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第134話 不慣れなプリキュア MUSCLE HARD(後編)


言った言ったチェスターが言った!!
ついに、あの言葉を言ってしまったッ!!

「その格好、何?」

変態扱いしたソフィアですら、直接的には言えなかったこの言葉。
ヅラムスと何度も言いそうになったクラースですら、口にしなかったこの言葉。

「……何か、おかしいか?」

ヅラムス、もといブラムスが、「なにいってんだこいつ」と言わんばかりに答える。
そして、チェスターから返された言葉は、それこそ今まで誰一人として言えなかった言葉であった。

「おかしいに決まってんだろ鏡見てみろよ!
 そんなおかしな格好している意味でも何かあんのかよッ!?」

そしてそれは、彼――フェイト・ラインゴットを戦慄させるには十分すぎる単語だった。

訪れる、沈黙。
ついに聞かれた、格好の意味。
出てくる言葉が気になりすぎて、息をすることすら忘れる。

「この格好か?」

フェイトも、そして声をかけたチェスターすらも、瞬き一つしないでいる。
ただ真剣にブラムスを見つめ、次の言葉を待っていた。

「この格好は――――きちんと、意味がある」

ごくりと喉を鳴らしたのは、チェスターなのかフェイトなのか。
頬を伝う汗も拭わず、二人はブラムスの言に聞き入る。

「まずこの兜だが、支給されたものだ」
「ああ、それ私物じゃなかったんですね……」
「つーか、何でそんなもんが……」

思ったよりも普通の回答に、フェイトもチェスターも思わず呟いてしまう。
肩から力が少し抜けた。
てっきり、何か深い理由かカッ飛び過ぎていて理解不能な理由が飛び出すものかと思っていたのだけど。

「侮るな。これは、ミカエルの攻撃を受けても傷ひとつ付かなかった頑丈極まりない防具だ」
「た、確かに……」
「ミカエルって誰だ……?」
「そういうものすごく強い奴が居たんだよ……広範囲攻撃もしてきたけど……」

そう言って、フェイトはちらりとヅラへと目配せをする。
――もしもこの時、ミカエルの形容に『炎』という単語を交えていれば、何かが変わったのかも知れない。
しかし現実に、フェイトもブラムスも『炎』を連想させる単語をクチにしなかった。

「そしてこの服だが、フェイトは知っているが……これは、そのデッキブラシに乗るためのものだ」
「ちょっと何言ってるのか分かんないんだけど」
「まあ、そうだよね……」

フェイトが引き攣った笑みを浮かべる。
まさか、デッキブラシで空を飛ぶために魔法少女になりましたミャハ☆なんてことを予想できるはずがない。
出来たらそいつは超能力者だ。
間違っても洞察力でどうこうできる問題ではない。

「このデッキブラシに乗るには、このような格好が必要になるのだそうだ」
「いや、ちょっと待て。その理屈はおかしい」
「――――――――っ!?」
「アーチェは別にそんな格好してなかったぞ……」

アーチェ。
その単語に、チェスターの胸がチクリと痛む。
夢の中で散々あったばかりだが、彼女とはもう、夢の中でしか会えないのだ。

「き、君はこのデッキブラシの持ち主と知り合いなのかい!?」
「ん、ああ……つっても、そんなに長いこと一緒に居た仲じゃないけどな」

そう言って、チェスターは寂しそうな笑みを浮かべる。
けれど、それにフェイトは気が付かない。
フェイトにしてみれば、エルネストの嘘がバレそうでそれどころではないのだ。

ブラムスがキレてみろ、間違いなく命ねーぞ。
そういう気持ちでいっぱいである。

「ならば知らぬのも無理は無い……そやつもフェイトと同じく、天才型魔法少女だったのだ」
「天才? あいつが?」
「ああ。稀に、このような格好をせずとも飛行可能な魔法少女がいると聞く」
「そう、なのか……?」

夢の影響で無自覚ながら、チェスターは「アーチェ達について、まだ知らないことがたくさんあった」と思っている。
だからこそ、その言葉を渋々ながら信じてしまう。
もしかしたら自分が知らないだけで、そうだったのかもしれないからと。



「だとしても、男が魔法少女ってのはおかしいんじゃ」



空気が、凍る。
大口を開けて固まるフェイトの顔に陰がさす。
そして『ガビーン』という効果音。
完全にギャグ顔である。
だが、本人は大真面目に衝撃を受けていた。

(い、言っちゃったぁぁぁぁぁぁ!
 一番言っちゃいけないことを言っちゃったーーーーーーーッ!!)

