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第81話 進め、前へ


ジャックが落ち着いた所で、アリューゼとプリシスは事の顛末を詳しく聞きだした。
どういう経緯でここで戦闘が起こったのか。
相手はどんな奴で、どんな能力を持っていたのか。

ジャックの話が終わると、プリシスは体を小刻みに震わせながら俯いた。
背中に二匹の龍を背負った男。
先程から引っかかってはいた。そんな男は、宇宙広しと言えども一人しかいないだろう。
しかもその男は、彼らを襲った理由をこう言ったそうだ。

「プリシスの望みを叶えるためさ」

(やっぱり…あの時の声……アシュトンだったんだ…)
午前中に遭遇した透明人間。その時は似た声の人物だと思っていたけど。
ジャック達の前に現れたのがアシュトンだとしたら、きっとあの透明人間もアシュトンだったに違いない。
彼が殺し合いに乗り、しかもジャック達の仲間を惨殺したという事実にプリシスはショックを受けた。
それだけでは無い。ジャックが言った事が事実なら、アシュトンは自分の為に殺人鬼となった事になる。
間接的にだが、この惨劇の原因には自分が絡んでいる事になる。
あの時、透明人間を追っていれば、その正体がアシュトンだと気付いていれば、彼の凶行を防げていたかもしれない。
「あたしの…せいだ…」
顔を手で覆いながら小さく呟いた。


そんなプリシスを、ジャックはやり切れない気持ちで見ていた。
(クソッ…何でだよ…)
プリシスはアシュトンと知り合いだったらしい。いや、ただ知り合いどころか、共に幾つも死線を潜り抜けた仲だと。
そして彼は気の弱いところもあるが、とても優しい人だったいう。
アシュトンは許せない。ぶっ殺してやりたいと思う。
でも目の前で、アシュトンが殺し合いに乗っている事を悲しんでいるこの少女を見ると、複雑な気持ちになる。
いっそ彼が元々同情の余地も無いゲス人間だったら、こんな気持ちになる事も無いのに。




「おい小僧」
今まで黙っていたアリューゼが、思い立ったようにジャックに声をかけた。
「小僧じゃねえ。俺はジャックだ」
「んな事はどうでもいい。ちょっとその筒を貸しな」
そう言ってアリューゼはジャックの持っていたレーザーウェポンを指差す。
武器を渡すのは不安に思いながらも、この男は殺し合いに乗っているわけでは無いしと考えたジャックは
「貸すだけだぞ」
と言ってレーザーウェポンをアリューゼに渡した。
アリューゼがそれを持った瞬間、レーザーウェポンがその形状を変化させる。それは巨大な大剣の形をとった。
「成る程な…」
「何がナルホドなんだよ」
納得したような表情のアリューゼに対し、事態をよく飲み込めていないジャックが問いかける。
「原理は分からないが、どうやらこの筒は、持ってる奴に応じて色々な武器に変化するようだぜ。
お前が持っていた時は、片手剣や槍になっていたんだろ?」
それだけ言うとアリューゼは立ち上がり、石化したネルの遺体の方へ歩いていく。
そして遺体の側に立ち、大剣を振りかぶった。

「お、おい!何してんだよ!」
その様子を見ていたジャックが慌てて止めに入る。
「お前、ネルに何をしようってんだ!」
「そいつの首を見てみろ」
感情に任せて食ってかかるジャックに、アリューゼはネルの首の辺りを顎でさした。
そこあるのは石化したネルの遺体…その中で、唯一石化していない部分。
主催者によって付けられた首輪が、灰色に染まった遺体の中で不自然なほど色鮮やかに光っていた。
「そいつを頂く。俺達の首輪を外す手掛かりになるかもしれないからな」
「首輪を…?」
「俺は機械ってやつの事はさっぱりだが、プリシスはそれに関してかなりの知識と技術を持っている。
もし首輪が機械でできてるなら調べて何か分かるかもしれねえ」
そう言って立ちふさがったジャックをどけとばかりに押しのける。
「それに、こいつは死んだ後に石化した。石化を解いたとしても、こいつが生き返る事は無い」
「で、でもよお…!」
尚もジャックは食い下がった。確かにアリューゼの言う事は分かる。
首輪を調べれば自分達の首輪を外せるかもしれないし、そうなれば殺し合いなんてしなくてすむ。
しかしそれでも納得できない。
死んでしまっとはいえその体をさらに傷つけるという行為は、死者を冒涜しているように感じた。
ましてネルは、自分達を守ってその命を散らしたのだ。
これ以上彼女を痛みつけたくなかった。


