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第22話 愛しのヴァルキュリア(;´Д`)ハァハァ


別に、那々美とは特別仲が良いわけじゃなかった。
それどころか、エインフェリアの中では疎遠な方だったと思う。
酒盛の時も戦闘の時も、私がカシェル達と輪の中心で好き勝手暴れまわるのに対し、那々美は常にあまり目立たぬ後ろの方に居た。
そんなこんなであまり接する機会は無かったけど、那々美のサポートには何度も助けられてる。
自分は飲んでもいなかった酒盛りの後片付けを手伝ってくれたりもした。
だから、会話もほとんどしたことないし、話だって合わないけど――
那々美は、私の大切な仲間だ。

なのに――なのに私は、那々美を見殺しにしてしまった。

「…………」
苛立ちを乗せ、右の拳を木の幹へと叩き付ける。
ルシファーだとかいういけ好かない奴にもムカついたが、それ以上にみすみす那々美を死なせた自分自身に腹が立った。
那々美を──後衛の魔術師を護るのが戦士である自分の役割なのに。
あの時、何もせず黙って那々美を死なせてしまった。
「クソッ!」
もう一度だけ、木の幹を強く殴り付ける。拳に僅かばかり血が滲んだ。
「……何やってんだよ私は」
木にもたれかかり、なんとか気分を落ち着けようとする。
戦場で死は見慣れた。
それでも──やはり“仲間の死”には慣れることが出来そうにない。
(……仇は、取る)
腰を降ろし、デイパックの中身を調べていく。
地図とコンパス、パンに──
「……グミ?」
何故か五つ入りのグミが出てきた。
くちゃくちゃ噛んでいれば気分が落ち着くかと思い、その内ひとつを口へと放り込む。
長い間食べていなかった林檎の味が少しだけ懐かしく思えた。
「……こいつは……」
次に出て来たのは上等な弓。
エイミにとってはお荷物でしかないが、ラウリィあたりが持てば戦力になるだろうと思いデイパックへとしまい直す。
そして、気付いた。
「……誰だ」
そこの木の陰に、誰かいる。
「……おとなしく出てきな」
立ち上がり、拳を固く握りしめる。
体は鍛えてるんだ。相手にもよるが、それなりに肉弾戦にも自信がある。
あの場所に居た耳の尖った細身の男や金髪の優男程度なら勝利を収められるはずだ。
「……久しぶり、とでも言っておきましょうか?」
やや離れた木の陰から姿を現した男には見覚えがある。
アイツは、確か――
「あぁ――レザード、だったか?ヴァルキリーにやられたばっかりだっていうのに随分元気そうじゃないか」
レザード・ヴァレス。
かつて、ヴァルキリーと共にぶちのめしたことのある男。
かなりの実力者であったことと、胸糞悪い外道だったことだけはしっかりと覚えている。
「生憎、私に世間話に興じるつもりは無い。本題に入らせていただこうか」
「……そうしてくれるとありがたいな、こっちも暇じゃないんでね」
相手は神を冒涜した男。
武器もなしにどこまでやれるかはわからないが――こんな奴から逃げるのだけは、私のプライドが許さない。
ゆっくりと距離を詰め、殴りかかる隙を窺う。
「勘違いをするな。私に殺し合う気など毛頭無い」
「…………は?」
「……確かに、はっきり言って私以外の“人間”を皆殺しにして生きて帰ることなど私には容易い」
その言葉には些かカチンときた(いや、私は竜人だけどさ)が、得物が無い今はレザードに殺る気がない方がありがたい。
警戒は解かず、レザードの話に耳を傾ける。
「だが、愛しのヴァルキュリアと無意味に対立するのは私の望むところではない……
 ヴァルキュリアを呼び寄せることを優先し敵対したあの時とは違い、ヴァルキュリアは今や手の届く場所にいる。
 ならば、優先してすべきことは彼女と合流し、“私が”彼女の願いを叶えることだ。殺戮ではない」
正直、エイミにはレザードが何を言っているのかイマイチ理解できなかった。
というか、言い方がいちいち回りくどいため途中からあまり聞いていなかった。
それでも会話をやめる気は起きなかったので、とりあえず『ヴァルキリーの気を引きたいだけの変態野郎』とだけ頭に留めておく。
「……ヴァルキュリアと共に居るためにはどの道この首輪を何とかする必要がある。ならば、手駒は多いに越したことは無いだろう?」
愛しい人のために自害をする気は更々無いらしい。まぁ、期待もしていなかったが。
「さっさと本題に入ってくれないか?」
「……いいでしょう。後衛の私が一人で戦うのは些かリスキー。そこで、だ」
一拍置き、レザードの口から予想もしていなかった言葉が飛び出してきた。
「貴様には私と組んでもらう」
ヴァルキリーのことを知らないと言った瞬間用済みだと戦闘に入るとばかり思っていただけに、思わず「はぁ?」と口にしてしまう。
というか、同盟申し込む人間の態度じゃねぇだろそれ。
「お断りだね。利用されるなんて御免だし、第一アンタは信用できない」



