第112話 大空への翼


焼け野原と化した平地の一角に4つの人影が蠢いていた。
その人影の中の一つ。
碧髪の青年フェイト・ラインゴットは食い入る様に読んでいた一枚のメモ書きを読み終えるとその顔を上げた。
そこで彼はそんな自分の様子をニヤニヤと眺めていた二人の中年男性の生暖かい視線に気が付いた。
「何をそんなにニヤついているんですか?」
そんな彼らに対してフェイトは不満の声を漏らす。
「いや、何ってなぁ? エルネスト」
問いかけられたクラースが隣に立つ金髪三つ目の男性に誤魔化す様に声をかけると、
「これも若さが為せる業か…」
エルネストは何やら遥か遠くを見つめる目をしながら答えた。
「とにかく! 仲間の居場所がわかったんです! 一刻も早く合流しましょう!」
気を取り直すように声を上げたフェイトだったが、この発言で目の前のおっさんは更にニヤニヤを加速させる。
仕舞にはクラースが鳴子をカラカラと鳴らしながらフェイトの背中をバシバシと叩き、
「そんなに手紙の差出人の彼女の事が気になるのか? フェイト少年!?」
と笑い出す始末。
「そりゃそうですよ。幼馴染なんですから!」
正直性質の悪い酔っ払いのそれと大差ないウザさを感じたフェイトは適当に彼をあしらおうとしたが、
絡みっぷりも酔っ払いレベルになっているクラースを追い払う事は適わなかった。
「我もフェイトと同意見なのだが、お前達はどうするつもりなのだ? 
 少なくともここで無為に時が流れていくのを待つのは避けたいのだがな」
この集団の中の唯一にして絶対の異質者。
どこから突っ込みを入れればいいのか考える事すら放棄せざるを得ない不審人物ブラムスが、
その見た目とは裏腹に至極まともな発言で以って脱線しかけていた一同を呼び戻す。
その一言で生まれてからハイスクールに入学するまでをダイジェスト版で回想していたエルネストが口を開く。
「すまなかったな。だが、動き出すには若干早い。もう直ぐ放送が始まるだろうから、
 そこで発表される禁止エリアを考慮した上でルートを決めようではないか。
 それまで手持ちの品を整理しておこう。それで構わないな? ブ…ブラムス」
最後に目を見て彼の同意を確認しようとしたエルネストではあったが、いつまで経っても慣れる事が出来そうもない異様な風貌。
ハゲヅラを常時着用といったふざけた外見とは対照的に、
赤く禍々しい光を爛々と放つ一対の瞳を持つこの変質者を直視する事は彼には不可能であった。
「うむ」
そんなエルネストの様子に気分を害する事も無くブラムスは彼に同意した。

