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第133話 ギャンブルはいつもハデのちぐう畜


「くそっ! くそっ!」

激しく息を吐くのと同時に、やり場のない毒をも吐き出す。
彼、クロード・C・ケニーは、必死の形相で駆けていた。
理由は首から鳴り続けている警告音。
所謂、禁止エリアの警告音だ。

(間に合え、間に合ってくれ――!)

過ちの始まりは、平瀬村を目指して移動したことにあった。
彼のいたE-05から平瀬村まで直進すると、E-04の禁止エリアに侵入してしまう。

クロードは、基本的には南へと進んでいた。
しかし、アシュトンを背負ったまま山を登るのが負担になってきたため、やや西へも徐々に進行していたのだ。
それに“ある事情”が加わった結果、禁止エリアに足を踏み入れてしまうことになった。

(冗談じゃない、こんなところでッ!)

まだ、自分は何もしていない。
死んでしまった皆の分まで為さねばならないことが山のように残っているのに。

走る。走る。ひたすら走る。
背中の重荷は決して捨てず、肺から聴こえる悲鳴に耳を塞いでひたすら足を前へと運ぶ。

でないと、ジャックのようになってしまう。
首を吹き飛ばされていたジャック。
彼の分まで戦わねばいけないのだ。
アシュトンと共に首から上をぽぽぽぽーんするわけにはいかない。

「や、止んだ――――!」

禁止エリアを抜けたのだろう。
やかましかった首輪の音は停止した。
思考できるということは、首が飛んだから音が消えたというわけではなさそうだ。

しかし足は止まらない。
斜面を駆け下りた勢いというのもあるし、少しでも禁止エリアから離れたいというのもあった。

「あっ!!」

急に、茶色いものが視界に映った。
それはまさしく後頭部。
茂みでしゃがみ込んでいたのか、今まで気が付けなかった。

注意一秒怪我一生。お馬鹿は急に止まれない。
気が付いた時には、茶髪の青年に膝を入れてしまっていた。






 ☆  ★  ☆  ★  ☆






「ブレアは――――」

右を見る。ひたすら木々が続いている。
左を見る。道路が見える。
前を見る。平瀬村すら見当たらない。
後ろを見る。どうやらここは森の中のようだった。

平瀬村全体を戦場としたとみなされたのか、どうやら平瀬村自体から脱出してしまったらしい。
そして運の悪いことに、360°見渡しても人っ子ひとり見当たらなかった。

「ダメだ……いないッ……いないよ洵ッ……」

茂みの陰に隠れていないか、念のため動きまわって探してみる。
それでもやはり、ブレアの姿は見えなかった。

『……ということは、あの場に取り残されたか……』
「不味いぞ……今頃殺されているんじゃあ」

何せこちらは相手の主力を殺したのだ。
報復としてブレアは今頃惨殺されているかもしれない。

『かもしれん。だが、生かされている可能性も大きい。
 人質としての価値もあるし、情報の収入源にもなるからな』
「そんな冷静な思考を、相手がしてくれるか正直怪しいけどな」

どかりと腰を下ろして溜め息をつく。
やってしまった。
ブレアとはぐれてしまったのは紛れもなく自分の失態。言い訳のしようもなかった。

『それより、これからどうするかだ。
 ブレアのこともそうだが、俺達の合流を「あっ!!」

洵の通信を遮って、どこからともなく声が聞こえる。
自分を責めるのに夢中で、接近されているのに気が付かなかった。
いくら疲労が溜まっているからとは言え、こうも失態続きだと泣けてくる。

慌ててアービトレイター片手に振り返る。
視界一面に膝が移り、まもなく視界は木々の間から見える晴天へと変わった。

(け、蹴り……!?)

これが刃物だったら既に終わっていた。
にも関わらずそうしなかったということは、ここにきてまともな武器を持っていない奴ということだろうか。
そんな奴が今まで生き残っていたなんて、にわかには信じられないが……

「だ、大丈夫ですか!?」

そして次に聞こえた言葉は、もっと信じられないものだった。

「……?」
「すみません。急いでたから気が付かなくて……」

事故。
彼の言葉はつまり、そういうことを意味している。

「いや、別にいいけど……」
「すみませんほんと。あ、この先禁止エリアだから気をつけた方がいいですよ。
 まぁ、禁止エリアに入り込んでもしばらくは猶予がありますけど」

