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第55話 君が望むなら僕は


僕はプリシスのことが好きだ。
十賢者との最終決戦前、僕は思い切って彼女に告白した。
そのころの彼女がクロードを好きだったことは知っていた。報われない恋だと知っていた。
でも、僕は玉砕覚悟で告白した。
結果は……
『ごめん……あたし…クロードのことが…』
答えはわかっていたけど、心に響く、本当に好きだから。それにプリシスもつらいと思う。
彼女も報われない恋だったから。クロードにはレナがいたから。
でも彼女は頬が赤く染め、微笑みながら言葉を続ける。
『二番目に好きな人がいるんだ。その人は影ながらあたしのことを心配していて、いつもあたしのことを想っていてくれる人』
『今はクロードが一番だけど、いつか心の整理がついたら。その人のことを一番好きだってあたしから言いたい』
僕は一瞬理解できなかった。
『えっ! それって?』
プリシスは瞳を落としながらばつが悪そうに後ろを振り向く。
『さーて、明日は最終決戦。今日は早いこと寝ないと…バイビー。おやすみ♪』
『えっ、あっ、待ってよプリシスーーー』

あれ以来、プリシスから返事は返って来ていない。
それどころか、突然プリシスから地球に行くと聞かせられた。
あの時はショックだった。一週間ほど寝込むほどの衝撃。
プリシスが地球への留学。僕は嫌だった反対したかった。
でも、彼女が機械の勉強をするためには地球に留学は仕方ないと思う。
それに、嬉しそうに話す彼女の笑顔が眩しかった。僕には止められそうにない。だから何も言わず見送った。
いつか彼女が戻って来ることを待ちわびて。
その後、僕は一人リンガの裏山で必死に剣術の修行に励んだ。
そうすれば、プリシスに会えない寂しさが忘れられた。
いや、紛れたと言ったほうが正しいのかも。一種の現実逃避だったかもしれない。

久しぶりに会ったプリシスは相変わらず可愛かった。彼女が会えなくなってから何ヶ月ぶりだろうか。
とても嬉しかった。胸が弾んだ。あの大好きなプリシスに会えて。
でも…どうして……?



「……うぅ……ヒック……」
「ギャー(アシュトン、気にすんな。何か理由があったんだ)」
「もうほっといてくれ、僕なんてどうせ、どうせ……」
プリシスがエクスペルに離れている間に好きな人が出来た? だから、僕に会いたくなかった。
でも…
「いくらなんでもあの言い方は無いよぉ」
どうしてなんだよぉーーーー。

僕の脳内はその言葉でいっぱいだった。どうしてプリシスがいきなり僕を殴りつけたのか。
自分には全く理由がわからない。知り合いの半裸の男を殴りつけたからだろうか。
自分の中で、最も触れたくない答えがもたげてくる。
それとも―――自分のことが嫌いなった。
どうして? どうして? どうして? どうして? どうして?……
無限に広がる『どうして?』という単語。
蝕んでゆく。それらは覆い尽くし闇夜を作る。
答えがほしい。この永遠と思える苦痛から逃れる術から解き放つ答え。
どうすれば? どうすれば? どうすれば? どうすれば? どうすれば?……
無限にある『どうして?』を『どうすれば…?』で剥がそうとする。
いくら、頭をフル回転させても名案な答えは出ない。二つの言葉が反発しあい更に混乱させる。
「ギャー……(あんまり、思い詰めるなよ…アシュトン……)」
「僕は僕は僕は僕は僕は……」
どうすれば…プリシスは僕のことを好きになってくれる?

