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第70話 最後の良心?


「13人…か」
定時放送を聞いたボーマンは、死者の人数が予想以上に多かった事に複雑な心境を抱いた。
自分で殺したアドレーの名前が入っている以上、この放送が嘘であるという可能性は低いだろう。
クレアと言ったか、アドレーの娘だという彼女も死者の中に含まれていた。
この事にボーマンは少なからず安堵した。彼女は、父親を失うという悲しみを知らずに済んだのだ。
(いや、違うだろ…)
その安堵をボーマンは自ら否定する。彼女にとって良かったのでは無い、自分にとって良かったのだ。
誰かの娘を悲しませる事を自分の手で作らずにすんだ事に安堵したのだ。
(…最低だな)
自分で彼女の父親を殺しておきながら、何て自分勝手な考えなんだ。結局の所自分の罪が減って安心しているだけなのである。
仲間だったノエルの死を聞いても、悲しみや怒り、憎しみが沸くと同時に「自分で殺さずに済んだ」と思ってしまった。
自分はいつからこんな人間になってしまったんだと自己嫌悪に陥る。
(ええい、しっかりしろ!)
ボーマンは自分の両頬を両手で叩き、気持ちを入れ替えた。
そしてノエルが死んだ事に対する悲しみ、怒り、憎しみをしっかりと心に刻む。
(この感情を忘れるな。俺はこれから、この感情を色々な奴に抱かせることになる。
人を殺すことも含めて、それらを俺は罪として背負って家族の元へ帰り、一生生きていくんだ)



禁止エリアを含めた放送内容のメモを終えると、ボーマンは歩き出した。
(さて…俺も一般人よりは戦える方だと思うが、アドレーの仲間という連中やクロード達が参加してる事を考えると
参加者は戦いに馴れた人物が多いようだ。それにガブリエル達が生存している今の状況、俺がまともに戦って生き残るのは厳しい)
ボーマンは歩きながら思案する。
考え事をしながらも、見通しの悪い森だけに警戒は怠らない。
(極力戦闘は避けて隠れ続け、漁夫の利を狙う…消極的だがやっぱこれが一番か?)
ボーマンがそこまで考えた時だった。
(ん…?)
背後に気配を感じる。
できれば他の参加者とは会いたくなかったんだが。上手くやり過ごせないか?
だがすぐにそれは無理だと悟る。その気配が一気にこちらに近づいてくるのが分かったからだ。
「ちいっ!」
その気配に向かって、ボーマンは振り向きざまに蹴りを放つ。
しかしその蹴りは空を切った。振り向いたとき、ボーマンの視界に映ったのは森の木のみ。
同時に、背中に何かが当てられる感触がした。
「両手を挙げてバッグをその場に捨てなさい。言う事を聞かないのなら、このスタンガンを使わせて貰うわ」
女の声がする。どうやら襲撃者は女のようだ。
背後からスタンガンを押しつけられているこの状況はかなりマズイが、どうやらすぐに殺す気は無いようだ。
まだ隙を見つけるチャンスはあるだろう。
そう判断したボーマンは言われたとおりにバッグを足下に落とし、両手を挙げる。
「これでいいかい、お嬢さん?」
「まだ喋って良いとは言っていないわ。私が質問した時のみ喋りなさい」
ボーマンの荷物を拾いながら女性は言う。どうやらかなり気の強い女性のようだ。やれやれと溜息を吐きながら次の指示を待つことにした。
「貴方、この殺し合いに乗っている?」
「乗ってないさ」
女性の最初の質問には嘘をついておく。こんな状態で相手に余計な敵対心を持たせるほど馬鹿ではない。
ボーマンの荷物の中身をチェックした後、女性が口を開いた。
「どうやら荷物が二人分あるようだけど…どういう事かしら?」
しまった、気付かれたか。心の中で舌打ちする。
だが慌てずに、それっぽい嘘をついておく。
「この島に飛ばされてすぐに、仏さんを一人見つけてね…。どうやら自殺していたらしい。
申し訳ないが、その荷物を拝借させてもらったのさ」
「…まあいいわ」
やや怪訝な感じだが、とりあえず納得したようだ。
「じゃあ次。今ここにいるエリア、ここはどこか言いなさい」
何だそりゃ?そんな事聞いて何の意味が…。まさかこいつ、ここがどこだが分からないのか?
「…多分、Eの2位だと思うが?」
一応これについては正直に答えておくことにした。
「Eー2…ほとんど移動していなかったのね…じゃあ最後に、貴方の名前と職業を言いなさい」
「ボーマン・ジーン。しがない薬剤師だ」
そう言った瞬間、相手の警戒が僅かながらに弱まった気がした。
「薬剤師…どうやら薬草も持っているみたいだし、丁度良いわ。そのまま私の指示に従って前を歩きなさい」