「うるせえんだよ、小僧」
ドスを効かせた低い声を出しながら、アリューゼはジャックをギロリと睨み付けた。
そして左手でジャックの髪を掴み、顔を近づける。
「いいか?死んだ奴はもう何もしない。何も出来ない。こいつが生前どんな奴だったかなんて関係無い。こいつは死んだんだ。
死んだ奴の為に生きてる奴が遠慮する必要は無い。いや、するべきじゃねえ。
脱出の手掛かりを、死人に気を使ってみすみす逃すなんざ愚の骨頂だ。
下らねえ感情や正義感を声高に叫んだところで、何も変わりはしねえ。そんな馬鹿に待っているのは『死』だけだ。ここは戦場なんだよ」
威圧するように睨みを利かせたその表情に、ジャックは身震いする。
目の前の大男の顔には、激しい怒りが宿っていた。静かだが、底が見えぬ位の深い怒り。
アリューゼ自身、元来気が長い方ではない。
ジェラードやロウファといったエインフェリアの中でも特に親しかった二人の死を聞かされ、かつ目の前には仲間の惨殺死体。
決して心中穏やかでは無かった。
一刻も早くルシファーを殺さねばならない。その為には、この首輪を外すことが絶対条件だ。
そして目の前に無傷の首輪がある以上、それを無視することはできない。

「分かったらどきな」
無言になったジャックから手を離し、アリューゼはネルの遺体の方に向き直る。
だが剣を振り下ろそうとした瞬間、またしてもジャックが目の前に立ちふさがった。
「まだ分からねえのか、小僧」
「俺がやる」
「あ?」
アリューゼが何か言い返す間もなく、ジャックは彼からレーザーウェポンを奪い取った。
「…ネルと夢瑠は俺が呼んだ。そして俺を守って死んだ。二人が死んだのは俺の責任だ。だから、俺がその責任を取る。
ネルと夢瑠の死を忘れない為にも、俺がやる!」
ジャックがそう言い切った後、二人共黙り込む。
アリューゼは先程のようにジャックを睨み付けたが、今度はジャックは震えずに、アリューゼから目を逸らさなかった。
その瞳が力強く見える。意志の強さを感じさせる目だ。
「…けっ。勝手にしろ」
ぶっきらぼうにそう言って、アリューゼはそこから離れていった。



(ネル、ごめん…。俺がもっと強ければこんな事には…)
ジャックはネルに心の中で謝罪する。死なせてしまった事を、そしてこれから行う事を。
その手に持つレーザーウェポンは、大剣の形状を維持していた。
(でもあんたの分まで頑張るから。あのルシファーとかいう奴をぶっ飛ばして、必ず仇はとってみせる)
大剣を上段に構える。さすがに頭部を砕くのは気が引けるので、首の付け根に狙いを定めた。
(だから…今は許してくれ!死んだあんたを痛みつけちまう事を!)
渾身の力を込めて大剣を振り下ろす。石化した遺体は、意外なほど簡単に砕けてしまった。




夢瑠の遺体と石化したネルの遺体、及び彼女の切断されてしまった身体を埋葬した後、三人は今後の事を話し合った。
まず転がっているアイテムの整理。
協議の結果、セブンスレイはプリシス達が、スターガードはジャックが持つことになった。
アリューゼとプリシスは最初の予定通り氷川村へ向かうという。
プリシスに一緒に行動しないかと誘われたジャックだったが、彼は首を横に振った。
「俺はアーチェを探しに行く。あいつを放っておくわけにはいかない」
アーチェが走っていったのは西の方向。氷川村へ行くなら方向が違ってしまう。
同行の申し出はありがたかったが、怯えきった様子で逃げていったアーチェが心配だった。
プリシスとアリューゼもそれを分かっていたのか、それ以上無理に誘おうとはしなかった。
「あ、そういえばプリシスって機械に詳しいんだよな?」
「え?ま、まあね」
「んじゃさ、これの使い方分かる?」
そう言ってジャックは自分のバッグからある機械を取り出す。
「これって…首輪探知機?こんな便利な物持ってたんなら、もっと早く出してよ~!」
「え?そんなスゲーのだった?いやー、俺機械って全然ダメでさ…」
ハハハと笑うジャックに呆れつつ、プリシスは首輪探知機の操作にかかる。
程なくして探知機の画面上にこの島の地図と、参加者の位置を表してるのであろう幾つもの光点が表示された。
G-5とH-5の境界付近に三つの光点。恐らくこれが自分達三人。
そしてそこから西の方にも光点が一つ。きっとこれがアーチェなんだろう。
プリシスに使い方(電源のON/OFFだけだが)を教えられたジャックは、一分一秒も惜しいとばかりに立ち上がった。
「ジャック、無茶はしちゃダメよ。必ずみんなで脱出するんだからね!」
いかにも無茶な行動をしそうなジャックにプリシスは念を押す。
「おう!プリシスとオッサンも気を付けろよ!」
「オッサ…!」
ジャックの言葉にムッとしたアリューゼだったが、既にジャックは十数メートル先を走っていた為言い返す事も出来ず。
やれやれと肩を窄めるしかできなかった。