持ち上げかけたアービトレイターを一端下ろす。
こいつからは、まだ情報を聞き出せそうだ。
……どんどん思考が黒く染まっていることを実感するが、それが悪いこととは思わないようにする。
優勝のためには、仕方のないことなんだ。

「あれ? そういえば、君は……」

昔とは、違う。
そう考え少し昔を振り返ってしまった。
そして、気が付いた。
この青年を知っていることに。

「ッ……まさか、誰か僕の友人に会ってるんですか!?」

青年の表情が一変する。
どうやら、彼は仲間に会いたがっているようだ。

「いや、残念だけど……直接キミと会ってたなって思っただけだよ」
「え?」
「覚えてないと思うけどさ。この殺し合いが始まった直後、襲われているところを助けたんだよ」

そして眠るキミを見捨ててプラチナを探しに出たんだよ、とはさすがに言わないでおいた。

「……ああ! じゃあ僕があの時見逃されたのは、貴方が助けてくれたおかげなんですね!」

どうやら、一命を取り留めたことは覚えているらしい。
ということは、不意を突かれて一撃でやられたわけでなく、戦闘の末敗れたということになる。
……仲間に引きこんでも役に立つのか甚だ怪しい。
会話の背中から下ろし横たえさせていた黒髪の青年も、戦えるのか疑わしかった。

足手まといにしかならないなら、情報を引き出した後は用は無い。
そう考えた直後だった。
彼が懐から謎のカードを取り出したのは。

「これはお礼です。今の僕にとって、命の恩人である貴方は立派な仲間です」

支給品までくれるのか。
今の自分は優勝狙いだというのに、どこまでもお人好しだ。
もっとも、くれなかったところで、殺害した後奪うつもりだったのだが。

「フェアリーズカード!!」

しかし何かをくれるという予想に反し、金髪に赤いバンダナの青年はカードを使用してきた。
奇襲かと思い、腕で顔面と胸元を覆う。
急所を守る姿勢であって、いかがわしいお店の看板のようなポーズではないぞ。念のため。

「……!?」

しかし攻撃は降り注がない。
それどころか、視界に入った二の腕から、傷が消えていくのが分かった。

「傷、治りましたか?」
「これは一体……」
「フェアリーズカードと言って、仲間全員の傷を直してくれるアイテムです」

見ると、寝かせられた青年の顔色もよくなってきていた。
どうやら、本当に善意から回復アイテムを使用してくれたらしい。
おかげで体も軽くなった。

「よくこんなの持ってたな……」
「ああ、拾ったんです」
「拾った……?」

聞くと、どうやらこの青年は回復効果のあるカードを拾ったらしい。
移動中に視界の端にカードが風に舞うのが見え、それを追いかけたのだとか。
その結果、禁止エリアに踏み込んでしまったようだ。

「よかった……アシュトン――ああ、僕の仲間の彼のことですけど、彼も何とかなったみたいです」

それは、俺にとっては朗報でもなんでもなかった。
折角回復したというのに、二人を相手にしてしまうのは少々きつい。
アシュトンとやらがいつ目覚めるか分からぬ以上、攻撃は仕掛けられなかった。

「それはよかった。ところで――」

だから、攻め方を変える。
心を抉るような手段に。

「キミが眠っているときに、君の友人と思われる人に会ったから、居場所を教えたんだけど――」

それは、遠い記憶。
何とか名前を思い出そうと記憶を掘り起こしてみるが、うまくいかない。

「シエスタ……とか、そんな感じの名前の、青い髪の青年だけど、知ってるよね?」

金髪の青年の顔が暗くなる。
それもそうだろう。
だって彼は、“ここに居ない”のだから。
それは、良くて自分とブレアのような別行動、悪くて死別ということだ。

「無事に、会うことはできたのかい?」

あの時の青い髪の青年の反応は、相当仲の深い相手と再会したがるそれだった。
あの後望んで別れたとは思えない。
つまり、どう転んでも望まぬ別離を行った後。
そこを抉り、まずは心を折りに行く。

「……それが……誤解、されてしまって……」

しかし、返ってきたのは意外な返答。
聞くと、彼は青髪の青年(余談だが、チェスターという名前だった。惜しい)に人殺しと勘違いされたらしい。
その結果、多くの面倒な事態に遭遇したのだとか。