円形にその場に座りその中心に持ち物を広げ始める一同。
その中にはミカエルの遺体からブラムスが今後の役に立つであろうと回収した首輪もあった。
その首輪を拾い上げさまざまな角度から観察するエルネスト。
彼も文明の発達した惑星の出身ではあるが、どの様な構造なのかは見当がつかなかった。
「少なくとも、リモートで爆破が出来るのだから何らかの電波を受信する装置や、
 禁止エリアで爆発するのを考えると位置情報を送信する装置はありそうなんだがな…。
 だが、それ以上はわからないな。フェイトはどうだ?」
エルネストから首輪を手渡され、彼がそうしていた様に一頻り観察をした後に
「そうですね…。ルシファーが言っていた制限ってのもこの首輪を通して僕らに作用している可能性もあります。
 だた、体に紋章も施さずに人間の持つ本来の力を抑止する様な働きを持たせるというのは、
 僕の時代の紋章工学でも理論すら確立していません。
正直僕にはお手上げです」
と、自分の仮説の内の一つ『首輪が能力制限を行っているのでは?』という考えを口にした。
もう一つの『本人に対してプログラムで能力を改変しているのでは?』という仮説は口にしないでおいた。
前者はまだ首輪を解除する事で能力制限からも開放されて脱出が可能になるが、
後者の場合脱出に際して更なる難問が浮上する事になり一同を混乱させるだけに成り兼ねないからだ。
「私の知り合いの使う術に相手の声を奪うものや、身体能力を低下させる効果を持つものがあるが、
その様なものをその首輪を解して作用させているのではないのか?」
「うむ、確かにな。呪いの品という物は、装着者に対しなんらかの枷を強いる物である事が多い。
高度な知識の下で行われた儀式によって、この首輪にそのような効果を付加させた事も考え得るな」
機械技術に関してはさっぱりなクラースとブラムスも、
この様な魔術に関連した事柄ならばフェイトやエルネストよりも遥かに知識がある。
「解体出来れば話は早いんだがな…」
「そうですね…。でも工具も無い今の状態じゃ不可能ですね」
結局は推論を並べるしかない現状ではこれ以上の事は望めそうも無いので首輪をフェイトのデイパックにしまった。
次に注目したのはクラースがロキより逃走する際にドサクサに紛れてぱくってきたデッキブラシだ。
地面に横たわるデッキブラシを物珍しそうに眺めた後にブラムスはそれを拾い上げた。
付属の説明書を声に出して読み上げる。
「ふむふむ『これと赤いリボンと黒い服で、あなたも立派な魔女オタク』……オタク? オタクとは何だ?」
生まれて始めて耳にする単語の意味を求め周囲の者に誰と無くたずねるブラムス。
「ええっとですね。オタクと言うのはメジャーではない物を集めたり、楽しんだりする人の総称って所でしょうか?」
フェイトがあれやこれやと考えを巡らせた末に当たり障りの無い回答をした。
「そうだな。フェイト。概ねその様な認識でいいだろう。
 しかし! その説明書の記述は間違っていると言わざるを得ない!」
そんなフェイトの回答に同意しつつも何故かエルネストが声を荒げた。
「そもそも、魔女っ子=黒服にチャームポイントである大きな赤いリボンというスタイルは
 宇宙暦を生きる我々にとって過去の遺物であると言っても過言ではない! 
 その様な地味な衣装では、昨今の群雄割拠する魔法少女界では生き抜いていく事は出来んのだ!」
「はぁ…」
いきなり熱弁を開始した中年男に些か冷たい視線を送りながらフェイトが相槌を打つ。
「確かにコスチュームのメインとなる色は白や黒でも構わないが、
 そのコスチュームに配置されるオプションはメインとなる衣装を引き立てつつも、
 それら一つ一つがある種の萌えの記号の象徴として存在していなければならないのだ!
 そして、それらが互いに引き立て合う事で初めて完成された魔法少女となるのだ。
 それをなくして箒に跨って空を飛ぶなど愚の骨頂!」
最早呆れるしかないフェイト。
身近な魔女っ子の姿を思い出し、(アーチェにそんなもの無かったがな)等と思っていたクラース。
そして、初めて聞く言葉のオンパレードで頭上にクエスチョンマークを浮かべ続けるブラムスが
講師であるエルネストに熱心な学生宜しく質問を投げかけた。
「では、具体的にどの様な衣装が適切と言えるのだろうか?」
そんな生徒の質問に回答をよこすべくエルネストは紙とペンを荷物から引っ張り出すとデッサンを開始。
数分後にはリリカルな衣装を身にまとった魔法少女のイラストを書き上げてブラムスに提示した。
こんなにも可愛らしい魔女っ子のイラストが、こんなにもむさいおっさんの手によって描かれるのだから
世の中には知らなくいい事が山程あるのだと痛感せざるを得ない。
「ふむふむ…。なるほど。つまりはこの様な衣装を着る事で初めて箒を使って空を飛ぶ事が出来るのだと言うのだな?」
何に納得しているのかわからないがしきりに頷くブラムス。
そんな光景の最中、突如夜空に浮かぶ月より放たれる光すらも遮り、放送を告げるべくルシファーの姿が現れた。
「ククク…ご機嫌いかがかな、諸君?」
そんな一言から第3回目の放送が開始した。

