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第104話 希望を胸に、精一杯生希望(生きよう)(前編)


先程聞こえた2度目の放送で、再び仲間の死を知った。
メルティーナ、夢瑠、エイミ。
あまり交流は多い方ではなかったが、それでも皆いい人だったと思う。
だが――みんなもうこの世にはいない。
おそらく神界で死んだ時と同じように、二度と蘇れはしないだろう。
死んだらエインフェリアに戻るだけ、なんて甘い事があるとは正直思えない。
だからこそ何としてでも生き延び、プラチナと会わなくてはいけないのだ。
根拠はないが、彼女とならこの殺し合いを壊せるような気がしている。
幸いあの後ミカエルに見つかることはなく、俺も洵達も放送で呼ばれずに済んだ。
ならば仲間の死を悼むのは脱出してからすることにして、今は自分に出来ることだけを考えよう。
そうと決まれば、まずは洵達と合流だ。

そう思い、放送のすぐ後でコミュニケーターを手に取り――そして再び地面に置いた。
「……まだやめといた方がいいかな」
出来る事なら今すぐにでも行動したい。
洵達と合流して、平瀬村で仲間の捜索を始めたい。
だが――自分はそうやって頭を切り換えられたが、あの少女や洵はそれが出来ているだろうか?
洵は俺よりも死んだ皆と付き合いが長いし、夢瑠とは同郷だったって話だ。
もしかしたら、今頃塞ぎ込んでいるかもしれない。
あの少女にしても、知り合いを呼ばれていない保証はない。
そもそも彼女はエインフェリアでなく極々普通の女の子だ。
友人の名前が呼ばれていた場合、俺や洵とは比べ物にならないくらいショックを受けることだろう。
もし今洵が彼女を宥めているとしたら、通信はしばらく控えておいた方がいい。

(あれから爆発音もしてないし……戦闘が終わったってことは伝わってるよな?)
派手に攻撃をしてきたミカエルの性格を考えると、誰かと遭遇するなり派手な音を響かせてくれるだろう。
少なくともこの平瀬村でそれを行った場合、どこに隠れていても音が聞こえるように思える。
つまり、静かな今ミカエルは誰とも戦闘していないことになる。
俺とミカエルが両方生き延びたまま放送を跨いで戦闘している可能性は消えるわけだ。
心配をかけることはないだろう。
(先に少し村を散策しておこうかな……)
通信をするのはそれからでいいだろう。
そう思い歩き出そうとした時だった。
『どうやらミカエルは振り切ったようだな』
相変わらず淡々とした声が、コミュニケーターから聞こえてきたのは。






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






チェスターを止められなかったことが、少しだけ悲しかった。
いや、本当の事を言うとものすごく悲しかった。
あまりに自分が情けなくて、泣き叫びたいほどだ。
「クレス君……チェスター君の事は……」
マリアさんは、僕に気を使ってくれている。
本当なら、気を使う必要など無い対等な関係のはずなのに。
塞ぎ込んで足を引っ張ったりせず、自分一人でキチンと立ち直れる。最初に出会った時、僕はそう宣言したのだから。
だけど、僕はあの時ミントの死に動揺してマリアさんの足を引っ張ってしまった。
ミントが励ましてくれるまでは、一人で立ち上がることもできなかった。
僕は弱い。放っておいては再び何かしらの問題の原因とになる。
――おそらく、そう思われてるだろう。
だからきっと、マリアさんはさっきからこれほどまでに僕に気を使っているんだ。

情けなかった。みんなを守ると誓ったのに、今の僕は守られてるだけのようなものだ。
何一つ成せていない。
何も出来ていないのに、ただダラダラと生き長らえてしまっている。
ボーマンさんという人のおかげで運よく命拾いして、マリアさんの足を引っ張っただけの僕がまだ生きている。
目の前でアーチェが死ぬのも止められない、弱い僕なんかが。
多くの人の心を救えたであろうミント達の代わりに、僕なんかが……

でも、僕はまだ生きているのだ。生きているのだ、動く事が出来るのだ。
先に逝ってしまった人と違って、まだ僕は生きている。戦える。
ミントやアーチェ、他の知らない人達の代わりに、未来を変える事が出来る!
ならば、こんな所で立ち止まるわけにはいくまい。
僕は、成さなきゃいけないんだ。
死んでいった人のためにも、ルシファーの打倒を!

