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第5話 己の往く道


(まったく、参ったね……)
草むらの中で身を隠すように座り込みながら、デミテルは考える。
金髪の剣士一行にぶちのめされた後、気が付いたらあの空間に飛ばされていた。
居るはずのないダオスまでもがそこに居て、あまつさえ命令される立場━━自分たちと同じ参加者の立場だったことからこれは夢かもしれないと思ったが、夢から覚めようと自分を痛めつける気にはならなかった。
夢だろうが現実だろうが死なないように尽力すればいい。
夢か否かなど重要なファクターではないのだ。
真に重要なことは……
(ダオス様は勿論、あの剣士達を何とかしなくてはな……)
優勝を狙うには、障害があまりに多すぎることだ。
少なくとも彼らは真正面から戦って勝てる相手ではない。
まずは使える武器を集めなければ……
駒も欲しいところだが、駒に反逆された時のことを考えるとそれなりに強力な武器が欲しいところだ。
少なくともセフィラという名も無き女神の像とスペツナズナイフという刃の部分が飛ぶ変わった刃物しか持って居ないこの状況で誰かと組むにはリスクが高すぎる。
ただでさえ詠唱時間がある分魔術師は戦士とサシで戦うと不利なのだ。
せめてもう少し勝手の良い武器が護身用に欲しい。

(……どうやら、運は私に向いているらしいな)
誰かがこちらに近づいてくるのが見える。
その手に持つ立派な剣。あれには見覚えがある。
ダマスクスソードという名の剣で、剣士ではないデミテルでさえその名を聞いたことがあるなかなかの一品だ。
市場に出回っている剣の中では上位の切れ味を持ち、ダオスの配下でもこの剣を使っている者がいたような気がする。
(あれなら護身用には申し分ないな)
都合よく現れた得物に、思わず口元が歪んでしまう。
とりあえずサクッと殺ってしまおうと詠唱を始める。勿論小声で。