「ブラムスさん! 今呼ばれた人の中にっ!」
放送が終了するや否や開口一番フェイトが焦りを露にして、同じように放送を聴いていたブラムスに詰め寄る。
「うむ、まさかあのレナスが殺されてしまうとは、些か信じがたいが…」
フェイトが焦るのも当然である。
聞いた話だとソフィアの同行者の中に、ミカエルと一対一で渡り合えるブラムスでさえ一目を置く実力者レナス・ヴァルキュリアがいる筈だった。
それほどの人物と一緒にいるのだから無事であると思っていたのだが、そのレナスがこの6時間の間に殺されてしまっている。
「落ち着くんだフェイト。この放送で君の彼女の名前は呼ばれていない。少なくとも今も生きているんだ」
そんなフェイトを宥めるエルネスト。
既に愛する人物も失い、この放送でも2人の戦友の死が告げられている。
それでも彼は取り乱す事無くこの若い仲間を気遣う。ここで彼に冷静な思考を欠いてもらっては困るのだ。
なにせ現在までに遭遇した人物で唯一の主催者の情報を握っている人間で、かつ過去に戦って勝利した事もある人物である。
ここで散っていった者の為。そして、まだこの地で生きている仲間の為にも
一刻も早くフェイトに冷静になってもらい、共に次なる脱出への一手を打つべきだと判断したからだ。
「ですけど、ブラムスさんが言う程の強さを持つ人を殺した人物とソフィアが出会っている可能性は高いじゃないですか!
 なんとか逃げ延びたのかもしれないけど、大怪我しているかもしれない…。
 もしかしたらまだ逃げている最中なのかも…」
「だからこそだ。ここで君が狼狽しているだけでは何も解決しない。ここは迅速に次なる目的地を決め、一刻も早く行動するべきだ」
尚も興奮状態のフェイトを正面から見据え、諭すように語り掛けるエルネスト。
なんとか彼の言葉を聞き入れたのか、フェイトも漸く落ち着きを取り戻した。
「す、すみませんでした。その…皆さんも仲間を失ってたりしているのに僕だけ不安に駆られて取り乱すなんて…」
伏目がちながらもしっかりとした口調で謝罪をするフェイト。
「まぁ、気にするな。それだけお前にとってその子が大切な存在だという事だ(俺も人の事を言えた義理ではないしな)」
エルネストが前回の放送時の失態を思い出しながらも彼を励ました。
「それよりもどうする? 
 私達の目的地は鎌石村だった筈だが、今の放送から察するに、なんらかのトラブルに巻き込まれたと判断するしかあるまい。
 そうなるとヅラムスが連れと別れた場所周辺にまだいる可能性が高いぞ」
フェイトとエルネストのやり取りが終わるのを待ちクラースが口を開く。
「うむ。そうなると目的地が2箇所になるな…。
 我と別れて今までの間に鎌石村に到着しているのかも知れぬが、移動中トラブルに巻き込まれ、そこで立ち往生している事も考えられる」
ブラムスが顎に手を当て思案するような表情をする。
深刻な場面な筈なのに彼の格好は頭頂部に一本残しのハゲヅラに焼け焦げた袈裟。
もうなんというか、コントの一場面にしか見えないのである。
ただ、そんなことに一々突っ込んでいる状況ではない。
あのオリジンでさえブラムスに対してのツッコミを口にせずに一同の話し合いの様子を見つめている。

