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第76話 共演


彼は恐らく生きている。
エイミにグールパウダーを飲ませ襲わせたが、参加者中屈指の実力を持つレザード・ヴァレスがやられるだろうか。
先程見た巨大な電龍、恐らくは彼の魔法。
餌食となったのはエイミだろう。
そういえば一緒にシンとかいう魔物がいたが…まあ、そいつはどうでもいい。


レザードが生きてるとなるとブレアには一つ問題が起こる。
彼は自分が殺し合いに乗っている事を知っている。
できるだけ正体を隠しながら行動したい自分としては非常に都合が悪い。
事の顛末を見ずにその場を脱してしまったのは少々浅はかだったかもしれない。

レザードは自分から情報を得ようとしていたから、こちらが不利になるような事はしないとは思う。
自分が死んだら情報を引き出す事も出来ないのだから、向こうがこちらを殺すならもう一度会ってからにするだろう。
しかしその事も踏まえても、マーダーである事をバラされてしまう危険性もある。
これを避けるにはどうしたらいいだろうか?


ともかく、早い内に他の参加者に会っておきたい。この周辺で人が集まりそうな箇所は…。
鎌石村はまずい。向こうの方角にはまだレザードがいる可能性がある。
となると、ここから南下して鎌石村小学校に向かうのが妥当だろう。
周辺に人が集まりそうな箇所は他に無い。

そう決めて、ブレアは鎌石小中学校へと向かった。



「誰もいないわね…」
鎌石小中学校に到着し、校舎内を一通り見て回ったが参加者は一人もいない。
「ハズレだったかしら?」
地図上でも目立つように記載されている以上、人が集まると予測していたのだが。
すぐ南のエリアが禁止エリアになった事で、この場を去ったのかもしれない。


さて、これからどうするか。
延々とここにいるのはいささか効率が悪い。
これから参加者が来る可能性も決して低くないが、周辺に禁止エリアがある事を考慮すると目指そうとする者も少なくなるかもしれない。


考え込みながらふと窓の外を見ると、校舎の方にやって来る人影が見えた。
しめた。参加者だ。
すかさず外から見つからないような位置に隠れて、参加者の様子を伺う。
剣を持った、赤い髪の壮年の男だ。
(あの風貌…確か、ガウェイン・ロートシルトという男だったかしら?)
情報によれば、なかなかの実力者だったはず。
ここで1対1で勝負を挑んでも、殺すのには骨が折れそうだ。
さらにガウェインはかなり周辺を警戒している様子が見られる。あれでは姿を隠しながら近づいたところで、すぐに気付かれてしまう。
よって、不意打ちも難しい。


(ま、まだ殺すつもりはないけどね)
元々次に会った参加者を殺そうとは考えていなかった。
今は直接参加者を減らす事よりも優先すべき事がある。
それにただひたすら殺すだけでゲームがスムーズに進むとは限らない。
ガウェインが校舎の近くまで来た事を確認すると、ブレアは校舎を出て彼の下へ向かった。


ブレアが姿を現すと同時に、ガウェインは剣を構えた。
さらに殺気を滾らせてこちらを睨んでくる。
(あらあら、随分とやる気ね)
ここでこちらが戦う構えを取れば、即座にガウェインは斬りかかってくるだろう。
ブレアは戦う素振りを見せぬよう、あえて隙だらけに見えるように振る舞った。
「ああ大丈夫ですよ、私はここで殺し合うつもりはありませんから」
まずは非マーダーを装う。だがガウェインは構えを解かず、殺気も全く消えない。
(こっちが非好戦的な態度を見せても殺気は消えない…この男はゲームに乗ったとみてよさそうね)
できればゲームに乗っていない者の方が扱いやすくて良かったのだが仕方ない。
「まあ、貴方がゲームに乗ってようが乗ってまいが関係無いことです。でもよければ、少し私の話を聞くつもりはありませんか?」
「…どういうつもりだ?」
ガウェインが初めて口を開く。
こちらの話を聞くつもりになったようだ。心の中でほくそ笑む。
「私の名はブレアと言います。以後よろしく」
「お前の名前などどうでもいい。用件を手短に話せ」
剣を構えたまま相変わらずブレアを睨み付けるガウェイン。だがほんの少しだけ、先程より警戒心が薄れたように見える。
「せっかちね。ま、私としても長話する気は無いし…」
ブレアは語る。自分の立場、そして目的を。


ブレアがガウェインに話した事柄は3つ。
一つ目は、自分が主催者ルシファーの妹だという事。
二つ目は、自分と面識があり、仲間である(あくまで『本物のブレアは』だが)フェイト達の事。
三つ目は、自分はこの殺し合いを成功させる為に送られた『ジョーカー』だという事。


