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第126話(後編) それぞれの理由


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「よぉ、作戦会議は終わりかよ? とりあえずてめえが一番の危険人物ってのは確定しているからなぁ、てめぇからのしてやるよ!」

無造作に握られる剣を構える事もせずに離れた距離をアルベルが疾走してくる。

「待って!アルベルお兄ちゃん! 僕アシュトンお兄ちゃんに話が…」

そのアルベルに向かってレオンが叫ぶ。そんな彼にアルベルが振り返らずに返答した。

「今のこいつには何を聞かせても無駄だろうぜ。せめてこいつが戦えなくなってからにするんだな!」

その通りだ。誰がなんと言おうが僕はプリシスの為に他の参加者を皆殺しにするんだ。
そうしないと彼女に振り向いてもらえない。だから、先ずは邪魔な君達から始末させてもらうよ。
突進してくるアルベルに向かって剣を振り下ろす。再度激突した白刃が火花を散らした。
ギギギと互いの剣を力任せにぶつけながら相手の隙を作り出そうと押し合う。
再び顔を突き合わせる形となった僕にアルベルが不敵な笑みを浮かべた。

「まぁ、さっきは片手で軽くあしらってやったからな! 今回もそう時間はかかんねぇよ。少し黙って見てな!」

言葉こそはレオンに対して発しているがどう考えても僕に対する挑発だった。
膠着状態となった鍔迫り合いを相手の剣を払い上げる事で終了させる。
続け様に開いた脇腹目掛け右の回し蹴りを見舞う。その蹴りをアルベルは左腕で難なくガードしていた。
剣を払われると同時にこちらの攻撃を読んで、柄から左手を離していたらしい。
アルベルが反撃に移る。
跳ね上げられた剣から急角度の突きを繰り出してきた。払われた右腕を利用する事で予備動作を省略した素早い攻撃だった。
それに対して僕は蹴りの体勢のまま。このままでは回避行動には移れない。そう判断し、ガードされたままの右足を振り抜いた。
アルベルを蹴り飛ばす事で僕の左肩を貫くはずだった剣先は軽く掠めただけに留まった。

「僕はあの時連戦で疲れていたからね。今回もそう簡単に行くとは思わないで欲しいな」

舐められっぱなしってのも癪だったので言い返してやった。
蹴りの衝撃で痺れた腕の感触を確かめる様に手を開いたり握ったりしながらアルベルが口を開いた。

「そいつはどうだろうなぁ? なぁんかさっき戦った時とちげぇと思ったら背中から生えてた化け物はどうしたよ?」
(化け物? こいつ今ギョロとウルルンの事を化け物って言ったのか?)

カチンときたあの二人は僕にとって掛け替えのない友人だ。それこそ一心同体だったといっても過言ではなかった。
それを化け物呼ばわり。いくら僕を舐めてかかろうが別に構いはしない。だけれど。

(あの二人を馬鹿にする事だけは許せない!)

『アヴクール』の柄を両手で握り締め、力いっぱいたたきつけた。
サイドステップでその一撃をかわして距離をいったん開こうとするアルベル。

(逃がすか!)

地面に食い込んだ剣を掬い上げてアルベルめがけ砂利を打ち出した。打ち出された砂利はさながらショットガンの散弾だ。
対するアルベルは飛来する土嚢を左手一本で軽々と払い退けた。
その僅かな隙を突いて懐に踏み込む。

横一文字の剣閃。

抜き胴気味に放った斬撃を手にする剣を盾にする事でアルベルは凌いだ。
押し込んで体勢を崩してやろうと力を込めるが、それを逆手にとられ剣を弾き上げられてしまった。
無防備な僕の顔面に手甲をつけた左腕が打ち込まれる。
あまりの衝撃に脳を揺さぶられ視界に星が瞬いた。たたらを踏む僕に追撃を加えようとアルベルが迫る。
『リーフスラッシュ』
反撃のつもりではない。体勢を整える時間を稼ぎたかったのだ。この間合いでは死角に回り込む余裕は無い。
アルベルが一瞬だけ木の葉の渦を前にひるんだ。だが、害が無いものだと判断したらしく構わず踏み込んできた。
それでも構わない。体勢を整えるだけなら一瞬で十分だった。直ぐに襲い掛かってくるであろう衝撃に備え剣を構えて足を踏ん張る。