「えぇっと。確か皆と別れたのは第2回放送の前でしたね?」
「うむ。その時間だと鎌石村を目指して移動している場合D-4を南に迂回してのルートを取っていると考えられるな」
「どちらかといえば村の方にいる可能性は低いが、それでも入れ違いは致命的になるな。
 それに一刻も早く合流しなければならないこの状況。ここは二手に分かれるのがベストか…」
「周辺にはまだロキがいるやも知れんが止むを得んな」
「ではどの様に組み分けをするかだが…。私に提案がある。フェイトには鎌石村方面に行ってもらう。」
「な、何故ですか?」
少しでも早くソフィアと合流したいフェイトは不満の声を上げた。どちらかというと鎌石村の方にいる可能性が低いからだ。
「反論は最後まで聞いてからにしてくれ。
 確かにフェイトの心情を鑑みれば幼馴染と早く合流したいだろうが、お前の今の脚で長距離移動ははっきり言ってタイムロスだ。
 自転車を使えばとも思うだろうが進行ルートは山のそばを通る事になる。
 そんな悪路に自転車を使っても大した移動時間の短縮にはならないだろう。
 だから、お前には自転車で鎌石村を目指してもらう。残りの組み分けだが…」
「ちょっと待つのだクラース。乗り物は他にもあるではないか」
チーム編成を発表しようとしたところで今度はブラムスから横槍が入った。
見るとブラムスは先ほど興味を示していたデッキブラシを手に取っている。
「確かにそれは乗り物だが…。しかしそれを使うには…」
『それ相応の操縦技術を身につける必要がある』と言おうとした所でブラムスが更に割り込む。
「そうだ。先のエルネストの説明によると、これを使って空を飛ぶには特別な装束を身に纏う必要があるのだろう?」
「「「は?」」」
異口同音に疑問符を浮かべる一同を無視して更にブラムスは続けた。
「しかし、案ずるな。我は既にこの絵の少女が着ている衣装に酷似した衣類を持ち合わせている」
そう言ってゴソゴソと自分のデイパックを漁ってブラムスが取り出したものは、
正にエルネストが書いた魔女っ子の衣装に酷似したカラフルな魔法少女のコスチューム。
白を基調とした上着はセーラー服に似た形状の水色の襟と、その下の胸元にワンポイントのアクセントとして黄色い大きめなリボン。
そしてスカートは水色をメインとし、所々に白いフリルをあしらった職人芸。
更に、そのスカートを止めるベルトの中央部には、大きな赤いガラスをハート型の宝石の様に加工した物が埋め込まれている。
「「「何でそんなの持ってるんだーーーー!!」」」
一同は呆然とし、一拍の間を置いた後にまたしても異口同音に同じ台詞を口にした。
そして、今のブラムスが魔法少女コスを取り出している様はどう見ても、
住職のコスプレをした火事場泥棒がなんとか盗み出した一品である女子学生の制服をお披露目している光景にしか見えないのである。
この尋常ならざる光景に流石のオリジンも絶えかねて腹を抱え笑い出す始末。
そんなオリジンを横目に一同の質問に答えるべくブラムスが口を開く。
「我が着ているこの衣が入っていた衣装棚に一着だけこの異彩を放つ衣装が入っていたのだ。
 他にあるのは我が着ているものと同じ物しかないのにも拘らずな。
 それで我はこの衣装が今頭に装着しているナミヘーノカツラと同じく強力なアーティファクトではないかと考え持ってきていたのだ」
(こいつそんな事を考えながらあのカツラを被ってたのか…)
(無い。絶対にそれは無いから!)
(ってか、袈裟を入れているタンスに一着だけ魔女っ子衣装を入れているなんて、そこの住職何者?)
それぞれが、湧き上がる更なる疑問を胸中で呟く中、ブラムスは更に言葉を紡いでいく。
「これを着れば大丈夫なのであろう?
 丁度我の今着ている装束も焼け焦げてしまっている事だしな。我が着ようではないか」
「「「「!!」」」」
最早ブラムスの奇行は留まる事を知らない。
一同が感嘆符のみを台詞とする中、ブラムスは装着したカツラを地面に恭しく置くと(着替えの邪魔になると判断したのだろう)
おもむろに袈裟を脱ぎマジカルチックな魔女っ子コスチュームに袖を通した。
その場にいる全員が彼を止める事すら出来ずに時を静止させていた。
そして、彼らは目の当たりにした。
着替えを終えクルリとターンしたブラムスの姿は↓