「どうしたら…いい「こんにちは諸君」」
悲痛の叫びが謎の声に遮られる。
僕はすぐに声の主が判った。ルシファーである。
「もう、12時か……」
自分の感覚では、スタートしてからまだ1,2時間しか経っていない気分だ。
僕は顔をうつ伏せながらルシファーの話に耳を傾けた。
今、メモを取る気分ではない。が、そうもいかないので、メモを取る。
ルシファーは軽快な口調で語りかける。
放送はものの数分で終了。その場は深い静寂に包まれた。
死亡者の中にかつての仲間ノエルさんがいたことは僕を驚かせた。
でも、死亡者にプリシスがいなかったことに安堵する自分もいた。
普段の僕ならノエルさんの死を悲しむところだが、ルシファーのある台詞が暗く凍りついた精神を溶かしていく。
闇夜だった自分の脳内に光明が広がる。まさに天啓だった。
僕は立ち上がり笑った。今までつまらないことで悩んでいた馬鹿な自分に対して笑った。
これなら、全て説明がつく。プリシスの行動の意味がわかる。
彼女はこのことを理解していたんだ。



人を喜ばすにはプレゼントを贈くればいい。
それが相手望んでいるような品ならよりいっそう効果的だ。
今、自分が出来る最高の贈り物とは…。
最初に支給された綺麗に宝石が施されたネックレス?
否、それは違う。
ギョロ、ウルルンわかったよ。簡単だった。
プリシスが望むこの場この状況で出来る最上の贈り物とは―――――

「ギャフ(アシュトン、人の気配を感じるぞ。気をつけろ)」
ギョロが鋭い感覚で危険を知らせる。

◇◇
突然、笑い声が聞こえた。ちょっと前まで泣いていた男が狂ったように笑い出したのだ。
そのおかげで俺はあの泣き虫野郎の居所が確認できた。
一瞬だけ、うっすらと陽炎のような揺らぎが見えた。そして、また見えなくなった。
このことから、奴は不可視状態だとわかった。
チャンスである。泣き虫野郎は俺に気付いていない。
ここで、不可視状態になるアイテムを奪えば俺の目的がかなり前進する。
それと、俺を馬鹿にした青毛の地球人、クラウストロ人、そして青色ロンゲに復讐できる。
さっきの放送で死んでいないこと祈った。
俺は泣き虫野郎を殺すべく。パックから武器を取り出す。
最初はフェイズガンがあったから、気に留めていなかったけど、銃が動かない今、これしか武器がない。
光り輝く剣である。質に入れれば高く売れそうな剣である。剣なんて未開惑星くせえと毒づく。
樹木を背に隠れている俺は泣き虫野郎を切りつけるため、剣を構え飛び出す。
「死ねーーー」
が、地面に剥き出しになった木の根っこに足を引っ掛け転んだ。
しかも、唯一の武器である剣を落としてしまった。
(終わった……これで俺の人生も…)
死を覚悟した。が、俺の上方に火炎放射器のような勢いの炎が通り過ぎた。
「……!?」

もしかして、足を引っ掛けてなかったら、あの炎に直撃してたのか。
不幸中の幸いとはこのことだ。助かった。しかし、まだ安心するのは早い。
俺は相手に気付かれていたことに身震いした。
そして、殺る気満々であることにも。
(早く、剣を拾って逃げねえと)
落とした剣に目を寄せたが、突然スゥと消え去った。
この不思議な光景の前になぜだと思うよりやべぇと感じた。多分、盗まれたんだ。
俺の脚は人生に体験したこともないような跳躍力で飛び起き、泣き虫野郎に背を向け走り出した。
「泥棒は犯罪だぜ、クソがーーー!!」
茂みを掻き分ける音、足音が聞こえる。恐怖。
見えない奴に追いかけられることはどんなことよりも恐ろしかった。
まるで、ホラー映画のワンシーンにいるような感覚だった。
そして最終的には……ジ・エンド。
(そんなことさせないぜ)
俺は青色ロンゲに撒いた時のアイテムを発動させた。
あのアイテムは3時間の充電期間が過ぎれば半永久的に使用できる。
使用するとすぐに濃霧が立ち込めてきた。これなら、逃げ切れる。
だが、俺の期待と裏腹に追跡の音は止まなかった。しかも、的確に俺のほうへと向かってきている。
俺は走り続けながら、後ろに目配せする。
なんと、吹雪ようなのが霧を凍りつかせて、散らしていたのだ。絶望的だ。
(クソが! 紋章術が使えるのか)
とにかく、逃げるしかなかった。自分の体力が続く限り。
疲れと傷が俺の体力を奪う。そして、自分の精神状態を恐怖という感情に縛り付ける。
無我夢中で走るしかなかった。それしかない。捕らえられれば…。
目先に森の出口が見える。
俺は起こるはずもない奇跡を祈った。
天使でも悪魔でもいい。助けてくれ。