激突。

横薙ぎに払われる剣撃を受け止める。余りの衝撃に手が痺れ思わず武器を取り落としそうになる。
アルベルが尚も強引に押し込んでくる。負けじと押し返し三度鍔迫り合いへと持ち込んだ。

「あぁ、そうか。お前が余りにもヘタレ過ぎて愛想を尽かしていなくなったってわけだな? 
 化け物にも見捨てられるたぁ、クソ虫にはお似合いじゃねぇか!」
「訂正しろ…」

黙ってこいつを斬り捨てるつもりだったけど、もう我慢できなかった。

「あぁん?」
「訂正しろ! 二人は化け物なんかじゃないっ!
 それにあの二人は僕を見捨てたんじゃない! 僕を守る為に命を懸けてそれで…それでぇ!!」

僕の目の前で消滅していったギョロとウルルンの姿が今でも脳裏に浮かんでくる。
胸中は僕らの絆を薄ら笑いを浮かべながら踏みにじるこいつに対する怒りで煮えくりかえっている。

「はんっ! って事は結局てめえがヘタレだったからいなくなったんだろうが! ものは言い様だなぁおい!」

頭の中で何かが音を立てて切れた。

「おまえぇぇぇ!」


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(こいつ…完全にブチ切れやがったな)

いくら俺でもここまでの使い手を侮ったりはしない。ガチで遣り合って負ける気もしないが後も支えてるからな。
さっさと片付ける為に軽く挑発してやったらまんまと乗ってきやがった。
昔ネルに「あんたは人をイラつかせる事にかけては天才的だね」とため息混じりに言われた事もある。まぁ俺にかかれば朝飯前だ。
あいつは皮肉を込めて言ったんだろうが、こうして役に立つ事もあるってもんだ。
頭に血を上らせて打ち込んでくるこいつの攻撃は一見苛烈だが、単調かつコンビネーションやフェイントもないお粗末なものだった。
クリフの様な馬鹿力なら愚直なまでの猛攻も効果はあるだろうが、こいつの腕力はそこまで恐ろしいものではない。

踏み込みと共に放たれる逆袈裟を側面から払って受け流す。

返す刀の横薙ぎ。
バックステップ。軌道を見切り紙一重でコレをかわす。

更に深い踏み込み。眉間を的確に捉えた鋭い突きが繰り出された。

(読めてんだよ!)

剣閃を潜り抜ける様に頭を振りこちらも一歩踏み込む。硬く握り締めた左拳をこのクソ虫の顔面に突き刺した。
さっきの一撃の比ではない。互いの踏み込みの勢いも上乗せした全力の一撃はその場に踏みとどまる事を許さずに遥か後方へとぶっ飛ばした。

(さぁて、止めだな。レオンの奴が話をしてぇとか言ってやがったが、武器を持てる状態にしとくってのも危ねぇな。
 とりあえず両腕でもへし折っとくか…)

無様にゴロゴロと地面を転がっていたアシュトンが漸く止まりノロノロと立ち上がろうとしていた。
だが既にこっちの間合いの中だ。体勢を立て直させる前に決着をつけようと剣を振りかぶる。

(あぁ、でもこの剣両刃じゃねぇか。これじゃあ峰打ちができねぇな。
 まぁ、いいか。右腕一本で勘弁してやろう。何人も殺してるこいつには破格な待遇ってもんだろ)

構わず剣を振り下ろそうとしたその時。

「待って、アルベルお兄ちゃん! 僕がっ、僕がアシュトンお兄ちゃんを説得するから!」

両手を広げ俺とアシュトンの間にレオンが割り込んできた。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

(黙って見てろって言われても…。ってかよく考えたらアルベルお兄ちゃんが戦うのを見るの初めてじゃん!
 大丈夫かな? 援護した方がいいのかな?)