最初、チェスターが金髪の青年(こちらはクロードというらしい。ようやく自己紹介をした)と旧知の仲だと思っていた。
しかし、話を聞くとどうもそうではないらしい。
それからようやく、先程まで戦っていた相手も金髪だったことを思い出す。

(あっちの方が、チェスターの親友だったのか)

まぁ何にせよ、チェスター達の誤解を解きたいとのことだった。
もっとも、俺に取って重要なのは、次に聞いた発言だけど。

「ブレア……? クロードはブレアの知り合いなのか?」
「そういうルシオこそ、ブレアを?」

ブレア。
紛れもなく、クロードはその名を告げた。
どうやら、クロードがこの島で味方に出来た唯一の存在がブレアらしい。

「ああ。一緒に行動していたから……」
「それで!? ブレアさんは今どこに!?」
「それが……殺人者に襲われて……
 逃走アイテムを使ったけど、俺しか逃げて来られなかったんだ……」

殺人者はこちらの方だが、そのことは伝えない。
そして、洵の存在も伝えない。

繋ぎっぱなしのコミュニケーター。
にも関わらず洵は会話に入ってこない。
驚かせないためかもしれないが、後々仲間の存在を隠しておくことが有利に繋がると考えたからかもしれない。
ならば、黙っておくのが得策。
勿論、洵がいつでも会話に入って来られぬよう、仲間がいても矛盾しないような言葉を選んで喋っている。

「それじゃあ、助けに行かないと!」

クロードが立ち上がる。
思わず笑みがこぼれそうだった。

引き出したぞ、その言語。

「敵はかなり強いけど……手伝ってくれるのかい?」
「勿論! 今度こそ、止めるんだ、こんな馬鹿げた殺し合いを!」

馬鹿は君だよ、クロード。
手のひらの上で踊るんだから。

――これは、賭けだ。危険なギャンブル。
ヘタを打てば一気に敵が増えてしまう、とてつもなくリスキーな賭け。

しかし、上手くいけば一網打尽にすることが出来る。
団結されきる前に殺すことが出来るというのは大きい。
団結したチームの怖さは先程痛感している。
極力“個”のまま撃破するのが一番だろう。

「じゃあ、決まりだ。放送を聞いて、ブレアがまだ生きてるようなら助けに行こう」

ギャンブルは嫌いだ。
リスキーだし、地道にコツコツが一番。
スリだって、大物よりも小物を狙ってコツコツ派だった。

そんな俺でも、ギャンブルをする時の必勝法は知っている。
そう、お察しの通りイカサマだ。
確実とはいかなくても、勝率を高める細工をするだけで運気は向いてくるものなのだ。

じゃあ、イカサマのテクニックは何だって?
それはズバリ、二段構えの構造さ。
本命の罠の他に、もう一段罠を張る。
ハデで、見破られねばハイリターンが望めるけど、見破られやすくリスキーな罠を。
すると、もしもハデな罠が見破られても、相手はそれ以上罠があるとは思わないため、二段目の罠で殺せるというわけだ。

今回の場合、最初の罠は『同士討ちのための嘘』だ。
相手を殺人者だと思わせ、また相手には俺の仲間の殺人者だと思わせ、同士討ちを狙うというもの。
これが上手く行けば儲け物だ。
ハデで稼げるお得な罠。

ただし、これは破られかねない。
話しあえば、誤解は解けてしまうのだから。
だから、本命の罠を張る。
それはズバリ、『横槍を入れて厄介な敵をまず殺す』というもの。

最初に起こる戦闘で、まずは殺害優先順位を決める。
そして、話し合いで互いが殺人者じゃないと分かった戸惑いを突いて、一番厄介な獲物を仕留める。
その後は動揺を突いて二人目を殺すもよし、撤退を選ぶも良しだ。
二段目の罠は、気付かれないこと最優先だ。

鬼畜と呼びたきゃ呼ぶがいい。
ギャンブルに出るのなら、人は誰しも外道にならなくてはならない。
賭けというのは、勝者もいれば敗者もいるもの。
ベットするものが金か命かの違いだけだ。

(俺は負けない。負けられない)