◇◇
「あのー…お姉さま。行かないのですか?」
「ふん、行かないわよ」
「え、どうしてですか」

はっきり言うと面倒くさかった。
突然、わけのわからない人物に『殺し合いはしたくない』『ここに来て』と言われても、
はいそうですかと行くわけにはいけなかった。どう考えても怪しさ爆発。
仮に信用できる人物だとしても、人を呼び寄せた行為によって
殺し合いに参加した奴がそこに集まるのは自明であった。
だから、私は適当にロジャーに危険だと説明する。
しかし、このチビ狸は納得しなかった。ああ、もう鬱陶しい。
「この6時間でオイラの知り合いが3人も亡くなった……最初はオイラ…冒険気分だった。
けど、スフレ、アドレー、クレアお姉さまが死んだと聞いて…悲しかった。
わかるんだ…あの娘も悲しかったんだって。だから……オイラ男だから助けに行きたいんだ」
一時の感情に流されるなと言いたい所だが。
「そんなこと言って罠だったら、どうするの? 私は騙されて死にたくはないわよ」
「お姉さま…そこは問題ありません。オイラこれでも強いんで全力でお姉さまの騎士になります」
私は到底このチビ狸が強そうとは思えなかった。むしろ、弱そう。しかも武器も持っていない。
「とにかく、私は行かないから」
「そんなことを言わずに行きましょうよ。お姉さま」
その場でクソ狸と行くか行かないかの応酬になった。私はいい加減そのやり取りにうんざりしてきた。
このままこいつを始末してやろうかと思った瞬間。
森の中から黒い服を着た男が現れた。そして私のほうへと向かってきた。
(しまった……敵襲…油断したわ…殺られる…)
私は覚悟を決めた。男は目と鼻の先まで近づいている。
たぶん刺される。鋭いナイフようなもので。
私にはまだやらなければならないことがあるのに…。
が、刺されることなく男に抱きつかれた。異常な熱気が私を覆う。
「はあ、た…たすへこ…はあ、くだへい(たすけてください)」
何を言っているのかさっぱり理解不能だった。その前にかなり不快だった。
男は全身のありとあらゆる穴から体液を噴出させていた。
顔中も汗と涙と鼻水が入り乱れてこの上なく気持ち悪かった。
それに、気持ち悪さに拍車をかけるようにハアハアと吐息が顔に当たる。
デリケートな私には耐えられなかった。

「ちょ、ちょっと放しなさい」
私は必死で男から放れようとするが、男はそうさせなかった。
「おいそこのバカチン、お姉さまは嫌がっている。放せ」
ロジャーがこのキモ男を引き剥がそうとするが、躍起になって放れようとしない。
「はあ、ほねがいでふ。たふけて(おねがいです。助けて)」
我慢の限界であった。体中がキモ男の汗でべとべとになってしまったから。
「だから……いい加減にしろって言ってんでしょうが!」
渾身の頭突きをくらわせる。少し頭が痛いけど、ようやく私の体が開放される。本当に災難だった。
「一体、どうしたのよ? いきなり抱きついて」
「ひえない敵がきへいるんです(見えない敵がきているんです)」
「冷えない敵……?」
キモ男はパニック状態と疲労からなのか舌が回らない。
でも、一つだけ判ることがある。切羽が詰まった状態であること。
それも限りなく。かなり危険人物が迫ってきていると予測される。