目の前で激戦を演じている二人は互いの武器を打ちつけ合っていた。
ああも接近されていては援護のつもりの紋章術が援誤になりかねない。

(補助の紋章術をかけても「余計な事すんな! クソガキ!」って怒られそうだし…)

だから僕は考えを切り替えた。

(ここはもうアルベルお兄ちゃんを信じるしかない! 僕は、僕の出来る事を、やらなきゃいけない事に専念しよう)

やらなきゃいけない事。当然それはアシュトンお兄ちゃんの説得だ。
アルベルお兄ちゃんがアシュトンお兄ちゃんを大人しくさせてからの展開は全て僕に懸かっている。

(でもどうやって? プリシスと最初に会った時攻撃されたのはアシュトンお兄ちゃんの姿が見えなかったからで、
 決してその時に言った言葉はアシュトンお兄ちゃんに向けられた言葉じゃないんだって言えば伝わるかな?
 微妙だよなぁ。そもそも何で透明化してたかって事すら説明できないんだもの。信じてって言うには無理があるよ…)

それに、例え信じてもらえたとしても別の問題が浮上してしまう。

(果たしてアシュトンお兄ちゃんは誤解の末に暴走して何人もの人を手にかけてしまった事実に耐えられるだろうか?
 きっとそれは出来ない。今は殺す事が正しい事だと信じ込んでしまっているから気を確かに保ってはいられているけど…)

その信じていた事が間違っていたと知った時どうなるかなんて簡単に想像できてしまう。
プリシスに合わせる顔がないって言って自殺してしまうかもしれない。
罪の意識に押しつぶされてその場で完全に狂ってしまうかもしれない。
浮かんでくる想像は幾つかあれど、その全てが決して見たい姿ではなかった。

(確かにアシュトンお兄ちゃんはとんでもない事を仕出かしてしまった。その罪は一生消えることはないと思う。
 それでも僕は、アシュトンお兄ちゃんともう一度笑い合いたい。いや、アシュトンお兄ちゃんだけじゃない。
 何人もここで死んじゃったけど。生き残ってるみんなと一緒にもう一度…。だってみんな僕の大切な仲間なんだから!
 そう、その想いは決して変わらない。例えアシュトンお兄ちゃんに殺されかけたとしても。
 子供じみた甘い考えだってのは判ってる。それでも僕は考えを改める気なんて無い!)

考えながら眺めていた二人の戦いはなんとかアルベルお兄ちゃんの勝利で終わりそうだった。
説得の方法は上手く纏まらなかったけど、真実を告げて僕の想いを伝えればきっとこんなバカな事は止めてくれるはずだ。
一回で止まってくれなくても二回、三回。いいや、止まってくれるまで何度だってやってみせる!
殴り飛ばされたアシュトンお兄ちゃんの下へ駆け寄る。ところがアルベルお兄ちゃんの様子がおかしい。
尻餅をついているアシュトンお兄ちゃんに向かって剣を振りかぶっている。

(なんで? もう勝負はついたじゃないか? とっとにかく止めないと)
「待って、アルベルお兄ちゃん! 僕がっ、僕がアシュトンお兄ちゃんを説得するから!」

僕はそう叫んでアシュトンお兄ちゃんを庇う様に二人の間に入り込んだ。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「馬鹿野郎! まだそいつは武器を持ってんだ離れっ…!?」

立ち塞がるレオンを押しのけようと手を伸ばしたその時、脇腹から背中にかけて抜けるような激痛が走った。
正面には驚きの表情で目を見開くレオン。そして、彼の胸部からは真っ赤な鮮血を滴らせた分厚い白銀の刃が生えている。
それは俺の脇腹をも貫通し、足元に二人の体から流れ出た血で水溜りを作っていた。
レオンの背後から刃を突き出してきたアシュトンの顔が狂気に酔いしれた様に歪な笑顔を形作る。

「フフッ、先ずは一人…」

引き抜かれる大剣。それと共に俺の体は前のめりに崩れ落ちていく。視界の端では抜いた剣を振りかぶるアシュトンの姿が映る。

(やべぇ、このままじゃ二人まとめて真っ二つだ。くそっ、間に合えっ!)