聞き終わったガウェインは半信半疑だった。
怪訝な表情でブレアを見つめる。
「…仮にお前の言う事が全て真実だったとしよう。何故、それをこちらに話す必要がある?」
ガウェインからしてみれば、ブレアがそんな重要な事を自分に話す意図が掴めない。
真実か、ウソか。どちらかと言えば狂言である可能性が高いとガウェインは考えた。
「信じる信じないはそちらのご自由に。貴方に身分をバラしたのは、少し私に協力してもらおうと思ったからよ」
「協力だと?」
「ええ。協力と言うには、少し大袈裟な表現かもしれないけどね」
「話してみろ」
「簡単な事よ。レザード・ヴァレスという人物が殺し合いに乗っていると、他の参加者に広めて欲しいの。
そして私が殺し合いに乗っていないとも。とりあえずはそれだけよ」
用件は予想外に単純でシンプルなものだった。
協力しろ、などと言うからには共闘させられるか、それに近い事を強要してくると思ったのだが。
「分からんな。お前に、そして何よりこちらに何の得があるという?」
「言ったでしょう。私の目的は殺し合いを円滑に進める事。参加者を混乱させる事ができればいいのよ」
「…」
「こちらの言う事だけを押しつけるつもりはないわ。そうね…貴方は殺し合いに乗っているようだし、
『ガウェイン・ロートシルトは殺し合いに乗っていない』と他の参加者に会ったら言っておくわ。これなら貴方も動きやすくなるでしょ?」
再び黙るガウェイン。
対するブレアは、あくまで余裕の表情を崩さない。
究極な話、ブレアとしてはガウェインがこの話を断っても構わなかった。
『レザードが殺し合いに乗っている』この話をガウェインに聞かせれば充分だったのである。


レザードはブレアが殺し合いに乗っている事を知っている。
このままでは色々な参加者の間にその情報が知れ渡ってしまうだろう。
これを防ぐにはどうしたら良いか?
答えは簡単。
先に「レザードはマーダーだ」という情報を広めてしまえばいい。
レザードがマーダーだと認識していれば、彼の言う事など誰も信じない。
お世辞にもあの男、他人から信用されやすいようには見えない。元々知り合いというエイミがあの態度だったのだから。
対してこちらには自分を『本物のブレア』と思っているであろうフェイト達がいる。
どちらが多くの参加者から信頼されているかは火を見るより明らかだ。


例えガウェインがこちらの申し出を断っても…。
彼がこの情報を他の参加者に広めるであろう事は予想できる。
ゲームに乗っているなら、殺し合いをスムーズにしたいという考えは自分と変わらないだろうから。

「勿論、私にとって優勝はどうでもいいから、もし私と貴方が生き残ったなら貴方に優勝は譲るわよ?」
そう言ったら、ガウェインの表情が一瞬変わった。そして
「…自分が生き残るつもりはない」
と小さく呟く。
(生き残るつもりがない?)
それなら何故殺し合いに乗るのか?…考えられる理由は、他の特定の参加者を生き残らせる為だろうが…。
だが彼の息子であるガンツ・ロートシルトは既に死亡している筈だ。他にガウェインが生き残らせようとする参加者は…。
少し考えるが、さすがにそこまでの情報はブレアには無かった。
「他に生き残って欲しい人物がいるという事?名前を教えてくれれば、その人物が死なないようにこっちも考えるわよ?」
問いかけるが、ガウェインは無言のままだ。
(さすがにそこまでは信用しないって事ね)
引き出せる情報は引き出しておきたかったが、変に深入りして余計警戒される訳にはいかない。
ここらが潮時ね、とブレアは判断した。



数分後、ガウェインはブレアと別れ鎌石小中学校を後にした。
結局、彼はブレアの提案を了承する事にした。
自分はブレアは殺し合いに乗っておらず、レザードという人物は殺し合いに乗っているという情報を広める。
さらにガウェインはこれまで自分が戦ってきた相手の特徴を伝えた。
そして彼らが殺し合いに乗っており、かつ自分が殺し合いに乗っていないという情報をブレアが流す事になった。

ブレアを信用したわけでは無い。
だから自分が生き残らせるべき人物の名前は口にしなかった。
ブレアが約束通り自分が殺し合いに乗っていないと伝える可能性も低いだろう。
それならば何故彼女の案を承諾したのか?

