※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第109話 偽者だとばれたら負けかなと思ってる


「…ん?」
森林を抜け、F-3とF-4の丁度協会付近の街道に出た所にそれはあった。
「これは…デイパックですよね?」
道の真ん中に落ちていたのは、参加者全員に配られていたデイパック。
しかし周辺には持ち主と思われる参加者はおろか、遺体も見当たらない。
「誰かが捨てていったんでしょうか?」
「それにしては妙ですね。中には幾つか道具が入っていますし、多少消費しているとはいえ食料品も入っています。捨てていくなら、中身は全部持っていくと思うのですが」
「う~ん、そうですよね」
中に入っていたアイテムは拡声器とボーリング玉。
確かに武器とは言えないし使い所には困るアイテムだが、このデイパックがある限りは別に持ち運びには困らない。
何より食料品という貴重な消耗品に手を付けていないのが不自然だ。

「まあ危ない物は入ってないし、取り合えずもらって行きましょうか」
「それなら、それはブレアさんが持っていて下さい。包丁だけでは万全とは言い難いですし、何か役に立つかもしれません」
「そ、そうですね」

自分で持っていこうとは言ったが、正直拡声器やボーリング玉如きが一役に立つとは思えなかった。
それに意味も無く支給品を放置している辺りどうも怪しい。
これは罠であり、荷物を拾っていく参加者を狙うために、食料に毒が仕込んであったりする可能性も考えられる。
適当な毒見役も探さなければ。
そしてデイパックを回収した二人が再び歩き始めた時、三回目の放送が始まった。


「ククク…ご機嫌いかがかな、諸君?
今放送を聞いている者は、このゲームの一日目を無事乗り切ったという事になるな。おめでとう。
二日目も、これまで以上に殺戮に励んで頑張って生き延びて貰いたい。期待しているぞ。
また放送の最後には、一つ朗報を発表してやろう。ありがたく思うがいい。
では、恒例の死亡者の発表から行おう…」

耳障りなルシファーの声は嫌でも耳に入ってくる。
クロードは死亡者の中に知り合いがいない事を祈りながら、放送に耳を傾けた。

だがその祈りは叶うことはなかった。


『チサト・マディソン』
助けたかった仲間の名前。
救えなかった。間に合わなかった。とうとう誤解を解く事はできなかった。
アシュトンの名前が呼ばれてないという事から考えるに、彼がホテルに着いた時には全て終わっていたのだろう。
チサトさんは最後まで僕が殺し合いに乗ったと思いながら逝ってしまったんだろうか。
そう思うと悲しかった。

『ジャック・ラッセル』
この島に連れて来られて初めてまともに会話した少年。
ちょっと軽そうな所が目立ったが、悪い奴では無かった。あのまま一緒に行動していれば信頼し合える友人になれたと思う。
目の前で死んでしまったジャックの名前が呼ばれているのだから、今更だけど名前を呼ばれた人は本当に死んでしまったんだろうな。
セリーヌさんやオペラさん、ノエルさんも…。

『アーチェ・クライン』
僕が不用意に剣を抜いてしまったせいで、怯えさせてしまった少女の名。
そうか…彼女も死んでしまったのか。
あの時僕がもっと冷静でいられれば、ジャックもアーチェも死なせずにすんだかもしれない。
ごめん、二人とも…。

『ディアス・フラック』
まさか。まさかディアスまで死んでしまうなんて。
僕なんかよりずっと強いあのディアスが。…いや、ここにはあの十賢者だって連れてこられている。
彼らともし一対一で戦えば、彼とて勝つのは難しいだろう。

『リドリー・ティンバーレイク』
ジャックが探していたという少女。本人は否定していたがどう考えてもジャックの恋人、もしくは想いを寄せている人だった。
直接面識があるわけでは無い。だがジャックが大切にしている人なら、彼の分まで彼女を守りたかった。
せめて天国では、ジャックと二人で幸せに暮らして欲しい。