何とかレオンを手繰り寄せ間合いの外へと脱出しようと手を伸ばす。間に合うかどうかは絶望的だったが思わず体が動いてしまった。
仲間を護ろうとする事は当然だと言わんばかりに、極々自然に体が反応していた。だが、その手を遮るようにレオンの細い腕が俺の体を突き飛ばした。
交差する視線。驚く俺に対して申し訳なさそうな表情をするレオン。その表情の意図する意味を読み取ろうとした俺の目の前で――――
レオンの頭部が宙を舞った。大量の血飛沫を上げて崩れ落ちる胴体。血雨を浴びながら、なすすべも無く俺の目が放物線を描く頭部を追いかけていく。
アシュトンが空中で髪の毛を掴んでそれを受け止める。そこから首輪を引く抜くと後は用無しと言わんばかりに放り捨てた。

「あははっ! やった! やったよっ! プリシス!! コレでまたもう一つ、君への愛の証を手に入れることが出来た!!
 フフフッ、喜んでくれるかなぁ? 喜んでくれるよね! 僕がコレだけ手を汚して、友達まで殺して手に入れたものなんだから! あっははははははっ!!」
(狂ってやがる…)

崩れ落ちた俺は地に伏したまま、この便所のクソに集るクソ虫ですらかわいく見えてしまうとびっきりのクソ野郎を見上げていた。
直ぐにでも立ち上がって、こいつを切り刻み、この耳障りな笑い声を止めてやりたかった。
だが、体に受けた負傷がそうさせてくれない。血が流れ落ちていくと同時に瞬く間に体力が奪われていく。
罵声を浴びせようと息を吸い込んだ口からは罵りの言葉の変わりに血液が吐き出された。

「あぁ、でもクロードにはどう説明しよう? そうかっ、こいつがやった事にすればいいんだ!
 で、その後にこいつを殺したって事にすればきっと大丈夫!」
「こ…の、クソ虫が…」

ヒュー…ヒュー…、と風が抜け出て行く音を繰り出し続ける肺から漸く声を捻り出した。
それは負け惜しみにしか聞こえない虚しい物であったが、それでも言わずにはいられなかった。

「なんだって?」

さっきまで歓喜の感情で埋め尽くされていた顔が途端に凶暴なものへと切り替わった。
ドガッ!

「がぁぁぁぁっ!」

つま先で俺の脇腹の傷に蹴りを入れてきた。傷口を中心に全身を痺れる様な激痛が駆け抜ける。

「なんだって? きこえなかったなぁ!! もう一度言ってみてよッ!!」

ドガッ!ドガッ!

「そういやお前、さっきギョロとウルルンに何て言った? 僕達の事を何て言ってた? 思い出せないなぁ!! もう一度言ってみてよッ! なぁ、おいっ!!」

何度も、何度も蹴り続けるアシュトン。余りの激痛ゆえに傷口の痛みはとうに麻痺して感じなくなってしまっていた。

許せなかった。
武器も持たず、戦いの意思さえ持っていなかったレオンを不意打ちの様な形で斬り捨てたこいつが。
今まで戦ってきたどんな相手よりも許せなかった。
身を挺して自分を庇ってくれた仲間を何の躊躇いも無く斬り捨てたこいつが。
そして何より
(最後の最後で詰めを誤り付け入る隙を与えてしまった俺がっ! 目の前でなすすべも無く仲間を殺された俺自身のアホ差加減が許せねぇ!)

