傷は少し深そうだ。 ルシオはとりあえずクロードが頭に付けていたバンダナを使い、右肩の傷口に巻いて応急処置をする。 「彼が目を覚ますまで待つか…」 そして彼を担ぎ、近くにある建物へと入っていった。 【E-4/午前】 【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%] [状態:右肩に裂傷(応急処置済み、回復具合は次の方任せ)左脇腹と背中に浅い裂傷、気絶中] [装備:無し] [道具:未確認の支給品×1~3、荷物一式] [行動方針:仲間を探す] [思考:不明] 【ルシオ】[MP残量:100%] [状態:普通] [装備:アービトレイター@RS] [道具:確認済の支給品×0~2、荷物一式] [行動方針:知り合いと合流(特にレナス)] [思考:クロードが目を覚ますまで待つ] [現在位置:E-4のホテル跡の一室] 【ガウェイン・ロートシルト】[MP残量:100%] [状態:やや焦り] [装備:グランスティング@SO2] [道具:確認済の支給品×0~2、荷物一式] [行動方針:リドリーを優勝させる(だが完全にゲームに乗るにはまだ迷いがある)] [思考:ホテル跡から離れる(方向は次の方任せ)] [現在位置:E-4のどこか] 【残り56人】 ---- [[第24話>嗚呼麗しのお姉様]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第26話>決して怖じ気づいた訳じゃねぇぜ]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |―|クロード|[[第39話>ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる]]| |―|ルシオ|[[第39話>ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる]]| |―|ガウェイン|―|
**第25話 父の面影 迂闊だった。 こういう時では冷静に行動するというのが重要だというのに。 だが現在の状況はクロードにとって冷静になれという方が無理があった。 気がついたらあの広間に連れてこられていて、殺し合いを要求されて。 おまけにあのルシファーとかいう主催者は、あれほど自分達が苦戦したルシフェルを簡単に殺してしまったのだ。 それでもこの島に降り立った時はまだ少しは冷静さが残っていた。 しかし名簿を見て、レナを始めとした仲間達の名前を確認した時はもう冷静に考えるなんて思考はどこかに吹っ飛んでしまった。 一刻も早く彼らと合流しなくては。 そう考えたクロードは支給品も確認せずに森の中を走り回った。 そして一人の男を発見して、躊躇う事もなく声をかけてしまう。 …それが迂闊だった。 その男は声をかけられるや否やいきなり剣を構えて襲い掛かってきたのである。 (くそっ、本当に迂闊だったよ…) 男から逃げながらクロードは自分の浅はかさを反省した。 あの男が殺し合いに乗っている可能性もあるって、普通に考えれば十分ありえる事だったのに。 さらに言うと、逃げるのに夢中になって近くの建物に逃げ込んでしまったのも迂闊だった。 案の定、クロードはあっという間に袋小路に追い込まれてしまう。 「しまった…」 男―ガウェインもすぐにやって来た。絶体絶命だ。 有無を言わさずガウェインは剣を振るう。クロードもかわそうとするが、狭い室内では上手く回避行動を取ることができなかった。 「ぐっ!」 右肩に衝撃が走る。続いて脇腹。その痛みの激しさにクロードは壁を背に尻をついてしまった。 ガウェインは止めを刺そうとゆっくりと歩みよって来る。 クロードは薄れ掛けた意識で目の前の男を見上げた。 実直そうな中年の男だ。少し父さんに似ているな、とクロードは思った。 外見が似ているわけではないのだが、内に秘める芯の強さや意思の強さ的なものを感じ、それが父…ロニキスを思わせた。 そう思った時、クロードの中に疑問が浮かんだ。 「貴方は…何故…こんな殺し合いに乗ってしまったんですか…?」 ガウェインに問いかける。クロードはガウェインの事をよく知らなかったが、彼がこんな殺し合いに簡単に従うような男には見えなかった。 それに何となくではあるが、ガウェインはまだ殺し合いに乗るか否かを迷ってるような気もした。 案の定、クロードの問いを聞いたガウェインの目は、先程より明らかに迷いが生まれている。 