「クロードさん」
放送終了後、俯いたままのクロードにブレアが問いかける。
「知り合いの方がいらしゃったのですか?」
「ええ、まあ…」
随分と落ち込んだ様子だ。
死亡者の内、確かクロードと元々仲間だったのはチサト・マディソンとディアス・フラックの二人だったはず。
それに加え先程の話を聞くに、アーチェやジャックとも会っている。
結構な数の知り合いの名が呼ばれているのだ。

「でも…」
そう呟いてクロードが立ち上がる。
(レナはまだ生きている)
拳を強く握り締めて、「世界と同じ名を冠する剣」エターナルスフィアを持つ。
(それならディアスの分まで、レナを守ればいい。レナだけじゃない。プリシスやアシュトン達、それに他の人達も…!)
仲間を失った苦しみには耐えられた。立ち止まっている暇は無い。

「僕は大丈夫です。ミカエルやガブリエルも倒れたようだし、多少は危険も減ったと思います。
それよりも、早くレザードって奴を倒さなければなりません。急ぎましょう」
言ってクロードは歩き出す。
その様子を見て、ブレアは小さく舌打ちした。

(できるならこの時点でマーダーに誘導してやりたかったけどね…)
『共に戦った仲間』程度では彼を殺し合いに乗せるには弱かったらしい。
やはりレナのように恋人レベルで無いと難しかったか。
まあ、いい。クロードにはレザードを倒してもらわないと困る。マーダーに仕立てるのはその後でも遅くは無い。
(それにしても、ガウェイン・ロートシルトも死んでしまったようね)
レザードをマーダーだという噂を広めるよう言っておいた男。その後すぐ退場するとは、使えない奴だ。
せめてレザードに重症を与えてから死んでいればいいのだが。



放送後クロードの進む速度はかなり速くなっていた。
ブレアの目から見ても、明らかに焦っているのが分かる。
(もう生き残ってる人は、22人しかいない…!)
ゲーム開始から一日が経ち、参加者は既に半分は愚か1/3にまで減ってしまっている。自身の知り合いだって、十賢者以外にも半分近く死亡した。
このままのペースで殺し合いが続けば、明日にはゲーム完遂という事にもなりかねない。
それだけは何としても避けなければ。
(この状況で、僕ができる事は…)
首輪の解除。主催者の打倒。この島からの脱出。ゲームを打破する為に必要な事項は多い。
プリシスのような機械技術も無いし、レオンのように頭の回転がずば抜けて速い訳では無い。ブレアのように主催者に関する情報も持っていない。
そんな自分に出来る事といえば、殺し合いに乗る者―――マーダーを撃破し、他の参加者を守る事だ。
だからまずは、凶悪なマーダーだというレザードを倒す。
その一心がクロードの足を動かしていた。


しかし半日気絶していたとはいえ体中に傷を負い、ここまで移動しっ放しのクロードにも着実に疲労が蓄積されていく。
段々と汗の量は多くなり、歩みも遅くなっていった。
「クロードさん…無理は禁物ですよ」
その様子を見て、ブレアがクロードの肩を叩いた。
「随分と急いでいるようですが、少々疲れているのでは無いですか?」
「そんな、僕は大丈夫ですよ」
疲れているのは事実だが、いても立ってもいられない。
アシュトンとの約束もある。何とか無理を押して鎌石村へ向かおうとするクロードだが。
「クロードさん。レザードという男はかなりの強さを持った男です。戦ったとしても苦戦が予想されます。
ましてベストでは無い状態では勝率はさらに低くなるでしょう。闇雲に向かうよりは、体を休めた方が懸命です」
「………」
言われて見ればその通りではある。
コンディションの悪い状態で戦いに挑むのは愚策もいいところだ。
冒険をしていた時も毒に犯されたりした場合はすかさず回復し、治った後で戦いに挑むよう心がけていた。
だからブレアの言う事が正しいのは分かるのだが…。
「しかし、僕が休んでいる間に、またレザードが誰かを襲うかもしれませんし」
「大丈夫ですよ。今は夜ですし、レザードや他の参加者も動くのは控えるでしょう。その間に私達も体調を整えておくべきです」
「うーん…」
クロードは言葉に詰まる。やはり今の内に少し休んでおくべきか?
確かに今の自分は身体的にも精神的にもベストとは言い難い。こんな状態では自分の本来の力の半分も出せないだろう。
レザードの強さは分からない。だがミカエルやガブリエルが倒されている事を考えると、レザードも十賢者並みに強い可能性もある。
レザード以外にも十賢者クラスの力を持つ奴がいるかもしれないし、最悪そいつらと一対一で戦わなければならないケースも有り得る。
そういった事を考えると、やはり少し休んだ方がいい気がしてきた。
森の中で休むのもやや不安だが、エネミーサーチもあるし大丈夫だろう。