「もう大丈夫ですよ」
だから、笑う。
本当はまだ引きずっているけど、それを表に出したくはない。
これ以上、マリアさんに迷惑をかけたくない。
だから、笑う。
僕の一番の目的は、『ルシファーの殺害』ではなく『大切な人を守ること』なんだ。
ルシファーを倒すのはそのための手段に過ぎない。
それを忘れてルシファーを憎むあまり暗い顔をしていては、次に出会う善良な人と手を取り合えなくなるかもしれない。
戦う事に執着して、弱き者を怯えさせては何にもならないんだ。
だから、笑う。
弱き者の手を取って、彼らの事を守るために。
(これでいいんだよな、チェスター……)
復讐に駆られ、去って行ってしまった親友を想う。
彼は「誰もがお前みたいに正しくあり続けられるわけじゃねえんだよ」と言っていた。
きっと分かっていたんだろう。
怒りに駆られて復讐に走ってしまう事は、決して正解なんかじゃないって。
あんな風に怒りに駆られた状態では、誰かを救うことなんて出来やしないって。
復讐は成し遂げられても、弱き者に手を差し伸べ、誰かを守り抜くことは出来ないって。
だからきっと、チェスターは一人で行ったのだろう。
誰かを守るために殺人鬼への怒りを押し殺す僕と居ても、互いのためにならないから。
正しくあろうとする行為を、自分が邪魔してはいけないから。

「ルシファーとの戦いはこれからも続くんですし、頑張らファイト(ないと)いけませんもんね」
こんな状況だけど、僕は笑顔を無くさないでいよう。
嫌な事や悲しい事がたくさんあったダオス討伐の旅も、みんながいたから楽しかった。
みんなの笑顔があったから、全てが終わったあとで笑って昔を語ることができた。
だから、この殺し合いでも笑顔を忘れずにいることが出来れば、きっとここでの出会いを良き思い出として語れる日がやってくる。
ミントと共に過ごした日々を、暗い気持ちなしに懐かしむ事ができる。
そのためにも僕は笑う。
復讐を終えたチェスターがいつでも帰って来られるように。
僕自身が、彼の帰れる場所でありつづけられるように、。
マリアさんが、心配しなくて済むように。
精一杯の笑顔と渾身のギャグで、みんなも笑顔になれるように!

「…………」
あれ?
おかしいな……マリアさんの反応が薄い……
今までのギャグと違い、意味は同じだけど異なった単語を引っ掛けたから理解して貰えなかったのかな?
うーん、ギャグは高度すぎてもダメってことか……
よし、今度は分かりやすいようもうちょっとレベルを下げて……
「大切な人の未来を守るためにも、前を未来(見ない)といけませんし」
さあ、笑って下さいマリアさん、僕の渾身のギャグで!
これから辛いことがたくさんあるだろうけど、だからこそ笑わないと!
「…………っ!?」
って、えええええ!?
ちょ、ま、マリアさん!?
何でそんな物騒な物をいきなりこっちに向けるんですか!?
そんな怖い顔をしてないでホラ、スマイルスマイル……
「荷物を捨てて両手を高く上げなさい」
うわあ、目が本気だあ。
……よく分からないけど、ここは素直に従っておこう。
出会ってまだ1日も経ってないけど、マリアさんは僕の大切な仲間だ。
こんなところで変に揉めたくなんかない。
何であんなに怒っているか分からないけど、とりあえず落ち着いてもらうためにも言う事を聞くのが一番だ。
「は、はい……えっと、これでいいですか?」
荷物を離れた位置に放る。
にも関わらず、依然マリアさんはサイキックガンをこちらに向けて掲げていた。