「己の…信念と…宿命の為だ」 少しの沈黙の後、ガウェインはそう答えた。 「信念と宿命…?」 「許せ」 迷いを断ち切るかの如く、ガウェインは一気に剣を振り下ろしてきた。 (ダメだ…かわせない…) 頭上から迫る斬撃を感じながらクロードは死を覚悟した。 ああ…僕はここで死ぬのか。 レナは大丈夫だろうか?僕が死んでも強く生きていってくれるだろうか。 レナだけじゃない。同じくこの島に連れて来られているセリーヌさん、アシュトン、プリシス、ボーマンさん達…。彼らも心配だ。 みんな、ごめん…。 会えなかった仲間達の事を考えながらクロードは目を閉じた。 クロード! (父さん!?) その瞬間、クロードの頭の中で父ロニキスの声が聞こえた気がした。 そうだ…僕は父さんの…ロニキス・J・ケニーの息子だ! 父さんならきっとこんな状況でも最後まで諦めないだろう。そして生き抜いて、仲間達を守ってみせるはずだ。 クロードの心に再び闘志が灯る。 痛みが激しい体に鞭を打ち、ガウェインの攻撃を体を横転させてぎりぎりの所でかわす。 その攻撃で背後の壁が崩れる。さらにクロードは倒れた体勢のままガウェインの足下に足払いをかけて彼を転倒させた。 「何…!」 その隙にクロードは倒れ込むように外へ脱出、何とか立ち上がって逃げようとする。 しかし立ち上がるのに手間取った間に既にガウェインは体勢を立て直していた。 そして逃げようとしたクロードの背中に一撃を浴びせる。 「がっ…!?」 苦痛に顔を歪め、クロードは再び地面に転がってしまった。 「…」 ガウェインは倒れて動かなくなったクロードを無言でみつめる。 そして決着をつけるべく、彼の首に剣を当てた。 迷うな、そう自分に言い聞かせながら―。 その時だった。 「やめろーっ!!」 剣を持った一人の青年が、叫びながらガウェインに向かって来た。 すかさず青年の方を向いて彼の剣を受け止める。そのまま二人は剣を重ねて対峙した。 だが青年の剣を見た時、ガウェインの顔色が変わる。 (…!この剣は!?) ガウェインは剣を弾くと、逃げるようにその場から走り去った。 「逃げた…?」 その場に取り残された青年ルシオは、少し拍子抜けしてしまった。 わずかに手合わせしただけだが、ガウェインの強さは明らかに自分より上だった。手には未だ痺れが残っている。 それなのになぜ彼は逃げたのだろう? 「って、そんな事を考えている場合じゃないな」 うつ伏せに倒れているクロードを様態を確認する。 脇腹と背中の傷は浅いし血もそれほど出ていない。だが右肩の傷は少し深そうだ。 ルシオはとりあえずクロードが頭に付けていたバンダナを使い、右肩の傷口に巻いて応急処置をする。 「彼が目を覚ますまで待つか…」 そして彼を担ぎ、近くにある建物へと入っていった。 【E-4/午前】 【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%] [状態:右肩に裂傷(応急処置済み、回復具合は次の方任せ)左脇腹と背中に浅い裂傷、気絶中] [装備:無し] [道具:未確認の支給品×1~3、荷物一式] [行動方針:仲間を探す] [思考:不明] 【ルシオ】[MP残量:100%] [状態:普通] [装備:アービトレイター@RS] [道具:確認済の支給品×0~2、荷物一式] [行動方針:知り合いと合流(特にレナス)] [思考:クロードが目を覚ますまで待つ] [現在位置:E-4のホテル跡の一室] 【ガウェイン・ロートシルト】[MP残量:100%] [状態:やや焦り] [装備:グランスティング@SO2] [道具:確認済の支給品×0~2、荷物一式] [行動方針:リドリーを優勝させる(だが完全にゲームに乗るにはまだ迷いがある)] [思考:ホテル跡から離れる(方向は次の方任せ)] [現在位置:E-4のどこか] 【残り56人】 ---- [[第24話>嗚呼麗しのお姉様]]← [[戻る>本編SS目次]] →[[第26話>決して怖じ気づいた訳じゃねぇぜ]] |前へ|キャラ追跡表|次へ| |―|クロード|[[第39話>ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる]]| |―|ルシオ|[[第39話>ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる]]| |―|ガウェイン|[[第72話>迷い]]|

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