道を少し外れて森に入り、周辺の木に比べ一際太い幹の近くに二人は腰を落ち着けた。
「ブレアさんは休まなくても大丈夫なんですか?」
既に幹にもたれかかり寝る体勢に入っていたクロードは、立ったままのブレアを見やる。
「二人共眠るのはさすがに無用心ですからね。私はさほど疲れてはいませんし、周辺を見張っています」
「しかし…」
「何かあったらすぐ起こしますから、心配しないで下さい。このエネミーサーチがあれば危険もすぐに察知できるでしょうし」
クロードから渡されたエネミーサーチを見せながら、ブレアは笑顔で答えた。
「ですからクロードさんはゆっくり休んで下さい。これからの為にも」
「…分かりました。ではすいませんが、少し休ませてもらいます」
言って、クロードは目を閉じる。余程疲れていたのだろう、数分もしない内に寝息が聞こえてきた。

クロードが寝静まった後、ブレアはその周辺の見回りを開始した。
一応しばらくはクロードを駒として残しておきたいし、できる事なら味方も増やしたい。
正直な話、クロード1人でレザードを倒せるとは思っていない。
自分も加われば分からないが、できれば自分は非戦闘員として振舞っていたかった。その方が色々と動きやすい。
(この後はこのまま道を北上して鎌石村へ向かうのが妥当だけど…戦力がやや不安ね)
途中にあるホテルで少しでも戦力を補充できれば良いが。
そんな事を考えながら街道に戻ってみたが、エネミーサーチにも反応は無く、参加者は特に見当たらない。
(異常は無い様ね)
そう言えば、先の放送では支給品を新たに配布するとの発表があった。
場所的には、ここからだとE-2の菅原神社が近い。
(しかしクロードには十分な装備と武器があるし、私には特に武器は不要。あまり行く意味はなさそうだけど…)
だがそれを目当てに参加者が集まってくる可能性もある。行けば駒を増やすチャンスになるかもしれない。
(まあ、頭の片隅に入れておく位は…)
そこでブレアは一時的に思考を中断した。
背後の木々の間から物音がする。

(誰か…来る?)

葉を踏みつけるような音が聞こえてくる。
エネミーサーチに反応は無い。敵意が無いのか、まだこちらに気付いていないのか。
すかさず付近の木の影に身を隠し、様子を伺う。

「そっちも気付いているんだろ?出ておいでよ。こっちに敵意は無いよ?」

男の声がする。やがて森の中から、褐色肌の男が姿を現した。
(あれは…確か、ロキという男…)
知略に長け、かつ戦闘力も優れた参加者。性格も掴み所が無く、殺し合いに乗るかどうかは五分五分といったところ。
要注意人物の一角にも挙げられていた。
(どうする…?)
エネミーサーチの反応は未だ無い。少なくとも今すぐこちらを襲う気は無いようだ。
しかし一筋縄ではいかない男だ。敵意は無いにしろ、何かを企んでいるかもしれない。
味方につける事ができれば、対レザードの戦力としては申し分無いが…。