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






「……何だ、食わんのか」
放送によりルシオもミカエルも生きていると判明して3時間以上が経過した。
放送後に連絡を取り隠れ家に選んだ民家にルシオを招き入れた俺は、現在居間で食事を取っている。
勿論食べているのは支給された微妙な味のコッペパンだ。
民家にあるもので何かを作って(ミランダに作らせて)もよかったが、毒物の類を混入されては困るからな。
「腹が減っては戦が出来ぬ、とまでは言わんが、戦闘に若干の支障が出る。
 俺やミランダに迷惑をかけぬためにも食える内に食っておけ」
そうとだけ言って、再びパンを口に運ぶ。

『ミランダを見捨てていく』という選択肢を、おそらくルシオは認めない。
だとすると、今後どうするか考え直す必要が出てくる。
別行動を取っても何とか一人で生き延びるくらいの実力がルシオにはあるだろうと思っているが、足手まといを守りながら生き残れると思うかと言われると首を捻らざるを得ない。
ミランダを守ってルシオが死にでもしたら、この数時間が無駄になる。
『結果的にルシオが死んだ』というならまだしも、『死にそうな状況に放り込んだら案の定死んでしまった』というのは避けたい。
ルシオの死をしったヴァルキリーの反応も確かに気にはなるのだが、ルシオという便利な駒をわざわざ捨ててまで知ることではない。
あくまで『ルシオの死』という最悪の結果になってもそれはそれで楽しみようがあるというだけのことだ。
「……ああ、分かってるよ」
分かっている人間の表情ではないな。
そう思ったが、わざわざ指摘をしたりなどしない。
ルシオが口にパンを運ぶのを眺めながら、現在玄関で見張りをしているミランダの事を考える。


――ルシオを待っている間、民家は終始無言だった。
こちらに警戒心を持っているのだろう。デイパックを大事そうに抱えていた。
恐怖から言葉を失くしたというよりは、情報をこちらに渡したくないため敢えて会話を避けているというように見えた。
こちらとしても今後の方針をしっかりと考えておきたかったので、わざわざ話しかけたりはしない。
そうこうしている内に放送が始まり、ルシオとミカエルの生存を知った。
戦闘音が聞こえなくなった事を見るに、ルシオは上手くやったのだろう。
まだ近くにミカエルがいて姿を隠した状態だったら不味いと思い、5分ほど間を開けてから通信をすることにした。
そしてルシオと無事合流し、ミランダを生かしておく必要性が皆無になったのだが――
(キュア・プラムスを受けた時と若干異なるものを感じたが、おそらく同様の魔術なのだろう……)
ルシオとの合流後、ミランダに支給品を見せるよう伝えた(俺が言っても警戒されるだけだと思いルシオに言わせた)際、ミランダはそれを頑なに拒んだ。
ミランダ曰く、俺達を信じていないわけではないが、大事なものが入っているので他人には見せられないのだとか。
切り札に成り得る支給品を隠そうという知恵があるだけ、無条件で他人を信じる愚か者よりは使えそうだ。
それになによりミランダには不思議な力がある。
俺達を攻撃する気がないと示すため見せてくれたあの祈り。
あれのおかげで先の戦いの傷は大分癒えた。
ミランダ自身はそのせいで疲労していたようなのであまり多用は出来なさそうだが、奴がいると非常に便利だと思われる。
あの治癒能力を考えれば、ミランダは生かしておいた方がいい。
少なくとも、ルシオと別行動を取る際に自分に同行させてまでわざわざ始末する必要はないだろう。
ということは、ミランダにはこの先さらに働いてもらわねばならない事になる。
今の内に休んでおいた方がいいだろう。
『放っておいても人数は減ってくれるだろうし、しばらくはミランダの疲労回復を兼ねて休息を取る』
それが先程俺の決めた当分の行動方針だった。
勿論、ルシオ達には後半部分しか伝えなかったが。