胸中に渦巻く様々な怒りが、混沌とした怒りが麻痺した痛覚を超えて尚胸の奥底で痛む。
ガシッ
そして、その怒りが俺の体を突き動かした。飽きもせず俺の脇腹に蹴りを入れているアシュトンの足を掴む。
立ち上がることすら間々ならなかった体を起こし、そのまま力任せにアシュトンをブン投げた。
木の幹に打ち付けたアシュトンが頭を抑えながら立ち上がる。思わぬ反撃を受けたアシュトンが怒りをあらわにする。

「死に損ないの癖にっ、直ぐにレオンの後を追わせてやるからおとなしく僕に殺されろっ!!」

負けじと俺も落としていた剣を拾って立ち上がる。構えも何もあったものではない格好で最早意地だけで立ち上がっていた。
それでも両の瞳に相手を捕らえ、滾る怒りと共に睨み付ける。体の方は既に死に体だが、それでもまだ俺は生きている。戦う意志もまだ死んではいない!

「ギャーギャー喚くなクソ虫が…」

体の中には残りカスの様な体力しか残されていなかった。それでも次から次へと闘気があふれ出てきた。まるで俺の怒りがそのまま力になるかの様に。
その闘気をだらりとぶら下げた左掌と引き摺る様に握る刀身に纏わせる。幾重にも、幾重にも重ねて。

「いちいち癪に障るな! 君は! そんなに死にたいなら望みどおり殺してやる! 『リーフスラッシュ』!」

この期に及んで目晦ましからの不意打ちか。見下げ果てたまでのクソ虫だ。
瞬く間に奪われていく視界。渦巻く木の葉が擦れ合う耳障りな音が聴覚をも侵す。
だが、
(この駄々漏れの殺気がてめぇの位置を教えてんだよ! この阿呆がっ!)

左腕を前に突き出して振り返る。振るわれた一撃を幾重にも重ねた闘気がまるで障壁の様に受け止めた。
掌の前で静止する刀身を掴み取りアシュトンの体ごと目の前に引きずり込む。引き込んだ体に膝蹴りを一発。

(逃がすかよっ!)

後退りするこいつの襟首を捻り上げ左腕一本でアシュトンを持ち上げる。
このまま喉元に剣をぶっ刺して終わらすつもりだった。ところが足掻く様に暴れるこいつの足が俺の脇腹の傷口を蹴りやがった。

「がぁっ!」

想像を絶する激痛。思わず漏らしてしまう苦痛の声と共に左手を離してしまう。
自由を取り戻したアシュトンが反撃に転じる。咄嗟にバックステップで間合いを開ける。
ところが、かわしたと思っていた攻撃が、虚空を切る横薙ぎの剣閃が真空の渦を作り出し、俺の体をズタズタに引き裂いた。
刻まれた新たな傷口からは鮮血が飛び散りなけなしの体力を奪っていく。ガクリと膝が折れ、その場に崩れ落ちそうになるがそれでも尚、俺の体は踏み止まった。
ふらつく俺にアシュトンの追撃が迫る。繰り出される片手平突き。狙いは俺の右肩。回避する事はままならない。
どの道もう立ってられそうにもなかった。だから俺は真っ向から最後の勝負を挑んだ。

突き出された刃を振り上げた剣撃で払い上げる。
「『双』」
脚部に溜め込んでいた力を爆発させ跳躍。振り上げた剣を両手で握り直し上段に構える。
「『破斬』!!」
全体重を乗せた振り下ろし。着地の事など考えずにただ相手を斬り裂く事だけを考えた一太刀。袈裟懸けに斬り付けた傷口から血飛沫が上がる。

(くそっ! まだ浅えっ)