こんな状況だろうと、プライドを捨てることは出来なかった。
自分の意思で戦場に出るのは良い。
命を落とす危険を覚悟の上で、やりたい奴同士でやってんだ。殺し殺されても誰にも非難する権利は無い。
だが、首輪によって命を握られてるから命惜しさに殺しをするというのは虫唾が走る。
戦場に出たくもなかった奴を殺し、かつての仲間でさえ殺す――そんなの私は絶対に御免だ。
やりたくもねぇことを無理矢理やらされるなんてプライドが許さない。
だから、さっさとヴァルキリー達と合流してルシファーとかいう野郎をぶっ倒してやりたかった。
そのために、武器や仲間が欲しかった。
だが――ルシファーとかいう奴に従うのと同様に、レザードと組むこともプライドが許さなかった。
昔からの仲間であるロウファやセリア、同じ側で戦ったよしみのある神族の奴らやエインフェリア達ならともかく、
敵対関係にあった奴に自分の都合だけで同盟を組めと言われ、「はいわかりました」と言うことなんて出来るわけがない。
そんな犬みたいな真似、私が出来るはずないだろう?
「信頼関係を築く気など毛頭無い。そんなものを築くより、“互いの利害が一致するから利用しあう”という関係を築いたほうが遥かに楽だし安心だろう?」
「…………」
「裏切るなとは言わない。後ろから攻撃されても文句は言わない。ただ、今はまだ利用した方がいいから手を組む――それだけの話だ」
「……なるほどね、シンプルで分かりやすい」
言いたいことはだいたいわかった。
互いに利用し合い、“利用価値がもう無い”と判断され背後から襲われないように役立て――そういうことだろう。
「だが、生憎私にはアンタを仲間に引き込むメリットが――」
その言葉を予想していたのか、レザードがデイパックから一本の槍を取り出す。
地面へと放られたその槍は初めて見る物なので、恐らくまだ上手くは扱えないだろう。
本当なら奉竜殿で手に入れた連続して攻撃できないが威力の高い“剛槍ダイナソア”か、威力は劣るが振り回しやすい“閃槍クリムゾン・エッジ”あたりが手に入るとベストなのだが……
「前衛がすぐにやられるようでは困るのでな。どの道私には扱えないんだ、そいつを貸そう」
この状況じゃ背に腹は変えられない。使い慣れないとはいえ槍が手に入るならそれには飛びついておくべきだ。
それに、レザードの言葉には不思議と引き込まれるものがある。
「……何、深く考える必要は無い。ただその槍を手にし、自分が生き残るために私を利用すればいい」
(――どうする)
かつての冒険仲間の顔を思い浮かべる。
こいつに従うのは癪だ。だけど、こんなとこで終わるのも御免だ。
どうすればいい?
セリア、カシェル、ロウファ、レミア、みんな――
「それとも、私に後ろから襲われそうで怖いのですか?」
「……あぁ?」
怖い?ふざけるな。そんなわけないだろう?
私は、そんなに弱くない。
貧弱変態ストーカー眼鏡に怯えたなんて、アイツらが知ったら馬鹿にするだろうな。
「上等じゃない」
グレイはレミアの仇だから、もう仲間などではないと決めたあの時と比べたら
かつての仲間を、倒すべき敵と認識すべきか迷った時に比べたら
この程度の選択、そんなに悩む程のことじゃない。
そうだ、何かあれば返り討ちにするだけのことだ。
「オーケイ、その提案に乗ろうじゃないか。その代わり――」
拾った槍を、レザードの喉元に突きつける。
それすらも想定していたのか、レザードは目をそらすこともしなかった。
「いつ反旗を翻されてもいいよう、せいぜい今からお祈りでもしとくんだな」
こうして、信頼の欠片も無いチームが今、ここに誕生した。



【D-07/朝】
【エイミ】
[状態]:正常
[装備]:神槍パラダイム@RS
[道具]:アップルグミ@TOP×4、エルヴンボウ@TOP、????(0~1個。あるとしたら本人未確認)、支給品一式
[基本方針]:ルシファーを倒す。
[思考1]:エインフェリア仲間やヴァルキリーと合流。
[思考2]:売られた喧嘩は買う。
[思考3]:レザードは信用しない。
[思考4]:出来れば神槍パラダイムを使いこなせるように練習がしたい(※優先順位は低い)
[現在地]:D-07・林
[備考]:※アップルグミをただの食料だと思っています。
     ※レザードの支給品は神槍パラダイムしか把握していません。

【レザード・ヴァレス】
[状態]:正常
[装備]:天使の唇@VP
[道具]:????(本人確認済み)、支給品一式
[基本方針]:ヴァルキュリアと共に生き残る。
[思考1]:愛しのヴァルキュリアと再会し、二人で一緒に生還できる方法を考える。
[思考2]:その他の奴はどうなろうが知ったこっちゃない。
[思考3]:エイミを利用する。エイミが裏切る可能性を考慮して行動する。
[現在地]:D-07・林

※アップルグミは軽い怪我なら治せますが大怪我にはほとんど効果がありません。
※天使の唇の効果は制限により『相手が冷静なとき(戦闘中や発狂中でない時)に、真っ正面から交渉を持ちかけるとスムーズに話し合いに入りやすくなる』程度の眉唾物になっています。

【残り56人】




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