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_(二フニニ:-=ニ:::::/:::::::::::::::Σ` ``ヽ\i::/j/     乙 ̄:::: ̄:::`ヽ::::::::\:::>     
    (二ニフ    ,:'::::::::::::::::::::斤'      、 ' /,/   i`Yヾ:::、:::::::::::::\:::::::\
ゝ‐‐-く   /:::::::::::::::::/:;メ ``ヽ ヽ,ヽ   /  _,.、- l N::::::;>、:::::::::::::ヽ:::::::::
 `ーァ-'  〃:::::::::::ィ'´_ヽi    、   〉 く./ _,,    ヽヾ/r;'´\::::::::::::::::::::   
  `´ヽ  /,::::::::::::∧く ) | ,ィニ¬、_ ヽ、 r'   _,. ‐;=-、  | i_!_}:/:::::\:::::::::::::  
      ヽ イ::::::::::::;:::ヘ 辷| ヾt:'tテ=≧′Yニ,r;tデァ'´   !Kノ /::::::::::::::\:::::::    
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            r ̄ヽ    /:::| |:::::::::::::::::::::>、ヽ:::::::/r'!  
            (_r、ヾ`ー--Oゝ:::::l ト、:::::::::::::ノ ハ レ⌒ヽ::':,  
             フ ̄ゝ、::::::::::::::::::ゝヽ`二 ̄ ノ /    l:::::',      
            `ー-r、_「'ーr‐┐|  ̄二ヽ、-- く -‐- /:::::::i.
                `^ヘ‐‐':::ヽ  __ニゝi   }-‐--、\::::!
                  ヽ:::::::::::l     レ二ヽ、  ヽ/:::!
                    \:::::l、 _,.イ|二ニニヽ、  ハ::!
                     ヽ:/フ!  l ヽ     ヽ/ヽ リ    
                      { / ヽ、r‐'         /    

※このAAはフェイト達が目にしているブラムスの姿を忠実に再現しています。

そう、我らがアイドル『弾ける血飛沫の腐臭・キュアブラムス』その姿なのである。
それを目にしたフェイト、エルネスト、クラースの3名は茫然自失。
正に( ゚д゚)д゚)д゚)ジェットストリームポカーン状態。
そして、オリジンは腹筋崩壊。
散々笑い転げ回った末ブラムスに向き直り
「ブラムスよ! 王としての貫禄は抜群だな!(不審者王としての)」
そうブラムスに告げると、目の端に涙を溜めながら親指を立てた。
「うむ当然だ。我の王としての威厳は何を身に纏っても変わる事などありはしないのだ」
ブラムスもオリジンに倣い右手の親指をビッと立てた。
「さて、これでフェイトが鎌石村に行かなくてはならない事はなくなったな。これで空も飛べるのだ。
 ならば、鎌石村に行って上の空になってしまっても困る故、我が繰るこの棒に相乗りさせようではないか。
 クラース達はその自転車を駆り鎌石村へ向かうがよい」
ここで漸く我に返ったクラース。
「はっ! いや! 違うぞヅ…ブラムス!! 私が言いたかったのはだな、それを乗りこなすには練習が必要だという事で…」
「何を申すかクラースよ。先ほどのエルネストの講釈に依れば、この様な装束を身に纏う事で空を飛べると…。
 まさかエルネストよ。先の講義は虚偽であったのか?」
ブラムスはそう言いながらエルネストをガン睨み。
眉間に皺を寄せ、鋭く赤い光を放つ眼光を彼に向ける。
「(ちょっ、こわっ!)いや、あれはだな…」
言い淀むエルネスト。
それも当然の事。最早完全無欠のキチガイコスプレ変質者な風体のブラムスに正面からガン睨みされてしまっては、
百戦錬磨のエルネストを以ってしても怯んでしまうのは当然の理。
「まぁよい。見ておるがいい」
説明させるよりも試した方が早いと思ったのか、ブラムスは手にしたデッキブラシに跨った。
「おっと。忘れていた」
何故か動作を止めたブラムスはデッキブラシを地面に置くと、
先ほど地面に置いたハゲヅラの方へと歩み寄り、拾い上げたそれを再度パイルダーオン。
(あっ、やっぱ被るんだ…)
フェイトがその光景に対し心の中でのみツッコミを入れた。
「さて、では気を取り直して」
再度跨り飛翔の準備を整えた。
そして、ゆっくりと、だが確実に浮き上がっていくヅラムス(魔法少女風)
やがて、両足が地面から完全に離れ、そのデッキブラシの高さが地上から1m程になったその時。
ヅラムス(魔法少女風)はデッキブラシを中心に半回転。頭部を激しく地面に強打。
「ぬぐぉぅ!!」
およそ魔法少女らしからぬ呻き声を上げるブラムスに一同は↓