この一撃で両断してやるつもりだった。だが、引き付けが甘かったのか、はたまたこいつの生への執着心が土壇場で超反応を見せたのか、致命傷を与える事が出来なかった。
肩から地面に激突する様に墜落した俺は衝撃で『セイクリッドティア』を離してしまう。3メートル先に転がるそれを拾おうと足掻く。だが、その3メートルが果てしなく遠い。
対するアシュトン。地に突き刺した大剣を支えに立ち上がる。剣を地面から抜くとヨロヨロとこちらに迫ってくる。

「僕はっ!」

頼りない足取り。今にも崩れ落ちそうな体を引き摺りながら、

「僕はっ!!」

それでも尚、瞳に力を宿し、

「プリシスの為にも、こんな所で死ぬわけにはいかないんだっ!!」

吼えた。己が戦う理由を。あまりにも一途故に誤った道に進んでる事にも気付かず、
唯々貫き続ける愛しき少女への恋慕の感情を力に換え、天を衝く勢いで手にする獲物を振り上げた。

(…ふざけんなっ! この期に及んで誰かの為だぁ?)

アルベルは思う。力を振るうという事は突き詰めれば自分の為だけに行われる行為であると。
誰かを護りたいと思う自分がいるから、そんな自分の為に武器を掴む。自分が許せないと思う相手がいるから武器を振るう。

(今のこの戦いだってそうだ。レオンはこんな戦いを望んじゃいない。
 それでも俺はレオンを殺したこいつが憎い! だから俺は戦う!)

立ち上がろうと力を込めるだけで体の至る所から血液が噴き出す。それでも構わず目の前の相手を倒す為に立ち上がった。
『セイクリッドティア』の回収を諦め正真正銘最後の力を振り絞り、残された生命力すら燃やし尽くして己の右手に力を込める。

(例えどんな御託を並べようが、美辞麗句で飾ろうが、力はただ力でしかねぇ。
 敗者から全てを己の手で奪い取る。その覚悟も無しに力を振るう事などあってはならねぇ!
 こいつはそんな戦士の不問律からも目を背け誰かの為にと逃げやがった。そんな弱者に)
「屈する訳には、いかねぇんだよぉぉぉぉっ!!」

全身全霊を込めた右の拳を突き出し、掌に込めた闘気を開放する。

「『吼龍破』!!」

解き放たれた闘気が龍のアギトを成しアシュトンに迫る。その一撃をアシュトンは振り下ろした刀身で受け止めた。
互いに小手先の技を放つ余力などない。次の一撃を繰り出す事すら出来ない。故にこの単純な力と力のぶつけ合いを制した方が勝者となる。

「「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉっ!」」

アシュトンの握る『アヴクール』の刀身に僅かな罅が入る。
対してアルベルの放つ『吼龍破』には刃が食い込み、その勢いが徐々に失われつつあった。
互いに一歩も引かず逆に踏み込み続ける。
その都度刀身に走った罅は大きくなり、龍の鱗に食い込んだ刃が亀裂を作る。

「僕が愛するただ一人の為にぃっ!」
「誰の為でもねぇ、俺自身の為にっ!」

互いが持つ戦う理由を叫び、その想いを最後の一押しに込める。

「僕はお前をっ!!」
「俺はてめえをっ!!」
「「ぶっ殺すっ!!」」

異口同音に放たれた明確な殺意と共に龍の胴体が断ち割られる。それと同時にアルベルの体も血飛沫を上げて両断された。
霧散していく紅蓮の闘気が立ち昇る中、アルベルだったものが噴き出す血飛沫をその身に浴び、勝ち誇った笑みを浮かべながらアシュトンもその場に崩れ落ちた。