スタンガンを押しつけられたまま、ボーマンは女性の指示通りに歩いた。
その女性…マリア・トレイターと言うらしいが…彼女に連れてこられた場所には、一人の少年が倒れていた。
「彼の治療をして頂戴。私も応急処置は施してみたけど、まだ不十分のようだわ」
成る程、見るからに重症だ。
あちこちに残る傷痕は彼女の言うよう応急処置はしてあるようだが、それでも危険な状態である事に変わりはない。
このまま放っておけば、あと一時間と持たないだろう。
(さて…どうする?)
今なら自分が治療すればまだ助かるだろう。だが殺し合いに乗った身として、参加者の命を助けるなんて事は馬鹿げている。
ボーマンはストックしておいた破砕弾、トリカブトが自分の荷物にある事を思い出す。
(アドレーと同じように、こいつらを薬だと偽って飲ませて殺すか?)
…いや、駄目だ。背後にいるマリアは相変わらずスタンガンから手を離さない。
この状態で少年を毒殺したり爆殺したりすれば、その時点で自分も殺されてしまうだろう。
せめてマリアの方から殺せればいいのだが、その隙は見せそうにない。かといってこのまま治療を渋っていても怪しまれる。
(仕方ねえな…)
ボーマンはマリアに返された荷物の中からマンドレイクとアルテミスリーフを取りだした。
それらを少量ちぎって調合を始める。
少量なので効果は落ちるだろうが、さすがに全部使ってやるのはあまりに勿体無いし、そこまでしてやる義理も無い。
完成した「スイートシロップ」を水に混ぜて少年に飲ませた。
多少吐き出してしまったが、ちゃんと飲み込んだようだ。ついでに作っておいた秘仙丹も一つ一緒に飲ませておく。
これでとりあえずは大丈夫だろう。


「これで一応一命は取り留められたと思う。ただそれでもしばらくは絶対安静にしておいてくれ。また傷が開いたら危険だからな。
ま、俺に出来るのはこのくらいだ」
「いえ、助かったわ。ありがとう」
治療が終了し、ようやくボーマンはスタンガンの拘束から解放された。
マリアは心底ほっとした表情でボーマンに礼を言う。
「貴方が良ければ、これから私達に狭量してくれないかしら?私達はこれから主催を倒す為に行動するつもりなんだけど」
薬剤師としての技術と知識は、このゲームにおいて非常に役に立つ。仲間になってもらえば頼りになる。
そう思ってマリアはボーマンに協力を要請したのだが。
「悪いな。俺はちっとやらなきゃいけないことがあるんでな。先に行かせて貰うよ」
ボーマンはマリアの要請を断り、その場を去る事にした。
「そう、残念ね…。そういえば貴方、参加者の中に知り合いはいるのかしら?
もし貴方の知り合いに会う事があったら、貴方が無事であるという旨を伝えておくけど」

「知り合いか…いないさ。ここにはな」
ボーマンは振り返ることなく、言った。



「…結局、助けちまった」
マリアと別れた後、ボーマンは再び自己嫌悪に陥った。
ほぼ強制されたとはいえ、マーダーの自分が重症の人物を殺さずに助けてしまったのだ。
(ったく、人を殺すと決意した日にこうも怪我人やら中毒者に会うなんて…神さんが俺を止めようとしてんのか?)
殺し合いに勝ち残る為に彼女らを利用する事も考えたのだが、止めた。
自分が治療した人物のそばにいたら、人を殺せなくなってしまう。そう思ったのだ。
現にあの少年を助けた時、少し気分が良くなったのも事実だった。
(人を殺すことに禁忌感を持つな。人助けの精神なんて捨てろ。非情になるんだ!)
そうだ、俺は既に一人殺しているんだ。自分に歩み寄ってきた人物を、自分と同じ父親を。
俺は人殺しだ。もうカタギには戻れない。俺が生きていく道は、修羅の道しかない。
自分に言い聞かせながらボーマンは歩く。
心に次々と生まれる罪悪感や疑問を払拭して。



【E-02/真昼】
【ボーマン・ジーン】[MP残量:70%]
[状態:自己嫌悪、殺人に対する疑問]
[装備:なし]
[道具:調合セット一式+荷物一式*2]
[行動方針:最後まで生き残り家族の下へ帰還]
[思考1:人を殺すことに躊躇しないように心がける]
[思考2:なるべく他人との接触は避ける]
[思考3:人を殺したことを気に病んでいる]
[思考4:できればSO2の仲間たちとは会いたくない]
[思考5:調合に使える薬草があるかどうか探してみる]
[備考:調合用薬草の内容はマンドレイク、ローズヒップ、アルテミスリーフ、トリカブトがそれぞれ一枚づつ。
      マンドレイクとアルテミスリーフは1/3づつ位消費]
[現在位置:E-02 南東部]


【マリア・トレイター】[MP残量:55%]
[状態:右肩口裂傷・右上腕部打撲・左脇腹打撲・右腿打撲:戦闘に難有]
[装備:サイキックガン:エネルギー残量[80/100]@SO2]
[道具:荷物一式]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:クレスの状態が良くなるまではこの場に待機]
[思考2:他の仲間達と合流]

【クレス・アルベイン】[MP残量:0%]
[状態:気絶・右胸の刺し傷・腹部に刺し傷・背中に袈裟懸けの切り傷(いずれも塞がっています)、HPおよそ10%程度]
[装備:ポイズンチェック]
[道具:なし]
[行動方針:ルシファーを倒してゲームを終了させる]
[思考1:?]
[現在位置:E-02 南東部]
[備考:とりあえず一命は取り留めたものの絶対安静の状態。少なくとも次の放送までは行動不可。目は覚ますかも]

【残り41人】



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