第39話 ホテルの跡の眠り姫、王子はきっとやってくる


あの時、僕は何を考えていたのだろう

気絶している青年をホテルに運びこみ、応急処置をした後で床に座り込んだルシオは考える。
先程の戦い、確かに僕はこの青年の命を助ける事ができたのだ。
そうは考えるのだが、ルシオの心は晴れない。

あの時、僕は何を考えていたのだろう


支給品や名簿を確認し、まずはプラチナを捜すため歩き出した。
少し行った所で、壮年の男性に殺される寸前のこの青年をみて、たまらず飛び出した。
しかし相手は僕の不意打ちをあっさりと受けて、そして剣を弾かれた。


正直、相手が逃げてくれたから良かったものの、
あのまま戦っていたら自分もこの青年と一緒に血の海に沈んでいたに違いない。
その光景を想像し、思わず背筋を冷や汗が伝う。

この青年をあのまま見捨ててしまえばよかったのだ、
とはさすがに思えないが、もう少し冷静な思考はできなかったものか。


と、目の前にある無敵ユニットを見ながらルシオはうなだれる。
傍らに置いてある説明書には、一定時間は攻撃できないがその間は無敵になれると書いてある。
あの場でこの道具を使っていれば安全にあの男を追い払えたかもしれない。
だがルシオは使わなかった。なにも出し惜しみをしたわけではない。
目の前に今にも殺されそうな青年を見て、すっかり気が動転してしまったルシオは、
道具の事もプラチナの事も、何もかも忘れてその場に躍り出てしまったのだ。
考えるうち、ますますルシオの気分は沈んでゆく。



あれからしばらく経ったのだが青年は一向に目覚める気配を見せない。
知り合いだろうか、しきりにレナという名を呼んでうなされている。
その姿を見てルシオも思い人の事を思い出す。

(プラチナは、どうしてるだろう)

もしかしたらこの青年のように誰かに襲われているかもしれない。
彼女の強さはルシオ自身よく知っているとはいえ、
ロキやブラムスといった強敵に襲われればただで済むはずがない。
いや、そもそもがこんなゲームに放り込まれた以上いつまでも無事でいられるはずがないのだ。
戦乙女でもあるプラチナを倒せる者など滅多にいるものではないと考えるも、
一度覚えた不安は際限なく膨らんでゆく。



なおも目覚める気配を見せない青年を前に次第に焦りがつのりだす。
友人だろうか、安らかな様子でアシュトンという名を呼び続ける青年に苛立ってくる。
こうしている間にもあの変態魔道士がプラチナに言い寄っているかもしれない。
あんなのに彼女がなびくとは思えないが、胸に渦巻く不安はどうしてもおさまってくれない。

(プラチナは、大丈夫かな)

彼女は確かに強いけれど、どんな時でも不測の事態というのはあるものだ。
別にそんな時に自分さえいれば何とかできるだろうと思い上がるわけではない。
ただ、こんな自分でも、近くに居たならきっと何かできる事はあるのではないかと、
自分が傍にいることで、きっと何か分け合える事もあるのではないかと、
ルシオはそう思うのだ。



いつまでたっても目を醒まさない青年にとうとう痺れを切らす。
恋人だろうか、にやけた顔でシンという名を連呼する様は正直いって見ていられない。
実は気を失っているのではなく眠っていたという落ちではないかと疑いだす。

迷いながらも、ルシオはやがて立ち上がる。
気絶したままの青年を置いてゆくのは気がかりだが、
この青年を襲っていた男も戻ってくる気配は無さそうなので、一応は安全なはずだ。
そう考え、自分を納得させてルシオはホテル跡から立ち去ってゆく。

(プラチナを、捜さなきゃ)





【E-4/昼】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、武器を振り回すには難あり)左脇腹と背中に浅い裂傷(応急処置済み)、気絶中]
[装備:無し]
[道具:未確認の支給品×1~3、荷物一式]
[行動方針:仲間を探す]
[思考:不明]
[現在位置:E-4のホテル跡の一室]

【ルシオ】[MP残量:100%]
[状態:普通]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:無敵ユニット、確認済の支給品×0~1、荷物一式]
[行動方針:知り合いと合流(特にレナス)]
[思考:村を目指す]
[現在位置:E-4のホテル跡入り口]

【残り55人】




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最終更新:2007年06月07日 10:48