               エルネスト
        フェイト↓    ↓  クラース↓
          ___  ___    ___
         /⌒  ⌒/⌒(○)⌒\/⌒  ⌒\
       /( ○) /( ○)  (○ /( ○)   (○)\
      /::::⌒(_/::::⌒(__人__) /:::::::⌒(__人__)⌒:::: \
     |    ゝ'゚|    ゝ'゚    |    ゝ'゚      ≦ 三 ゚。 ゚
     \   。≧ \   。≧   \   。≧       三 ==-

                 ━━┓┃┃
      ジェットストリーム   ┃   ━━━━━━━━
                    ┃               ┃┃┃
                                      ┛


※このAAはイメージ映像ですが、概ね今の彼らの状態と一致しています。

説明しよう。何故彼らが3人同時にブーッをしてしまったのかを。
想像して欲しい。彼らの目の前で浮かび上がったデッキブラシから回転し、
地面に対して激しいランデブーを試みたこのドジっ子魔法少女(中身はヅラムス)が軸となるデッキブラシと接していた部分は当然尻。
その部分が上に来てしまえば、万物全てが重力の束縛から逃れられる事は適わず。
スカートが捲れ上がり、まぁ、そのなんだ? 
描写するのもおぞましいので端的に書くと魔法少女の岩石の様にゴツイヒップを覆う白地の布がフェイト達3名とファーストコンタクトを果たしたのだ。
それは正にこの世の地獄絵図。
見たくも無いのにその光景を網膜に焼き付けてしまった一行は、某ラピュタ王が『バルス!』と言われた時と同じ心境なのである。