こちらのベットは自分の命と大切な人の命。
意地でも負けるわけにはいかない。
例えどんなにこの身を鬼畜に落とそうとも。



【F-04/早朝】

【クロード・C・ケニー】[MP残量:55%]
[状態:右肩に裂傷、背中に浅い裂傷と打撲(いずれも回復)。左脇腹に裂傷と打撲(多少回復)。全身に軽い痛み]
[装備:エターナルスフィア、スターガード@SO2、エネミー・サーチ@VP、首輪探知機@BR]
[道具:セイクリッドティア@SO2、昂魔の鏡@VP、荷物一式×2(水残り僅か)、アヴクール@RS(刀身に亀裂)、アシュトン、アルベル、レオンのデイパック]
[行動方針:仲間を探し集めルシファーを倒す]
[思考1:ルシオと共に平瀬村でマーダーを倒す]
[思考2:そのあとで北上し、ブレアに誤解を解いてもらう]
[思考3:プリシスを探し、誤解を解いてアシュトンは味方だと分かってもらう。他にもアシュトンを誤解している人間がいたら説得する]
[思考4:レザードを倒す、その為の仲間も集めたい]
[備考1:昂魔の鏡の効果は、説明書の文字が読めないため知りません]
[備考2:チェスターの事は『ゲームには乗ってないけど危険な人物』として認識しています]
[備考3:アシュトンの衣服のポケットから首輪探知機を回収しています。
     また、アシュトン、アルベル、レオンのデイパックと落ちていた剣を回収しています。
     アシュトンの荷物=無稼働銃、物質透化ユニット@SO3、首輪×4、荷物一式×2
     アルベルの荷物=木材×2、咎人の剣“神を斬獲せし者”@VP、ゲームボーイ+ス○ースイ○ベーダー@現実世界、
             ????(3)、????(5)、鉄パイプ@SO3、荷物一式×7(一つのバックに纏めてます)
     レオンの荷物=どーじん、小型ドライバーセット、ボールペン、裏に考察の書かれた地図、????(1)、????(2)、荷物一式
     回収した荷物はデイパックと落ちていた剣のみで、装備していた服などはそのままの状態です]
[備考4:どのデイパックが誰の物なのかの判断が付くか付かないかは次の書き手さんに一任します]


【アシュトン・アンカース】[MP残量:50%(最大130%)]
[状態:気絶中。ギョロ、ウルルン消滅。袈裟懸けの深い裂傷(ほぼ回復)。体のところどころに傷・左腕に軽い火傷・右腕打撲。激しい怒り、焦り(睡眠により減少したかは不明)。疲労大]
[装備:ルナタブレット@SO2、マジックミスト@SO3]
[道具:なし]
[行動方針:プリシスの1番になってからプリシスを優勝させる]
[思考1:クロードには自分がマーダーだとは絶対に知られたくない]
[思考2:チェスターとソフィアを殺してギョロとウルルンの仇を討つ]
[思考3:プリシスのためになると思う事を最優先で行う]
[思考4:ボーマンを利用して首輪を集める]
[思考5:プリシスが悲しまないようにクロードが殺人鬼という誤解は解いておきたい]
[備考1:袈裟懸けの深い裂傷は応急手当はしましたが、それだけでアシュトンが動けるようになるかどうかは後の書き手さんに一任します]

【ルシオ】[MP残量:5%]
[状態:身体の何箇所かに軽い打撲。身体中に裂傷、打ち身、火傷。衣服が所々焼け焦げている(ほぼ回復)。精神的疲労大]
[装備:アービトレイター@RS]
[道具:マジカルカメラ(マジカルフィルム×?)@SO2、
    コミュニケーター、10フォル@SOシリーズ、ファルシオン@VP2、空き瓶@RS、グーングニル3@TOP
    拡声器、スタンガン、ボーリング玉@現実世界、首輪、荷物一式×4]
[行動方針:レナスを……蘇らせる]
[思考1:放送でブレアの安否を確認後、クロード達と共に平瀬村へ]
[思考2:洵と協力し、殺し合いを有利に進める]
[思考3:ブレアから情報を得る]
[思考4:ゲームボーイを探す]
[備考1:デイパックの中にはピンボケ写真か、サイキックガン:エネルギー残量〔10〕[70/100]が入っています]
[現在位置:???]
※韋駄天を使用しました。効力は17話参照。ルシオが何処まで移動したかは後の書き手さんに一任します。


※フェアリーズカードはエルウェンのランダム支給品でした。
※フェアリーズカードはボロ雑巾と化したエルウェンの懐に入っていたものが、風に飛ばされたものです。
※エルウェンは範囲効果がダオスに及ぶことを考慮してこの支給品を使っていませんでした。


【現在位置:F-04北東部】

【残り16人+α】




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第131話 第136話


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