「そこに居る奴、出て来い」
が、声が届いたのか殺気に気付かれたのか向こう側から呼び出しをくらってしまった。
セフィラとかいう女神の像よ、名は無いとしても仮にも女神なのだから少しくらい運気を上げてくれてもいいんじゃないか?
「こちらにやる気は無いが、そちらがやる気ならば容赦はしない」
「……物騒なことを言わないでいただきたい」
確実にしとめられるよう一番強力な呪文を選んだことが裏目に出た。
詠唱にはまだ時間がかかる。
仕方がないので作戦を切り替え、素直に手を挙げ茂みから姿を現すことにした。
「私にやる気は無い。その剣を収めてもらえないか?」
あくまで人畜無害を装いながら、ゆっくりと茂みを出る。
ダマスクスソードは、切れ味はいいがただの剣だ。
それ自身に魔力のようなものは篭っていないし、剣の間合いに入らなければ恐れることはない。
「……お前の武器は何だ」
「ナイフですよ……貴方の剣より遥かに短い、ね」
スペツナズナイフの一本を右手に、もう一本を左手に持つ。
勿論、その指は刃先を発射させるためのボタンに触れる程度に乗せてある。
「……そいつを捨てろ」
はいはい、と適当な返事をし、横にナイフを投げ捨てるふりをして左のスペツナズナイフのボタンを押す。
さすがに刃先が飛ぶとは思っていなかったらしく、目の前のポニーテイルの男は目を見開いた。
が、どうやら相手も並の戦士ではないらしく、慌てて振り上げられた刀によって刃先は緩やかな円を描き男の遥か後方に飛んでいく。
そして、その刃が地上に落ちた時、右手のスペツナズナイフから発射された刃先は無防備になった男の額を貫いていた━━
「くく……これでいいかな?」
額に銀色の刃を生やした男の手からダマスクスソードを回収しようと歩み寄る。
あまりに好調な滑り出しに、つい笑みがこぼれてしまう。
「その二本の刃は嘘をついたことへの詫びとしてくれてやる。
 恨むのなら、愚かな自分を恨むんだな」
言いながらも視線を左右にせわしなく動かす。
派手な音はしていないが、人が来ないか警戒するに越したことは無い。
伸ばした右手が熱を帯びる。
「え?」という間の抜けた声を上げ、そのまま前方につんのめる様に倒れた。
おかしなことに、右腕の肘から先が行方不明になっていた。
「え?な……」
何が起きた?え?だって、確かに、誰も来てな
あ?遠くからの攻撃?何?不味い、一旦、離れ━━
「詫びならいらん。嘘を付いたのは俺も同じだ」
おそるおそる振り返る。
振り返る前から、首筋に感じる冷たい感覚が何なのかはわかっていたが、確かに額にスペツナズナイフが刺さったはずの男が生きているなどにわかには信じられなかった。
結論から言うと、振り向いたところでデミテルの疑問は解消されなかった。
殺したはずの男は確かに背後で立っており、額に生えていたはずのナイフは無くなっており、そして首筋に当てられていたダマスクスソードはいとも簡単にデミテルを頭部と身体に分断した。
『俺が生きている理由が知りたいか?なら冥土の土産に教えてやるぜ』などという親切なイベントは起こることもなく、デミテルは己の敗因すらわからぬまま、逝った。
「俺も、お前を殺す気だったからな」
デミテルの所持していた最後のスペツナズナイフを回収し、もう一度デミテルの身体をダマスクスソードで切り裂く。
神の作った物でもなければ至高の一品と言うわけではない。
人の肉を切り裂く分には申し分のない切れ味なのでしばらくはこれで我慢をするが、やはり使い慣れない刀だと動きが鈍くなる。
思ったよりも振るいづらかったために二本目の刃を額で受けることになり、おかげで貴重なリバースドールをこんなところで消費してしまった。
(……まぁいい。次からは慎重に動くまでだ)
刃先に付いた血をデミテルの服で拭い、デミテルのデイパックに武器が残っていないことを確認する。
荷物が多いと動きが鈍くなるためデミテルの分のデイパックは捨てて行こうと決め、デイパックを一太刀の元に切り裂いた。
切り裂かれたペットボトルから溢れる水を眺めながら、ジュンは考える。
ヴァルキリーに━━かつて己の浅ましさに気付かせてくれたあの戦乙女と対峙したとき、自分は彼女を斬るのだろうか。
多少なりとも恩義があるし━━正直勝ち目も薄いであろう。
それでも、一人生き残るために戦うのか?
別にそこまで生への執着があるわけでもないのに。
既に一度死んだ身だというのに。
「……愚問だな」
自らの己の命を絶つつもりがないのなら、取るべき行動は一つではないか。
悩む必要なんてどこにもないだろう?
死ぬ気がないなら、殺さねばなるまい。そういうルールだ。
そうだ。生前でも天界でも多くの者を殺し、鬼との約束を平然と破り、己のために多くを切り捨ててきたじゃないか。
ヴァルキリーによって誤った道だと気付かされた自己中心的な修羅の道だが、立ち止まるよりは遥かにいい。
「俺は俺の道を往く」
ジュンは、再び血塗られた道を歩き出した。



【C-02/朝】
【ジュン】
[状態]:正常
[装備]:ダマスクスソード@TOP、スペツナズナイフ×1
[道具]:支給品一式
[行動方針]:自殺をする気は起きないので、優勝を狙うことにする。
[思考]:出会った者は殺すが、積極的に得物を探したりはしない。
[現在地]:道と道の間の草むら付近

【デミテル@TOP 死亡】
【残り59人】

※真っ二つになったデイパックがデミテルの死体の側に落ちています。
 デイパックの中には切り裂かれて水の漏れているペットボトルの他に無傷のペットボトルと食料が入っています。
※セフィラ@TOPはデミテルの死体の懐に入ったままです。




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デミテル
ジュン 第49話
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