ブレアがロキの前に姿を現す。
月夜に照らされたロキの笑顔はとてつもなく不気味だった。
…何故なら、その顔面は痛ましい程の傷を負っていたから。
「ああ、ちょっと前に厄介な奴の相手をしてね。命からがら逃げてきたけどこのザマさ」
自嘲気味に笑うロキは、まだ痛むのか顎の辺りを頻りに抑えている。
「それは災難でしたね」
ブレアが返す。
簡単に一言二言会話を交わすが、どうやらロキはゲームには乗らずに主催を倒す事を目標としているようだ。
さて、ここからが問題である。
この男をいかにして味方に付けるか。
プライドの高そうな男だ。それに、素直に「皆で協力して主催者を倒そう!」と言いそうな性格でも無い。
(そんな男を味方に付けるには…)
やはり『主催者の妹』というカードを使うしかないだろう。
そう名乗れば、脱出を目指す者にとって自分は重要なキーマンになる事ができる。
いくらロキといえど、無視できない存在になるだろう。


「なるほど、あのルシファーの妹、ねぇ」
ブレアは、自分がルシファーの妹である事、エターナルスフィアの事などを簡潔に説明した。
聞けば先程フェイト・ラインゴッドと遭遇し、ある程度の話を聞いているとの事。
突拍子も無い話を信じるかが問題だったが、これなら大方の事は信じてもらえるだろうと全て真実を話した。
「でも本当に信じられない話だよねぇ。創造主とかさ」
「それでも、私の話した事は全て本当なんです。どうか信じて下さい」
「ふん、まあフェイトも同じ事を言ってたしね。あまり信じたくはないけどね」
多少は信じてもらえたようだ。
後は情報を提供する代わりに、レザードの討伐を手伝わせなければ。


「ふ~ん、レザードがね。確かにあいつならゲームに乗るだろうな」
「では、手伝って頂けるのですか?」
ロキは納得した様子だった。これなら味方に付ける事ができるかもしれない。
「でも、返事はNO!」
「な…!?」
腕でバッテンを作って答えるロキ。
「あいにくレザードなんて相手にしてる暇は無いんだよね。悪いけど、今忙しいから」
「忙しいって…」
「そういう訳で、この話は終わり。それじゃーね」
踵を返して背を向けるロキ。
「ま、待って…!」
ブレアは舌打ちする。
こんな展開は想像していなかった。脱出を目指す者なら、自分を仲間にしないという選択しなど存在しないと思っていた。
(くそ、プログラムの分際で、私に逆らって!!)
先程から思考に介入してくるノイズ。それがブレアをたまらなく苛立たせる。
自分も相手も所詮ルシファーの作り物に過ぎない。
それなら作り物同士でも、ルシファーに直接命令を下されている自分のほうが優れているはずなのだ。
何としてもロキを屈服させないと気は済みそうに無い。
(ここまで話したのだから、嫌でも協力してもらうわよ)
バッグからパラライズボルトを取り出しす。
無防備に背後を晒すロキに向かって、ブレアが右手に持ったパラライズボルトを押し当て――

「見え見えなんだよ、バーカ」

それは一瞬。まるでブレアが攻撃するのを分かっていたかのようだった。
ブレアがパラライズボルトを押し当てる直前、振り向いたロキがブレアの右腕を掴んでいたのだ。
「なっ…!?」
予想外のロキの行動に僅かだが隙を見せてしまうブレア。僅かに腕の力が緩んだのをロキは見逃さない。
素早くパラライズボルトを奪い取り、ブレアの腹部に押し付けた。
「あああぁっ!」
全身に痺れが走る。手足の自由を奪われたブレアは地面に倒れた。
「な、何故…」
「少し考えれば分かるさ。お前がゲームに乗ってる事くらいはね」
「なん…だと…?」
倒れ伏すブレアに向かい、ロキは心底楽しそうな笑顔で話を続けた。
「エターナルスフィアだのFD界だのってのは、むかつくけど真実なんだろうね。フェイトも同じ事を言っていたし。
でもおかしいだろ?お前は主催者やFD界の知識や技術を持ちすぎている。実際、前はブレアがフェイトたちを支援したせいで負けたんだろ?
ゲームに乗りそうも無い。むしろゲームを打破するきっかけになる危険性がある」
ブレアからの返事は無いが、ロキは構わず続ける。
「そんな奴を参加者にして何のメリットがある?どう考えてもデメリットしかないんだよ。…『本物』のブレアならね」
ロキがそう言った時、ブレアの表情が明らかに変わった。
「ん?図星かな?まあ少なくともお前は『フェイト達を助けたブレア』とは別人だと思うよ。本物だとしても操られているか…。
そうなればメリットも見えてくる。『フェイト達を助けたブレア』として参加していれば参加者を油断させる事が出来る。
裏で色々やって混乱させたりすれば、争いの火種を撒けるしね。
だから俺は最初から分かってたのさ。お前はゲームに乗っている、ってね」
勝ち誇ったようにブレアを見下ろすロキ。ブレアは怒りの表情で睨み返すが彼は全く動じない。