誰もが思ってスルーしていた疑問。
そして、もっと早くに――具体的にはこの衣装に着替える前に言っておき、魔法少女化を防いでおくべきだった言葉。
それを、今になってチェスターは言ったのだ。

「それはほらあれだよ考えが浅いよ浅すぎるよ『絶対誰にも言わないからあ』とか猫なで声で言ってきたクラスメートの女の子に好きな子の名前バラしちゃうくらい考えが浅いよ!」
「……どうしたフェイト、そんなに動揺して」
「ブラムスさん! 僕はただ純粋に彼が浅慮なままでは可哀想と思った次第でですね!」

勿論、嘘である。
男が魔法少女になることはないなんて言って、「ならこの格好をした意味はないのでは?」と真実に辿り着き、
最終的に怒りの矛先が止めなかった自分やけしかけたエルネストに向かわれては困るのだ。

「実際、帰国子女だって女って書くのに男だっているじゃないか!
 他にも“マン”がついても女の子が対象なのもいっぱいあるぞ!
 マンパワーとか、マンドレイクとか、ゴーマンとか、タイマンとか……」
「な、なんか後半違くない?」
「とにかく! 魔法少女には男だってあるんだよ……っ!」

※あったとしても、男の娘です。ハッスルマッスルヴァンパイアを魔法“少女”と呼んだ作品なんてない。

「それは分かったけどよぉ……」

チェスターは、言い淀む。
これを言ってもいいものかと。
だがしかし、結局彼は、目の毒を撤去したいという欲望に屈してしまった。
そして、尋ねる。
この物語でタブーとなりつつあることを。



「フェイトが天才型魔法少女だったってんなら、別にもうその格好で居る必要ないんじゃないのか?」



(た……)

その時フェイトに電流走る。

(確かにィィィーーーーーーーーーーーッ)

フェイトは思う。
何故そこに気が付かなかったのか。
気が付いていれば、箒に跨った後着替えさせることも出来たのに。

フェイトは思う。
しかし何故、このタイミングで言ってしまうのか。
無駄に珍妙な格好させられたとか言って激怒したりしないだろうな、ブラムス。



「脱がないのか、それ」



そして、追撃。
これにはフェイトも何も言えない。
ただただ、ヅラムスのリアクションを待つのみである。

(言っちゃったーーーーーーーーーッ!!
 僕達の中の誰一人として言いたくても言えなかった言葉をついに言っちゃったーーーーーーーーーッ!!!)

弛緩していた空気が、再びピンと張り詰める。
果たして、このカツラを被った変態要素の塊はどう出てくるのだろうか?

「脱ぐ気は、無い」

出てきた言葉は、はっきりとした否定の言葉だった。
ごくりと唾を飲み込んで、恐る恐るフェイトが聞く。

「な、何故……?」
「何もメリットがないなら、普段着に戻った方がいいんじゃ……」

せめて元の格好に戻ってほしい。
それは、フェイトも願っていることだ。
しかし――

「やはり、我のような不死者王は、人間から恐怖の対象のようだからな」
「ああ、うん、まあ、確かにそうかもしれないけども」

どう考えても、一番の恐怖の原因はそこではない。
とは言え、さすがのチェスターでもストレートに「その格好の方が怖ェよ」とは言えなかった。

「確かに飛行という観点から見れば意味のない服装ではあるが、我はこれを気に入っている」
「……マジ……?」

何か特別な理由で着ている服なら、その理由がなくなったんだから脱げよと言えたが――
もしこの衣装が個人的趣味を多分に含んでいる場合、さすがに突っ込んだことは言えないのだ。
趣味は人それぞれなのだから。
……クラースの格好にだって、あんま深くは突っ込まなかったし。

「この衣装は、どうやら人間達の恐怖を軽減するようだからな」
「それは無い。絶対に無い」
(何をどうやったらそんなアクロバティック極まりない結論まで辿りつけるんだろう……)

