第21話 HURRY!


神塚山――このバトルロワイヤルの舞台“沖木島”の中心にある624mの山。
「何てこと!ラグナロクはもうそこまで迫っていると言うのに」
その神塚山の山頂で女神フレイは頭を抱える。
レナスの活躍もあって、戦局はアース神族が優勢であった。
このまま何事も無ければアース神族が勝利する――その時期にコレだ。
こんなところで無駄な時間を過ごしていたら、戦局をひっくり返されかねない。
「急いでオーディン様の下へ戻らなければ」
兎に角急がなければ、フレイは移動の為に浮上する……ことは出来なかった。

『お前たちの力は、ある程度の制限がなされている』

(なるほど、コレが制限ね)
ルシファーの言葉を思い出し、ため息を吐く。
このゲームでは魔法的な飛行能力は行使できない。
それは神とて例外ではない。
(下等な生命体に地べた歩くことを強制されるとは……ルシファー、何時か後悔させてあげるわ)
仕方が無く歩き出すフレイ。
だが、その歩みも直ぐに止めることになる。
人の気配がする――

一人の男が現れた。
「……先客が居たか」
男の名はダオス、当然だがこのゲームの参加者である。
「あら、わざわざこの山を登ってきたの?ピクニックかしら?」
剣の柄らしきものを取り出しながら、女は問う。
「……私には、使命がある。急がねばならぬな」
身構えながら男は答える。
「奇遇ね、私もよ……ところで、貴方はこのゲームに乗っているのかしら?」
女の問いが終わる前に、すでに男は女に接近し、拳を繰り出していた。

「!?」
男の拳が空を切る。
直前までは、そこには確かに女の頭が有った。
一寸後、男は背後からの殺気に気づく。
「むっ!」
鮮血が舞う。
回避運動を取ったが回避しきれなかった。
「どうやら短距離の転移は可能な様ね」
女の手には、赤く輝く刀身。
それを男に向けて女は語る。
「神に牙を剥く愚か者が、女神フレイが切り刻んであげるわ」

「ハァッ!」
男の蹴りは空を切り。
「無駄だわ」
女は剣を振り下ろし、男はそれを回避する。
先ほどから似たような攻防が続く。

何度目かの攻防の後、両者は急に立ち止まる。
「のろまね。いい加減力量差は理解出来たかしら?」
「笑止」
「哀れな。良いわ、そろそろ終わりにしてあげる」
女は距離を置くと、男に向けて手を突きだした。
「のろまの貴方にこれが避けられるかしら」
凝縮した魔力が光線と化し男に迫る。
それに対し男も拳を突きだし。
「ダオスレーザー!」
負けじと魔力の光線で応戦する。

凝縮した魔力の撃ち合い。
これを制したのはダオスだった。
だが……。
「馬鹿め!私に敵うとでも――!?」
魔力の光線、その矛先に居るはずの女が居ない。
男は咄嗟に上空を見上げた。
そこには、先ほどとは比べものにならないほど強大な魔力を練り上げる女の姿。

「浄化してあげるわ」
――女は言い放つ。

「くっ!」
――男はそれを見て、急いで詠唱を始める。

そして、
「神技――エーテルストライク!」
それは放たれた。

凄まじい爆発、吹き荒れる爆風、響く爆音
その中にダオスの魔法は含まれていなかった。

「フフ、貴方って本当にのろまね」


砂煙が立ちこめる中、フレイは着地する。
まだ砂煙は晴れていないが、爆破跡には何も残されていないのが見て取れた。
「何も残らないだけ、ゴミよりマシよね?」
フレイは勝ち誇った笑みを浮かべる。
だが――
「私はそうは思わないな」
「な……っ!?」
振り向いた瞬間、顔を鷲掴みにされる。
「これで逃げることは出来まい」
ダオスは生きていた。それどころか、ダメージを負った様子すら無い。
「馬鹿……な、避け…ら…るは……」
フレイの身体が灰色に変色していく。
否、石化していく。
「……あ…あぁ、ああぁぁぁ……」
「ここまでやるとは思わなんだぞ」
フレイは完全に石化した。
ダオスの言葉はフレイの耳に入ったのだろうか?
「ここで朽ち果てるが良い」
ダオスはフレイだったモノを投げ捨てると、吐き捨てる様に言った。

ダオスは息が上がっていた。
いつもの彼なら、ここまで消耗するはずは無い。
それが、エーテルストライクが放たれる直前、ダオスが詠唱していた魔法――
タイムストップの直後、疲れがどっとのし掛かってきた。
彼は身体を休ませつつフレイだったモノを見る。
そこで、あるものが目に入る。
首輪だ。
フレイが身につけていたものは全て石になっていた。
ただ一つ主催者に付けられた首輪を除いては。
そのことが、彼の興味を引いた。
「……何か役に立つかもしれんな」
ダオスはそう呟くと、
フレイの頭部だったモノを蹴り砕いた。


【F-5/朝】
【ダオス】[MP残量:30%]
[状態:疲労、裂傷多数]
[装備:無し]
[道具:???←1~3個 本人確認済み、フレイの首輪、荷物一式]
[行動方針:サーチアンドデストロイ]
[思考:ひとまず休息]
[現在位置:F-5 神塚山山頂]


【フレイ@VP 死亡】
【残り56人】

※フレイの死体は石化した状態で放置されています。また、頭部は破損しています。
※フレイの荷物一式(フォースソード@SO2)はフレイと共に石化しました。石化を解除出来れば取り出せるかも?




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フレイ

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最終更新:2007年06月05日 03:16