第64話 人は困難を乗り越えて強くなる。魔物は知らん


俺様ジェストーナとセリーヌは、放送を聞いた後南下を開始、程なくして街道に出た。
幸運な事に、ここまで誰にも襲われていない。
このまま何事も無ければいいんだが…。

「道に出ましたね。どうします?」
「そうですわね…東には何もありませんし、西も目立った建物は神社しかないわ。南下を続けて氷川村まで行くのが妥当でしょうね」
まあそうだろうな。
村とういう所は人が集まりやすいし、セリーヌの仲間とやらに合流できる可能性は高い。
聞けばその仲間にはかなり腕の立つ人物もいるようだ。強い人物と合流できれば、俺の生存率も上がる。
何より、神塚山からはさっさと離れたい。
「このまま進むと途中に焼場がありますわね。ここを経由しつつ進みましょう」
「焼場…ですか?」
成る程、確かにここから直線上に南下すると地図に「焼場」と記載された場所を通る。
わざわざ地図に書かれている以上は何らかの施設があるだろうし、そこを目印に参加者も通るかもしれない。
だが…俺は何となく焼場に行くのが躊躇われた。
いや、特に理由は無い。何というか、第六感というか、虫の知らせというか…。
とにかく嫌な予感がする。焼場には寄るべきではない、迂回して進んだ方がいい。
といった事をセリーヌに進言してみると
「別に私、貴方について来て欲しいとは言っていませんわ。嫌ならここで別れましょう。さようなら」
見捨てられてしまった。これは酷い。
セリーヌはそのまま街道を横切り、森の中へと入っていく。
「ちょっと待って下さいよ!俺も行きますって!」
セリーヌはここで失うには惜しい戦力だ。それに彼女には仲間も多い。
既に仲間がいない俺では、新たに同行者を見つけるのは非常に困難だ。
確かに焼場に行くのはあまり気が進まないが、セリーヌと別れるよりはマシ。
そう判断した俺は無人くんと共に、慌ててセリーヌの後を追った。


今思えば…やめておくべきだった…。





焼場の外に出たアリーシャの前に、再びガブリエルが姿を現した。
「やはり貴様を逃がす訳にはいかない」
このままこの少女を逃がせば、自分の存在が他の者にも知れるかもしれない。
そうなったらこの焼場に総攻撃を仕掛けられる可能性もある。
その冷酷な瞳に、アリーシャは恐怖と狂気を同時に感じて身を引き締めた。
同時に肢閃刀を構えて臨戦態勢を整える。

「スターフレア!」

ガブリエルが叫ぶと同時に、降り注ぐ光がアリーシャを襲う。
光子の力を使う間も無い。その場から飛び退き、先程割った窓から焼場の中へ転がり込んだ。
壁が盾となり、何とかスターフレアを避ける事に成功した。
だが焼場の壁はそれに耐えることができず崩れてしまう。そして開いた穴からガブリエルが姿を見せる。
「この程度の建物も破壊できないとは…これが奴の言っていた『能力制限』というものか?」
喋りながらも詠唱を開始するガブリエル。
詠唱を止めるため、アリーシャはガブリエルに向かって斬りかかった。
しかしガブリエルは詠唱を止めずにその斬撃をかわす。

「遅い!ディバインウェーブ!」

詠唱を終了したガブリエルから紫色の波動が放たれる。
至近距離から放たれた魔法に、回避不能と判断したアリーシャは防御態勢で迎え撃つ。
肢閃刀を立てて身体への直撃を避けるが、その衝撃でアリーシャの細い身体は吹き飛ばされた。
その勢いで外に放り出され、地面に叩きつけられる。

「…くっ」
すかさず魔法「キュアプラムス」を唱えてダメージを回復する。
だが回復魔法の効果が制限されたこの状態では、思ったほどの回復は望めなかった。全身を痛みが襲う。

「ダメだ…」
この男には勝てない。自分と彼の力量には大きな開きがある。
その上向こうはこちらを殺す気満々。対して自分は相手を殺すことに躊躇がある。
力も、覚悟も違うのだ。
ここは退くしかない。男は危険な存在だが、ここで自分が死んだら何もかも終わりだ。
しかしあの男が、果たして逃走する隙を見せてくれるのか。

アリーシャが立ち上がった時には、既にガブリエルは次の攻撃の準備に入っていた。
距離を取ってアリーシャは来るべき攻撃に備える。

「これで終わりだ…」

ガブリエルが構える。
それと同時に、アリーシャはこれまでに無い威圧感を感じた。
この攻撃は発動させてはいけない。そう直感する。
だが距離を取ってしまった為に、もうこちらの攻撃は間に合いそうにない。
「喰らうがいい!!」

しかしガブリエルの攻撃『神曲』が繰り出される事は無かった。
発動するまさにその直前、青白いレーザービームがガブリエルに命中し、発動が邪魔されたのだ。
「おのれ!誰だ!」
ガブリエルとアリーシャは、レーザーが放たれた方向を見る。