それは例えブレアが先程の情報を広めなくても、それ以上のメリットがあると考えたからである。
ガウェインとしても殺し合いが加速する事は願ったり叶ったり。
特にレザードという男は相当な実力者であるようだし、彼の包囲網が築けば直接相手にしなくて済む。
自分一人で残りの50人余りを相手にするのはどう考えても厳しい。
ならば他の参加者同士で潰し合ってくれた方が遥かに生き残れる可能性は高い。
唯一の不安はリドリーが巻き込まれてしまう可能性がある事だが…彼女の強さもなかなかのものだし、そう簡単には死なないだろう。


しかしガウェインの表情は暗い。一つ大きな後悔をしたからだ。
昼の放送…そこで呼ばれたのは、息子の名前だった。
ガウェインは名簿を見ていなかった。
始めに集められた場所でリドリーの姿を確認し、彼女を生き残らせると決めたガウェインにとって
名簿を読むことなど意味の無い事だったからだ。
だが気付くべきだった。
自分やリドリーが殺し合いに呼ばれたのなら、他にも知り合いがいる可能性があるという事を。
もし最初にガンツがいた事に気付いていれば…もっと、別の道を歩むこともできたかもしれない。
殺し合いに乗るという道以外に、生き残る方法を模索していたかもしれない。
全てにおいて、気付くのが遅すぎた。


――あれも騎士の端くれ。きっと弱い者を助け、その命を散らしたのだろう。
ガンツが参加している事に気付かなかった事は悔やんでも悔やみきれない。
しかし過去は変えられない。
自分に出来ることは、最初の意志を貫き通す事。
ここで止まってしまったら、気付かないまま死なせてしまった息子にも申し訳が立たない。
もう迷うつもりは無い。
親友の息子が参加している事を知っても、ガウェインの決心は揺るがなかった。





鎌石小中学校に残ったブレアは今後の方針を思案していた。
鎌石村の方はガウェインに任せた事だし、自分は他の場所を目指してみよう。
ここから一番近いのはホテル跡。ガウェインの話では、ここで戦闘したという事だが…。
そこへ行ってみるのが面白そうだ。
そう思ったが、時計を見るともう放送まであと僅かとなっていた。
ここは放送を待ってから行動するのが正しい。新たな禁止エリアなどが分かれば作戦も立てやすくなるであろう。


「ガウェインは役に立つかしら?」
彼はゲームの成功には欠かせない『マーダー』。できるだけ多くの参加者を殺してもらいたいものだ。
最も向こうもこちらを完璧に信用してはいないであろうが…。

ガウェインから聞いた、彼と戦った四人の特徴。
恐らくは殺し合いに乗っていない連中だと推測される。
もし彼らが殺人鬼だと言われたらどうなるだろうか?

彼らと会った者は情報の相違に混乱し、疑心暗鬼に陥るだろう。
彼らと親しい者はその所業を聞き、嘆き悲しむだろう。
そんな光景を思い浮かべるだけでブレアの顔には笑みが浮かぶ。


『勿論、私にとって優勝はどうでもいいから、もし私と貴方が生き残ったなら貴方に優勝は譲るわよ?』

ふと、ガウェインに言った言葉を思い出す。
(ルシファー様はどちらを喜ぶかしらね)
自分の優勝と、ガウェインの優勝。
勿論予め仕込んでおいた者より、他の参加者が優勝した方が喜ぶだろうが。
…すると、私は?
さっきは優勝は譲ると言ったが、それは自分が死ぬという事か?
確かに自分は優勝などどうでもいいと思っているが、優勝できない者に待つのは『死』のみ。


…全く問題無い。
私はルシファー様の忠実なる僕。あの方こそが自分の全て。
彼が死ねと言えばすぐに死ぬ覚悟は出来ている。
ルシファー様が作り上げたシナリオで私が死ねるのなら、それで満足なのだ。
そんな事を考える意味など無い。
それよりも早く参加者を殺したい。
エイミにグールパウダーを飲ませる事には成功したが、まだ直接自分で殺した参加者はいない。
放送まで、拷問の方法でも考えようかしら?

教室の中に、小さく不気味な笑い声が響く。
自分の中に渦巻いてくるどす黒い感情が、ブレアには溜まらなく心地良かった。



【D-06/夕方】

【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔100/100〕@SO3]
[道具:万能包丁@SO2、荷物一式]
[行動方針:参加者にできる限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい]
[思考1:]放送を待って行き先を決定。特に思う所が無ければホテル跡を目指す
[思考2:]レザードがマーダーだと広める
[思考3:]もしまた会ったら、レザードには出来る限りの苦痛を与えて殺す
[現在位置:鎌石小中学校校舎内の教室]
[備考]:※クロード、ルシオ、ルーファス、クリフの特徴を聞きました。
     ガウェインとは彼らがマーダーだと広めるように約束しています。
     名前は聞いていませんが、前持って人物情報を聞かされているなら特定しているかもしれません。


【ガウェイン・ロートシルト】[MP残量:100%]
[状態:左肩、左わき腹脇腹裂傷(処置済み)、後悔]
[装備:グランスティング@SO2]
[道具:確認済の支給品×0~2、荷物一式]
[行動方針:リドリーを優勝させる]
[思考1:]鎌石村へ向かう
[思考2:]レザードがマーダーだと広める。ブレアについては保留
[現在位置:鎌石小中学校から北西へ少し進んだ道沿い]

【残り36人】




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