ツッコミたかった。
それでも、大真面目な変態の表情に、フェイト言葉を飲み込んでしまった。
ここでツッコミを入れておけばよかった、と後々悔いることになるかもしれないけど。
とにかく、完全にツッコミはチェスターに丸投げしてしまった。

「現にソフィアは私を見て恐怖のあまり暴れた程だが、汝は平気だっただろう?
 おそらくは、人間の文化の象徴である衣装を身にまとうことで、人間に理解のあるヴァンパイアだと思われやすいということだろう」
(その理屈はおかしい)
「いや、っていうか……」

そして、丸投げされているチェスターは、まだ引かなかった。
普通なら、ここでもう折れてしまっていただろう。
もうこいつに常識なんて通じねえ、と。

だがしかし――チェスターは、引かなかった。
夢の影響を受け、チェスターはブラムスすら理解しようとしてしまっているのだ。
だから、口にする。
他の者なら躊躇うような発言を。

「自分で言うのも何だけどよぉ、俺も相当驚いてたと思うんだけど……」
(うわっ畳み掛けるんだ!? 頑張れ、頑張って着替えさせてくれっ)
「確かに、相当混乱はしていたな」

そして、はち切れんばかりのダイナマイトバディの魔法少女(?)も、チェスターがソフィアと変わらず動転したことを認めた。
しかし――

「だがソフィアのそれとは決定的に違っていた」
「そうなのか?」
「ソフィアは恐怖し、暴れることで我から逃れようとした。だが――」
「……まあ、確かに、俺は暴れはしなかったけど……」

そもそも、暴れて逃げられるようなキャラデザしてなかったし。
さすがにそれは言わないけども。

「汝は理解不能故、呆然とした――違うか?」
(なっ……!)
「あ、ああ……」
(理解不能という自覚があっただってェェェーーーーーーーーーーーー!?)

ファイトはまたも心の中で絶叫する。
眼の前の嬉しくない巨乳ヴァンパイアは絶対己の格好に疑問一つ持っていないと思っていたのに。

「ただの不死者王に遭遇したら、人間は皆恐怖に駆られてしまうだろう。
 だがしかし――人間の敵と思われた人外の生命体が人間文化の象徴の格好をしていたらどうだ。
 そのミスマッチに驚き、茫然とする……少なくとも、即座に暴れることはないだろう」
「「え、そういう問題?」」

思わずハモってしまう。
どう考えても呆然の原因はそこではない。
ミスマッチという単語においては大正解ではあるけども。

「相手に隙を作るというやり方は本来歓迎はされない……
 だが、友好的であるという良い意味でのギャップを持ってして創りだした隙ならば、今後の人間関係構築に悪影響は及ぼさないだろう」
(何言ってんだこいつ……どうしようアーチェ、俺ちょっと他人を理解しようって意志が挫けそう)
(その格好のどの辺がいいギャップなんだろう……)

確かに、悪い奴だとは思いにくいが、頭が悪い奴に見えると言うか、少なくともお近付きになりたくない格好である。
しかし、チェスターは「脱げと単刀直入に言うのはどうなんだろう」と思ってしまった。
理解するためにも、そういう反応はよくないのではないだろうか、と。

「本来ならマスクで顔も隠しておきたいところだが、既に人間の仲間がいる以上、あまり必要はないだろう。
 むしろ、脱いだ時に騙されたと思われる方が困るからな……
 事前に人間に『友好的な不死者王が仲間にいる』と説明してもらって、現状の格好で出ていくのが一番だろう」
「……よく分かんないけど、アンタはアンタなりに考えているんだな……」
「当然だ」
(あ、折れちゃったか……心が)

フェイトは、チェスターが折れたことに僅かに気落ちした。
どうやらチェスターは、考えることを放棄して、目の前の不審者王をそういうものとして受け入れてしまったようだ。
フェイトとしてはこの目にポイズンな格好をどうにかしてほしかったが、言いたいことも言えないこんなシチュエーションじゃ仕方が無いだろう。