「間に合いましたわ…」
そこには珍妙な服を着た女性とオロオロした様子の魔物が立っていた。




氷川村に向かって歩いていくうち、とうとう焼場が見えてきた。
何とも言い難い不安が俺を襲っていく。
…ってさっきから何か音がしないか?しかも焼場の方向から…。
「確かに何か聞こえますわね。ジェストーナ、貴方ちょっと様子を見に行って来てくれないかしら?」
何を言い出すんだよ!こっちは連れて来られたのに、そんな危険な事できるか!
などと反論できる訳も無く、仕方ないのでこっそり焼場に向かおうとした時。

何かが焼場から飛び出すのが見えた。
それは人間の少女だった。遠目から見ても、かなりダメージを負っているように見える。
そして、その後すぐに白い服を着た赤髪の男が建物から出てきた。

「あれは…ガブリエル!?」

セリーヌが呟く。
知っているんですかセリーヌさん!?と聞く暇も無くセリーヌは走り出した。
「ジェストーナ!着いてきなさい!」
あ、やっぱり俺も行くんだ…。
赤髪の男は、今にも次の攻撃を少女に向かって繰り出そうとしていた。
だがセリーヌは、走りながらも信じられない速さで詠唱を終える。

「スターライト!」

そしてその魔法は、赤髪の男に命中した。

と、そんな感じでここまで来たのだが…。

「何故生きているのかしら…ガブリエル…」
「…」
ガブリエルと呼ばれた男がセリーヌと睨み合う。

つか、ヤバイ。ガブリエルヤバイ。まじでヤバイよ。マジヤバイ。ガブリエルヤバイ。
まず強そう。もう強そうなんてもんじゃない。超強そう。
ここにいるだけで、あいつの強さをヒシヒシと感じる。
こりゃあ、ダオス様にも匹敵する位強いんじゃねえのか…。
ここは逃げるべきだ。うん、そうしよう。こんな奴とマトモに戦ったって勝てるわけ…。

「ジェストーナ。とりあえず戦うしかないようですわ」
って戦うのかよ!本気!?
「私が後方から紋章術で援護しますから、貴方には前線を任せますわ」
しかも俺が前衛かよ!確かにセリーヌは魔法使いだから正面から戦うのは無理だろうが…
「フン、私に向かって来るか。容赦はせんぞ」
いえ、向かってく気なんてこれっぽっちも無いわけで…
「助けて頂いて、ありがとうございます」
うん、助けたのは俺じゃなくてね…
『トントン』
ん?自分も手伝うって?いやお前に手伝ってもらっても雀の涙…

………

セリーヌがジト目で俺を見ている…。

………

少女が「頼りにしてます」という眼差しを送ってくる…。

………

あーもう分かったよ!
やればいいんだろやれば!つか、やるしかないんだろ!
観念するよ!どの道、こいつからは逃げるのも難しいだろう。
腹を括るしかないようだ。

俺は一歩前に出て、ガブリエルの前に立つ。


「魔物風情が、私に勝てるとでも思ったか!」
「なめんなよ!死ぬ前にこのジェストーナ様の力、とくと目に焼き付けておけ!」


とうとう、俺の戦いが始まっちまったようだぜクソー!




【H-07/午後】

【ジェストーナ】[MP残量:100%]
[状態]:ヤケクソ気味
[装備]:無し
[道具]:無人くん@SO2、荷物一式
[行動方針]:何でもいいから生き残る
[思考1]:もうヤケクソだ!うおおおおお!
[思考2]:できればガブリエルから逃げたい
[思考3]:セリーヌとその仲間を利用する

【セリーヌ・ジュレス】[MP残量:95%]
[状態]:正常
[装備]:スターネックレス@SO2
[道具]:???←0~2個 本人確認済み、荷物一式
[行動方針]:仲間を探す
[思考1]:ガブリエルと戦う。隙があれば逃げる
[思考2]:氷川村へ行く

【アリーシャ】[MP残量:90%]
状態:左頬に軽い切り傷、お腹を蹴られた、若干肌が赤くなるくらいの火傷(いずれも戦闘に支障なし)、全身に打ち身による痛み
装備:肢閃刀@SO3
道具:ボーガン@RS、矢×30本、暗視機能付き望遠鏡@現実、セントハルバード@SO3、荷物一式
行動方針:ルーファスと一緒に脱出する。自衛でも、殺し合いはしたくない。
     脱出の手立てはルーファスに会ってから考える。
思考1:ガブリエルと戦い、殺し合いをやめさせる。無理そうなら三人で逃げる
思考2:ルーファスを探す
思考3:ブラムスに会って事の真相が聞きたい

【ガブリエル(ランティス)】[MP残量:50%]
状態:右の二の腕を貫通する大きい傷。右腕は使えない。太ももに軽い切り傷。
装備:ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界
道具:荷物一式
行動方針:フィリアの居ない世界を跡形も無く消し去る
思考1:三人を殺す
思考2:コンテニュー
思考3:参加者の人数が減るまで行動はしない
思考4:潜伏先に侵入者が現れた場合は排除する
備考:フィリアは存在しませんが、制限のため能力はガブリエル第一形態以下になっています
   アリーシャの光子の能力を知っている

[現在位置:H-07 焼場前]




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最終更新:2008年02月23日 12:43