◇◇
プリシス。もうすぐだ。もうすぐだよ。君にプレゼントが贈れるよ。
すでに2つも見つかったんだよ。君へのプレゼント。
今追いかけている黒服の男とほとんど近くにいるはずあろう拡声器の女の子。
さすがプリシスだよ。あんな少ない情報から答えを導き出すなんて凄いよ。
僕なんてルシファーの『生きて帰るには自分以外の全員を殺さなければならない』の台詞を聞くまで気付けなかったのに。
これだと、プリシスがなぜ僕に攻撃したか説明がつく。
プリシスはこの戦いに生き残りたいんだよね。
だから、しかたなく僕を攻撃した。あの強面の半裸の男は君の協力者だろう。
僕に言ってくれれば、手伝ってあげたのに……。
でも、僕は決して怒っていない。仕方ないさ。
僕たちが死に物狂いに倒したはずの十賢者が生きかえすほど力を持ったルシファーに歯向うのは絶望的。
だから、僕は影ながら応援する。

偶像のような虚像のようなネックレスを君の機嫌取りに贈ろうとした馬鹿な僕。
許して欲しい。嫌わないで欲しい。
だから、僕は君に最高の贈り物を贈るよ。
参加者を殺すこと。
そして、君に愛の形を証明するために集める。
参加者たちの首輪。
いくらでも集めるさ。10個でも20個でも50個でも。いや、プリシスを除く全部。
プリシスのためならいくらでも。
そうすれば、プリシスは僕のことを一番好きになってくれる。

今追いかけている男は森を抜けたよ。僕もすぐに追いつく。
霧が出てきたときは驚いたけど、ウルルンのおかげで見失うことなく、ことが進んだよ。少し離れたけど。
森の出口の木漏れ日はまるで悩んでいた僕みたいだ。
そこを抜ければ闇から光へと続く道筋。
そして、森を抜けた僕に光が包み込む。

ごめんね……プリシス。訂正する。2つじゃなかった。
4つだった。目の前の三人と拡声器の娘。


アシュトンが持つ聖剣アヴクールが本来の所持者の女性との想いとは裏腹に光輝いていた。
いま、メルティーナ達に見えない恐怖が襲おうとしていた。



【G-05/真昼】
【アシュトン・アンカース】[MP残量:100%]
[状態:歓喜 疲労小]
[装備:アヴクール@RS・ディメンジョン・スリップ]
[道具:荷物一式・余ったディメンジョン・スリップ]
[行動方針:プリシスの望むまま首輪を狩り集める]
[思考1:目の前にいる3人の首輪を狩る]
[思考2:拡声器の主のところへ行く]
[現在位置:三つに分かれた道]

【ノートン】[MP残量:100%]
[状態:右腕と胸部に深い裂傷(応急処置済み) 恐怖によるパニック 疲労大]
[装備:無稼動銃]
[道具:荷物一式・マジックミスト]
[行動方針:オレ様のオレ様によるオレ様だけの為の王国の樹立]
[思考1:死にたくない]
[思考2:すぐにでも安全な場所に逃げ出したい]
[現在位置:三つに分かれた道]

【ロジャー・S・ハクスリー】
[MP残量:100%]
[状態:いまいち何が起こっているかわからない]
[装備:グリーンタリスマン・ウィザードクロス]
[道具:荷物一式]
[行動方針:ルシファー打倒]
[思考1:拡声器の娘に合流したい]
[思考2:フェイト達と合流]
[現在位置:三つに分かれた道]

【メルティーナ】
[MP残量:130%(最大は130%)]
[状態:未知なる敵に警戒]
[装備:レーザーウェポン・ルナタブレット]
[道具:???・荷物一式]
[行動方針:ヴァルキリーに会ってから考える]
[思考1:どうやって乗り越えよう]
[思考2:ヴァルキリーかレザードと合流]
[思考3:単独行動もいいが、なるべく二人以上で行動]
[思考4:攻撃してくる奴はぶっ殺す]
[現在位置:三つに分かれた道]

【残り49人】




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