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早朝。普段ならまだ静かなはずのこの部屋に藩王を始めとする愛鳴藩国の主だった面々が集っている・・。

そこで重大な会議が行われるという情報を耳にした私こと、さすらいのジャーナリスト「マクシミリアン」がスクープしようという訳だ。

幾度もの侵入報道を行ってきた私は難なく会議室の隣の準備室に腰を落ち着け、万が一の為に備えて書類の入ったダンボールで偽装する・・。
完璧だ・・!会議の様子を漏らさずスクープできる・・!

そう確信した私は自然と笑みを浮かべながらカメラと録音機をセットし、メモを手にその時を待つ。
(なんでメモかって?フフ。ボウヤは判っちゃいないな。
ハイテク機器は便利だが最後に物を言うのはアナログだよ。
そして、それを扱う人間の腕こそが物を言う・・。)

会議室には愛鳴藩国ではなかなか見られない光景があった。
(常であればどんな会議であれ、この国の陽気な皆だが・・。)
表情に明らかに固いものが見て取れる・・。

重苦しい雰囲気の中、藩王が口を開くのを緊張の面持ちで皆が見守っている・・。
「それでは会議を始めたいと思います。」藩王の言葉に喉を鳴らす音が聞こえる。
「議題を。」と短く言う藩王に吏族のたまきが頷き、おもむろに大きく議題をボードに書き出す。そして口を開いた・・。

「それでは今より愛鳴藩国、戦略級会議を始めます。」
(戦略級会議・・。つまり藩国の方針の骨子についての会議な訳だ・・。
皆の緊張も頷ける・・。この会議に藩国の命運が懸かっているのだろう。)
その会議内容を・・とボードに目を移すとそこには果たして大きく“愛鳴藩国アイスクリーム会議”とあった。
  • ・・こける私。
(なんだって??と、とにかく冷静になろう!)
落ち着こうともう一度会議室をゆっくりと見渡す・・。
すると、さっきは気付かなかった参加者の面々がよく見えた。
藩国の吏族に飛行剣士にバトルメード・・・。に、子供たち??

「藩王!新しい味のがたっくさん!欲し~です!!」
子供の声に悠揚に頷く藩王・・。
「ええ、今日はそのための会議です。皆さんはどのような味のアイスが
希望ですか?」
「藩王~!!お、俺はこんな会議を欲していたんだぁ~!!」
と叫ぶ判 新を背景に「私は~」「僕は~」「やっぱり、ここは!・・」
皆もそれぞれの思いのままに口を開く。

      • さっきまでの雰囲気はどこに?

そんな光景に私は「なんでやねん!!」つい大声を張り上げて思いっきり気付かれる・・。
(私としたことが!)普段なら私も喜んで参加するような状況だが今は違う!私は部外者であり政庁に忍び込んだ賊である。
とっさに逃げようとして偽装のダンボールが災いし、身動きを取るよりも早く準備室の扉が開けられあえなく発見される。
「は、ははっ。や、やぁ!」情けない笑みを浮かべる私・・。

「ほら、こっちにくるんじゃよ?」とリョウに引き立てられて、会議室の藩王の前に引き立てる。
覚悟した私に藩王が言葉を掛ける。「あなたは?」
仕方なくありのままに説明する。
(さすがにただではすまないな・・。もしかするとこのまま、処刑・・か?)
背中につめたいものを感じながら説明を終えた私に再び藩王が口を開く。
「なるほど。判りました。あなたも会議に参加したいという事ですね?」
暫しの沈黙の時間・・。
「は?」バカみたいに口を開けたまま、なんとも言えない声をだす。
「ちょうどいい。新作アイスの試食係が必要なんですよ?」
そう言ってニッコリと微笑む藩王と他の面々。

混乱する私の前に突き出される新作アイスの数々・・。
食べてみる以外に手はないと思い切って口にする。
「フツーにおいしい・・。」と声に出して言うと、
「ふつう?じゃ、駄目ね~」とグググ子が採点していく。
「じゃ、これはどうですか?」と新しいアイスを秋川 志保に渡される。
「さっぱりしていて食べやすい・・。」と私・・。
「や、うん。それはなかなかいい評価だね。ん、いやいやけど・・」
と思案しながら評価を考える三祭ノア・・。
「これはどう?」「こっちは?」次々に出されるアイスを試食していく・・。
そして赤い色のアイスを食べたとき・・。
「あ、それは!」叫ぶミリ。
「あら、やだ!」とカイエ。
邪悪な笑みを浮かべる赤星 緑が目についた・・。
  • ・倒れる私。
倒れた私に怯える子供をあやすイチカ。
「ブザマですね・・。」とSVLの声が響いた・・。

「わ、私は一体?」
「起きたか?」とエル。「あ、もう少し寝てた方がいいですよ~。」
とハルキにたしなめられる。
「お前は赤星の唐辛子アイスを食べたのだ。あれは唐辛子の辛味成分を精製濃縮した危険物だからな。」と、キラ=カンナに説明されようやく状況が飲み込めた私にかぶせるように言葉を継ぐ。
「今日の会議は終了だ。お前は回復したら院長に礼を言って好きにするがいい。」と言うとキラ=カンナは背を向けて部屋を後にした。
「えっと、ここは孤児院です。院長にはもう事情を話してるんでゆっくり休んでくださいね?」しっぽパタパタ、エルがそう付け加えた。
「そ、そうか。すまない。」言って私は落ち着こうとタバコを手にする。
そこへヌッと伸びる腕。ライムだった。
「悪いな。愛鳴では子供たちの為に禁煙なんだ。これで我慢してくれ。」
代わりと言って渡されたのは棒付きのキャンディーだった。

貰った棒付きキャンディーを加えながら皆が出て行った孤児院の部屋で私は今日を振り返る。
「仮にも国の会議に乱入した男を無罪放免?は、ははっ。」
過去、何度となく法を越えた取材を行った私だがこんな経験は始めてである。愛鳴藩国・・。会議のスクープではなく藩国の日常として書きたいな。
と思いペンをクルクル・・。
(あぁ、子供たちを怯えさせてしまったな。明日、謝りに行こう。)
知らずしらず、私は笑みを湛えていた。

後日談、赤い唐辛子アイスを作った緑と私こと、マクシミリアンは孤児院での清掃を買って出て許しとしてもらったことを付け加えておく。

“あくまで本作品は私こと、マクシミリアンが描いたフィクションです。”
(文章:赤星 緑)