「えーと持ち物は、何々、パラライズボルト?スタンガンと同じような物か。それと…包丁。こっちには何が入ってるんだ?」
ブレアが落としたバッグを拾い、中身を物色する。
「鉄球と…ん?これは何だ?カクセイキ?なるほどなるほど…声や音を大きくして周辺に流す、ね」
バッグから拡声器を取り出したロキは、「あーテステス」などとマイク部分に向かって囁く。
スピーカーから出た自分の声を聞き、満足そうに頷いた。
「面白そうな物を持ってるじゃないか。使ってみようかな?」
「何をするつもり…?」
「そうだな?『ブレアは偽者だ!ゲームに乗っているぞ!信用するな!』とか叫んでみようか?」
「何ですって…!?」
「そしたらどうなるだろうね?その辺にいる参加者にはこの声が聞こえるだろうね。そしてお前への警戒心が生まれる…。
そういえば近く仲間がいるんだっけ?そいつに聞こえたらどうする…?
きっと逃げ出して、この事を他の参加者に言うだろうね。そしたらお前はかなり動きにくくなるし、信用も失う…」
「……!」
もう何度目になるか分からない舌打ちをするブレア。
そんな事をされて、もし他の参加者に聞かれれば非常にまずい事態になる。
ロキが言うような事を聞かれても、全て鵜呑みにする参加者はほとんどいないとは思う。
しかし多かれ少なかれ警戒心を抱かれてしまう。
何より近くにはクロードがいる。せっかく手に入れた駒を失うような事は避けたい。
さらに悪い展開としては、ロキの言葉を信じた正義に燃える参加者が集まって来て、拘束される危険もある。
「く…このクソガキが…!」
思わず感情が言葉が出た。
「ん?クソだって…?空耳かな?主導権を握っている者に対しての言葉とは思えないような単語が聞こた気がするけど…悪いけどもう一回言ってくれないかい?」
それですら余裕で返すロキ。
ブレアの怒りが最高潮に達する。
自分より格下の相手…いや、格下でなければならない相手に主導権を握られているというこの状態。
頭の中がノイズで溢れていくのを必死に押さえ込んだ。