【D-05/黎明】

【アシュトン・アンカース】[MP残量:30%(最大130%)]
[状態:疲労大。激しい怒り、焦り。体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲。袈裟懸けの深い裂傷、気絶中、ギョロ、ウルルン消滅]
[装備:アヴクール@RS(刀身に亀裂)、ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3]
[道具:無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪探知機@BR、首輪×4、荷物一式×2]
[行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる]
[思考1:クロードには自分がマーダーだとは絶対に知られたくない]
[思考2:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ]
[思考3:プリシスのためになると思う事を最優先で行う]
[思考4:ボーマンを利用して首輪を集める]
[思考5:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい]
[備考1:アルベルとレオンの荷物はまだ回収していません]
[備考2:アルベルの首輪はまだ回収していません]
[備考3:袈裟懸けの深い裂傷は放って置くと失血死するほどの重症です]

【クロード・C・ケニー】[MP残量:68%]
[状態:右肩に裂傷(応急処置済み、大分楽になった)、背中に浅い裂傷(応急処置済み)、左脇腹に裂傷(多少回復)、全身に軽い痛み]
[装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP]
[道具:昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:空から降ってきた青髪の青年に対処]
[思考2:場を鎮めたらアシュトンの下に駆けつける]
[思考3:アシュトンと共に行動]
[思考4:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考5:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい]
[思考6:ブレア、ロキとも鎌石村で合流]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:チェスターの事は、『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しています]

【チェスター・バークライト】[MP残量:30%]
[状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)、気絶中]
[装備:光弓シルヴァン・ボウ(矢×4本)@VP、パラライチェック@SO2]
[道具:レーザーウェポン@SO3、アーチェのホウキ@TOP、チサトのメモ、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考1:クロード!殺してやる!]
[思考2:アシュトンを倒す]
[思考3:平瀬村へ向かい、マリア、クレスと合流。その後鎌石村へ]
[思考4:レザードを警戒]
[備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[備考2:クレスに対して感じていた蟠(わだかま)りは無くなりました]

【ソフィア・エスティード】[MP残量:0%]
[状態:疲労大、ドラゴンオーブを護れなかった事に対するショック、気絶中]
[装備:クラップロッド、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3、ミュリンの指輪のネックレス@VP2]
[道具:魔剣グラム@VP、レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:アシュトン、クロードを倒す]
[思考2:平瀬村へマリアを探しに行く]
[思考3:マリアと合流後、鎌石村に向かいブラムス、レザードと合流。ただしレザードは警戒。ドラゴンオーブは返してほしい]
[思考4:自分の知り合いを探す]
[思考5:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています]

【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:95%]
[状態:左足火傷(戦闘にやや支障有り。ゆっくり歩く分には問題無し)]
[装備:鉄パイプ-R1@SO3]
[道具:ストライクアクスの欠片、ソフィアのメモ、首輪×1、荷物一式]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:目の前の金髪赤バンダナの青年を倒す]
[思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[思考4:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流]
[備考1:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
[備考2:乗り捨てたデッキブラシ@TOPは南西の方に飛んでいきました]

【現在位置:D-05南部】

【ブラムス】[MP残量:90%]
[状態:キュアブラムスに華麗に変身。本人はこの上なく真剣にコスプレを敢行中]
[装備:波平のヅラ@現実世界(何故か損傷一つ無い)、トライエンプレム@SOシリーズ、魔法少女コスチューム@沖木島(右肩付近の布が弾け飛んだ)]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2、和式の棺桶、袈裟(あちこちが焼け焦げている)、仏像の仮面@沖木島、荷物一式×2]
[行動方針:自らの居城に帰る(成功率が高ければ手段は問わない)]
[思考1:フェイトを投げた方角へ急行し合流する]
[思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考4:フレイ、レナスを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[思考5:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流]
[備考1:合流には最低でも10分以上かかる距離にいます]

【現在位置:D-05東部】

【レオン・D・S・ゲーステ死亡】
【アルベル・ノックス死亡】
【残り18人+α】





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第126話(前編) アルベル 第128話
第126話(前編) レオン 第128話
第126話(前編) アシュトン 第128話
第126話(前編) クロード 第128話
第126話(前編) チェスター 第128話
第126話(前編) ソフィア 第128話
第126話(前編) フェイト 第128話
第126話(前編) ブラムス 第128話


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