「ぬぬぬぅ、失敗してしまった」
頭をカツラ越しに摩りながらブラムスが立ち上がった。
事前に被っていた波平のカツラのおかげで怪我をする事はなかった様である。
まさか、彼がこのカツラを初めて被る時に懸念していた『鬘が無ければ即死だった』という事態が現実の物になろうとは誰も予想してなかったのではないだろうか。
「(ドジっ子魔法少女がホウキでの飛翔に失敗。「いたたっ、失敗しちゃった」って光景は王道的な萌えシチュだと言うのに、
 中身がブラムスなだけでここまで酷いものになろうとは…)」
「(そんな事はどうでもいい。
 それよりも、お前の下らん魔法少女談義が原因でこの様な事になっているのだからどうにかしろ!)」
「(無茶を言うなっ! 実はコスプレなんてものは必要ないと告げて激昂でもさせてみろ。
 きっと奴は俺の直腸にあの手に握るイチジク浣腸の中身をぶちまけるに違いない)」
と、中年二人は囁くように口論を開始。
そんな二人を横目に見ながらフェイトがブラムスに歩み寄る。
「ちょっとブラムスさん。それを貸してくれませんか?」
ブラムスの手よりデッキブラシを譲り受けたフェイトはおもむろにそれに跨った。
「待つのだフェイト。その様な平服ではそれを使う事は…」
しかし、ブラムスの懸念とは裏腹にスムーズな浮上を遂げるフェイト。
元々バスケットの優秀選手に選ばれる程運動神経も良く、
ファイトシュミレーターでも似た様なモーションのキャラがいた事が幸いしたのか、フェイトは難なくこのデッキブラシを扱う事が出来た。
「なんと! 何故フェイトは着替えもせずに空を飛ぶことが出来るのだ?」
エルネストの魔法少女理論を鵜呑みにしているブラムスは困惑するばかり。
このままでは自分の直腸に決して入れてはならない劇物が浸入する怖れありと見たエルネストがすかさずフォローを入れる。
「そ、その、ブラムス。言い忘れていたのだが、中には衣装を変える事も無くホウキを扱える天才型魔法少女と呼ばれる存在がいるのだ。
 フェイトがまさかそれとは思わなかったなぁー」
どう考えても後付の嘘八百なのだが、その身に纏う衣装同様純真ピュアな心を持つブラムスは彼の言葉を事を信じた。
これにてエルネストは未知のレッドゾーンへチャレンジ(バブルローション直腸注入)をなんとか回避できたのであった。
「何はともあれ、これで僕が鎌石村に行く必要はなくなりましたね。
 少しでも早くソフィアにあって安心させてやりたいんです。お願いします。
 我侭を言っているのは十分承知です。
 でも、僕を観音堂の方のルートに行かせて下さい!」
飛行テストを終えたフェイトが一同に嘆願する。
「わかった。但しそっちのルートはブラムスの知り合いのレナスですら殺してしまった敵がいる可能性が高いんだ。
 だから、ブラムスと一緒に行ってくれ。戦力は高い方がいいだろう?」
(こいつ…一緒に歩きたくないからと不審者王をフェイトに押し付けたな?)
クラースが提案する中オリジンが冷やかな目でクラースを見つめた。
(それは間違っているぞオリジン)
オリジンの呟きをしっかり拾っていたクラースが、オリジンに対し思念のみで会話を開始。
(ブラムスが言っていた事を思い出せ。奴は優勝することが帰還への最善手と判断したら私達を手に掛けると言っていただろう。
 だが、それは私も同じ事だ。今はこうしてフェイト達と協力していた方が帰還出来る可能性が高いと判断しているだけに過ぎない。
 しかし、私が優勝狙いへと考えを変えた時、ブラムスが近くにいたとすれば…)
(不審者王も考えを変えている可能性が高いと?)
(そうだ。正直ミカエルやロキを素手で圧倒できる相手に勝機は極めて薄いだろう。
 そこで、今の内に危険な方に行ってもらい疲弊してもらった方が都合がいい。
 この場合強者同士で潰しあってくれるわけだからな。
 これは私が生き残りを狙った時の為の布石なのだよオリジン)
(なるほど。汚いなさすが召喚士きたない!)
(なんとでも言っていろ!)


こうしてチーム分けは終了した。
クラース・エルネスト組は自転車を使いこのまま鎌石村に直行。
対してフェイト・ブラムス組は禁止エリアになる前にE-4を通過しE-5、D-5へ。
それぞれの組が目的地にてソフィア達を捜索する事となった。

出発の準備を終えた中年コンビが、まだ準備を続けているフェイト達へと振り返った。
「いいか? 無茶だけはするなよ? それと再合流ポイントは次の放送までにホテル跡近くのF-4の街道だからな。忘れるなよ」
「後ブラムス、戦闘となった場合相手は強敵だと予想される。ここはフェイトにデッキブラシを相乗りさせてもらい体力を温存しておくんだ」
サドルに跨るエルネストと、荷台に腰を掛けたクラースがチーム『魔法少女(♂)』の面々に語りかける。
「はい」「うむ」
それに対し了解を返す二人を確認すると、エルネストは力強くペダルを漕ぎ始めた。
「それでは僕達も行きましょう」
「わかった」
フェイトはデッキブラシに跨ると徐々に浮上を開始させた。
その後ろではブラムスも同様にデッキブラシに跨っている。
「ブラムスさん。柄を持っているとまたさっきみたいに頭が下になっちゃいますよ?」
「そうか…。では、我はどうしたらよいのだ?」
「僕の体に腕を回してください。そうそんな感じです。後のバランスは僕が取りますから」
「うむ」
ブラムスの頷きを得てフェイトはデッキブラシを離陸させた。
かなりの快速で夜空を駆けるフェイト達。
しかしフェイトは気付いてしまった。
読者諸氏もお気付きであろう。フェイトの体をガッチリホールドしているブラムスの体勢はそう、所謂『あててんのよ状態』なのだ。
そんな状況にフェイトは顔を真っ青にさせてげんなりしてしまう。
いやまあ、ブラムスの胸は当てられる程に膨らんではいるのだが、鋼のように硬い筋肉に覆われていて、
股間のユグドラシルもミニスカートのおかげで感触は直に伝わってきてしまう。
そんな状況だからこそ彼の心は正に萎え萎え。
捲くれたスカートから覗く下着とめくれ上がった上着越しに見えたないしょのつぼみ――先程見てしまったその姿がなかなか頭から離れないようだ。
どうやらフェイトはこの歳にして新たなトラウマを抱える事となってしまったらしい。
だから『そんなに嫌なら、降ろしちゃえばいいじゃねぇか』と彼を責めないでやってほしい。
彼の心は最早罅だらけのクリスタルハート。そんな事をブラムスに頼む気力すらないのである。
因みにこれから1、2時間後アルベルはレオン相手にフェイトと同じ様なシチュエーション(男に女装させ密着)で
ドッキリドキドキ体験をする事になるのだが、中身が違うだけでここまでリアクションが変わるものなのかと痛感する事しきりである。
当然神ならぬフェイトやアルベルがこの事実を知る由も無い。