「要求は何…?」
「そうだなあ。ルシファーの事もあるけど…取りあえず、お手伝いをしてもらおうかな?」
「手伝い…?」
「そ。お前がレザードを倒そうとしてたみたいに、俺も倒さないといけない奴がいてね」
ロキの頭に、先程の戦闘が浮かぶ。
正体不明のハゲ男…最初は誰だか分からなかったが、最後に喰らった技を見て正体が分かった。
あの息も吐かせないほどの連続攻撃…あれは『ブラッディカリス』――不死王ブラムスの奥義に他ならない。
フェイト達の救援にブラムスが来るのは計算外だった。
ブラムスは本来なら味方に付けておかなければならない人物。しかしあの一件で、向こうからは危険人物と認識されてしまっただろう。
だがロキとしては、ブラムスは何とかして味方に付けておきたい。
自分をフルボッコにした相手と組むのは非常に不本意だが、それを押し殺してでも味方にしておく価値と強さがブラムスにはあるのだ。
(それには、もう一回ブラムスと接触する必要があるからね)
しかしそこで邪魔になるのがフェイト、エルネスト、クラースの三人。
彼からはほぼ確実にゲームに乗っている連中と同等に扱われているだろう。
ブラムスは所詮、話でしか自分がした事を聞いていない。説得は可能だと思う。
フェイトに対しては拷問まがいの事をしようとしたが、お人よしそうだし警戒されながらも説得はできる。
問題は残りの二人だ。あいつらは何があっても自分を信用しようとはしないだろう。
要するに邪魔なので、その二人は殺しておきたい。
ブラムスから逃げた後、そうする為の作戦を練っていたところでブレアを発見、現在に至る…というわけだ。
ロキの作戦はこうだ。
まずブレアをフェイト達に接触させて、仲間としてパーティーに加えさせる。
主催者の妹な上、『本物のブレア』を知っているフェイトならすんなり仲間に加えるに違いない。
そこで不意打ちでクラースとエルネストを殺害。その後で今度は自分が接触すればいい。
「どうだ?簡単だろ?」
協力してくれればブレアの事をバラすような事はしない、とロキは付け加える。
「お前は殺し合いに乗っているんだろ?一応参加者は減るし悪い条件じゃないと思うぞ?勿論、手伝いが済んだ後は自由にしていいさ。俺を殺しにかかってもね」
ロキはあくまで『お手伝い』と言うが、これはほぼ脅迫だった。
事実ロキはそう言いながらも、左手には拡声器、右手にはグーングニルを持ってブレアの眼前に先端を置いている。
「くそ、貴様如きの命令なんて…!」
「あれあれ?そんな事言っていいんですか?使いますよ、拡声器」
「おのれぇぇぇ…!」
青筋が顔に現れる。思えばここまで怒りを抱いたのは生まれて初めてかもしれない。
しかし最初から選択肢は一つしか無かった。
断れば拡声器どころでは無い。目の前の槍が体に突き刺される事だろう。
動けない自分にはどうしようもない。いや、例え動けるようになっても、武器を全て奪われている状態では…。
(おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇぇぇぇあqwせdrftgyふじこlpあshだghhkfd!!!!!!!)



「クロードさん、クロードさん」
「ん…むにゃ」
誰かが呼ぶ声がする。意識が朦朧としているが頭を振って無理やり覚醒させ、クロードは目を覚ました。
「少しは疲れが取れましたか?」
「あ、ブレアさん。おはようございま…ん?」
立ち上がったクロードは、ブレアの背後に見慣れない人物がいる事に気付く。
「えっと、後ろの人は?」
「ああ、クロードさんが休んでいる間に出会ったんです。ご心配なく、彼もゲームを止めようとしている方です」
「ロキだ。よろしくね」
「クロード・C・ケニーです。こちらこそよろしく」
ロキと呼ばれた男が手を差し出してくる。クロードもそれに答え、差し出された手を握った。
「早速で申し訳ございませんが…私達はここでクロードさんと別れます」
「ええ?」
思わず素っ頓狂な声を挙げてしまう。
突然別れるなんて一体どういう事だ?しかも今会ったばかりの人間と行ってしまうなんて。
「ど、どうしてまた?」
「実は…先程ロキさんを襲った者がいるらしいのですが…どうも、私の顔見知りらしいのです。私は、その人を止めに行きます」
「だったら僕も」
「いえ。勿論その人も止めなければならないですが、レザードを放っておくわけにもいきません。
ですからクロードさんは、先に鎌石村に向かって下さい。お願いします」
「ブレアの方は俺が案内する。心配ないさ、用が済んだらこっちもすぐ鎌石村へ向かう」
ブレアの表情は真剣そのものだ。
彼女の気持ちは分かる。自分ももし知り合いが殺し合いに乗っていたなら、全て後回しにしてその人を止めに行ってしまうかもしれない。
ブレアが心配ではあるが、ロキという人も殺し合いには乗っていないようだし二人なら大丈夫だろう。
こっちは先に村へ向かい、アシュトンらと合流してレザードを倒す為のメンバーを集めておけばいい。
「分かりました。でも気を付けて下さい」
「クロードさんも。お一人で行かせてしまってすいません」