まだルシオが合流する前にミランダと決めた潜伏先のこの民家は、出入り口が二か所ある。
一か所はミランダのいる玄関で、もう一か所は台所にある。
二つとも鍵をかけられるようだったので今現在は施錠をしており、ドアを破壊されない限り侵入される事はない。
勿論、ドアノブを捻れば、鍵がかかっていることから中に誰かが隠れていると分かるだろう。
それでも、ドアを壊されれば物音で侵入者の存在に気付けるのだ。
施錠をせず、気付かぬ内に侵入されて暗殺されるより遥かにいい。
いざとなればもう一方の出口から撤退すればいいからな……
とはいえミカエルにだけは十分気を付けなくてはならない。
奴ならドアを破らずとも民家ごと俺達を抹殺できるだろう。
なので、ミカエルがこの民家に近付き次第すぐさま撤退できるように、玄関の覗き穴から外の様子を探る見張り役を立てる事にした。
それだけでなく、ミカエル以外の人間が民家に近付いてきたら一番近くの部屋に飛び込み、ドアを破壊し入ってきたそいつに不意打ちをする役目を負う。
ルシオは「こちらから不意打ちをして、相手が殺し合いに乗って無かったらどうするんだ」と言ってきたが、
「何かしら声をかけることもせずいきなり侵入してくる奴は、まず間違いなく殺し合いに乗っている」と言って説得した。

そんな若干危険な役目を引き受ける者以外は、基本的に休息を取る。
睡眠不足が原因で判断力の低下を招かぬよう、一人は睡眠を取ることにした。
さすがに二人寝るのは襲撃があった際困るので、一人は起きたまま適当に体を休める。
襲撃時の物音で飛び起きてから敵との対峙までの時間を多めに取るため睡眠を取る者は2階で、起きている者は見張り担当の者と共に極力早く襲撃者の対処に移る必要があるので一階の居間に待機する。
この布陣で残りの8時間ほどを乗り切り、ミカエルも移動したであろう時間――次の放送が終わって2時間程経ってからの予定だ――に行動を開始する予定だ。

最初の役割分担は、俺の打ち身を治したため疲労したミランダを先に眠らせ、ルシオには見張りの役目を頼んだ。
その際にミランダの荷物をチェックするつもりだったのだが……
どうやら思った以上に俺は警戒されているらしい。
2階のどの部屋にも見当たらないと思ったら、厠と思しき扉に鍵がかかっていた。
扉を引いた際、中から寝ぼけたような声で「もう交代ですか?」と言ってきたことを見るに、どうやらこの中で眠りについたらしい。
その場は「姿が見えないので心配しただけだ」と誤魔化しておいたが、警戒は強めてしまったとみて間違いないだろうな。
扉を壊して入ってしまえば逃げ場がないため成す術もなく殺されてしまうと言うのに眠っていたという事は、中にいれば安全だと思っているということだ。
ルシオに気付かれずに扉を破壊しミランダを殺害することはほぼ不可能なので、厠の中で殺される場合ルシオも俺と手を組んで殺し合いに乗っているという事になる。
『殺し合いに乗った奴が体を張ってミカエルから逃がしたりなどしない』といった理由からだろうか、とにかくミランダは少なくともルシオの事は『乗っていない』と思っていると見ていいだろう。

『ルシオを信頼している』ということから『ルシオとミランダは秘密裏に同盟を結び、優勝を狙っている』という可能性が生まれたが、これはすぐさま無いであろうと思考の外に追いやった。
確かに後から合流するという形を取れば繋がりを推測される事を避けられるが、見ず知らずの相手の信頼を得る際には一人よりも二人でいる方が有効だ。
顔見知りの俺を発見し別行動を取ることに決めたならともかく、あの時は俺が奴の背中を取った。
俺が奴に気付くより先に俺の存在に気が付き、別行動の旨を伝えてから俺の視界に入らぬ場所までミランダを行かせ、それから俺に背後を取らせる――そんなことはまず無理だ。
それに、最後の一人になるために同盟を結んだのなら、わざわざ危険を冒してミカエルの相手を引き受けるものだろうか?
ミカエルとも組んでいた、というのは100%ない。それだったらあの時俺を殺していたはずだ。ルシオとミカエルが組んでいたら、はっきり言って俺に勝ち目はなかっただろう。
とにかく、あの二人はおそらく殺し合いには乗っていない。
ルシオに関しては乗っていないと断言してもいいだろう。
もっとも、俺は乗っているので、ルシオ達が俺と敵対するかどうかは全くの別問題だが。