頑張れ! フェイト!!
負けるな! フェイト!!
そっちの方角にはソフィアがいるんだから元気を出せ!

但し、こんな変態を連れているフェイトと、かっこいい王子様に守られていたソフィアが再開を果たした時に
二人の関係がどうなるかまではこのSSの作者は責任を持ちませんのであしからず。



【D-2/深夜】

チーム【中年】
【エルネスト・レヴィード】[MP残量:100%]
[状態:両腕に軽い火傷(戦闘に支障無し、治療済み)]
[装備:縄(間に合わせの鞭として使用)、シウススペシャル@SO1、ダークウィップ@SO2、自転車@現実世界]
[道具:ウッドシールド@SO2、魔杖サターンアイズ、荷物一式]
[行動方針:打倒主催者]
[思考1:仲間と合流]
[思考2:炎のモンスターを警戒]
[思考3:ブラムスを取り引き相手として信用]
[思考4:鎌石村でブラムスの仲間を捜索]
[思考5:次の放送までにF-4にてチーム魔法少女(♂)と合流]

【クラース・F・レスター】[MP残量:80%]
[状態:正常]
[装備:ダイヤモンド@TOP]
[道具:薬草エキスDX@RS、荷物一式]
[行動方針:生き残る(手段は選ばない)]
[思考1:ブラムスと暫定的な同盟を結び行動]
[思考2:ゲームから脱出する方法を探す]
[思考3:脱出が無理ならゲームに勝つ]
[思考4:鎌石村でブラムスの仲間を捜索]
[思考5:次の放送までにF-4にてチーム魔法少女(♂)と合流]
[現在位置:D-2北部、街道を鎌石村に向けて北上中]

チーム【魔法少女(♂)】

【ブラムス】[MP残量:80%]
[状態:キュアブラムスに華麗に変身。本人はこの上なく真剣にコスプレを敢行中]
[装備:波平のヅラ@現実世界(何故か損傷一つ無い)、トライエンプレム@SO、
魔法少女コスチューム@沖木島]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2
荷物一式×2、和式の棺桶@沖木島、袈裟@沖木島(あちこちが焼け焦げている)、仏像の仮面@沖木島]
[行動方針:自らの居城に帰る(成功率が高ければ手段は問わない)]
[思考1:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考2:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考3:フレイ、レナスを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[思考4:フェイトと共にD-5、E-5に行きソフィア達を捜索]
[思考5:次の放送までにF-4にてチーム中年と合流]

【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:85%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)、魂が抜けかかっている]
[装備:鉄パイプ-R1@SO3]
[道具:ストライクアクスの欠片@TOP?、デッキブラシ@TOP、ソフィアのメモ、首輪、荷物一式]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考2:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[思考3:ソフィアと合流したい!]
[思考4:次の放送までにF-4にてチーム中年と合流]
[備考:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]

[現在位置:D-2東部、東西に流れる川付近]

【残り22人+α?】




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第105話 クラース 第117話
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最終更新:2009年09月06日 02:40