ブレアから返してもらったエネミーサーチを装備すると、クロードは再び走り出した。
アシュトンの誤解を解き、合流する為。
殺し合いに乗っているレザードを倒す為。
知り合いを止めに行くと言う、ブレアやロキと後で合流する為。

それら全てが、偽りであるとも知らず。



「行ったようだね。それじゃこっちも行こうか?」
ロキが言うが、ブレアは答えない。ただ先立って歩き始めただけ。
やれやれと微笑を浮かべその後を歩くロキ。
その手にはパラライズボルトが握られ、ブレアの背中に密着させられていた。



【F-04/深夜】
【クロード・C・ケニー】[MP残量:100%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)]
[装備:エターナルスフィア@SO2+エネミー・サーチ@VP、スターガード]
[道具:昂魔の鏡@VP、首輪探知機、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:鎌石村へ直行 可能ならばアシュトンとアシュトンの見つけた仲間達に合流する]
[思考2:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考3:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい]
[思考4:ブレア、ロキとも鎌石村で合流]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:ブレアによって1回目の放送内容を把握しました]
[備考3:ブレアの持ち物は基本的な物以外は万能包丁だけだと思っています]

[現在位置:街道を北上中]


【IMITATIVEブレア】[MP残量:100%]
[状態:体にやや痺れ 激しいノイズ、ロキに対する怒り臨界点突破]
[装備:無し]
[道具:荷物一式]
[行動方針:参加者にできる限り苦痛を与える。優勝はどうでもいい]
[思考1:非常に不本意だがロキに協力 ]
[思考2:レザードがマーダーだと広める ]
[思考3:無差別な殺害はせずに、集団に入り込み内部崩壊や気持ちが揺れてる人間の後押しに重点を置き行動]
[思考4:ロキ殺す。マジでぶっ殺す]
[思考5:レナの死をクロードが知った場合クロードをマーダーに仕立て上げる(その場にいたら)]
[備考1:※ルシオ、ルーファス、クリフの特徴を聞きました。
     名前は聞いていませんが、前持って人物情報を聞かされているので特定しています]
[備考2:フェイト達に会うまでは保身を優先し、誤情報を広めるつもりはありません]
[備考3:クロードの持ち物は基本的な物以外エターナルスフィアとスターガードだけだと思っています]

【ロキ】[MP残量:90%]
[状態:自転車マスターLv4(ドリフトをマスター)
顔面に大きな痣&傷多数 顎関節脱臼(やや痛むが何とか修復完了) 神生終了のお知らせ]
[装備:グーングニル3@TOP、パラライズボルト〔単発:麻痺〕〔50〕〔90/100〕@SO3、]
[道具:10フォル@SO、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、スタンガン、ザイル@現実世界、
    万能包丁@SO3、拡声器@現実、ボーリング玉@現実、首輪、荷物一式×2]
[行動方針:ゲームの破壊]
[思考1:ブレアを使ってクラース、エルネストを殺害]
[思考2:1を実行後、ブラムスとフェイトを何とかして味方に付ける。出来なかった場合は…?]
[思考3:ブレアは用が済んだら殺しとく]
[思考4:見つけ次第ルシオの殺害]
[思考5:首輪を外す方法を考える]
[思考6:一応ドラゴンオーブを探してみる(有るとは思っていない)]
[思考7:できれば自転車取り返したいなー]
[備考1:顎を直しましたが、後2時間位は長い呪文詠唱などをすると痛みが走るかもしれません]
[備考2:自分をフルボッコにした相手はブラムスと特定しています]
[備考3:レザードは多分殺し合いには乗っていないだろうと予測(マーダーであるブレアが殺したがっているから)]

[現在位置:北部の街道]

【残り22人+α?】




前へ キャラ追跡表 次へ
第98話 クロード 第118話(前編)
第98話 IMITATIVEブレア 第114話
第105話 ロキ 第114話
|