第135話 第四回放送



中空に展開させたコンソールを、やや戸惑い気味に、覚束ない手つきで操作する。
慣れない作業に眉を顰めるが、命令とあらば遂行せねばならないし、万が一にもミスがあってはならない。
表示されたデータに素早く目を通し、目的のものをどうにか見つけた。時間は――――1分程遅れている。
焦燥と共に、彼はそのスイッチを入れた。





「あー……聞こえているな? それではこれより第4回目の放送を開始する。
 一応名乗っておこうか。私はスフィア社オーナー直属の、保安部を統括しているアザゼルだ。よろしく、諸君。
 この時点を以てG-7が禁止エリアとなるが、逃げ遅れた者はいないようだな。面ど……結構な事だ。
 さて、面倒なので手短に済まそう。まずは……そう、死亡者を死亡順に発表するんだったな。
 では行こう。

 1人目。『クリフ・フィッター』。
 2人目。『ロキ』。
 3人目。『レオン・D・S・ゲーステ』。
 4人目。『アルベル・ノックス』。
 5人目。『ミランダ・ニーム』。
 6人目。『クレス・アルベイン』。

 以上6名。残りは16名だな。まあ、せいぜい頑張ってくれ。
 それから……禁止エリアの発表だな。
 前回同様、禁止エリアは今回も6エリアだ。

 まず7時、C-4。
 2つ目。8時、H-4。
 3つ目。9時、F-7。
 4つ目。10時、C-2。
 5つ目。11時、F-1。
 最後に、12時、5回目の放送と同時にE-5だ。

 ……念の為にもう1度言っておこう。

 C-4、H-4、F-7、C-2、F-1、E-5の順だ。
 ……間違いは……ないな。ふむ。
 他には……いや、これで終わりか。
 では、第4回放送を終了する。出来るだけ早く終わらせてくれまえよ、諸君」





一仕事を終えスイッチを切ったアザゼルの背中に、小馬鹿にしたような拍手が送られた。
睨みつける様に身体を返す。そこにいるのは、ほんの数分前にアザゼルにこの仕事を押し付けた人物だ。

「ご苦労様、アザゼル。でもちょっとそっけないんじゃなぁい? 社長が席を外してる事くらい教えてあげればいいじゃない」
「極力時間は取らない方が良いと思ったのでね。私も暇じゃあない」
「あら。暇でしょ? ブレアをロストして、仕事なくなったんだから」
「…………そのブレアを探している最中だと知っているだろう。何故私にやらせた?」
「嫌がらせ。うふふ♪」
「…………聞いた私が馬鹿だったようだな。では失礼しますよ、重役殿」
「社長にはちゃーんと報告しておくわね。拙い放送でしたって」

コンソールから離れ、気味の悪い笑みを向ける嫌味な重役――ベルゼブル――とは視線を合わせずにすれ違う。
本来の主の居ない社長室から出ようとし、ふと、アザゼルはコンソールを振り返った。

「そう言えば……」
「どうしたの?」
「1つ確認したい事が」
「……なぁに?」

コンソールを眺めたまま、アザゼルは疑問を口にする。
単にそれは、ベルゼブルを直視したくないだけの事ではあったが。

「何故この『ゲーム』で盗聴なんて真似をさせるのかと思ってね」
「………………」
「エターナルスフィアはあらゆる時間と場所の閲覧出来るワールドシミュレーターだろう?
 盗聴ではなく直接見た方が効率が良いはずではないか? そうすれば私の手間も省けるんだがね……」
「……さあ? 文句なら社長に直接言ったら? 何ならアザゼルが反抗的な目付きしてましたって報告しておきましょうか?」
「……目付きは生まれつきだ。まあ、社長の決定に逆らう気はないがね」

やはりというか、このオカマはまともに答えはしなかった。
まあ、その疑問の答えを聞こうが、ブレアが見つかる訳ではない。
アザゼルは結局一度もベルゼブルに視線を向けず、廊下に出た。
先程口にした通り、彼は暇ではない。何処かに消えたブレアの行方を捜さねばならないのだ。

さて――――アザゼルは考える。
何から手をつけるべきか。とりあえずは――――ベルゼブルに抱いた苛立ちを部下にぶつけるとしようか。


【第4回放送 終了】
【7時にC-4、8時にH-4、9時にF-7、10時にC-2、11時にF-1、12時にE-5が禁止エリアになります】





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最終更新:2013年01月07日 02:48