「納得したなら、移動を始めようではないか。
 血の臭いからするとあちらだ――戦闘はとうに終わっているようだがな」

そう言って、鼻をクンカクンカと動かす一本毛カツラのド変態。
血の臭いはここに到着してから増える様子がなく、戦闘は終わっていると予想された。

「ええ、行きましょう。アルベル達と会えたら、脱出への道もグンと近くなりますし」

チェスターの話によると、一気に仲間が増えるのだ。
こんなに嬉しいことはない。
フェイトはデッキブラシに跨って、宙へとゆっくり浮上した。

「では、ソフィアは我が抱えていこう」
「え、ええ……お願いします」

正直言って、この変態に抱きかかえさせたくはなかったが――そうも言っていられない。
何せ他は怪我人が二人なのだ。
彼に任せる以外に、選択肢なんてあるわけない。

「えっと、君は……」
「ああ、そういや名乗ってなかったか?
 俺はチェスター。チェスター・バークライトだ。
 そっちはフェイトだったよな? それと……」
「不死者王・ブラムスだ」
(不審者王……)

軽く自己紹介を済ませる。
そして、その名前にフェイトが反応を示した。

「チェスター……もしかして、クラースさんの仲間の!?」
「な、もしかしてアンタ、会ったのか!?」
「ずっと行動を共にしてたんだ。君達のことはある程度聞いているよ。
 今は別行動になってますけど……」
「鎌石村で合流する手筈になっている」

その言葉に、今度はチェスターが顔をしかめる。

「参ったな……俺達は俺達で、平瀬村で仲間と合流する手筈になってんだけど……」
「何だって!? ……困ったな……どうしたら……」
「その辺は移動しながら話すとしようか」
「そうですね。チェスター、デッキブラシに相乗りしていくかい?
 その怪我じゃあ、歩くのも辛いだろうし」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」

チェスターが、デッキブラシに跨った。
やや体が密着するも、フェイトは特に気にしない。
先程までの悪夢のような密着体験に比べたら、こんなもの屁でもなかった。

「そういえば、レザードはどうした。一緒にいるものと思っていたが……」
「ああ、レザードは……先に鎌石村に行ったよ。
 あんたらを待つ役をレザード達が、それでマリアやクレスと合流する役を俺達が担ってる」
「マリアだと……?」

今度は、ブラムスが驚愕する側だった。
マリアと言えば、フェイトの言っていたアルティネイションの使い手だ。
ソフィアも、フェイト・ソフィア・マリアが揃えば脱出の可能性があると言っていた。

「なるほど……ならば、優先するは平瀬村か」
「ただ……気になることもあるんだよな……」
「気になること?」
「レザードのヤツが、ソフィアの支給品を奪って行ったんだよ。
 ドラゴンオーブっつったかな……何かソフィアも慌ててたし、ちょっと気になるんだよな……」

思い出すのは、荷物を奪われた際のやりとり。
あれを思い出す限り、ドラゴンオーブはソフィアにとってもレザードにとっても重要なものなのだろう。

「それは少しマズイな」
「……そうなのか?」
「レザードは、我と同じで己の利のために共同戦線を張っているに過ぎない身。
 単身帰れる手段を得れば、他の全員を見捨てて帰ることすらあるだろう。
 ……ましてや、レナスがもういないとなれば尚更だ」
「そのドラゴンオーブっていうのは、何か脱出に貢献しそうなものなんですか?」
「分からぬ。だが、奴ほどの魔術師が手中に納めれば、そのような使い方が出来るのかもしれぬ」

だとすると、ドラゴンオーブを奪われっぱなしというのには問題が生じる。
脱出のキーアイテムを持ったままさっさと単身逃げられては困るのだ。

「そうなると……再びバラけた方がいいということになるな」
「そんな……折角会えたのに……」
「安心しろよ、フェイト。お前達は引き裂かねえって」
「ああ。フェイトとソフィアには、揃ってマリアと合流してもらわねばならないからな」

クラースがかつてそうしたように、にやりとチェスターもいやらしい笑みを浮かべる。
勿論、フェイトはスルーしたけれど。

「てことは……俺はアンタと一緒に鎌石村か。知ってる相手もいるし」
「そういうことになるな。戦力として、フェイトとソフィアだけで向かわせる事はできぬ。
 だが――アルベルとやらがいれば、その問題も解決するだろ。
 慣れ親しんだ仲間と行動する方が、連携も取りやすいだろうしな」
「なるほど、確かに」