ジャックは首輪探知機を頼りに、アーチェと思われる光点を目指して走った。
アシュトンとの戦いでかなりの疲労が残っているのだが、一刻でも早く彼女と合流したい。
会って謝りたかった。一瞬でもアーチェを疑い、追いつめてしまった事を。
「アーチェ…無事でいろよ!」



ジャックと別れたプリシスとアリューゼは、今度は迷わないよう道に沿って氷川村を目指した。
地図には首輪探知機で光点が表示された位置や数を記入してある。
それによれば、氷川村には現在4人、周辺に2人の参加者がいるようだ。
できれば会っておきたいが、殺し合いに乗っている可能性もあるので油断は出来ない。
そして、恐らくその中の光点の一つは…。
「プリシス」
道を歩いている途中、アリューゼが唐突に声をかけた。
「…何?」
「俺は殺し合いに乗った奴には容赦しない。例えそれがお前の知り合いでもな」
「………」
アリューゼの言いたい事は分かった。アシュトンと戦う時の事を覚悟しろ、という事だろう。
「…分かってるよ」
ここは戦場。戦場に於いては、油断や躊躇は命取りになる。
プリシス自身幾つもの戦いを経験しているし、その事も充分理解している。
しかし知り合いと戦うという事は未だかつて経験した事は無かった。
(それでも…)
それでも、アシュトンを殺人者にしていまったのには、自分のせいでもある。
何とかして、それを償いたかった。
(アシュトン…)
出来れば説得したい。でも説得は可能なんだろうか?
説得したとしても、それでジャック達は納得してくれるのか?


空はもう日が沈みかけ、暗くなり始めていた。
放送は、近い。




【H-05/夕方】
【プリシス・F・ノイマン】[MP残量:100%]
[状態:不安、アシュトンがゲームに乗った事に対するショック]
[装備:マグナムパンチ]
[道具:ドレメラ工具セット、セブンスレイ〔単発・光+星属性〕〔25〕〔0/100〕、???(本人&アリューゼ確認済)、首輪、荷物一式]
[行動方針:惨劇を生ませないために、情報を集め首輪を解除。ルシファー打倒]
[思考1:氷川村へ向かい情報収集]
[思考2:仲間を探す]
[思考3:ヴァルキリーに接触]
[思考4:アシュトンを説得したい]
[思考5:どこかで首輪を調べる]
[現在位置:H-5の道沿い]

【アリューゼ】[MP残量:100%]
[状態:正常]
[装備:鉄パイプ]
[道具:???←本人&プリシス確認済・荷物一式]
[行動方針:ゲームの破壊。ルシファーは必ず殺す]
[思考1:氷川村へ向かい情報収集]
[思考2:プリシスを守る]
[思考3:ジェラードとロウファの仇を討つ。二人を殺した者を知りたい]
[思考4:必要とあらば殺人は厭わない]
[思考5:ヴァルキリーに接触]
[現在位置:H-5の道沿い]


【H-04/夕方】
【ジャック・ラッセル】[MP残量:60%]
[状態:手にかすり傷 疲労特大]
[装備:レーザーウェポン(形状:初期状態)、スターガード]
[道具:首輪探知機、荷物一式(水分は無し)]
[行動方針:仲間を集めてルシファーをぶっ倒す]
[思考1:アーチェを追う]
[思考2:アシュトンをぶっ殺す]
[思考3:リドリーを探す]
[現在位置:H-4の北部]
[備考:走っていますが、疲労が回復しきってないので多分すぐバテます]

※夢瑠、ネルの死体及び切断された身体は全て埋葬されました。

【残り36人】




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