The Return of the Acme Acres Zone ・ 今回のタイニー・トゥーンズはアクメ・エーカーズゾーン(元ネタはテレビドラマの『トワイライトゾーン』)の第2弾。いつもとは一味違った雰囲気の物語を3本放送する。
あらすじ
【Real Kids Don't Eat Broccoli 】
西暦2038年。アクメエーカーズは12万人の人間と6万体のアンドロイド(人造人間)が暮らすメトロポリスになっていた。エーカーズの場末に私立探偵事務所を構えるバスター・バニー は、謎めいた美女(バブス・バニー )から家出したドロイドの消息調査を引き受ける。ドロイド達の消失は近頃世間を騒がせている怪現象。繁華街で情報を集めていたバスターはある一大事件に巻き込まれることに。
出演: バスター、バブス、ハムトン、プラッキー、フィフィ、他
【Boo Ha Ha 】
サイクリングからの帰り道、山中で突然の大雨に見舞われてしまったプラッキー とハムトン 。自宅に連絡するため古城風のホテルに立ち寄る彼らだったが、そこはお調子者のゴーストが経営するお化けホテルだった。支配人に扮したゴースト は2人を宿泊させるよう仕向けると、臆病なハムトンの前だけで度々正体を明かして彼を驚かせるのだった。
【Duck Dodgers Jr. 】
西暦24と2分の1世紀の地球。宇宙ヒーローの
ダック・ドジャース (
ダフィー・ダック )と、その忠実なる助手の
プラッキー は、火星周辺で頻発している空間消失事件の調査を命じられる。かくして火星を訪れた2人に飛び込んできたのは、怪しげな機械で宇宙空間をサイコロ状の小さなブロックにする火星人(
マービン・ザ・マーシャン )と、そのブロックを積み木にして喜ぶ彼の姪っ子(
マーシャ・ザ・マーシャン )の姿。ドジャースは宇宙の平和を脅かす火星人に対して決闘を申し込むが……。
備考
【Aパート】
ミステリ、SF、ブロッコリーをテーマにした三題噺のような作品。SF映画「ブレード・ランナー」を下敷きにしたサイバーパンク世界を舞台に、探偵映画「マルタの鷹」をパロディ化した30~40年代風ハードボイルド探偵の活劇を描く。
本作のバスターは、映画版「マルタの鷹」のサム・スペード(ハンフリー・ボガート)に古典アメコミキャラクターの「ディック・トレイシー」の衣装を着せたようなキャラクターとして登場。依頼人役のバブスとドロイド役のハムトンもそれぞれの役に嵌まり込んでいて、情報屋役のプラッキー以外は皆いつもと少し違ったキャラクターを演じている。
探偵事務所のシーンでは「gumshoe(探偵)」「make one's home(くつろぐ)」「take on a case(引き受ける)」といった慣用表現を使った駄洒落表現が連発する。探偵小説お決まりの表現を使った言葉遊びネタは、クラシック短編の「私立探偵ダック・ドレイク 」でも見られる。
バスターがドロイド達に追いかけられる場面の構図〔A〕は、ダフィー・ダック が探偵役を演じたクラシック短編「The Great Piggy Bank Robbery」〔B〕(1946年)のパロディ。
A
・ B
【Bパート】
サイレント時代の古典喜劇映画にホラー映画の演出を加えたような話。ギャグ作品としての造りはクラシック短編の「お化けをあばけ 」に似ている。
本作は元々「Hi, Spirits」という別個の短編と統合される形で生まれた短編であり、「Hi, Spirits」の方は古城のゴーストが霊感の無いハムトンとゴーゴーを怖がらせようとする、本作とは間逆の展開が予定されていた。「Hi, Spirits」の製作準備に関わったジョン・Kらは、ワーナーからの離脱後『レンとスティンピー』で、「Hi, Spirits」のシナリオをそのまま再利用した「Haunted House」を発表している。
ホテルの宿泊者名簿には、ルーニー・テューンズのスタッフの名前が書かれていた。
※クリックで拡大
ハムトンがお化けホテルの内装を見て思い出したアトラクションとは、ディズニーランドのホーンテッドマンションと思われる。
お化けホテルのスイートルーム(presidential suite)では、アメリカの元大統領(president)であるリンカーン、ワシントン、ジェファーソンがトランプをしていた。ゴーストに追い出された彼らはグラント将軍国立記念碑(通称グラントの墓/Grant's Tomb)のパーティーに出かける。
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【Cパート】
クラシック短編「ダフィー・ウォーズ 」の『タイニー・トゥーン』世界における続編。主人公はあくまでダフィー・ダック(ダック・ドジャース)という位置づけで、プラッキーはドジャースに憧れる助手(スペースカデット/本家ではポーキー・ピッグが担当)というポジション。そのためか本作におけるプラッキーの年齢は小学生と設定されている。
『タイニー・トゥーンズ』のエグゼクティブプロデューサーであるスティーブン・スピルバーグは「ダフィー・ウォーズ」の大ファンであり、本作でも自らギャグ(マービンを追うダフィーがギアシフトを行う場面)を提案したり、オチ(当初の予定ではブロックになったドジャースとマービンが追いかけあうというものだった)にもう一捻り加えるよう要請するなどしたという。
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独創的な発想で描かれた背景や小道具のデザインは、本家「ダフィー・ウォーズ」でもレイアウトアーティストを担当したモーリス・ノーブルが担当している。しかし、冒頭の宇宙空間から緊急本部のシーンでは下請けのアニメ会社(Wang)との情報伝達が上手くいかなかったため、ベタ塗りで表現されるはずの背景が全てエアブラシで塗られてしまった。(画像 )
マービン・ザ・マーシャン は、本作が『タイニー・トゥーンズ』における最初で最後の出演となった(ただしデザインの大きく崩れたマービンは他の話の背景にもエキストラとして確認できる)。姪っ子のマーシャは、本番組オリジナルキャラクター。
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マービンの装置を見たドジャースが呟く「Sufferin' succotash(スルメも逆立ち)」という台詞は、通常シルベスター の口癖として知られているが、40年代末まではダフィーの驚いた時の口癖としても数度使われていた。
「Duck Dodgers Jr.」は、DVD「
Essential Daffy Duck 」(英語・リージョン1)にも収録されている。
恒例ネタ
ED中のメッセージ:Inter-Office Memo Corrector - Tom Minton
終わりの一言:「ワン」(バイロン)
リンク
最終更新:2013年12月03日 22:13