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王の親愛なる腐れ縁」(2011/08/12 (金) 22:53:27) の最新版変更点

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『それでは失礼します、アサ王さん』 「ああ。次こそは"アーサー"って呼んでおくれよ、セリア」 苦笑して言葉を発さないところを見ると、次もそう呼んでくれることはないように思えた。 銀色の髪の女性は跪いた姿勢から戻ると、衛兵に側に並ばれて扉へと消えた。 「…ふむ」 「いかがなされましたか、王よ」 明星の国の中心にある城の最奥、謁見の間。 その玉座に腰掛けながら、偉大なる王は友人を見送った後、ため息をついた。 王の側近が、義務ではなく心からその様子を案じる。 「あぁ、ササ。俺も王とはいえ一応人間。色々と思うこともあるんだよ」 「…あのご友人が、王に何か粗相を?」 「いや、むしろ彼女にはもう少しだけ粗相して貰いたいくらいだ。それこそ友人なんだから」 「では…?」 側近のササの疑問に、王はすぐには答えなかった。 赤や青、緑に黄と、七色に変化する瞳が、黒い前髪に僅かに隠れる。 「不思議だな。何故か彼女を見てると、形容しがたい気分になるんだ」 「…もう少し、具体的にお教え頂ければ」 「はは、すまない。 …そうだな」 そこで一息置いて、王は微笑みながら答えた。 「小憎たらしいような、懐かしいような、そんな感じ」 「懐かしいのはともかく、ご友人が憎たらしい?」 「…何故か、ずいぶん前に煮え湯を飲まされたような気がするんだ。もう、どうでも良い気はするけど」 「王とは幼馴染だったのですね」 「いや、特にそうでもないな」 ササが「失礼ながら、私には事を解りかねます」と頭を下げた。 王はそれに対して特に気に触れた素振りさえ見せず、「俺もよく解らん」と苦笑した。 「また会いに来て欲しいな。不思議な不思議な腐れ縁殿」 明星の国の偉大なる指導者、"無敵帝"。 アサという名の若き王は、そう呟いてササに最高級の紅茶を一杯頼んだ。
『それでは失礼します、アサ王さん』 「ああ。次こそは"アーサー"って呼んでおくれよ、セリア」 苦笑して言葉を発さないところを見ると、次もそう呼んでくれることはないように思えた。 それでも出会った頃の「王」と改まった言い方からすれば、大分親しくなった感はある。 銀色の髪の女性は跪いた姿勢から戻ると、衛兵に側に並ばれて扉へと消えた。 「…ふむ」 「いかがなされましたか、王よ」 明星の国の中心にある城の最奥、謁見の間。 その玉座に腰掛けながら、偉大なる王は友人を見送った後、ため息をついた。 王の側近が、義務ではなく心からその様子を案じる。 「あぁ、ササ。俺も王とはいえ一応人間。色々と思うこともあるんだよ」 「…あのご友人が、王に何か粗相を?」 「いや、むしろ彼女にはもう少しだけ粗相して貰いたいくらいだ。それこそ友人なんだから」 「では…?」 側近のササの疑問に、王はすぐには答えなかった。 赤や青、緑に黄と、七色に変化する瞳が、黒い前髪に僅かに隠れる。 「不思議だな。何故か彼女を見てると、形容しがたい気分になるんだ」 「…もう少し、具体的にお教え頂ければ」 「はは、すまない。 …そうだな」 そこで一息置いて、王は微笑みながら答えた。 「小憎たらしいような、懐かしいような、そんな感じ」 「懐かしいのはともかく、ご友人が憎たらしい?」 「…何故か、ずいぶん前に煮え湯を飲まされたような気がするんだ。もう、どうでも良い気はするけど」 「王とは幼馴染だったのですね」 「いや、特にそうでもないな」 ササが「失礼ながら、私には事を解りかねます」と頭を下げた。 王はそれに対して特に気に触れた素振りさえ見せず、「俺もよく解らん」と苦笑した。 「また会いに来て欲しいな。不思議な不思議な腐れ縁殿」 明星の国の偉大なる指導者、"無敵帝"。 アサという名の若き王は、そう呟いてササに最高級の紅茶を一杯頼んだ。

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