まあとにかく、ミランダは生かしておく価値がある。
とはいえ、あの女は俺の事を信用していない。
先程は己が乗っていない事をアピールするためのパフォーマンスとして傷を治してくれたが、今後はそうはいかないだろう。
ルシオが頼めばやってくれるかもしれないが、俺と二人きりの状況ではまずやってはくれまい。
というよりそもそも二人っきりの状況を良しとしないだろう。
ミランダを始末するためならそれっぽい理由をつけて俺達二人とルシオ単独というチーム分けを行うが、今後も利用していくつもりなら不信感を与える無理矢理な理由づけは避けた方が得策だ。
だが、戦闘能力が低そうなミランダをお人好しのルシオと組ませるのにも不安が残る。
足を引っ張り、ルシオを死に追いやるだろう。
やはり今後は三人で動くのがベストだ。
ただ、そうなると人数を減らすため参加者を殺す事が困難になってしまう。
このデメリットをどう補うか。それを考えねばなるまい。

「ヴァルキリーの心配をする気持ちも分からないではない。だが……ハッキリ言って、その心配は不要だと思うがな。
 あのヴァルキリーがそう簡単にくたばるはずがない。ヴァルキリーが命を落とす可能性より、俺達が先に死ぬ可能性の方が遥かに高いと思うぞ」
本音を言えばどこかで死んでくれているのが一番なんだがな。
残念だが、現実はそう甘くはないだろう。
ヴァルキリーならミカエルとでも平気で渡り合いそうだ。
彼女が1日を越すことすらできないとは、とてもじゃないが思えない。
「そりゃ、そうだけど……」
「まあいい。食事をとりながらゆっくり気持ちの整理をしろ。次は俺が眠らせてもらう」
ミカエル戦の疲労が残っていそうなルシオを先に寝かせるべきかと最初は考えていたのだがな……
それに寝過ごして放送を聞き洩らしたくはなかったので仮眠は放送後がよかったのだが、この分だと俺が先に眠った方が早そうだ。
食事を取って眠りにつくよう説得するのに時間を費やすぐらいなら、さっさと休息を取らせてもらう。
「今すぐ食事を終え、お前が眠ると言うのならば別だがな」
「ああ、いや、先いいよ」という覇気のない返事を受け、二階へと続く階段に足をかける。
視界の端に、玄関の覗き穴から外の様子を窺っているミランダの姿が映った。
相変わらず、大事そうにデイパックを抱えている。
(ふん、まあいい……何が入っていようと関係ない。油断せず、牙を剥いてきたら始末するまでだ)
ミランダに倣い厠で寝ようか迷ったが、寝違えでもしたら洒落にならないので素直に和室で寝ることにした。
ルシオもいることだ、仮にミランダが乗ってるとしてもまだ襲われはしないだろう。


(阿衣……)
生前の頃を思い出す、畳の匂い。
倭を感じる一室で、俺は仮眠を取ることにした。
ゆっくりと瞳を閉じて、世界で一番大切な人を思い描く。
――放送で言っていた『ご褒美』とやらで、もしかしたら再び阿衣と共に生きられるようになるかもしれない。
(俺は別に、多くを望むわけじゃない)
ただ、生還後にエインフェリアとしてでなく、人間として――阿衣の兄として再び生きる。
それだけでいいのだ。
それだけで俺は満足できる。
(もしも再びお前とともに生きられるなら、今度は――)
今度は、道を誤らない。
そう心に誓いながら、俺は夢へと落ちて行った。






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第83話 ルシオ 第104話(後編)
第83話 第104話(後編)
第83話 ミランダ 第104話(後編)
第97話 クレス 第104話(後編)
第97話 マリア 第104話(後編)
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