チェスターは、内心少しほっとする。
クレス達と顔を合わせるのは、まだちょっと気まずいから。
打算的なことを言えば、自分の成果としてフェイト達を合流させて、自分が彼らと対等なくらい貢献できたら帰りたいところである。
それに――やっぱりまた合流するのは、クロードをこの手で殺してからという強い想いもあった。

「む、あそこだ」
「アルベルっ!」

到着した。
そこには、一段落つき休んでいるアルベルと、その仲間がいる――――そう、考えていたのに。

「アルベルっ……! ちくしょうっ……何でこんなっ……!」

だがしかし、そこに居たのはアルベル“だったもの”である。
もう、彼が動くことはない。
その連れも、首から上がちぎれていた。

――アシュトンの姿は、どこにもない。

アシュトンが、やったのだ。
アシュトンが……

「クソッ! 俺のせいだ……俺がちゃんと、アシュトンを倒せていれば……!」
「ふむ……下手人はアシュトンというのか」

そう言い、地面に鼻を近付けた。
そして再びクンカクンカと血液を嗅ぎ、告げた。

「奴ら――平瀬村方面へ向かっているな」
「何だって!? 分かるのか!?」

チェスターが驚愕を顔に浮かべる。
それを、ブラムスは首を縦に振り肯定した。
こんな格好のくせに、妙に頼もしく思える。

「しかし――これでパーティを分断するわけにはいかなくなったな。
 少なくとも、それなりの危険人物が向かっている方面へ、フェイト達だけを向かわせるという選択肢はなくなった」
「ああ、今すぐ全員で追いかけようぜ! 今度こそ、絶対ぶっ殺してやる!」
「落ち着け。今の疲弊したパーティで、フェイト・ソフィアを欠かずに勝利を収めるのは簡単ではないだろう。
 血液は二種類。敵は二人いるようだしな。一端鎌石村に向かい、仲間を増やして総攻撃という手もある」
「でもよぉ……そんなことしてる時間なんて……」
「もしくは、フェイト達には比較的安全な鎌石村に向かってもらい、我々だけでアシュトンとやらを追いかけるか……」

ブラムスにとって、ようやく手に入った脱出への道筋――フェイトとソフィアを失うことはしたくないのだ。
それなりに、慎重にはなる。

「……僕も、行きます。アルベルのためにも、アルベルを殺した奴を倒したい」

フェイトが、涙を拭い立ち上がる。
その目には、確かな闘志が宿っていた。

「何にせよ、放送を待つ。アシュトンとやらが死んでいるか、鎌石村に向かった連中は無事なのか、マリアは無事なのか――
 他にも、聞くべき情報は多々あるからな」
「何言ってんだよ、そんな時間があるなら――」
「戦うつもりか? その空の矢筒で」
「――――っ!!」

プリティでキュアキュアなヴァンパイアは、見た目と裏腹に冷静だった。
チェスターの背に、もう矢は背負われていない。
その事を指摘し、告げた。

「どのみちすぐには討伐に動けぬ。
 放送までの時間、この近辺で使い回せそうな矢を拾い集めておけ。
 臭いに敏感な我が見張りを請け負おう。フェイトはソフィアを守っているがいい」
「……チッ、分かったよ」

言うと、チェスターは先の戦場まで歩いていった。
フェイトはデッキブラシで送ろうと言ったが、チェスターはやんわりと断った。
そんな暇があるんなら、ソフィアの傍にいてやれよ、と。

「傍にいてやれ、フェイト。俺にはそれができなかったから」

アーチェを、想う。
何一つしてやれなかった、大切な仲間のことを。

(クロード……待っていろ、絶対俺がブッ殺してやる)

クロードがチェスターと和解する最大のチャンス。
もしかすると、それは今だったのかもしれない。
チェスターが、この島の人間のことをちゃんと理解しようと心のどこかで思っていた、まさにこの時。
それこそが、自分のことを理解してもらう、クロード最大のチャンスだったのかもしれないのだ。

(アシュトンも、もう容赦はしねえ。こんなひでえこと、絶対に許せねえ)

だけど、それももう潰えてしまった。
チェスターは、見たのだ。
アルベルの横に転がる、子供の死体を。
何にも出来ないであろう子供が、無残に殺されているのを。

(もう逃さねえ。次会った時が、どちらかが死ぬ時だ――――)

怒りの炎が燃え上がる。
怒りはやがて、明確な殺意へと変わっていった。

果たして彼らの再戦のゴングは、鳴り響くのだろうか――――



【D-05/早朝】

【フェイト・ラインゴッド】[MP残量:75%]
[状態:左足火傷+打撲(少し無理をした為に悪化。歩くにも支障あり)。クロード・アシュトンに対する憎しみ]
[装備:鉄パイプ-R1@SO3]
[道具:ストライクアクスの欠片@TOP(?)、ソフィアのメモ、首輪×1、荷物一式]
[行動方針:仲間と合流を目指しつつ、脱出方法を考える]
[思考1:アルベル……]
[思考2:ルシファーのいる場所とこの島を繋ぐリンクを探す]
[思考3:確証が得られるまで推論は極力口に出さない]
[備考1:参加者のブレアは偽物ではないかと考えています(あくまで予測)]
[備考2:ソフィアの傷は全身に渡っています。応急手当にはしばらく時間を取られるかもしれません]


【チェスター・バークライト】[MP残量:30%]
[状態:クロードに対する憎悪、肉体的・精神的疲労(中程度)、腹部に当身による痛み]
[装備:光弓シルヴァン・ボウ(矢×0本)@VP、パラライチェック@SO2]
[道具:レーザーウェポン@SO3、アーチェのホウキ@TOP、チサトのメモ、荷物一式]
[行動方針:力の無い者を守る(子供最優先)]
[思考1:この次は必ずクロードを殺す]
[思考2:アシュトンも、もう許せねえ]
[思考3:使えそうな矢を拾い集める]
[思考4:どっちに向かったらいいんだ?]
[思考4:レザードを警戒]
[備考1:チサトのメモにはまだ目を通してません]
[備考2:クレスに対して感じていた蟠(わだかま)りは無くなりました]
[備考3:手持ちの矢は無くなりましたが、何本かはこの場で回収出来るかもしれません]


【ソフィア・エスティード】[MP残量:0%]
[状態:気絶中。全身に『レイ』による傷(応急手当中)。ドラゴンオーブを護れなかった事に対するショック。疲労大]
[装備:クラップロッド、フェアリィリング@SO2、アクアリング@SO3、ミュリンの指輪のネックレス@VP2]
[道具:魔剣グラム@VP、レザードのメモ、荷物一式]
[行動方針:ルシファーを打倒。そのためにも仲間を集める]
[思考1:クロード、アシュトンを倒す]
[思考2:平瀬村へマリアを探しに行く]
[思考3:マリアと合流後、鎌石村に向かいブラムス、レザードと合流。ただしレザードは警戒。ドラゴンオーブは返してほしい]
[思考4:ブレアに会って、事の詳細を聞きたい]
[備考1:ルーファスの遺言からドラゴンオーブが重要なものだと考えています]


【ブラムス】[MP残量:90%]
[状態:キュアブラムスに華麗に変身。本人はこの上なく真剣にコスプレを敢行中]
[装備:波平のヅラ@現実世界(何故か損傷一つ無い)、トライエンプレム@SOシリーズ、魔法少女コスチューム@沖木島(右肩付近の布が弾け飛んだ)]
[道具:バブルローション入りイチジク浣腸(ちょっと中身が漏れた)@現実世界+SO2、和式の棺桶、袈裟(あちこちが焼け焦げている)、仏像の仮面@沖木島、荷物一式×2]
[行動方針:自らの居城に帰る(成功率が高ければ手段は問わない)]
[思考1:放送後、方針を決める]
[思考2:敵対的な参加者は容赦なく殺す]
[思考3:直射日光下での戦闘は出来れば避ける]
[思考4:フレイ、レナスを倒した者と戦ってみたい(夜間限定)]
[思考5:次の放送までにF-04にてチーム中年と合流]


【現在位置:D-05東部】

【残り16人+α】




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第134話(前編) ブラムス 第136話
第134話(前編) フェイト 第136話
第134話(前編) ソフィア 第136話
第134話(前編) アルベル
第134話(前編) レオン
第134話(前編) アーチェ
第134話(前編) ミント
第134話(前編) すず
第134話(前編) クレス
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